アサヒカメラ1963年6月号 | ケンコーの昔語り

昔語り


アサヒカメラ1963年6月号

Kenko/ケンコーフィルター技術シリーズNo.5

 


 

カラー撮影に必要なフィルター

カラー撮影にどうしてフィルターが必要なのか、それはカラーフィルムは人間の眼のように光に対して順応性がないからなのです。

たとえば電灯の光で白い紙を最初見ますと、やや赤っぽく感じますが、その光に慣れてくると白い紙は白として見えて来ます。これを人間の眼の光に対する順応性と云いますが、カラーフィルムにはこの順応性がないため撮影する時の高原に応じた色補正用のフィルターが必要になってくる訳なのです。ですから現在発売されているカラー用のフィルターも一般的には、フラッシュバルブ用とか写真電球用、曇天用、朝夕用等、その時の光源を基にした呼称が用いられているようです。

ですから外国のカラーフィルムには各種光源に合ったフィルムが発売されているのです。たとえばタングステンタイプのカラーフィルムでもフラッシュバルブ用と写真電球用と云うように分かれており報道写真のようにいつもフラッシュを使用している人達にはフラッシュバルブの光に適合したカラーフィルムが使用される訳なのです。又、スタジオで写真電球でいつも撮っている人達は写真電球に合ったフィルムが使われているのです。このように光源に応じたカラーフィルムを使用していればフィルターをあまり使用する機会もありませんが、私達が一般に使用する場合には特別な目的がない限りのデーライトタイプ(日中光用)のカラーフィルムが主に使われます。このデーライトタイプは時で読んだごとく太陽の日中光下での撮影に最も美しい色彩が表現されるようになっておりますので、それ以外の光源下の撮影にはその光源に合ったフィルターで色の補正を行うことになります。つまり人工光源のフラッシュバルブにはC8号、写真用電球にはC12号、朝夕の光ではC4号、曇天時にはW4号等の各種記号のフィルターを使用して、いつも美しい色彩を表現していただき度いのです。

今、おはなししたのはデーライトタイプのカラーフィルムの場合ですがタングステンタイプのカラーフィルムの場合でも同じことが云えるのです。それはタングステンタイプのカラーフィルムで人口光源以外の光で撮影した場合やはりフィルターでなければ正しい色が表現できないのです。ですから日中光下で撮影する場合ですとW10号とかW8号のフィルターで色補正を行うのです。下の表に揚げましたフィルムの種類と光源の種類に適応したカラー用フィルターの中からあなたのカラー撮影に最も適したフィルターを選定して見てください。

★色温度について

太陽が水平線に顔を出したときは真赤に見えますが、高く昇るにつれて橙色~黄金色となり、だんだん白くなってまいります。また、昼の太陽光と電球の光を比較しますと、太陽光は白いが電球の光は黄色っぽく見えます。

このように光には夫々色合の異なるものがあって、これを示すのに色温度(K=ケルビン)と云う単位を用います日の出時の太陽の光はローソクの炎と同じ色合で、約1900Kとなりこの光の色は簡単に申上げると「物体を1900度に熱した時にその物体から出る光の色と同じ」と云えます。又物体を2800度に熱しますと、丁度電球の光と同じ色の光が生じるので電球光は2800Kだと云へるのです、左の図表はカラー写真に用いられる光源の色温度を示しました。

フィルム区分 

 

 被写体と光源

カラーフィルムの種類

デーライトタイプ

フラッシュタイプ(タイプF)

タングラステンタイプ

タイプA

タイプB

青天の日蔭

W4

W10+W2

※W10+W4

※W10+W8

曇天・雨天

W4

W10

W10+W2

※W10+W4

遠い風景

W2

W10

W10

※W10+W2

木蔭・高原での人物

 

W8

W10

W10+W2

昼光

 

W8

W10

W10+W2

太陽直射光

ヘーズUV

W8

W10

W10+W2

朝・夕

C4

W4

W8

W4

フラッシュバルブ

C8

不要

W4

W4

写真用電球

C12

C4

C2

不要

(注)※の撮影にはなるべくデーライトタイプのカラーフィルムをご使用下さい。

 


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