標準レンズと呼ばれる50mmから画角的に一歩詰めたような、絶妙な距離感を演出してくれる85mm。"ポートレートレンズ"と呼ばれるほどの、被写体となる人物との間合いを写し込みの妙は多くの撮影者を魅了し続け、ズームレンズでは味わえない大きなボケが、被写体を浮かび上がらせ、撮影者だけでなく、被写体となった撮られ手にも大きな喜びを与えてくれる。また85mmはスナップ撮影でも大活躍する。見た目よりも適度に排除された構図は端的に主題を見る者に伝え、中望遠レンズたる控えめな圧縮感に大きなボケのコントロールと、表現することの面白さを与え続けてくれる。それが85mmというレンズだ。
85mmは、各社から本当に多くのレンズがラインナップされ、開放値F1.2クラスの大口径から、F2.8の超コンパクトタイプまで、その用途に合わせてユーザーに選択肢を広げてくれている。そのような中、atx-m 85mm F1.8 FEは、コンパクトでありながら大きなボケを味わえる、バランスの良い開放値F1.8にまとめられている。装着するカメラがソニーα9/7系とコンパクトなサイズなので、取り回しの点も重視するべきであり、開放値F1.8は軽快さを損なうことなく撮影出来る、いい塩梅のサイズに収まるのだ。
atx-m 85mm F1.8 FEはそうした使いやすさから印象を抱きがちなF1.8ながら、その作りに妥協はない。特にボケに関しては撮影をしていて、ひしひしと感じた。玉ボケは渦を巻かず、画面の隅まで綺麗な円形を保ち、ボケそのものはとてもナチュラル。また絞り開放からとても高い解像性能を発揮してくれる。またシャープではありながら硬さのないピント面が、まるで肉眼で見ているように馴染んでくる。
総合的に高い描写力を持つatx-m 85mm F1.8 FEは5000万画素超えの高画素力を十分に引き出し、そして納得のいく画像へと誘ってくれる。派手さはないが、なんとも染み入ってくる、通好みの画と昇華する、そんなレンズだ。
モデル:北川りな
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ヘアメイク:山田佳奈
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作例1

ソニーα7RⅣ 絞り優先AE(1/640秒 F1.8) -1.0EV補正 ISO400 AWB
窓からのサイド光、ハイライト部の肌色に透明感を狙う。優しい光を開放値F1.8で優しく拾っていく。
作例2

ソニーα7RⅣ 絞り優先AE(1/125秒 F3.2) -1.7EV補正 ISO200 AWB
やや絞り、前ボケとなる花を距離感演出になるようボケをコントロールしながら。適度な圧縮感はこうした画に適している。
作例3

ソニーα7RⅣ 絞り優先AE(1/200秒 F2.2) ISO100 AWB ストロボ使用
こちらの存在に気づいたような様子で。間合いを作りやすい85mm、互いの距離を感じさせるような雰囲気を楽しむのにちょうどいい。
作例4

ソニーα7RⅣ 絞り優先AE(1/100秒 F2.2) ISO400 AWB ストロボ使用
圧縮効果による背景の引きつけ、そのボケ具合が彼女を浮かび上がらせると同時に、その場の雰囲気を感じさせる。このくらいの圧縮感は背景を名脇役にしてくれる。
作例5

ソニーα7RⅣ 絞り優先AE(1/500秒 F1.8) -2.3EV補正 ISO400 AWB
しっとりとした、艶を感じる画へと仕上げてゆく。二線ボケは全くない。ベッドでの雰囲気が自然と入ってくる。
作例6

ソニーα7RⅣ 絞り優先AE(1/320秒 F1.8) -2.7EV補正 ISO400 AWB
身体のラインがハイライトとなって浮かびあがる。絞り開放で表情を追いながら、影に浮かび上がる彼女を写し込む。
作例7

ソニーα7RⅣ 絞り優先AE(1/200秒 F4.0) -2.3EV補正 ISO400 AWB
シャドウ部の肌の色が秀逸。とても自然で、そして湿度を感じる肌の表現だ。
作例8

ソニーα7RⅣ 絞り優先AE(1/8000秒 F1.8) -0.7EV補正 ISO100 AWB
ボケながらも立体感ある背景が奥行きを作り出す。現実と夢の狭間を見ているような、光の演出を収めることができた。
作例9

ソニーα7RⅣ 絞り優先AE(1/1250秒 F8.0) -2.0EV補正 ISO100 AWB
中世の石垣の力強さと、時代の経過を圧縮感の中に閉じ込める。シンプルに、でも適度に主題を切り取ることができる85mmはスナップ撮影でも使い易い。
作例10

ソニーα7RⅣ 絞り優先AE(1/4000秒 F8.0) -2.0EV補正 ISO100 AWB
曲線を使い、窓枠のような効果を狙いながら、青空の中でのシーンを切り取ってみた。目にしたシーンを素敵に切り取る面白さがある。
作例11

ソニーα7RⅣ 絞り優先AE(1/250秒 F3.2) -1.3EV補正 ISO100 AWB
連なる柱を圧縮効果でギュッと凝縮。ピント位置の、炭の着いた柱の表面や、木の苔、錆びた鉄の質感など、繊細な描写が素晴らしい。
作例12

ソニーα7RⅣ 絞り優先AE(1/1600秒 F1.8) -2.0EV補正 ISO100 AWB
ピント面としたヒネムの蕊の描写にフワフワ感の再現がたまらない、玉ボケも円形が綺麗だ。
作例13

ソニーα7RⅣ 絞り優先AE(1/1000秒 F1.8) ISO100 AWB
ちょっとした路地での光景も、物語性を感じるカットに仕上げてくれる切り取り方が85mmの面白さだ。
まとめ
カリカリとしたシャープさではなく、見たままのような優しくも際立つピント面が、なめらかなボケの中で浮かび上がる様は、ジワッと気持ちに訴えてくる。
ソニーと言えば瞳AFだが、このレンズでも対応。ポートレート撮影では全くストレスを感じず、ダンス中の方でも十分に瞳に食いついてくれた。AFは十分に実用的だ。
カメラがコンパクト、でもレンズ装着時には、全体のバランスが重要。カメラを構えた時の適度な重量感は、むしろ撮影にはプラスに働くことも多い。絞り開放から使え、取り回し十分な適度な重量感、そして通好みな写り。このレンズの強みを使い切って欲しいと素直に感じている。
ボケ比較
ボケの中で一番気になるのは玉ボケだろう。大口径レンズはどうしても口径食によるラグビー型の玉ボケになりやすいレンズも多いが、atx-m 85mm F1.8 FEは綺麗な円形を提供してくれる。また渦巻きにもならないので、より自然なボケの中で主たる被写体を浮かび上がらせることができる。なので点光源を構図に積極的に入れたくなる。キラキラと輝く綺麗な玉ボケを味わってほしい。

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