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Tokina新レンズを使う高橋良輔の視点

opera 50mm F1.4 FF

opera 50mm F1.4 FF

現在の市場にはフルサイズをカバーする50mm単焦点レンズが多数存在。どのレンズを選べばいいのか、迷っている人は少なくないだろう。価格で比較すると10倍以上もの開きがあり、サイズ感で比べてみても観光バスと軽自動車くらいの違いがある製品が混在しているのが実情だ。そこで50mmレンズを大きく以下のように分類してみたい。

① 伝統的な光学設計を踏襲したF1.4タイプ
② F値よりも携帯性を重視した小型モデル
③ 最新の光学設計を導入した高画質レンズ

派生モデルも存在するだろうが、大きく分けるとほとんどのレンズが3分類のどこかに入るはず。今回トキナーから発売されたopera 50mm F1.4 FFは、③に属するハイクオリティな1本である。③に属するレンズの特徴は、最新の技術を導入することで①では実現できなかった各種の収差補正を可能としているほか、②にはない明るさがある。現在もっともホットなカテゴリーは③で、各メーカーがそれぞれの威信をかけた名品がしのぎを削っている。

そのなかでopera 50mm F1.4 FFを見ていくと、さまざまな特長が見いだせる。レンズ構成は9群15枚で、左右対称の光学系から成るガウスタイプを踏襲していない。ガウスタイプは標準レンズの基本とされてきた伝統的なレンズ構成だが、基本設計が古いためデジタル5,000万画素時代には荷が重い。opera 50mm F1.4 FFでは最新の光学シミュレーションを用いて新しいレンズ構成を開発。50mm単焦点レンズの理想である「高い解像力と美しいボケ」両立。さらに収差のなかでもとりわけ補正が困難な歪曲収差を肉眼では確認できないレベルにまで抑えている。

実際にopera 50mm F1.4 FFを手にとってみるとレンズ自体は小さくはなく、鏡筒は総じて長い。しかしこの設計には理由があり、余裕のあるレンズ配置で無理なく光を屈折させることで高画質化を目指しているのである。全長が短いレンズは携帯性に優れているが、光を急激に屈折させる必要があるために光学的に無理があり、周辺画質の低下や画像の歪みが発生しやすい。またレンズ口径を小さくすると収差を抑制しやすくなるが、開口部が小さいためにF値を明るくすることに限界がある。とくに50mmでは僅かなF値の違いがボケに影響を及ぼすため、opera 50mm F1.4 FFが採用した設計思想は理にかなっている。

実写した印象は各作例のキャプションを読んでいただきたいが、今回テストに用いた5,000万画素一眼レフの実力をフルに引き出せており、まだレンズ側に余裕すら感じるほど。これまでさまざまなタイプの50mmレンズを使ってきたが、そのなかにおいてもopera 50mm F1.4 FFは別格で、市販されている50mmレンズのなかでも間違いなくトップクラスに属する。レンズを知り尽くしたベテランの方々に最適であることは言うまでもないが、これから単焦点レンズを極めていきたいと思っている人にもオススメしたい1本。価格的にはけっして安くはないが、光学特性にクセがないためにビギナー向けのレンズより格段に使いやすく写真の上達が速くなるだろう。

 

目次 [開く]

 

作例01

使用カメラ:Canon EOS 5DS、絞り値:f/4.0、シャッタースピード:2.0秒、ISO感度:ISO-100、露出補正-0.7EV


About

横浜ランドマークタワーから撮った美しい夜景。画面上の海は東京湾で、対岸の灯りは千葉県木更津市付近だ。点像で構成される夜景撮影では、解像力を引き出すためにF8程度まで絞らなければならないレンズも少なくない。しかしopera 50mm F1.4 FFはもとより収差が少ないため大きなF値を選ぶ必要がなく、F4まで絞っただけで眼下の近景から遠景の点像まで完全に解像している。大きく絞る必要がないために著しいシャッタースピードの低下やISO感度の上昇を防げ、クリアでシャープな夜景を撮影することができた。

 

作例02

使用カメラ:Canon EOS 5DS、絞り値:f/1.4、シャッタースピード:1/500秒、ISO感度:ISO-100


About

まさに大口径レンズならではの1枚。大きくて柔らかいボケが発生し、主役のグラスが浮かび上がっている。ここでのポイントはボケ同士の重なりで、ボケが滑らかなのでボケとボケが重なっても画面がうるさくなっていない。一般的にボケの大きさはF値によって決定され、開放値が小さい(明るい)ほうがボケは大きくなる。しかしボケの"質"についてはレンズ設計に起因することから、たとえF値が同じであっても他のレンズでもこのような美しいボケを得られるとは限らない。

 

作例03

使用カメラ:Canon EOS 5DS、絞り値:f/3.5、シャッタースピード:1/2000秒、ISO感度:ISO-100、露出補正-0.7EV


About

こういったシーンでもっとも心配なのが、大口径レンズ特有の色にじみ=軸上色収差だ。とくに大口径レンズでは球面収差(像がぼやける)がセットで発生しやすく、画像の品位を著しく損ねてしまう場合がある。これらの収差は絞ることによって解消されるが、絞ると背景のボケも失われてしまうのでやっかいなのだ。opera 50mm F1.4 FFは3枚の異常低分散ガラスと理想的なレンズ配置で、これらの収差を高度に補正。開放付近でも色づきがなくシャープに写せるため、ボケを活かした立体感のある表現が楽しめる。

 

作例04

About

伝統的なレンズ構成を踏襲する50mmレンズでは、レンズ全体が繰り出してピント合わせを行うために、最短撮影距離を短くすることは得意できない。しかしopera 50mm F1.4 FFは、インナーフォーカス形式でピント合わせを実施。近接時の収差変動を打ち消すようにフォーカス群を駆動させている。そのため0.4mというクラストップの最短撮影距離を実現しつつ画質も格段にいい。また新開発のリング型超音波モーターによるレンズ駆動でミリ単位でのピントワークが正確に行え、被写界深度に応じた微妙なニュアンスを表現できる。


使用カメラ:Canon EOS 5DS、絞り値:f/8.0、シャッタースピード:1/100秒、ISO感度:ISO-100


 

作例05

使用カメラ:Canon EOS 5DS、絞り値:f/2.5、シャッタースピード:1/4000秒、ISO感度:ISO-100


About

肉眼で見たかのように立体的に写っているカモメ。この描写は極端に浅い被写界深度と背景とのバランスによって作り出されている。作例をよく見るとピントが合っているのはカモメの頭部と胴体の前面だけで、輪郭はすでにぼけ始めていることがわかる。この視覚的な作用によってカモメの描写が丸みを帯びて見え、リアルな立体感が生まれているのだ。また50mmレンズ特有の画角によって背景の情報量が増大。どんなシチュエーションで撮られたのかが一目でわかり、臨場感が伝わってくる1枚になった。

 

作例06

使用カメラ:Canon EOS 5DS、絞り値:f/5.6、シャッタースピード:1/320秒、ISO感度:ISO-100、露出補正-0.7EV


About

この作例で注目してほしい部分は、画面周辺部での歪曲収差の少なさだ。歪曲収差の補正は他の収差以上にやっかいで、過度に補正すると像面湾曲に影響が出てしまうことから、多くのレンズではある程度の収差残存を容認している。opera 50mm F1.4 FFは9群15枚のレンズを使って光をゆっくりと屈折させ、ほぼ通常レンズの力だけで歪曲収差をほぼ完全に近く補正。作例のように画面周辺の直線をきれいに描写することができる。デジタル補正でないために正確にフレーミングでき、描写がナチュラルで嫌味がない。

 

作例07

使用カメラ:Canon EOS 5DS、絞り値:f/4.0、シャッタースピード:1/2000秒、ISO感度:ISO-100、露出補正-2EV


About

画面内に夕日をまともに入れてみたが、フレアやゴーストは確認できなかった。フレアやゴーストの原因はレンズ表面で発生する光の反射。レンズ1枚について両側が反射面になることから、レンズの構成枚数が多いほど高い技術が必要になる。opera 50mm F1.4 FFは9群15枚のレンズ構成なので反射面が30存在するが、ナノテクノロジーを利用した新開発のELRコーティングと多層膜コーティングの組み合わせで各面での反射を大幅に低減。逆光に対して抜群の強さを持っている。画面のヌケがいいために暗部も締って鮮やかに発色することからグラデーションも美しい。

 

作例08

使用カメラ:Canon EOS 5DS、絞り値:f/1.4、シャッタースピード:1/1600秒、ISO感度:ISO-100、露出補正+0.3EV


About

設計が古い50mm F1.4レンズを使って開放で撮ったならば、確実に写真は破綻していただろう。残存収差によって計器の文字はにじんでしまい、口径食の影響から四隅が暗くなってしまうからだ。しかしopera 50mm F1.4 FFは開放でありながら実用に耐えるシャープネスを発揮。細かい文字まではっきりと読み取れる。さらに画面の四隅にも減光は見られず、明るさは均一だ。また金属パーツの反射によって作られた玉ボケも崩れておらず、ボケとボケがきれいに重なってソフトなイメージを作り出している。

 

作例09

使用カメラ:Canon EOS 5DS、絞り値:f/2.5、シャッタースピード:1/1600秒、ISO感度:ISO-100、露出補正+0.3EV


About

簡単に撮れそうに見えるだろうが、ススキはレンズ性能を要求する難易度の高い被写体。とくに二線ボケが発生しやすいレンズでは、このような柔らかさを表現できない。二線ボケとはボケのエッジが消失せずに輪郭を形成してしまう現象で、多重露光をしたかのようにボケがたぶって写ってしまう。とくにススキのように線の細い被写体をぼかす場合にはやっかいだ。opera 50mm F1.4 FFでは二線ボケ発生を光学的に抑え込みつつ、高い解像力と美しいボケ味を両立。シーンを選ばずに誰にでも使いこなせる。

 

作例10

使用カメラ:Canon EOS 5DS、絞り値:f/5.0、シャッタースピード:1/20秒、ISO感度:ISO-1600、露出補正-1EV


About

MTF曲線図を見てもわかるようにopera 50mm F1.4 FFは周辺部の画質が安定。大きく絞ることなく画面全域をシャープに写すことができる。とくに作例のようなシーンでは、周辺の画質を基準にして絞りを決定しなくてはならず、撮影状況がどんどん不利になる場合もある。しかしopera 50mm F1.4 FFではF5まで絞っただけで満足すべき画質が得られ、三脚を使うことなく手持ちで撮影することができた。性能の高いレンズは撮影そのものを簡単にしてくれるのだ。

 
 
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