atx-i 11-16mm F2.8 CF(以下atx-i 11-16mm F2.8)は、AT-X116 PRO DXⅡの後継機として、装いを新たにし2019年11月8日に市場に投入されたレンズだ。Tokinaに取材したところ基本設計は前作AT-X 116 PRO DXⅡを踏襲するものの構成しているすべてのレンズを素材から見直し、コーティングも独自のWRコートを新たに施してあるということであった。
レンズの外装は、同社のoperaシリーズに合わせた現代的なスタイルへと変更されているが、Tokina伝統のフォーカスクラッチ機能はそのまま引き継がれている。筆者はこの点にTokinaらしさを感じる。ズームリング、フォーカスリング共々トルク感も適切で、フォーカスリングはCanon EFマウント用、Nikon Fマウント用と回転方向をそれぞれのメーカーに合わせてある。
atx-i 11-16mm F2.8は、APS-Cサイズの撮像素子を搭載したカメラの専用モデルで焦点距離としては、11-16mmをカバーする超広角ズームだ。11-16mmという一見すると短めのカバー領域だが、35mm換算すると16.5-24mmと必要にして十分なカバー領域を有している。この一見すると短めのカバー領域、実はこのレンズの特徴でもある。設計時Tokinaがatx-i11-16mm F2.8に課したテーマが「全カバー領域の11mmから16mmまで安定した性能を発揮しつつも、可変f値ではなくF2.8通しの明るさで実現する」ということだった。言い換えれば、F2.8の明るさを保ったままおいしい部分をぎゅっと凝縮したレンズだと言えるだろう。
実写していて筆者が感じたatx-i 11-16mm F2.8の持ち味
実写していく中で感じたことは以下の通りだ。
1「コントラストの高さ」
2「少ないディストーション」
3「独特な青の発色」
以上の3点が実写していく中で感じたatx-i 11-16mm F2.8の持ち味である。
特にブルーアワーでの撮影では独特の撮り味がありTokinaブルーといわれる深い青の発色が楽しめるレンズであった。また、上述の設計の点で触れたようにおいしい部分を凝縮してあるレンズ故に、レンズの基礎体力(コントラスト、解像各種収差の低減などの光学性能)が高いため、ピクチャーコントロールを操作したときのレスポンスも良く手ごたえがある。そのため、カメラ内の撮影設定変更でも撮影者のイメージにより近い画が撮れるレンズでもある。因みにではあるが、今回テストで使用したカメラNikon D500とatx-i 11-16mm F2.8との組み合わせでは、周辺光量の補正(Nikon D500ではヴィネッティング)と倍率色収差補正は有効で、撮影時適切に補正をしているようであった。
では、さっそく写真とともに解説していこう。
コントラスト
使用カメラ:Nikon D500 絞り値:F9.0 シャッタースピード:1/1600 ISO感度:ISO200 焦点距離:13mm
コントラストが高いということは「画にメリハリが出る」ということになる。黒のしまりが良く、また光るところはしっかり輝いている。高コントラストである場合、いわゆる「ヌケ」が良くなることから画全体が薄皮を一枚剥いだようなスッキリとした印象になる。
使用カメラ:Nikon D500 絞り値:F6.3 シャッタースピード:1 ISO感度:ISO640 焦点距離:16mm
また、atx-i 11-16mm F2.8は独特な青の発色を見せる。この青は、「トキナーブルー」と言われる深く渋みのある独特な青でTokinaレンズらしい青の発色である。
使用カメラ:Nikon D500 絞り値:F6.3 シャッタースピード:1/125 ISO感度:ISO200 焦点距離:12mm
コントラストが高いと、こうした空に張り出した雲の姿も「写真」にしてくれる。焼けていく空、流れていく雲を起伏感溢れた画で再現してくれる。この画はタイムラプスでも撮影しているので合わせてそちらもご覧いただければありがたい。
カラーグラデーション
使用カメラ:Nikon D500 絞り値:F5 シャッタースピード:1/50 ISO感度:ISO400 焦点距離:11mm
マジックアワーやブルーアワーでの撮影時には、非常に豊かなカラーグラデーションを見せてくれる。夕陽焼けがのこる赤から、宵の青へと変化していく空をしっかりと再現している。
解像
使用カメラ:Nikon D500 絞り値:F8 シャッタースピード:1/1000 ISO感度:ISO100 焦点距離:11mm
解像のピークはF9もしくはF10辺りであろう。この画はF8で撮影しているが、ここまで絞れば手前から奥までしっかりと解像する。また、像の立ちは早く、一段絞ったF4から立ち上がってくる。
ゴースト
使用カメラ:Nikon D500 絞り値:F11 シャッタースピード:1/1000 ISO感度:ISO400 焦点距離:16mm
大口径超広角ズームレンズともなればゴーストが発生してしまうことは致し方ないところだ。対角線上に強い点光源を持っていきF16やF22まで絞ると、それなりに姿を現してくるのだが、デジタル時代のレンズ全般F16やF22まで絞ると回折現象が顕著に現れるため筆者はそこまで絞ることが少ない。実際、筆者が使った範囲では画を台無しにしてしまうゴーストは現れなかった。
使用カメラ:Nikon D500 絞り値:F8 シャッタースピード:1/1250 ISO感度:ISO160 焦点距離:16mm
使用カメラ:Nikon D500 絞り値:F8 シャッタースピード:1/320 ISO感度:ISO160 焦点距離:11mm
ディストーション
使用カメラ:Nikon D500 絞り値:F2.8 シャッタースピード:1/20 ISO感度:ISO3200 焦点距離:13mm
真っすぐなものを真っすぐ描写することは思いのほか難しい。ディストーションとコントラストは光学設計上トレードの関係にありディストーションを抑えこもうとするとコントラストが落ちてしまう。逆もまた然りでこのバランス加減が非常にむつかしい。atx-i 11-16mm F2.8は、写真のように真っすぐなものをキチンと真っすぐに描写する。また、上述のようにコントラストも高いため、atx-i 11-16mm F2.8は高い次元でディストーションとコントラストをバランスさせていると言えるだろう。ちなみにカメラ側からのディストーション補正はかけられていないため光学のみでディストーションの補正をしている。
使用カメラ:Nikon D500 絞り値:F2.8 シャッタースピード:1/125 ISO感度:ISO1250 焦点距離:16mm
接近戦でもディストーションが少ないということが画に影響してくる。最短撮影距離の30cm付近で撮影した一枚だが、接近戦で撮影した場合ディトーションが大きいレンズだと手前に置いたランプが大きく歪んでしまう場合がある。しかし、atx-i 11-16mm F2.8はランプが大きく歪むことなく、また奥に向かって伸びていくワイヤーも真っすぐに描写している。
ナイト撮影
使用カメラ:Nikon D500 絞り値:F2.8 シャッタースピード:13 ISO感度:ISO6400 焦点距離:11mm
F2.8の明るい超広角ズームであれば、ナイトの撮影にもしばしば用いられる。活躍の場の一つである星空の撮影だが、atx-i 11-16mm F2.8はF2.8の明るさを活かし、しっかりと星を撮影することができる。サジタルコマフレアであるが、画面隅に現れてはくるものの、その数はさほど多くはない。気になるのであれば1/3段~2/3段絞ってやるとかなり収まってくる。この後、この星空をタイムラプスで撮影しているのでそちらも併せてみていただければ幸いだ。
使用カメラ:Nikon D500 絞り値:F2.8 シャッタースピード:4 ISO感度:ISO400 焦点距離:11mm
月光の優しい光の中でもatx-i 11-16mm F2.8はf2.8の明るさを活かし、しっかりと光の情報を撮像素子に送ってくる。
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