高橋良輔の視点


AT-X 12-28 PRO DX × EOS 70D で楽しむ “カメ高秘伝” 広角ズームライブビュー撮影術 AT-X 24-70 F2.8 PRO FX キヤノンマウント解像力テスト&実写レビュー
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AT-X 14-20 F2 PRO DX 新製品

AT-X 14-20 F2 PRO DX広角ズームに定評のあるトキナーが新たに展開するAPS-C対応のAT-X 14-20 F2 PRO DXは、これまで広角ズームについて語られてきた数々の常識を覆す画期的な1本である。カバーする焦点域は35mm判に換算すると21-30mm相当で、近年再評価されている20mmや広角の定番24mmに加えて、標準レンズに近い30mmらの個性を兼ね備えている。しかし、本レンズ最大の特徴は明るさにあり、ズーム全域でF2.0の開放値を実現。広角ズームのみならず、すべてのズームレンズのなかでも最高水準の明るさを持っている。

F値を明るく設計することは、ユーザーのみならず設計者の夢でもあるわけだが、F値を明るくすればするほど収差が加速度的に増大。僅か1段分明るくするだけでも、設計の難易度は8倍に跳ね上がるとさえ言われる。まして広角ズームでは、多様な収差が周辺域で複雑に絡むことから、単焦点レンズを設計する以上に難易度が高くなる。しかし、トキナーはこの課題に対して、これまで蓄積してきたP-MO非球面レンズや、近年注目を集めている超低分散ガラスモールド非球面レンズを用いる広角ズーム作りのノウハウを投入。長年の夢を現実のものとした。

技術的な特徴をここで詳しく述べるより、実写した作例をご覧いただくほうが分かりやすいが、描写におけるポイントは「開放から使える安定感抜群の解像力」と、「周辺減光を抑えた素直なボケ」に集約される。前者は広角ズームレンズとして驚異的な性能で、画面中央部は開放から実用域にあり、周辺部とて1段弱絞るだけで画質がピタリと安定。凄まじくシャープに切れる。また、周辺減光を抑えたことによって口径食によるボケの乱れがほぼなく、F2の明るさを存分に使いこなせる。定義上ではズームレンズであるのだが、それぞれの領域は単焦点レンズすら凌駕する実力を秘めている。筆者もこれまで多くの広角ズームに接してきたが、これほど卓越した描写性能を持つ製品に出会ったことはない。

なお、今回の実写ではすべてのカットを“開放”で撮影している。にわかに信じられないかも知れないが、これがAT-X 14-20 F2 PRO DXの実力であり、広角ズームの使い方すら一新させてしまう力がある。それでは、皆さんと一緒にF2の世界を覗いていきたい。


 

Index

 

作例01

使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/60秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

まるで30mm単焦点レンズでの写真のように、背景が大きくぼけて主題が明示されている。
F4クラスのレンズで撮ったならば背後の丸い花にもピントが合い、オブジェをここまで浮き上がらせることはできなかったろう。また、ボケの質が柔らかいため雑然とした状況のなかでも主題が埋もれず、反射光による玉ボケが彩りを添えている。これまでの広角ズームではできなかった繊細な表現が行えることも特徴のひとつである。

 

作例02

使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/80秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

画面中央のカップを良く見てもらいたいのだが、開放撮影であるにもかかわらず花柄の細線まで緻密に描写。すでに実用可能な解像力が発揮されていることが分かる。また、カップの金の縁どりや背景の金属ポットにも色の滲みやズレがなく、後群に配置された超低分散ガラスモールド非球面レンズの作用によって、解像力と色収差が高度にコントロールされている。画面手前に前ボケを入れ込んでみたが、F2による浅い被写界深度によってディティールが分からなくなるほど大きくぼかせている。

 

作例03

使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/500秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

ガラスを含めて反射物が多い撮影条件だが、どの部分にも色収差は見当たらず、画質はきわめてクリアだ。また、窓の外の光によって生じた玉ボケの重なりが美しく、画面全体の柔らかい雰囲気を損ねていない。
一般的に非球面レンズを多用するレンズではボケが乱れやすくなるものだ。しかし、本レンズでは非球面精度の見直しによって、ボケの分布に影響が出ないようにレンズ形状が工夫されている。この画像を見ると、3枚もの非球面レンズが搭載されているとは思えない素直な描写だ。

 

作例04

使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/125秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

外からの光は差し込んではいるが、写真で見るよりも現場は暗い。しかし、F2の明るさがあるためにISO 100の低感度で手持ち撮影ができた。無用なノイズを発生させることなく、中間調からシャドー部までの階調が保たれている。
もし、F5.6クラスのレンズを使って同条件で撮影するならばISO 800相当になることから、カメラの種類によっては高感度ノイズやノイズリダクション機能によって、写真のグラデーションが失われていただろう。

 

作例05

About

20mmであってもF2.0環境では、これだけ被写界深度が浅くなる。
一般的に広角レンズはぼけにくいとされるが、明るい開放値があるレンズは別格。また、0.28mの最短撮影距離を使うことで、F2.0の明るさがさらに生きてくる。
近接しているために僅かに球面収差が発生しているが、ふわりとした柔らかさがアンティークなタイプライターの雰囲気に合っている。もし、よりシャープにしたいのならば少し絞るだけで解消するが、このシーンでは開放が正解だったようだ。


使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/100秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


 

作例06

使用焦点距離:15mm(35mm判換算焦点距離:22.5mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/20秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

この明るさでISO 100での手持ち撮影ができることは、F値の明るさと画質の高さがあってこそ。たとえF値が明るくても解像力が低い場合には相応のF値まで絞らなくてはならず、手ぶれを防ぐにはISO感度を高めるか三脚を使う必要がある。
ここで注目したいのが、光学的にもっとも無理がかかりやすい周辺域の描写。画面左上のメーターを見れば周辺画質の高さが一目で分かるはずだ。まるでテストチャートのように目盛りが書かれているが、どの方向の目盛りもしっかりと解像。非点収差やコマ収差が低レベルに抑えられていることが確認できる。

 

作例07

使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/1250秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

テーブルに配られたハンバーガーを、広角端を使って近接撮影した。ここではワイドマクロと呼ばれる撮影技法を用いているが、街の雰囲気を取り入れながら背景を大きくぼかせているのは、画角の広さに加えてF2の明るさが生む被写界深度によるところが大きい。
ケチャップのラベルの文字や背景の柱のボケにも二線ボケの傾向は見られず、レンズを起点として素直にボケが広がっていく様子が分かる。F2の明るさをカジュアルに使いこなしてみよう。

 

作例08

About

オートバイのタンクがまるで濡れているように見えるのは、ピント位置(エンブレム)のシャープさとボケの美しさの相互作用によるもの。きれいなカーブを描くようにボケが広がることで、奥行きを感じる仕上がりになった。
この写真だけを見ると単焦点レンズで撮ったと言っても誰も疑わないだろう。これまで広角ズームは“絞って使うもの”とされてきたが、本レンズでは“いかに絞らないか”も使いこなしのキーワード。
F2.0でしか出せない独特のテイストである。


使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/2000秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


 

作例09

使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/4000秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

広角ズームでありながらディストーションが少ないことも、本レンズの特徴のひとつである。
一般的にディストーションを強く補正すると像面湾曲が出てしまうため、多くのレンズでは一定量のディストーションは黙認されているのが現状。しかし、このレンズでは画面端の直線や壁の横板の線を見ても分かるように広角特有の樽型の歪みがほぼなく、直線がまっすぐに描写されている。また、像面の平坦性にも高いものがあり、きわめて高度に諸収差がバランス良く補正されている。

 

作例10

使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/3200秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

噴水の動きを止めるには高速シャッターが必要だが、ローライトな環境ではきわめて高いISO感度が必要になる。しかし、本レンズならばF値が明るく開放でも画質が安定しているため、ISO 100で1/3200秒のシャッター速度を得ることができ、ノイズを発生させずに水の動きをピタリと止めることができた。
F8まで絞る必要があるレンズで撮ったならば、最低でもISO 1600が必要となる計算で、このようにクリアな仕上がりは得られないはずだ。

 

作例11

使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/2500秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

この写真を開放で撮ったと言っても信じてもらえないだろうが、撮影データの通りである(笑)。
等倍拡大して頂ければ分かるが、橋桁や通路の手すりまでシャープに解像。これ以上絞る必要性はほぼない。また、倍率色収差の影響をストレートに受けやすいシーンでもあるのが、等倍まで拡大しても画面の色ずれはなく、ほぼパーフェクトな仕上がりと評しても過言ではなかろう。
開放でこれだけ写ってしまうことを知ると、もう他のレンズに戻ることはできない。

 

作例12

使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/800秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

細線を開放でここまで写せるのは、30本/mmの性能が高い証拠。
通常30本/mmの特性は絞ることによって高まるものだが、絞ってしまうと背景のボケは失われてしまう。しかし、本レンズではボケを生かしたままで高いシャープネスが得られるために、このような表現が行える。
また、背景のボケには口径食による歪みがほとんど起きておらず、画面端の玉ボケがほぼ円形を保っている。そのことで、ボケが渦を巻くような描写にならず、ストレートに遠近感を感じ取れる。

 

作例13

使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/1250秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

1929年に建てられた根岸競馬場の一等馬見所跡。地面スレスレのローアングルからカメラを構えて前ボケを作りながら、開放で全体像を捉えた。
F2の開放値のおかげで1/1250秒という速いシャッター速度が得られたために、偶然に画面内に入ってきた鳥の姿をピタリと止めることができた。速いシャッター速度が得られることは、手ぶれに対しても被写体ぶれに対しても有効であり、おのずとシャッターチャンスに強くなる。レンズの明るさはあらゆるシーンで有効だ。

 

作例14

使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/800秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

公園に停まっていたカナリアイエローの大型バイクを、空を背景にしてローアングルから写した。画面下の草による前ボケが、独特の遠近感を作り出している。
14mmの広角端は適度なワイド効果とともに落ち着きのある描写が行える焦点距離。超広角レンズのように画面に余白が出来にくいことから、構図をまとめやすい。筆者も銀塩時代に愛用した焦点域だが、あらためて使ってみると奥が深い画角であり、主題と背景の関係性を適切に構築できることを再認識した。

 

作例15

使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/4000秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

解像力が足りていれば、開放でもパンフォーカスにできることを証明する1枚。
一般的にこのようなシーンでは、迷うことなくF5.6~8程度の絞りを選択するだろうが、このレンズではそれは必要ではない。
収差の影響がきわめて少ないために、焦点距離によって生じる被写界深度さえあれば、このようにパンフォーカスになる。ここでは、前方被写界深度と後方被写界深度を考慮したうえで、船体側面の文字付近にフォーカス。船体だけではなく、対岸の船にまで効率的にピントを合わせている。

 

作例16

使用焦点距離:18mm(35mm判換算焦点距離:27mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/1250秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

横浜を代表する歴史建造物である横浜市開港記念会館。これまでさまざまな人に撮られてきた建物だが、晴天の日中に開放絞りで撮った写真は多くはあるまい(笑)。
等倍拡大してみるとレンガ造りの壁面は開放で細部まで見えており、信号器の細かい文字までつぶれずに読める。また、画面左端の一方通行を示す標識の文字や、反対側のタクシーのナンバーまで読み解け、これ以上に絞るべき必要性や根拠はどこにも見つからない。性能の高いレンズは絞りの概念すら変えてしまう。

 

作例17

使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/8秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

多くの人が行き交う東京・日本橋にて。
歩道は狭いので三脚が使える場所ではないが、このレンズならば手持ちでこれだけ撮れてしまう。もちろん、ISO感度は100のままであることから、シャドー部にはゲインアップによるノイズは生じていない。
1/8秒のスローシャッターだが、超低分散ガラスモールド非球面レンズの使用でレンズサイズが抑えられているため、手持ち撮影も得意だ。
空の色がベストになる時間を見計らって現地に向かい、僅か数十秒で撮影は完了した。レンズの基本性能が高いと、撮影そのものがスピーディーに行える。

 

作例18

使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/1250秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

米軍横田基地近くで見つけた三輪タクシー。東南アジアをイメージして抜けるような青空を背景に、ローアングルで撮影している。
10mmクラスのレンズで撮ったならば、前輪が大きくデフォルメされてしまうところだが、14mmではちょうどいい具合に遠近感が付く。
開放で撮ることで背景のごちゃつきが緩和されて、雑然とした背景から三輪タクシーが浮かび上がって見えている。また、開放ながら十分なコントラストがあり、画像処理で手を加える必要はまるでない。

 

作例19

使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/1250秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D5200


About

米軍横田基地横に置かれていた鮮やかなベンチを14mmで撮ってみた。ピント位置を拡大すると木材の質感まで分かるほどシャープに写し出されており、ペンキの厚みさえ感じ取れる。また、前後に広がるボケにはクセがなく、距離感の違いがストレートに伝わる。21-30mm相当の焦点域をカバーする本レンズは、風景撮影はもちろんだが、このようなスナップにも向く。F値が明るいためにファインダーでもライブビューでもピント合わせが容易に行え、撮影者の意図を的確に反映させることができる。

 
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