atx-i 11-16mm F2.8 CFは、AT-X 116 PRO DX IIの後継とするモデルである。AT-X 116 PRO DX IIは、フルサイズ判換算で17.6mmから25.6mm相当(キヤノンの場合/ニコンDXフォーマットでは16.5mmから24mm相当)とする画角を持ち、しかも開放F2.8通しとマニアをも唸らせるスペックで好評を博す。さらに、ピント位置が移動しても画角の変化が少ないことなどから映像関係者からも人気のあるレンズとなっていた。ただ、2012年の発売ということもあり、当時は最新であったデザインや操作性などさすがに時代に追いつかれた部分が散見されるのも事実。atx-i 11-16mm F2.8 CFは、これからを見据えカメラとのデザイン的なマッチングを考慮したレンズである。ちなみに、atx-iの「i」とはinteractiveとのこと。ここでは撮影者とレンズ双方向の対話を意味する。
atx-i 11-16mm F2.8 CFの基本的な光学系は、高次元でバランスのとれていた先代モデルのものを継承。当然トキナーが独自に開発した圧倒的な描写の要「P-MO非球面レンズ」や、2枚の低分散(SD)ガラス「FK03」などの搭載もこれまでと同様だ。唯一異なるのは、レンズ前玉に施された撥水コート。本モデルではより強力なものへと進化している。その写りと言えば、ズーム全域しかも画面周辺部までに及ぶ高いシャープネスや、歪曲収差の少なさなど描写特性は先代モデルを継承。ズーム全域で高い次元の描写が得られ、色収差の除去も徹底したものとしているのも同じである。超広角域をカバーする画角ゆえ強い点光源などが画面に入ってくることも少なくないが、ゴーストやフレアの発生も良好に抑えており、これまでどおり撮影条件を選ばないレンズに仕上がっている。
手ブレ補正機構は従来同様搭載されていないが、新たに内蔵するとなると現在の定評ある光学系を再構築しなければならず、さらに鏡筒が大きくなってしまうため、これはこれで賢い選択と言えるだろう。もちろんF2.8という明るい開放絞りも手ブレを抑えることに一翼を担うはずである。制御にGMRセンサー(高精度磁気センサー)を用いたAFスピードも従来同様高速で正確だ。ユーザーフレンドリーに思えるのは、フォーカスリングの回転方向である。用意されるマウントはキヤノン用とニコン用であるが、フォーカスリングの回転方向をそれぞれの純正レンズに合わせている。これによりそれぞれのカメラメーカーユーザーは違和感なくマニュアルフォーカスでのピント合わせが楽しめるはずだ。
ぐっと手に入れやすくなった価格も本レンズの魅力。カメラ初心者をはじめレンズの購入を考えているひとにとって次の交換レンズに相応しいコストパフォーマンスに優れた1本といえるだろう。今回の作例は、都市風景でまとめてみた。絞り開放のものはないが、本レンズの実力を知るには不足のないものと自負している。それではゆっくりとご覧頂きたい。
作例1
使用カメラ:Canon EOS 7D Mark II 絞り値:F11.0 露出時間:4.0秒 ISO感度:ISO100 WB:自動
ワイド端11mmの強い遠近感を表現に生かしてみた。裸眼で直接被写体を見たときの印象とは大きく異なるイメージの写真となり結果は思惑通り。超広角の世界が手軽に楽しめるレンズだ。
作例2
使用カメラ:Canon EOS 7D Mark II 絞り値:F8.0 露出時間:25.0秒 ISO感度:ISO100 WB:自動
カメラ位置が後ろに引けず、かつ被写体が目の前に大きく迫るようなシーンは、もっともこのレンズの得意とするところ。レンズの前にそびえ立つ高層マンションも広い画角によって余裕で画面に収めることができる。
作例3
使用カメラ:Canon EOS 7D Mark II 絞り値:F8.0 露出時間:15.0秒 ISO感度:ISO100 WB:自動
ネオンの青い光に照らされる船溜り。セットした焦点距離は12mm。絞りはF8ながら短い焦点距離のためほぼパンフォーカスとなっている。ゴーストやフレアの発生もよく抑えられている。
作例4
使用カメラ:Canon EOS 7D Mark II 絞り値:F11.0 露出時間:8.0秒 ISO感度:ISO100 WB:自動
今を象徴する超高層ビルと古くから存在する鳥居、この二つを主題にワイド端11mmによって画面を構成してみた。結果は、狙いどおりにユニークな写真になったと思う。画面周辺部の写りも上々だ。
作例5
使用カメラ:Canon EOS 7D Mark II 絞り値:F8.0 露出時間:10.0秒 ISO感度:ISO100 WB:自動
バスの車庫をブルーアワーの時間帯に狙ってみた。焦点距離はワイド端11mm、絞りはf8としている。画面両脇にビルが見えるが、ディストーションの発生は見受けられず、さらに画面四隅の写りもシャープだ。
作例6
使用カメラ:Canon EOS 7D Mark II 絞り値:F11.0 露出時間:13.0秒 ISO感度:ISO100 WB:自動
コンテナの並ぶ埠頭の奥に高層マンション群が見え、そのコントラストが面白くシャッターを切った。焦点距離はテレ端16mm。焦点距離の違いによる写りの変化は極めて少なく、高次元で高い描写を誇る。
作例7
使用カメラ:Canon EOS 7D Mark II 絞り値:F8.0 露出時間:13.0秒 ISO感度:ISO100 WB:自動
画面の左右に明るい光源があるが、フレアの発生は良好に抑えられており、シャープネスおよびコントラストとも高い結果が得られた。なかでも分かりやすいのは画面中央の鉄橋で、ディテールの再現性も良好だ。
作例8
使用カメラ:Canon EOS 7D Mark II 絞り値:F5.6 露出時間:1/1000秒 ISO感度:ISO100 WB:自動
クリアでヌケのよいレンズであるため、特に快晴順光の青空など青みが増したように思えるほど。さらにそのグラディーションも美しく、青みの薄い部分から濃紺の部分まで滑らかに階調が変化している。
作例9
使用カメラ:Canon EOS 7D Mark II 絞り値:F8.0 露出時間:1/250秒 ISO感度:ISO100 WB:自動
絞りはf8だが、焦点距離の短さからパンフォーカスとなっている。錆びた鉄の質感をリアルに再現しているが、これはこのレンズの解像感の高さによるものと言える。画面四隅の写りも不足を感じさせない。
作例10
使用カメラ:Canon EOS 7D Mark II 絞り値:F8.0 露出時間:1/400秒 ISO感度:ISO100 WB:自動
広角レンズの使い方のひとつとして、強い遠近を活用する方法がある。手前にある被写体にぐっと寄って画面に大きく入れ、背景は小さく写す。この写真もそのように写したもので、広角レンズらしい結果が得られた。
作例11
使用カメラ:Canon EOS 7D Mark II 絞り値:F8.0 露出時間:1/320秒 ISO感度:ISO100 WB:自動
露出を切り詰めることで陰影を強く意識したメリハリある写真となった。さらにディテールも緻密に再現している。使用した焦点距離は13mm。画面両端のピントの合った部分の解像感も高く、シャープネスの高い写りが得られた。
作例12
使用カメラ:Canon EOS 7D Mark II 絞り値:F5.6 露出時間:1/200秒 ISO感度:ISO100 WB:マニュアル
焦点距離をワイド端11mmに、遠近感の強い写真になるようカメラを縦位置に構えて撮影した。結果は目論見どおり。橋脚のボルトひとつひとつを繊細に再現しているのもこの作例の見るべきところだ。
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