atx-i シリーズは、トキナーの新しいシリーズだ。これまでのAT-Xシリーズから主に外装のデザインや質感など最新のデジタル一眼レフに最適化したものとする。すでにAT-X 116 PRO DX IIをリニューアルしたatx-i 11-16mm F2.8 CFがリリースされており、本モデルは2本目。言うまでもなくAT-X M100 PRO Dをリニューアルしたものである。
注目は、やはり写りだろう。先代モデルはエッジのキレがよいうえに、ナチュラルで溶け合うほど柔らかいボケが持ち味であったが、本モデルもしっかりその優れた写りを受け継ぎ、高次元で安定した描写が得られる。フォーカス方式についても描写特性的に有利な前玉繰り出し式を継承。同フォーカス方式の場合インナーフォーカス式と異なりAF駆動系のモーターに負担がかかりやすくAFスピードが遅くなってしまう傾向があるが、本レンズを使った限りにおいては気にならないレベル。むしろ、写りを追求したことによるトレードオフと考えた場合、十分お釣りのくるものと例えてよい。
ワンタッチフォーカスクラッチもマクロ撮影では心強い見方だ。純正レンズの場合、鏡筒やボディに備わるAF/MF切り替えスイッチなどでオートフォーカスとマニュアルフォーカスを切り変える必要があるが、ほとんどの場合スイッチ自体が小さく一度カメラのファインダーから目を離して操作しないと切り変えることは難しい。また、超音波モーターを採用するレンズではオートフォーカスで合焦後自動的にマニュアルフォーカスに切り替わるものも多いが、マニュアルフォーカスの状態をキープし続ける訳ではないため、シャッターの半押しを止め再度半押しをしたときには当然ピントの位置も変わってしまう。ワンタッチフォーカスクラッチではファインダーから目を離すことなく、つまり被写体と対峙した状態のまま、フォーカスリングを前後させることでオートフォーカスとマニュアルフォーカスを瞬時に切り換えることができ、さらにマニュアルフォーカスの状態をキープし続けることが可能だ。じっくりと被写体と向き合うときなどこちらの方式のほうが極めて使い勝手はよいのである。
フォーカスリングの回転方向を純正レンズに合わせてあるのも特筆すべき部分。atx-i 100mm F2.8 FF MACROのマウントはキヤノン用とニコン用を用意するが、いずれもフォーカスリングの回転方向は純正レンズと同じであり、違和感なくマニュアルフォーカスでのピント合わせが楽しめる。また、ニコン用に限れば絞りリングを備えていることも注目しておきたい部分だ。
焦点距離100mmと言うと適度なワーキングディスタンスが得られ、そのうえ画角による被写体の歪みも気にならないため、マクロ撮影では出番が多く"標準レンズ"と位置付けされることのあるレンズである。さらに本レンズに限って言えば、解像感の高さやボケの柔らかさで風景やポートレート撮影でも頼もしい味方となること請け合いだ。今回atx-i 100mm F2.8 FF MACROを使い様々な被写体を撮影してみたが、以下その実力を存分に味わってほしい。
作例1
使用カメラ:Canon EOS 5D Mark IV 絞り値:F5.6 露出時間:1/100秒 ISO感度:ISO250 WB:自動
特徴的なボンネットマスコットにレンズを向けてみた。絞りはF5.6。ピントの合った部分のシャープネスとは対照的にボケは極めて柔らかい。金属の質感もよく描写している。
作例2
使用カメラ:Canon EOS 5D Mark IV 絞り値:F4.0 露出時間:1/100秒 ISO感度:ISO200 WB:自動
このクルマの特徴的な部分をクローズップした。ボケはナチュラルに始まっており、不自然さのようなものはない。絞りは開放から1段絞ったF4であるが、周辺減光の発生はほとんど感じられない。
作例3
使用カメラ:Canon EOS 5D Mark IV 絞り値:F4.0 露出時間:1/100秒 ISO感度:ISO500 WB:自動
前ボケを画面に大きく入れることで、ピントの合った部分を強調してみた。前ボケはレンズの性格が出やすいことも多いが、本レンズの場合は嫌味のない自然な感じで積極的に活用したくなるものだ。
作例4
使用カメラ:Canon EOS 5D Mark IV 絞り値:F10.0 露出時間:1/125秒 ISO感度:ISO200 WB:自動
ぐっと寄って懐中時計のメカニカルな雰囲気を表現してみた。金属製の歯車などピントの合った部分はリアルな質感だ。こちらの前ボケも後ろボケ同様ナチュラルで嫌味のないものである。
作例5
使用カメラ:Canon EOS 5D Mark IV 絞り値:F5.6 露出時間:1/2000秒 ISO感度:ISO100 WB:自動
遠景もこのレンズの得意とするところ。エッジが鋭くシャープネスの高い画像が得られる。ヌケもよいので、コントラストも良好。ディストーションの発生は見受けられず、水平垂直のある構造物の撮影にも適していそうだ。
作例6
使用カメラ:Canon EOS 5D Mark IV 絞り値:F4.0 露出時間:1/3200秒 ISO感度:ISO100 WB:自動
絞りは開放から一段絞ったF4としている。合焦部分の解像感は高い、コントラストも上々で、ヌケのよい写りである。周辺減光はわずかに残るものの、被写体によっては積極的に活かしてみるのもよさそうだ。
作例7
使用カメラ:Canon EOS 5D Mark IV 絞り値:F8.0 露出時間:1/640秒 ISO感度:ISO100 WB:自動
焦点距離100mmと言うと中望遠レンズに分類されることが多いが、被写体やアングルによっては望遠レンズ特有の圧縮効果がそれなりに得られることも。船溜りに漁船が密集している様子を表現してみた。
作例8
使用カメラ:Canon EOS 5D Mark IV 絞り値:F2.8 露出時間:1/200秒 ISO感度:ISO200 WB:自動
森のなかを歩いていると、赤い実をつけたヒイラギ系の植物に木漏れ日がスポットライトのように当たっていた。赤い実が浮き立つよう絞りを開放にし、さらに赤い実が白っぽくならないよう露出を切り詰めて撮影を行った。
作例9
使用カメラ:Canon EOS 5D Mark IV 絞り値:F5.6 露出時間:1/1000秒 ISO感度:ISO100 WB:マニュアル
夕刻、斜光を受け金色に染まるビル群にカメラを向けた。絞り値は解像感がもっとも期待できるF5.6。2隻の船の位置に留意しながらシャッターを切っている。色のにじみなど無く、画面四隅まできっちりと解像している。
作例10
使用カメラ:Canon EOS 5D Mark IV 絞り値:F5.6 露出時間:1/400秒 ISO感度:ISO100 WB:マニュアル
こちらも夕陽を浴びる高層ビル群。手前にあるコンテナを画面に入れることで奥行き感あるものとした。こちらも絞りはF5.6。画面周辺部の解像感の高さに加え、ディストーションの発生も感じられず、文句のない写りが得られた。
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