Tokina Ambassadors

Tokinaアンバサダーによる写真の世界

Tokina新レンズを使う高橋良輔の視点

AT-X 11-20 F2.8 PRO DX

AT-X 11-20 F2.8 PRO DXAT-X 11-20mm PRO DXのスペックを見て「これは只者ではないレンズだ」と見抜けたなら、あなたは立派な広角レンズマニアだ。
広角端が11mmにしてF2.8の明るさと、約1.8倍のズーム比を持つAPS-C用広角ズームは本モデルのみであり、画角の広さと明るさがもたらす恩恵は計り知れない。

広角ズーム設計で画角の広さと明るさを両立させることは、技術的に困難をきわめる。ともに、レンズの大敵である「収差」を助長するためであり、多くの場合は画角を優先させてF値をあきらめるのが通例。もちろんその設計方針は間違ってはいないのだが、やはりF2.8明るさを経験するとF4クラスでは物足りなさが残る。
また、画角の広さも同様で、一度たりとも美食を味わってしまったら、ファミレスの味では満足できないことと似ている。
そのうえで、本モデルは望遠側の焦点距離が20mmに拡大されていることを考えれば、いかに高いレベルの到達点を目指しているのかがわかる。

広角ズームレンズの性能を決めるポイントは、「周辺画質の安定度」と「歪曲収差の少なさ」に尽きる。
しかし、この要素同士は光学的に相反する関係にあり、一方を補正すると他方が暴れてしまうのだからたまらない。これらの現象の抑制に威力を発揮するのが非球面レンズであり、そのサジ加減でレンズの値打ちが決まってくる。

本レンズの光学的な特徴は、第2レンズに搭載されたP-MO非球面レンズと、第12・13レンズに搭載されているガラスモールド非球面レンズのコンビネーションにある。とくに、第12レンズは色収差補正に効果があるSDガラスであることから、単色収差とともに倍率色収差の効率的な補正に期待が持てる。

いささか堅い話になって恐縮だが、上記の内容を頭の片隅において作例をご覧いただければと思う次第だ。世界中の広角ズームユーザーから“名作”と呼ばれたAT-X 116 PRODX Ⅱの伝統をいかに受け継ぎ進化しているのかを、皆様の目でご確認願いたい。


 

目次 [開く]

 

作例01

使用焦点距離:11mm, カメラ:Nikon D5200, 絞り値:f/8, シャッタースピード:1/320秒, ISO感度:ISO-100


About

横浜を象徴するランドマークタワーと日本丸。
手前に写っている日本丸の煙突と背景のランドマークタワーは全く高さが違うが、広角特有の性質(手前がより大きく写る)ことによってバランスが崩れて、迫力のある描写が得られている。11mmならではの描写特性だ。

 

作例02

使用焦点距離:11mm, カメラ:Nikon D5200, 絞り値:f/11, シャッタースピード:1/320秒, ISO感度:ISO-100


About

異国情緒が漂う長崎・孔子廟にて。

ほぼ等身大の石像を画面手前に入れつつ、色鮮やかな中国様式の建物を同時に写し込んだ。輝度差がきわめて激しいシーンだったが石像の輪郭に色づきはなく、光学的に倍率色収差が高度に補正されていることがわかる。

 

作例03

使用焦点距離:11mm, カメラ:Nikon D5200, 絞り値:f/8, シャッタースピード:1/500秒, ISO感度:ISO-100


About

画面手前の浮輪の塗装の様子までが手に取るようにわかるほどシャープだ。広角ズームは光学的な特性から、近接撮影時に解像力が鈍るものもある。しかし、本レンズは全撮影距離で均一した解像力を発揮。寄っても引いてもイメージ通りの写真が撮れる。

 

作例04

使用焦点距離:11mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/5.6, シャッタースピード:1/800秒, ISO感度:ISO-100


About

広角域では画角の広さから空の高い部分を背景として利用できるため、ヌケのいい風景写真を撮ることができる。ここではトキナーレンズの特徴である青の発色の良さも手伝い、広がりのある風景撮影を行なうことができた。また、風車のレンガも緻密に再現されている。

 

作例05

About

11mmという焦点距離ながら歪曲収差が驚くほど少ない。一般的な広角ズームならば、画面左側の直線が樽型に丸く歪んでいたことだろう。

歪曲収差の補正は周辺画質の向上と相反する関係にあるが、本レンズは歪みの補正と周辺画質の確保を見事に両立している。


使用焦点距離:11mm, カメラ:Nikon D5200, 絞り値:f/11, シャッタースピード:1/160秒, ISO感度:ISO-100


 

作例06

About

建築物を撮る場合には、画角の広さとともに歪曲収差が低レベルであることが要求される。 とくに、作例のように情緒のある建物を撮る場合には、直線の歪みが雰囲気を大きく損なえてしまうからだ。 また、直線の歪みが少ないため構図の組み立ても容易に行える。


使用焦点距離:11mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/8, シャッタースピード:1/50秒, ISO感度:ISO-100


 

作例07

使用焦点距離:11mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/4, シャッタースピード:1/80秒, ISO感度:ISO-100


About

開放から1段絞るだけで諸収差がほぼ収束。周辺部まで画質が安定し実用域に入る。
多画素のカメラでは周辺部の流れが目立ちやすい傾向があり、どうしても大きく絞って撮影する場合が多いが、本レンズは周辺部の画質が安定しているため、F値を合理的に選択できる。

 

作例08

使用焦点距離:11mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/5.6, シャッタースピード:1/800秒, ISO感度:ISO-100


使用焦点距離:20mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/5.6, シャッタースピード:1/800秒, ISO感度:ISO-100


About

望遠端が20mmに延長されたことでズーム比が拡大。どの焦点域でも狙い通りの絵が撮れる。望遠域でも歪みが少なく、真正面から建物を捉えても写真の品位が低下しない。 35mm判換算での焦点距離イメージは約18-32mm(EF用)で、街中でのスナップに最適な長さだ。

 

作例09

使用焦点距離:20mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/5.6, シャッタースピード:1/640秒, ISO感度:ISO-100


About

35mm判換算で約32mm相当(EF用)の画角は、適度な広がりと落ち着きを兼ね備えている。人間の視覚に近い画角であるため、ナチュラルに被写体を表現したい場合に有利だ。 望遠端の画質も安定感があり、F5.6付近で最高画質が得られ周辺域の流れもない。

 

作例10

About

F11まで絞って光条を伸ばし、夜空にそびえる教会を見上げるように撮影した。11mmの画角から生まれる強烈なパースによって、教会の存在感がさらに高まって見える。引きがない場所での撮影だが、11mmならばその全景を余裕でフレーム内に入れることができる。


使用焦点距離:11mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/11, シャッタースピード:10秒, ISO感度:ISO-100


 

作例11

使用焦点距離:11mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/5.6, シャッタースピード:1/13秒, ISO感度:ISO-1250


About

光量が乏しいシーンでは、ファインダーの明るさが急激に低下。構図の確認すら困難になる。とくに広角レンズでは像倍率が低くなることから、レンズが明るいほど有利になる。F2.8はF4と比較してその差は1段だが、このようなシーンでは数段分以上明るく感じられる。

 

作例12

使用焦点距離:11mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/5.6, シャッタースピード:1/200秒, ISO感度:ISO-200


About

広角レンズは撮影するアングルによって、さまざまな表現が行える。ここでは、カメラに搭載されているライブビュー機能を使い、地面の高さから猫を見上げるように撮影している。毛の1本1本まで克明に描写されているのに加えて、背景のボケも自然で嫌味がない。

 

作例13

使用焦点距離:11mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/8, シャッタースピード:1/800秒, ISO感度:ISO-100


About

長崎県佐世保市近郊の九十九島(くじゅうくしま)。多くのカメラマンたちは望遠で構えていたが、ここではレンズの砲列の間からライブビューを使って画面をワイドに切り取り、画面上に枝を入れることで額縁効果を作り出している。画角の広がりを上手に活用したい。

 

作例14

使用焦点距離:11mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/11, シャッタースピード:1/50秒, ISO感度:ISO-200


About

強い夕日を受けて輝くヨットハーバーの景色を、手前にポイントを置いてスナップした。円形のサインの直径は数10センチだが、近接して撮影することで大きく写し、平凡になりがちな構図にインパクトを与えている。広角ズームでは遠近感のコントロールが行いやすい。

 

作例15

About

SNSの影響で食べ物を撮る機会も増えたが、どんなものを食べたかだけではなく、どんなところで食べたかも伝えたい。ここでは11mmの開放で名物の蕎麦にフォーカスしつつ、ボケを利用して店内の雰囲気をさり気なく説明している。F2.8モデルならではの表現だ。


使用焦点距離:11mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/2.8, シャッタースピード:1/100秒, ISO感度:ISO-400


 

作例16

About

11mmの広い画角を使い、鮮やかに色づく木々と、葉の間から差し込む木漏れ日を捉えた。太陽はまともに画面内に入っているが、新型コーティングの威力でフレアやゴーストはなく、暗部の締り具合も抜群だ。クリアに再現できるからこそ、紅葉の色彩が際立っている。


使用焦点距離:11mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/11, シャッタースピード:1/250秒, ISO感度:ISO-100


 

作例17

使用焦点距離:11mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/5.6, シャッタースピード:1/2000秒, ISO感度:ISO-100


About

画角の広さを利用して、灯台を一気に写し込んだ。強力なパースによって、灯台が空に吸い込まれていくかのように写っている。青の発色に優れているため、C-PLフィルターを使わなくてもビビッドに写る。また、優れたカラーバランスによって、灯台の色にも濁りがない。

 

作例18

使用焦点距離:11mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/11, シャッタースピード:1/640秒, ISO感度:ISO-100


About

絞り羽根は9枚であるから、光源の周囲には18条の光条が発生する。広角では光源を積極的に活用するのが構図づくりの常套手段だが、これを可能にするためには優れたコーティングが必須。新コーティングの力を使い、シルエットの灯台にアクセントを添えてみた。

 

作例19

使用焦点距離:20mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/2.8, シャッタースピード:1/400秒, ISO感度:ISO-400


About

20mmの開放時は球面収差が僅かに残存する場合もあるが、ソフトに表現したい場合には絞り込まずにそのまま使うのも正解。もちろん、1段ほど絞れば収差は収まるが、その使い方はユーザーの判断に委ねられている。さまざまな意味で間口が広いレンズである。

 

作例20

使用焦点距離:20mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/2.8, シャッタースピード:1/1000秒, ISO感度:ISO-100


About

広角ズームとは思えないほどボケが柔らかい。広角ズームの望遠端は「おまけ」的な要素が強い場合が多いが、本レンズはきちんと20mmの焦点距離として使える。このボケを生んでいるのがF2.8の明るさであり、F4クラスやF値変動型の広角ズームでは表現できない。

 

作例21

About

歪曲収差が少なく解像力が安定しているからこそ撮れた一枚。
柱がまっすぐに描写されていることに加えて、画面手前の椅子の形がきわめて正確だ。数値を見せなければ、標準レンズでの撮影と思う人も多いだろう。しかし、これは紛れもなく広角ズームでの撮影である。


使用焦点距離:20mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/5.6, シャッタースピード:1/30秒, ISO感度:ISO-1600


 

作例22

使用焦点距離:11mm, カメラ:Canon EOS 70D, 絞り値:f/5.6, シャッタースピード:1/15秒, ISO感度:ISO-400


About

周辺部に点在する細かいイルミネーションは、夜景撮影ではやっかいな存在。コマ収差の影響を受けやすいことから、多くの場合にはF8程度まで絞って撮影する。しかし、本レンズはコマ収差の発生が少ないため、F5.6の1/15秒で撮影できた。もちろん手持ち撮影だ。

 
 

[著作権および画像利用についてのご注意]

本スペシャルページで提供している「実写生データ」の著作権は、撮影者である 高橋良輔氏に、使用権は 株式会社ケンコー・トキナー に帰属しています。著作権所有者および 株式会社ケンコー・トキナー への事前の承諾を得ること無しに、その全てまたは一部を、いかな る形式、いかなる手段によっても、複製・改変・再配布・再出版・表示・掲示または転送することは禁じられています。

本スペシャルページの「実写生データ」は、お客様のコンピュータースクリーン、もしくはお客様ご自身のプリンターまたは プリント手段等による、私的な画像確認での利用に限ってのみ、ご利用いただけます。

このページのトップに戻る