Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E
ISO8000,11mm,f2.8,SS20秒,AWB
DxO Pure Raw 2でノイズ低減処理
Photoshop CCで画像処理
私が星景写真を始めて間もない頃。それこそ、星景写真という言葉が生まれるか生まれないかくらいの、星景写真向けのレンズなんて全然なくて選択肢がめちゃめちゃ少なかった時代の話です。Tokinaは「AT-X 11-20 F2.8 PRO DX 11-20mm F2.8」「AT-X 16-28 PRO FX16-28mm F2.8 (IF) ASPHERICAL」「Tokina AT-X 116 PRO DX」などの"f2.8素通しの超広角ズームレンズ"を定番商品として発売していました。当時はまだ他社にはないレンズのアプローチだったし(あの頃によくそんなレンズを作ってくれていたなと思う)"高価な単焦点レンズじゃないと星なんて撮れないよ"という意見が多かった中、比較的安価でユーザーが手を出しやすい価格で発売していたので、星景写真の黎明期には多くのユーザーがTokina超広角ズームレンズのお世話になったのではないかと感じています。
今考えると、Tokinaの超広角ズームレンズの存在ってほんとにありがたかったなと、この記事を書き始めた途端に感謝の思いがしみじみと湧き出てきました。Tokinaさん、私たちをサポートしてくれてほんとにありがとうございました!
いきなり話が逸れてしまいましたが、そんな歴史がある中、Tokina「伝統の超広角ズームレンズ」が復活するという話が来ました。今回のレビューの主役である「Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E 」(2022年10月14日に発売)です。ソニーEマウントのAPS-C用の"小型軽量"超広角ズームレンズで、35mm換算で16.5~27mmをカバーします。
トキナーならではの低歪曲と美しいボケ味を実現し、夜景・星景撮影や広角スナップ撮影の他、ジンバルを使った動画撮影などにも最適という話だ。しかも店頭販売価格で10万円以下で手に入る価格設定らしい。冒頭のような経験を持つ私だったので、これは期待しない訳がありません。コスパが良く、でも価格以上の画質・性能が手に入る・・・当然のことながらそんなことを期待してしまいますが果たしてどうなのか。ちょうどアメリカで完全プライベートな撮影旅を企画していたので、早速持っていくことにしました。
めちゃめちゃコンパクトで持ち運びに最適!
使用ボディはソニーα6600。実際にTokina atx-m 11-18mm F2.8 E を装着してみるとこんな感じ。めちゃめちゃコンパクトです!重さはなんと335g。持っていく荷物に制限がある中で、今回のような海外遠征になるとこのコンパクトさが非常にありがたいです。フィルター径は67mm。
ズームリングは意外にしっとりとしてマニュアルフォーカスでもピント合わせがしやすい(ここ星景写真にはめちゃめちゃ大事!)。ボディの素材はプラスチックだと思いますが、とは言ってもビルドクオリティは大変良く、チープな印象は一切ありません。他社でもあまり見ないがマウント部にマイクロUSB端子を備えており、アップデートにも対応しているのはとても安心感があります。
今回の撮影地「ジョシュアツリー国立公園」
撮影中の私。
ジョシュアツリー国立公園はカリフォルニア州南東部に位置するアメリカ合衆国の国立公園でロサンゼルスから車で約2時間ほど。東京都の1.5倍ほどの広大な砂漠地帯の中に巨岩、起伏の激しい山々、金鉱跡、所々に風変わりな木がこれでもかと乱立していて、あまりの規模感に圧倒されます。ロックバンドU2のアルバム「JOSHUA TREE」からこの場所を連想する音楽ファンも多いでしょう。まずはこの場所で星景写真を撮影してみることにしました。
ジョシュアツリー国立公園の夕焼け。ビーナスベルトが美しい。
SONY α6600 / Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E / ISO640, 11mm, f8, SS1/30秒, AWB
現地に到着するとちょうど夕暮れどき。まずは昼間の風景写真を撮影してみました。最初の印象は「意外にまっすぐ写るな」というもの。ビルなどの直線を撮影すると少々タル型の歪みを感じますが、至って軽微なものでよく補正されています。f2.8開放だと周辺が流れるような印象がありますが、f8まで絞るときりっと写ります。f2.8で建物を撮影して周辺が流れるような印象、というのは星空を撮影する上では逆に好印象です。地上風景と星空は異なる補正が必要だからですね。これは星でも使えるのでは?という期待が膨らみます。
星景写真では十分の写りで好印象!
SONY α6600 / Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E / ISO8000, 11mm, f2.8, SS20秒, AWB
まずはJPEG撮って出しの画像から。中心の星像はf2.8から非常にシャープで、周辺にいくに従って星像は少し放射状に流れて色収差も若干ありますが、それは細かく言えばの話。星景写真を撮影するには問題のない写りだと思いますし、価格帯を考えるとめちゃめちゃ高コスパだと感じました。初心者の方にもおすすめできるレンズでしょう。
SONY α6600 / Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E / ISO8000, 11mm, f2.8, SS20秒, AWB / DxO Pure Raw 2でノイズ低減処理 / Photoshop CCで画像処理
ジョシュアツリー国立公園は南西方向にサンディエゴ方面の光害があるようで、地平線付近が明るく写ります。私の感覚では、日本と非常に似ている環境だと感じました。海外だからこれだけ撮影できているのではなく、日本国内でも同様な撮影ができると考えてよいでしょう。
SONY α6600 / Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E / ISO8000, 11mm, f2.8, SS20秒, AWB / DxO Pure Raw 2でノイズ低減処理 / Photoshop CCで画像処理
ジョシュアツリーと呼ばれる特徴的な木と、天の川とを撮影。この時期の天の川はまっすぐ南に立っているため、横よりは縦のほうが構図にまとまりを感じられます。星景写真の撮影はf2.8が基本。これがf4になると、感度を倍にするか、露出時間を倍にしなければなりません。感度を倍にすればノイズが増えるし、露出時間を倍にすれば地球の自転の影響で星がより線になって写ってしまう。そのため、f2.8での描写性能が重要視されます。
SONY α6600 / Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E / ISO8000, 11mm, f2.8, SS20秒, AWB / DxO Pure Raw 2でノイズ低減処理 / Photoshop CCで画像処理
深夜を過ぎると西に天の川が傾き始めました。ジョシュアツリー国立公園は砂漠地帯のため、地面が白い砂で覆われています。そのため、地面が真っ黒なシルエットにならず明るく写ることが星景写真としては好都合。風景部分が写りやすいので手前から星空まで奥行きのある演出ができます。
昼間の風景写真や、旅の記録用に最適な「トキナーブルー」
SONY α6600 / Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E / ISO100, 11mm, f8, SS1/100秒, AWB
「トキナーブルー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。実はトキナー伝統の超広角ズームレンズは「青の美しさ」に高い評価がありました。atx-m 11-18mm F2.8 Eでも、確かにトキナーの伝統を引き継いだ美しい色調表現を実現しているようですね。砂漠地帯の湿度の少ない環境から写し出される青空は、まさにこのレンズにうってつけ。非常に気持ちの良い、ヌケの良い発色をしてくれます。
SONY α6600 / Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E / ISO100, 11mm, f8, SS1/200秒, AWB
SONY α6600 / Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E / ISO100, 11mm, f8, SS1/640秒, AWB
SONY α6600 / Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E / ISO320, 11mm, f8, SS1/30秒, AWB / Kenko PRO1D Lotus ND64
SONY α6600 / Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E / ISO320, 16mm, f8, SS1/30秒, AWB / Kenko PRO1D Lotus ND64
超広角ズームであることは構図合わせにも利点があります。超広角レンズでは、画角が広すぎて写野内に余計なものが写り込んでしまうということがありますが、このレンズはズームして焦点距離を変えることができますので写野から余計なものを排除することができます。
たとえズームしたときのF値がF2.8だった場合、設定を変える必要はありません。全域f2.8素通しのレンズなので、そのままの露出設定で撮影が行えることはお手軽以外の何者でもありません。ちなみにNDフィルターをつけている理由は、動画撮影をしながら写真撮影をしているから。Tokina atx-m 11-18mm F2.8 Eはフォーカス音が非常に静かで精度がよく、動画撮影にも最適なカメラでした。Youtuberの私にとって非常にありがたい仕様です。
SONY α6600 / Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E / ISO400, 18mm, f8, SS1/30秒, AWB / Kenko PRO1D Lotus ND64
砂漠に咲くワイルドフラワー。花の名前はわかりませんが、こうした風景を目にすると花に寄りたくなりますよね。そう、Tokina atx-m 11-18mm F2.8 Eは18mm側で30cmまで、11mm側では19cmまで近づくことができます。
SONY α6600 / Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E / ISO100, 11mm, f2.8, SS1/3200秒, AWB
広角マクロでf2.8のボケ感。さまざまな撮影に対応することができるので、飽きることがありません。撮影がとても楽しいレンズだと感じました。何より小型軽量なので、腕が疲れないというのがいいですね。このときはリストバンドで手にカメラを持って移動と撮影を繰り返していましたが、腕が疲れるということはありませんでした。
SONY α6600 / Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E / ISO125, 11mm, f8, SS1/30秒, AWB / Kenko PRO1D Lotus ND64
ブライスキャニオン国立公園にて。これだけの広大な風景を撮影するには超広角レンズが必要不可欠。通常画角ではこの広大な風景の一部しか切り取ることができません。今回の旅にTokina atx-m 11-18mm F2.8 Eを持っていったのは大正解でした!
まずは星景写真を撮影してみて、非常に満足できる写りであると感じました。”星景写真はフルサイズでないと撮れない”という認識が一般的な中、APS-Cサイズでしかも小型軽量なレンズとの組み合わせでこれらの作例を撮影できたことに「俺はわかってるんだぜ」的な優越感が芽生え、非常に気持ちの良い撮影ができました。ボディとレンズが小型軽量であるということは、周辺機器である三脚も軽量なもので問題なく使用できることも大きいです。この優越感はぜひとも皆さんにも味わっていただきたいと思いますね。そしてトキナーブルーを生かした昼間の風景写真、動画撮影においての利便性は高く、今回のような旅の記録にはもってこい。今、ソニーAPS-C機を使っているが超広角レンズを持っていない、できれば星も動画も撮りたい!なんて方には真っ先におすすめしたいレンズだと感じました。
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