Lensbaby × Emika Sagesaka | Photographs Fujisato Ichiro

LENSBABY、なんと夢のあるネーミングなんだろう。某ニュースサイトでの新製品情報を見て「アイツはあの娘をどんなBABYに写し出してくれるのか」と思ったものだ。

縁あって手元にやってきたアイツは、実に無骨でとても重たいレンズだった。外見からはおよそ軟らかな印象は無いアイツをカメラに付けファインダーを覗く。「あれ?本当にこれソフトフォーカス?」と思う程に普通な見え方に近い。
半信半疑で1枚シャッターを切り写真を見てみる。
すると「ええっ!」と声が出てしまうくらいの描写に驚かされる。そう、アイツは「ソフトフォーカス」という読んで字の如く、非常に軟らかでふんわりな描写を連れてきてくれたのである。
ある日、ずっと撮らせてもらいたかったあの娘、女優・提坂笑加をモデルに、アイツ(LENSBABY)を連れて散歩に出かけてみた。
開放1.6から少し絞った4.0まで写してみる。
開放での肌の描写はまるで赤ちゃんの様。透明感の中にもしっかり「芯」があって、写真の中の彼女に触れてみたくなる、そんな印象。中心でのピントが合わせやすいが画面の端では雰囲気あるボッケボケ感を味わう事も出来る。
さらに2.8、4.0と絞って行くと、しっかりとした画にすることも可能。シャープで印象的な画は頭でイメージする雰囲気を軽く超えてくれた感じがした。
レンズフードの装備は無いのでハレーションがおきやすいが、光のシャワーの様な効果も味わえるのでわざとやってみるのも楽しみの一つだ。軟らかな雰囲気の中にも凛とした佇まい、目が合えば立ち尽くしてしまいそうな眼力を持つ彼女。
そんな空気感や溢れる光と爽やかな風をも写し込んで僕だけのBABYにしてくれたアイツ、LENSBABY Velvet 56には脱帽である。
カフェ店内に注ぐ柔らかい光をチョイス。開放での描写は唯一無二の存在だろう。

【使用F値:f1.6 】
初夏の爽やかの陽射しの中で日傘をアクセントに。中距離での撮影だと全体的にソフトな印象。

【使用F値:f1.6 】
白い世界にアクセントとなる色を配置。バラバラ感をソフトフォーカスで包む。

【使用F値:f2.0 】
逆光を日傘で遮り顔には柔らかい光となるように。そばを走る電車の臨場感も。

【使用F値:f2.0 】
避暑地を思わせる木々を背景に、直射日光をレンズに入れて光のシャワーの様なハレーションで柔らかさを表現。

【使用F値:f2.8 】
柔らかそうな唇に温かな陽射しの演出が加わった。

【使用F値:f1.6 】
グレーの世界の中に美しい光が差し込んでいた。

【使用F値:f2.8 】
フェンス越しの強い視線。フェンスの前ボケも自然。

【使用F値:f4.0 】
隣に座る彼女。LENSBABYがピアスまでも愛しく包み込む。

【使用F値:f1.6 】
光る看板を背にしてステキな光を見つける。少しマゼンタがかった光が夜の街をイメージさせる。

【使用F値:f4.0 】
マクロ撮影も可能なクラシックポートレートレンズ。焦点距離56mm、F1.6。

■ 撮影者プロフィール
【藤里一郎】(写真家)
男っぷりの良い写真、色香あふれる写真を撮る当代随一の写真家。
大倉舜二氏に師事、96年独立 個展、WEB、広告、雑誌など、ジャンルを問わず作品を発表。
写真雑誌フォトコンにて、「ソクド。」連載中。
写真雑誌フォトテクニックデジタルにて、連載「夢みるアドレセンス 2回目のデート」が、9月号よりスタート。
藤里写心大学(写真スクール)主宰。
【提坂笑加(さげさかえみか)】(女優)
1989年8月25日生 静岡県出身。
映画、舞台、CM等幅広く活動中。
twitter @sageemi