「56ミリ単焦点レンズ」と聞くと、ほとんどの人がここぞというときに使う重くて大きいレンズをイメージするのではないか。しかし、トキナーの atx-m 56mm F1.4 X はそんな固定概念を打ち破る次世代レンズなのである。
ミラーレス専用の設計とし、解放値をF1.4までにおさえ、かつ必要な性能を見極めてそれ以外を極限までそぎ落とすことで、大幅な小型化と軽量化を実現している。
作例1

カメラ X-T4 1/105 F1.4 ISO160
柔らかくて上品で、繊細な表現を得意とするレンズだ。
レンズの外径は、あのコンパクトな純正レンズ XF 35mm F1.4 R とほぼ同じ。といえば、そのコンパクトさがよりリアルに伝わるであろう。そのため、付けっぱなしにしていても邪魔にならないサイズ感なのだ。
小型軽量レンズゆえに、旅行やスナップ撮影など荷物を減らしたい場合はもちろんのこと、現場の温度感が重視される状況であったり、刻々と明るさや空の表情が変わる時間帯での撮影でも、素早いレンズ交換が可能なので重宝する。外した atx-m 56mm F1.4 X をとりあえずポケットに放り込んですぐに次の撮影を続行することも可能だ。
作例2

色乗りが良く、フィルムシミュレーションとの相性も良い。水面の模様の描写も見事である。
描写は至ってナチュラル。色乗りもしっかりしており、Xシリーズ特有のフイルムシミュレーションの色を余すことなく表現してくれる。解放時の描写はキレキレというわけではないが、髪の毛やまつ毛の一本一本をしっかり描写してくれるので、優しい風合いで撮ることができる。
作例3

優しい描写ながらも、髪の毛やまつ毛の一本一本をきちんと描写してくれる。
そして56ミリという焦点距離帯だと気になるのが解放時のボケ味だ。解放時のボケを生かした撮影のためにこのレンズをチョイスするといっても過言ではないだろう。atx-m 56mm F1.4 X のボケは雑味がなく素直でなだらかに溶けるようにボケていくので、被写体を問わず解放で撮りたくなるようなレンズだ。
作例4

被写体にこのぐらい近寄ったときの、なだからに溶けていくボケ味が真骨頂である。
解放では丸ボケがさすがに若干口径食気味になるが、ボケ味が上品なためさほど気にはならない。前ボケも邪魔になるような描写ではないので絵作りが楽しくなる。オートフォーカスも早いのでポートレートのみならず、スナップ撮影はもちろんのこと、動画撮影との相性も良い。
作例5

周辺にいくにつれてボケの形は口径食気味になるが、ボケの描写自体がスムーズなので気にはならないだろう。
作例6

手前の花と奥の雲ともに解放での描写だが、素直なボケ味なので積極的に絵作りに活用できる。
解放時には光の入り具合でパープルフリンジが発生することもある。その場合は絞るか、光の入り具合を変えればよい。必要であれば現像ソフトでパープルフリンジを除去してもよいだろう。
外装にも抜かりはない。金属を多用した筐体と無駄を省いたシンプルなデザインは、思わずレンズを握りしめてその質感を肌で直接確認してみたくなるような存在感がある。
作例7

曇りの低コントラストの撮影でもしっかりとした描写をしてくれる。手前の木の前ボケもうるさい感じはない。
フォーカスリングはトルク感がほどよく、マニュアルフォーカスも十分にフォローしてくれる。レンズの根本側にある絞りリングは無段階調整で、従来のatx-mシリーズと比較するとトルクが軽くなっており、スムーズに回すことができる。さらに最大絞り値の16でクリック感があり、そこからさらに回すとオートになるという仕組みになっているため、数値を見ていなくても感覚で操作がかのうだ。
作例8

刻一刻と空の色や明るさが変わる現場で、素早くレンズ交換しながら撮った一枚。こういう状況の時にも軽量小型レンズは重宝する。

[著作権および画像利用についてのご注意]
本スペシャルページで提供している「実写生データ」の著作権は、撮影者である 浅岡 省一氏に、使用権は 株式会社ケンコー・トキナー に帰属しています。著作権所有者および 株式会社ケンコー・トキナー への事前の承諾を得ること無しに、その全てまたは一部を、いかな る形式、いかなる手段によっても、複製・改変・再配布・再出版・表示・掲示または転送することは禁じられています。
本スペシャルページの「実写生データ」は、お客様のコンピュータースクリーン、もしくはお客様ご自身のプリンターまたは プリント手段等による、私的な画像確認での利用に限ってのみ、ご利用いただけます。