私が使うatx-mシリーズのレンズはこれで3本目になります。APS-Cサイズなので小さく取り回しが良いことから、普段から持ち歩く事が多いのですが、スナップショットをするのにちょうど良いこのシリーズのレンズの魅力はなんといっても、シットリとしたウェッティな描写だと私は思います。イタリアに長く住んでいたことがありヨーロッパの空気感に親しんでいたので、このシットリとした描写を一番欲しているのです。今ではカメラバックになくてはならないレンズとなっています。旅の写真を確実にアップグレードしてくれ、ムービーに使ってもスムーズなAFや美しいボケはシネマティックな表現がしやすいので、スチル、ムービーのどちらに使っていても楽しいと思えます。
私の仕事は広告写真家なのですが、実は撮影対象は多岐にわたります。それはイタリア時代にファッション、建築、商品、食、人物、スポーツなど何でもこなせないと困る事が多かったので、気が付けば広告のクオリティーで全てのジャンルを写すようになっていました。その中でも旅写真は雑誌の依頼で掲載していただくことも多く、以来最も好きで最も得意とするジャンル一つとなりました。
今回、Tokinaの担当者からatx-m 11-18mm F2.8 E発売にあたり、「作例を撮ってみませんか?」とのご提案をいただき、ちょうど仕事でストックホルムへの出張が決まっていたこともあり、二つ返事で引き受けました。 ストックホルムはスカンジナビア特有の気候からなのか、夏は晴れて気持ちのよく過ごしやすい天候が続きますが、ちょうど9月下旬くらい(今まさにこの季節です)から曇りがちな日々が続き、冬は雪もおおく寒い日が4月くらいまで続くようです。少し寒くなって来たこの時期、シットリとした描写のatx-mシリーズのレンズにはまさにうってつけのシチュエーション。なのでストックホルムに到着するなりatx-m 11-18mm F2.8 Eを持ち出して街を散策しました。ソニーのαにatx-m 11-18mm F2.8 Eはよくマッチしたコンパクトな設計なので、手にしている事が気にならず気持ち良くパシャパシャと目に飛び込んでくる景色をドンドン切り取っていけます。撮影はリズムが大切なので、軽く小さく取り回しがいいこのレンズをすぐに気に入りました。
作例1
11mm 4.0秒 (f/22) ISO100
スカンジナビアの広い空を余すことなく写し撮ることができるのは11mmという超広角レンズのおかげ。絞りを最大まで絞っても三脚を使って撮影をすると解像感があり、入江のようになっているストックホルムの海が鏡面のように空を映して不思議な世界観を演出できました。
作例2
11mm 1/25秒 (f/2.8) ISO100
被写体として選んだ車だけではなく、後ろの街並みも広く入れ込めることができるのは流石の超広角レンズ効果。まだ少し暗めの早朝であったが、手持ちでの撮影が楽しめるのはF値が2.8だからです。
作例3
18mm 1/125秒 (f/2.8) ISO100
斜めに切れたトンネルの入り口をわざと入れ前ボケさせて、トンネルの先に続く小道に佇む紳士にピントを合わせると、F2.8で撮影しても奥までずっと続く道かのように被写界深度を深く表現できる。
作例4
18mm 1/400秒 (f/5.6) ISO100
F5.6に絞れば十分な被写界深度が得られるので、街並みを簡単に美しく撮影できる。ズームレンズなので写す対象物の比率を加減しやすいのもこのレンズの魅力の一つです。
作例5
11mm 1/2500秒 (f/2.8) ISO100
教会をパーススペクティブにデフォルメして撮影。手前に広がる公園の木々をわざと入れ込むことで、自然に囲まれた場所にある教会だと表現できました。超広角の11mmという画角が可能にした一枚です。
作例6
11mm 1/60秒 (f/5.6) ISO100
ストックホルムの旧市街にあるオレンジ・ジュース屋さん。ショーウィンドーに大量に並ぶオレンジとジュースを搾った後の搾りかすのオレンジを他の要素を排してギリギリまで寄って画面一杯に写し込めるのが気持ちいい。
作例7
11 mm 1/500秒 (f/2.8) ISO100
ストックホルム地下鉄中央駅近くで道路にチョークアートする若者と奥で道を歩く人並などをとっさにスナップしてみました。躍動感を出しつつ街の情景も写し込める画角の広さを面白く表現ができるのもこのレンズの取り回しの良さです。
作例8
11mm 1/20秒 (f/2.8) ISO200
1888年から100年以上続く歴史ある市場。この市場は高級住宅街にあることから高級な食品を扱っているのが特徴なので日が暮れかかったブルーモーメントの時間帯を狙って高級感漂う感じに撮影しました。大きな建物で、路地は狭く全体を写すのが難しい場所ですが、11mmの画角がそれを可能にします。
作例9
11mm 1/30秒 (f/2.8) ISO800
せっかくストックホルムに来たのだから、旧市街のガムラスタンにあるノーベル博物館(Nobel Prize Museum)を撮影。ノーベル賞設立100周年を記念して2001年春に開館したこのミュージアムには椅子の裏に残された受賞者の直筆のサインが飾られていたりと見どころ満載です。
作例10
11mm 2.0秒 (f/2.8) ISO400
ストックホルムは都会なので思っていた以上に明るく、星空を撮ることが難しいのですが、どうにか撮影できる場所を見つけて撮影。11mmの超広角ならではの広がりのある景色と満天に広がる星を解像感たっぷりに写せました。
作例11
13mm 1/30秒 (f/2.8) ISO1600
atx-m 11-18mm F2.8 Eの特徴でもある最短撮影距離19cmの領域を使って料理を撮影してみました。これが広角かと思えるほど、マクロレンズのような撮影ができます。レストランなどの室内で撮影を地明かりですると影にならないように気を付ける必要がありますが、何よりここまで写せることに驚きが隠せません。
作例12
最後にちょっと面白い比較例の写真を紹介しましょう。
11mm 1/10秒 (f/5.6) ISO100
11mm 1/30秒 (f/2.8) ISO100
せっかく寄れるのだから手前に木の柵を写して、奥にレストランを配置。
最初の写真はF5.6に絞って見え方がちょうどよくなるように撮影。
2枚目はF2.8の開放にして撮影したのですが、見比べるとわかるように少しボケ過ぎていて、何だかわからなくなってしまい、私の好みではありません。
3枚目の写真は手前の木の柵をぼやかして奥のレストランにピントを合わせてみた写真ですが、手前ボケの写真だとそれほどは面白いと思える効果が出ないようなので、オススメは背景をぼやかした方がこのレンズの効果が発揮されるように私は思います。
背景の画角をこれだけ広く写せますので、新しい表現で撮影が楽しくなるレンズなのは間違いありません。
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