opera 16-28mm F2.8 FF(以下、opera 16-28mm)は、フルサイズ対応の広角ズームレンズとして君臨してきたAT-X 16-28 F2.8 PRO FX(以下、AT-X 16-28)の後継モデル。AT-X 16-28の光学系を受け継ぎつつ、キモとなる「P-MO非球面レンズ」を新規作成し、精度を大幅にアップすることで光学的にブラッシュアップ。さらに外装デザインを一新。最新の一眼レフカメラとのマッチングが図られている。
AT-X 16-28が発売されたのは2010年で、ズーム全域においてF2.8通しでありながら手が届きやすい価格もあいまって好評を博した。2010年当時と現在とではレンズを取り巻く環境も大きく変化。カメラの高画素化はさらに進み、レンズに求められる性能はますますシビアになってきている。高画素環境下ではこれまで見えなかったものが見えてしまうために、作りが粗いレンズでは表現力が限定されてしまうのだ。
話をopera 16-28mmに戻すと、AT-X 16-28の光学系を継承していることは好意的に捉えている。光学系のリニューアルを期待する方の気持ちも分かるが、バランスの取れた光学系をあえて崩す必要はないと考えるからだ。また手ぶれ補正機構の搭載を求める声も多いだろうが、補正光学系を追加するとF値が低下しやすくなることは他社製品で実証済み。さらにF4では表現力に制約が生じてしまうことも大きな問題である。opera 16-28mmは光学的に補正が困難な歪曲収差の少なさとボケの美しさという点において、AT-X 16-28からそのDNAを継承。デザインが変更されたことでフォーカスクラッチやズームリングの操作感も向上している。
価格的にもAT-X 16-28と同様に現実的な価格が提示されていてお財布にも優しい。
それではopera 16-28mmで撮影した作例を見ながら、その実力について掘り下げてみたい。
目次 [開く]
作例01
使用カメラ:Canon EOS 6D Mark Ⅱ、絞り値:f/4.5、シャッタースピード:1/80秒、ISO感度:ISO-1000、露出補正-1.67EV、焦点距離:28mm
28mmでライブビューを使いローアングルから撮影した。画面手前に折り鶴を入れているがF4.5でもきれいにぼけ、画面全体に奥行きが出せた。またガラス越しながら人形の顔はシャープに写り、解像力の高さが確認できる。ワイドズームの望遠端は「おまけ的」な要素が強い製品もあるが、opera 16-28mmはあえて望遠側を28mmに設定することでズーム全域での高画質化を実現。1本で何通りもの使い方ができる。
作例02
使用カメラ:Canon EOS 6D Mark Ⅱ、絞り値:f/8.0、シャッタースピード:1/250秒、ISO感度:ISO-100、露出補正-0.3EV、焦点距離:20.0mm
伊東の名所である東海館はレトロな雰囲気の建物が魅力だが、ここは解像力を試すにはもってこいの場所。細かい松の葉の描写を見ればレンズの性能が一発で分かるからだ。ベタッと見えるならば解像力不足を意味し、カリッとしていればカメラの性能を引き出せていることを示す。もちろんopera 16-28mmは後者であり、瓦の細部や板の質感まで伝わってくるほどのキレがある。発色性能も申し分がなく、すべての色合いを忠実に再現している。
作例03
使用カメラ:Canon EOS 6D Mark Ⅱ、絞り値:f/11.0、シャッタースピード:1/100秒、ISO感度:ISO-100、露出補正-1EV、焦点距離:28mm
望遠端の28mmは絞って使うと力強さがぐっと増し、まるで単焦点レンズのようなキレを見せる。この撮影ではピクチャースタイルのシャープネス設定から「細かさ」と「しきい値」を小さくして被写体のディティールの再現性を重視しているが、木々の細かい葉まで解像してカメラ側の設定に敏感に反応。岩場の描写もリアルだ。また海の透明感を引き出せているのはカラーバランスの良さが大きな影響を与えている。
作例04
16mmならではのワイド感と遠近感を生かした1枚。画面上に映り込んでいる空は、ほとんど真上だ。ここで注目したいのは樹木に対するシャープネスの高さに加えて、空の発色傾向にある。イエローに転んでしまうことなく青空のヌケが良いのは、カラーバランスがニュートラルである証。SDガラスが有効に作用して画面端の色収差を良好に補正しつつも、色収差補正の副作用である色転びも抑えているのだ。
使用カメラ:Canon EOS 6D Mark Ⅱ、絞り値:f/8.0、シャッタースピード:1/200秒、ISO感度:ISO-100、焦点距離:16mm
作例05
使用カメラ:Canon EOS 6D Mark Ⅱ、絞り値:f/8.0、シャッタースピード:1/640秒、ISO感度:ISO-100、露出補正-0.7EV、焦点距離:16mm
打ち寄せてくる波は足元ギリギリの距離で、このカットの直後に靴はびしょ濡れになった(笑)。強い遠近感が発生するのが16mm最大の特徴で、標準レンズではこの迫力は絶対に出せない。広角側を使いこなすには、被写体と背景の距離感を意識して構図を考えるといい。画面の端まで解像力が衰えておらず、波頭や背景の岩肌まで鮮明。半逆光の状態だがゴーストやフレアーもなく、暗部の締りも良好である。
作例06
使用カメラ:Canon EOS 6D Mark Ⅱ、絞り値:f/2.8、シャッタースピード:1/4000秒、ISO感度:ISO-160、露出補正+0.7EV、焦点距離:28mm
外部ストロボをハイスピードシンクロさせて撮影した。「広角ズームは絞って使うのでF2.8は不必要」という声もあるだろうが、F2.8の明るさがあるからこそ被写界深度が浅くなり、背景から主題を分離できる。総じて被写界深度が深い広角系レンズでの「1段の差」は予想以上に大きい。フォーカス駆動制御のGMRセンサーによってピント精度も高く、合焦速度にもなんら不満はなかった。背景のボケは単焦点レンズを彷彿とさせるが、安価な単焦点レンズよりもボケはきれいだ。
作例07
使用カメラ:Canon EOS 6D Mark Ⅱ、絞り値:f/8.0、シャッタースピード:1/80秒、ISO感度:ISO-100、露出補正-1.3EV、焦点距離:28mm
広角端でも歪みの少ないレンズだが、28mm望遠端でもご覧のように歪みは少ない。また空のグラデーションや水面への映り込みがきれいに描写されているのは、前出したカラーバランスの良さによるもの。DCモーター駆動だが減速ギアを含めたユニット全体が密封されているので、フォーカスは静かで水鳥に近づいても逃げる様子はなかった、また薄暗い条件でもF2.8の明るさによってファインダー内はクリアに見え、水鳥に合わせたピントをはっきりと確認できた。
作例08
ビルの吹き抜けを縦位置で一気に写し込んだ。このようなシーンでは手前の椅子が流れやすく、大きく絞らなくてはならないレンズは少なくない。しかしopera 16-28mmは全域で解像力が安定しているため、必要な被写界深度だけを考えて撮影すれば問題ない。窓ガラスの縁にも色収差はほぼ確認できず、ハイライトからシャドーまでのつながりも良好。そもそも広角レンズはぶれにくいので、この程度の明るさなら手ぶれ補正がなくても十分だ。
使用カメラ:Canon EOS 6D Mark Ⅱ、絞り値:f/8.0、シャッタースピード:1/40秒、ISO感度:ISO-125、露出補正-1.0EV、焦点距離:16mm
作例09
使用カメラ:Canon EOS 6D Mark Ⅱ、絞り値:f/8.0、シャッタースピード:4.0秒、ISO感度:ISO-200、露出補正-1.0EV、焦点距離:16mm
青の発色に優れたopera 16-28mmは夜景撮影も得意分野のひとつ。たんに空色が鮮やかに発色するだけでなく、他のレンズと比較して色に深みが出ることが特徴である。強い光源があちらこちらにあるがフレアーやゴーストもなく、光源からの光条がきれいに描写されている。また歪みが少ないために横断歩道のラインをまっすぐに描写することができ、ダイナミックな画面構成に安定感を与えている。
作例10
このカットを見れば、いかに歪曲収差が少ないかが一目で分かるはず。画面の端には窓の枠や建物の輪郭が写っているが、広角ズーム特有の樽型の歪みはほぼなく、直線がきれいに描写されている。後処理で歪み補正を行うと視野が狭くなってしまいイメージが変わってしまうこともあるが、opera 16-28mmでは後処理を必要としないために、ファインダーやライブビューで見たままの範囲が写せて、画面の端などにポイントを置くこともたやすい。
使用カメラ:Canon EOS 6D Mark Ⅱ、絞り値:f/8.0、シャッタースピード:1/5秒、ISO感度:ISO-400、露出補正-1.0EV、焦点距離:16mm
作例11
使用カメラ:Canon EOS 6D Mark Ⅱ、絞り値:f/8.0、シャッタースピード:1.6秒、ISO感度:ISO-100、露出補正-1.0EV、焦点距離:16mm
天を貫くようにツインタワーがそびえる名古屋駅前。地上高約200mのビルを横位置で写せるのは16mmの画角があってこそ。空の発色の良さは他の夜景写真と同様だが、この日は寒かったために大気が澄み、さらに深い藍色の空色が引き出せている。画面ギリギリに入っている左端のビルもしっかりと解像。画面左上の街灯による影響もない。性能の高いレンズを使うと撮影アングルの決定が楽になる。
作例12
使用カメラ:Canon EOS 6D Mark Ⅱ、絞り値:f/8.0、シャッタースピード:1/1600秒、ISO感度:ISO-400、露出補正-0.7EV、焦点距離:16mm
岸壁で船を係留するための柱を、クリップオンしたストロボで日中シンクロした。ワイドレンズは総じてフードが大きいために日中シンクロは適さないことが多いが(ケラレが発生しやすい)、opera 16-28mmの一体型フードは遮光効果が高いうえにスリムなため、このような表現も行える。赤錆のリアル感はレンズの描写力と日中シンクロの合わせ技によって生み出されたものである。
作例13
滝壺の内側から撮影したもの。撮影時には水しぶきが容赦なく降ってきたが、主要部分に防滴対策が施されているので安心して撮影ができた。AFが苦手とする被写体なので(水が絶えず動いているため)、フォーカスクラッチを操作してMFにセット。水流の位置にピントを合わせている。高速シャッターで水の動きを止めてみたら、飛沫の一粒までが克明に描写されていた。デザインの一新で操作感が向上したため、MF操作がさらに楽になっている。
使用カメラ:Canon EOS 6D Mark Ⅱ、絞り値:f/8.0、シャッタースピード:1/2000秒、ISO感度:ISO-3200、露出補正-0.7EV、焦点距離:16mm
作例14
使用カメラ:Canon EOS 6D Mark Ⅱ、絞り値:f/4.0、シャッタースピード:1/125秒、ISO感度:ISO-100、露出補正-0.7EV、焦点距離:20mm
下町情緒があふれる商店街でのひとコマ。焦点距離を20mmにセットして、ワイドレンズならではのストリートスナップを楽しんだ。被写界深度を計算してF4を選択しているが、カメラからの距離に応じて背景がナチュラルにぼけていることが分かる。広角ズームレンズのぼけはレンズ構成の影響から美しくないことが多いものだが、このopera 16-28mmは別格。2線ボケの発生もなく、滑らかにフォーカスアウトしている。
作例15
近代的なスカイツリーと昔ながらの街並みを同時に写した。空の青さや解像力の高さは見ての通りで、スカイツリーの先端部から手前のマンションのタイルまで見事に解像している。広角ズームは風景撮影用のレンズと思われがちだが、遠近に被写体が混在する街中でのスナップにも便利。より多くの情報を取り入れられることで、写真の意味に厚みが増すのだ。自由な感覚でワイドズームを使いこなしたい。
使用カメラ:Canon EOS 6D Mark Ⅱ、絞り値:f/8.0、シャッタースピード:1/200秒、ISO感度:ISO-100、露出補正+0.7EV、焦点距離:16mm
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