Tokina AT-X 11-20mm F2.8 PRO DX(以下 AT-X11-20mmとする)は、焦点域11-20mmの超広角ズームレンズで、同社のAT-X116 F2.8 PRODX(焦点域11-16mm)で要望が多かった「望遠域をもう少し伸ばしてほしい」というユーザーの声に応えAT-X-116 F2.8 PRO DXの持つ高解像、高コントラストはそのままに設計をすべて見直し望遠域を20mmまで伸ばしたレンズだ。
レンズの特徴としては、一連のTokina広角ズームレンズらしく独特の深い青の発色をするレンズで大きく空を入れた画や湖、海などの撮影では味わい深い独特な一枚になる。また、歪曲收差が非常に少なく縦横軸にくわえ斜めのX軸もほとんどたわむことなく再現する。今回、冬の風景撮影で様々なシチュエーションを撮影したが、どの作例も周辺の流れも少なく解像も良好で、遠景での冬の枯れ木の解像や、大きく空を入れ込んだ画では際立ったコントラストの高さを見せてくれた。また、軸上、倍率色収差も良好に抑えられていた。
以下作例とともに解説していこう。
目次 [開く]
- 作例01:深い青の発色① []
- 作例02:深い青の発色② []
- 作例03:カラーバランスとコントラスト再現① []
- 作例04:カラーバランスとコントラスト再現② []
- 作例05:カラーバランスとコントラスト再現③ []
- 作例06:解像と色収差① []
- 作例07:解像と色収差② []
- 作例08:解像と色収差③ []
- 作例09:広角レンズらしいパースを効かせた画作り① []
- 作例10:広角レンズらしいパースを効かせた画作り② []
- 作例11:広角レンズらしいパースを効かせた画作り③ []
- 作例12:歪曲收差① []
- 作例13:歪曲收差②[]
- 作例14:歪曲收差③ []
- 作例15:F2.8のアドバンテージ① []
- 作例16:F2.8のアドバンテージ② []
- 作例17:F2.8のアドバンテージ③ []
深い青の発色①
使用焦点距離:14mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/8, シャッタースピード:1/500秒, ISO感度:ISO-100
日光中禅寺湖で撮影した一枚だ。
Tokinaの広角ズームレンズは独特の深い青の発色をする。画面下部の湖の深い青はTokinaレンズらしい独特の青の発色だ。この、いわゆる「トキナーブルー」を強く発色させるには、光の条件などによっても変わってくるが適正露出より-1/3~-1段程度落とすことにより、より強く発色させることができる。
深い青の発色②
使用焦点距離:11mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/11, シャッタースピード:1/30秒, ISO感度:ISO-100
夕日が沈んだあとに訪れる青き時間「ブルータイム」の発色も見てみよう。紫かかった空の色と深い青の発色が見て取れる。これは、シアンの系列の発色が強いレンズでは出にくい色でもある。
カラーバランスとコントラスト再現①
使用焦点距離:20mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/5.6, シャッタースピード:1/640秒, ISO感度:ISO-200
かなり冷え込んだ朝、日の出の空を撮影した。太陽はサンピラーを伴い地平線に現れ、美しいグラデーション見せてくれた。カラーグラデーションの再現は秀逸で抜けの良い夜明けの空を再現している。
カラーバランスとコントラスト再現②
使用焦点距離:11mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/8, シャッタースピード:1/800秒, ISO感度:ISO-100
続いて日中の青空、山並みとロープウェイを撮影した。非常にヌケがよくコントラストの高さが伺える一枚である。また、色の縁どりいわゆるフリンジが発生しやすいロープウェイの電線やゴンドラの回りに色のはみ出しは見当たらず秀逸に色収差が補正されていることがわかる。
カラーバランスとコントラスト再現③
使用焦点距離:20mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/8, シャッタースピード:1/320秒, ISO感度:ISO-200
撮影条件の悪い中でのグラデーションとコントラスト再現も確認した。かなり強い吹雪の中、太陽の光がほとんど回らない状態でも「雪丘と吹雪」の境、「白の中の白」と段階的なグレーのグラデーションを良く再現している。
解像と色収差①
使用焦点距離:20mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/8, シャッタースピード:1/50秒, ISO感度:ISO-100
解像は遠景、近景ともに秀逸に解像している。朝日を浴びる山並みと冬の枯れ木を撮影したのだが画全体をしっかりと解像している。ここで筆者は少し意地悪なことをしてみようと思った。風景写真の撮影では当然あるシチュエーションだが、レンズにとっては結構しんどいシチュエーションだ。
①光の当たるところと当たらないところが一つの画にある。
②画面端に枯れ木を配置している。
③遠景で山の稜線に細かい立ち木が並んでいる。
など解像力のないレンズでは滲んで溶けてしまうシチュエーションをわざと選んでみた。
結果は秀逸で手前の林の細かい枝はキチンと解像され、また稜線の立ち木も姿がはっきりとわかる。また、陽の当たっていない山陰の部分にある木々もしっかりと解像されていた。
オチとしては、撮影中筆者が気がつかなかった電線が画面中央部分にしっかりと伸びておりその部分も見事解像され拡大してからようやく気がついた事であろう。こんなところに電線があったとは・・・
解像と色収差②
使用焦点距離:11mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/8, シャッタースピード:1/800秒, ISO感度:ISO-200
次に周辺の解像を重点的に見てみよう。画面上部の端と端、レンズ開発者は最も気になるところでもある。この部分を拡大してみると大きな流れもなく滲みやほとんど見られずしっかりと解像がなされている。また、上述のロープウェーの件でも述べたが青空をバックにした撮影の場合、木の枝のように細かいものの周辺にはフリンジが発生しやすい。ましてやそれが周辺部分ともなれば余計に発生しやすくなるのだが、拡大しても確認することができなかった。繰り返し述べることになるが秀逸に色収差が補正されていることもわかる。
解像と色収差③
使用焦点距離:11mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/8, シャッタースピード:1/320秒, ISO感度:ISO-200
細かな解像の積み重ねは、被写体をしっかりと記録し、その良さと撮影者の意図をしっかりと伝えてくれる。
とある神社でみた大きな杉の木である。木から言葉にできぬ大いなる力を感じ筆者はシャッターを切った。神代杉と言われる木の細かなディティールの再現は、後にPCの画面で確認している時に撮った時の気持ちも再現してくれる。この幹のゴツゴツした筋や力こぶのような節からは遥かなる時間を超えてきた「凄み」のようなものを感じる。これは上述したとおり細かい解像を積み重ね、しっかりとディティールを再現しているからこそで感じることである。これも高解像のレンズでなければできないことの一つだ。
ちなみに、右下の隅に入っているのは、レンズを柵の間に突っ込んで撮影したため映り込んでしまった柵の一部である。
広角レンズらしいパースを効かせた画作り①
使用焦点距離:15mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/8, シャッタースピード:1/50秒, ISO感度:ISO-100
モーガンの3ホイラーである。ボンネットはなくエンジンはむき出しの状態の車で、3ホイラーという名の通り後輪は1つの3輪の車である。
こうした被写体にググッと寄り天井までを大きく入れ込むことができるのは広角レンズならではの撮り方である。エンジンのメッキ部分に夕陽が当たり、色がはみ出しそうな条件にも関わらずここでもフリンジが出てこなかったことも報告しておこう。
撮影協力 ガレージツインカム フジマウンテンラリー事務局
広角レンズらしいパースを効かせた画作り②
使用焦点距離:11mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/8, シャッタースピード:1/400秒, ISO感度:ISO-200
もう一枚、パースを効かせた画である。藁葺き屋根の古民家をあおり気味で撮影した一枚である。右上部の隅にとなりの屋根が見えているが、これは構図構成をいい加減にした筆者の失敗・・・ではなく色収差を出すことはできないかと思いわざと入れ込んでみた。
意地の悪いやつと言われてしまいそうだがやってしまったのである。曇り空に雪の境界線、しかもレンズの端とくれば並のレンズなら色の縁取り、いわゆるフリンジが現れるシチュエーションである。しかし、結果はご覧の通りフリンジが現れることはなかった。
さて、被写体となった家屋は、福島県にある大内宿の山形屋さんである。僕はこの山形屋さんが好きで大内宿を訪れると必ずお邪魔する。今回はご好意で蕎麦打ちをしているところを撮らせていただけることになった。
撮影協力 山形屋
広角レンズらしいパースを効かせた画作り③
20mmの画
使用焦点距離:20mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/4, シャッタースピード:1/160秒, ISO感度:ISO-500
AT-X11-20mmの望遠端20mmはこうしたスナップ撮影もこなしてくれる。衛生面の問題があるのと、作業のお邪魔にならないようある程度の距離を保つ必要があるため、望遠端20mmまでズームし撮影を行った。広げた腕を画面ほぼいっぱいに入れ込んだ画は広角レンズらしくパースが効いており、またググッと寄った画は迫力がある。また、拡大して確認すると職人さんの右目(向かって左目)は、きっちり黒目まで解像がなされていた。
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打ち終わったお蕎麦も望遠端20mmで撮影。最短撮影距離28cmは非常に近くまで寄って撮影できるためテーブルフォト撮影にも使うことができそうだ。
歪曲收差①
11mm
使用焦点距離:11mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/10, シャッタースピード:1/400秒, ISO感度:ISO-200
歪曲收差②
15mm
使用焦点距離:15mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/10, シャッタースピード:1/250秒, ISO感度:ISO-200
歪曲收差③
19mm
使用焦点距離:19mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/10, シャッタースピード:1/200秒, ISO感度:ISO-200
ご覧の通り縦横X軸ともに非常に秀逸に補正がなされている。補正がキチンと成されていないレンズである場合11mmの画でレンズの端に配置した竹竿が丸くたわんでしまったり19mmの画が4隅に引っ張られた感じになってしまうのだが、AT-X11-20mmはそうした違和感がなく歪曲収差を良好に補正している。
注意*望遠側の歪曲收差作例で望遠側が20mmではなく19mmになったのは、通行人の方が、撮影が終わるのを止まって待っていてくださったため慌てて撮影してしまい、結果ズームリングを回しきらずに撮影した筆者の問題であり何か意図があったわけではないことを報告しておきたい。
F2.8のアドバンテージ①
使用焦点距離:11mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/2.8, シャッタースピード:13秒, ISO感度:ISO-6400
見上げれば満点の星空が広がっていた。
F2.8という明るさは、街明かりが入り込む条件でありながらもしっかりと天の川も映しこんでくれる。ちなみに撮影時辺りは真っ暗で肉眼では木の位置は把握できないほど真っ暗な状態にあったが、AT-X11-20mmはキチンと情報を撮像素子に送ってくれていた。木の枝も拡大して見てみるとノイズリダクションに負けることなくしっかりとエッジが立っており撮像素子へ送っている情報の質の良さがわかる。これは透かしの良い明るいレンズでしかできないことだ。
F2.8のアドバンテージ②
使用焦点距離:11mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/4, シャッタースピード:15秒, ISO感度:ISO-3200
F2.8のアドバンテージ③
使用焦点距離:11mm カメラ:Nikon D7100, 絞り値:f/2.8, シャッタースピード:5秒, ISO感度:ISO-6400
昨今のデジタル一眼レフの進歩は素晴らしく、一頃に比べ高感度の撮影を躊躇なくできるようになった。高感度 + 明るいレンズは、以前ではできなかった夜の雲を止めて撮るといったことを可能にし、ナイト撮影の幅を広げてくれた。
夜空の雲の流れるスピードや月明かりの明るさなど撮影条件にもよるが、F2.8通しの明るいレンズ+高感度の撮影は、「見た目に近い夜空」と「目で見ることのできない夜空」の両方を撮影することができるのである。これは大きなアドバンテージだと言えよう。
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