Tokina Ambassadors

Tokinaアンバサダーによる写真の世界

Tokina新レンズを使う高橋良輔の視点

FíRIN 20mm F2 FE MF

FíRIN 20mm F2 FE MFトキナーからリリースされたFíRIN 20mm F2 FE MFは、これまでのトキナーレンズにはない特徴を備えた、ハイクオリティ路線の新レンズだ。

これまでのTokinaと全く異なるコンセプトをもつ、ミラーレスカメラ用の高品位交換レンズシリーズ、「Tokina FíRINシリーズ」。その第一弾として登場したFíRIN 20mm F2 FE MFは、ミラーレスフルサイズカメラとして人気のソニーα7シリーズ用(Eマウント)に対応して作られたものである。

ソニー純正のEマウントレンズには、カールツァイスレンズを筆頭に魅力的なレンズが揃っている。しかし、2016年12月現在、フルサイズフォーマットに対応した大口径超広角単焦点レンズは、ソニー純正レンズにはラインナップされていない。その意味においてもα7系のオーナーならば気になる存在だろう。

このレンズの特徴を端的に述べるならば、とことんマニュアルにこだわった1本であるということ。ピント合わせはマニュアルオンリーで、絞りはリング操作による実絞りで作動する。これだけを聞くと技術的には50年以上タイムスリップした感があるが、最新の光学系とメカの融合によって高画質化とマニュアル操作の楽しさを両立。たんにノスタルジーを追い求めたレンズではない。 ボディ側のMFアシスト機能も動作し、ピントリングの動きに連動した拡大表示が行える。また、レンズ先端部に絞りリングを設けることで被写界深度の調節が容易に行えるほか、「絞りデクリック機構」を切り替えることでクリック感のないスムーズな絞り操作が可能になり、動画撮影時にも有利だ。

さまざまな操作がオート全盛の時代にあって、マニュアル的な操作感を打ち出したレンズは少数派。しかし、オートフォーカスでの動きを考慮して設計する必要がないことから描写を再優先させた光学配置が可能となり、その性能はMTFにも示されている。 それでは本レンズで撮影した作例を見ながら、その特徴を解説していきたい。


 

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作例01

使用カメラ:Sony α7 II、絞り値:f/5.6、シャッタースピード:1/200秒、ISO感度:ISO-100、焦点距離:20mm


About

砂浜に打ち上げられていたサンゴを、水面ギリギリのローアングルから撮影した。
液晶モニター(EVFを含む)に表示されるスルー画には実絞りによる効果が反映されているので、どこまでが被写界深度内にあるのかがリアルタイムに確認できる。IF方式でレンズが設計されているとから必然的に水やゴミの侵入にも強く、水辺や風の強いシーンでも安心して撮影が行える。また、サンゴの質感や水の描写からは、レンズの解像力の高さがうかがい知れる。

 

作例02

使用カメラ:Sony α7 II、絞り値:f/5.6、シャッタースピード:1/160秒、ISO感度:ISO-100、焦点距離:20mm


About

沖縄に点在するグスク(御城)である座喜味城にて。
周辺画質が安定しているため、収差を抑えるために大きく絞る必要はない。ここでは求める被写界深度が足りた時点で、僅かに残る残存収差も抑えられていた。
20mmは伸びやかながらも落ち着きがあり、作例のように歴史的な建造物を撮る場合に向く。もっと画角が広いレンズならばより広い範囲を写せるのは事実だが、20mmの画角はテーマを示しながら周囲の状況もさりげなく説明できるところに特徴がある。

 

作例03

使用カメラ:Sony α7 II、絞り値:f/2、シャッタースピード:1/2000秒、ISO感度:ISO-100、焦点距離:20mm


About

リゾートホテルの中庭にあった噴水をF2.0の開放で撮影した。
このカットを見ると、開放時における解像力の高さからボケの美しさまでが一目で分かる。開放を使うことで噴水から吹き出す水滴を背景から明確に分離。みずみずしさが感じ取れよう。
これはF2.8やF4ではできない表現で、広角レンズであっても開放F値が明るいことがいかに有意義であるかを示している。広角レンズの値打ちは、いかに絞りを開けられるか(明るいか)でも決まるのだ。

 

作例04

使用カメラ:Sony α7 II、絞り値:f/2、シャッタースピード:1/60秒、ISO感度:ISO-200、焦点距離:20mm


About

冷えたビールを開放で撮った1枚。
ラベルの文字にも色にじみはなく、解像力は完全に実用域。左上にある電飾のサインも、きれいな玉ボケとなって描写された。画面端は口径食の影響を受けやすいために玉ぼけが崩れやすいものだが、英語で「EAT」と書かれた電飾のサインも、連続的な玉ぼけになっている。
また、その他の背景も滑らかにぼけて、ビール瓶の存在感を阻害していない。ズームレンズでは真似することができない単焦点ならではの描写だ。

 

作例05

使用カメラ:Sony α7 II、絞り値:f/2、シャッタースピード:1/2000秒、ISO感度:ISO-400、焦点距離:20mm


About

最短撮影距離まで近づくことで、ワイドマクロ的な表現も行える。標準や中望遠レンズと比較するとぼけの大きさには限界があるが、ぼけが一定の方向に引っ張られることなく、被写体からの距離に応じて素直にぼけている。
つまり開放時において、ぼけに悪影響を及ぼす収差が低レベルに抑えられていることを意味しており、そのためにぼけ同士のつながりも自然。また、近接撮影による収差増大も限定的であるので、開放で撮ってもなんら不安感はない。

 

作例06

使用カメラ:Sony α7 II、絞り値:f/5.6、シャッタースピード:1/250秒、ISO感度:ISO-100、焦点距離:20mm


About

20mmは十分にワイドな画角の焦点域だが、被写体に対して角度をつけずに撮ることで、落ち着いた表現も行える。ここでは海を見つめている女性を題材にしているが、パースの発生が穏やかであることから20mmで撮ったものとは思えない。
しかし、画面の上方への広がりは20mmクラスでしか出せない描写で、画面を窮屈にすることなくナチュラルに描写できている。細部の描写が緻密であるからこそ、主題(人物)を小さくしても存在感が引き出せるわけだ。

 

作例07

使用カメラ:Sony α7 II、絞り値:f/11、シャッタースピード:1/80秒、ISO感度:ISO-100、焦点距離:20mm


About

沖縄を代表する景勝地・万座毛の夕暮れ。地理的に夕陽が沈む場所にあることから、日暮れには撮影者たちで混雑する。FíRIN 20mm F2 FE MFはカメラ側の手ぶれ補正機構に対応しているため、絞り込んでも三脚は必要としない。
また、逆光下であるために画面の3/4以上が面光源になっているが、フレアーやゴーストは確認できず、暗部から明部まで忠実に再現されている。岩肌や木々の再現力はもとより、雲の輪郭まで立体的に写し出されているのには驚いた。

 

作例08

使用カメラ:Sony α7 II、絞り値:f/8、シャッタースピード:1/200秒、ISO感度:ISO-100、焦点距離:20mm


About

大型のトラクターの背後に回って、ローアングルから撮影した。
被写体に対して角度を付けると、20mmらしい強烈なパースが発生。本格的な超広角撮影が楽しめる。タイヤの質感やボディに付着した泥がリアルに写り、まるでトラクターが目の前にあるかのようだ。
ここではピーカンの青空を背景にしているが、空の発色やボディカラーの再現性も申し分ない。等倍に拡大して鑑賞しても細部にも破綻はなく、高画素機のパワーを100パーセント引き出している。

 

作例09

使用カメラ:Sony α7 II、絞り値:f/13、シャッタースピード:1/80、ISO感度:ISO-100、焦点距離:20mm


About

沖縄本島南部の奥武島では採れたてのイカが写真のように干されている。撮影のポイントは、いかにみずみずしくイカを表現するかにあるが、時間の選択だけではなく被写界深度のコントロールが重要だ。
ここでは横列すべてにピント合いながらも背景がわずかにぼけるように、ファインダーを覗きながらF13を選択。被写体が重なりつつも立体感が出るように工夫している。実絞りによるリアルな映像を見ながら、より確実な被写界深度調整が行える。

 

作例10

使用カメラ:Sony α7 II、絞り値:f/8、シャッタースピード:1/125秒、ISO感度:ISO-100、焦点距離:20mm


About

嘉手納基地付近にあるアメリカンな消防署。ローアングルからカメラを構えてアオリ気味に撮影したが、光学的に歪曲収差が抑えられていることと、カメラ側のディストーション補正の相乗効果で、屋根の直線に歪みは感じられない。
また、消防車の細部まで忠実に再現されていて、磨き込まれたメッキパーツの雰囲気も伝わってくる。レンズのコントラストも適切であり、カメラ側のDレンジ補正機能らと良好に連動。輝度差の大きいシーンも安心して撮影できる。

 

作例11

使用カメラ:Sony α7 II、絞り値:f/8、シャッタースピード:1/1250秒、ISO感度:ISO-400、焦点距離:20mm


About

マニュアルフォーカス専用なので、動く被写体を追い続けながら撮影することは得意ではないが、置きピンを使うことで容易に撮影することができる。
ここでは、機関車の通過位置を予測して線路上に置きピンし、画面右上の木々まで被写界深度内に入るようにF値を設定(F8)。機関車がベストな位置に来るのを待ってシャッターを切った。
狙いどおりに被写体全体にピントが合い、機関車のヘッドライトから背後の客車までがシャープに写っている。

 

作例12

使用カメラ:Sony α7 II、絞り値:f/8、シャッタースピード:1/60秒、ISO感度:ISO-200、焦点距離:20mm


About

夕立に降られなければ、素晴らしい夕焼けが沖縄本島でも見られる。これは慌てて車を停車させて撮ったもので、カメラ設定を詳細に追い込めなかった。
しかし、空のグラデーションが美しく表現できたのも、このレンズの描写性能によるところが大きい。20mmの良さは絶妙な画角の広がりにあり、とっさにカメラを構えても遠近ともに絵にしやすい。ヤシの葉のシャープさもさることながら、柔らかな雲の描写に本レンズの奥深さが凝縮されているようだ。

 

作例13

使用カメラ:Sony α7 II、絞り値:f/4、シャッタースピード:1/1600秒、ISO感度:ISO-100、焦点距離:20mm


About

リゾート地で見つけた白いチャペル。夕方の斜光を利用して撮影したものだが、倍率色収差も適切に抑え込まれて建物の凹凸が際立つ。
画面の手前のハイビスカスを前ぼけとして活用しているが、ここではF4まで絞ってぼけの大きさをコントロール。前ぼけが目立ち過ぎないように微調整している。選択した絞り相応にぼけが発生。特定の絞りから急激にぼけが硬くなる傾向はない。これも、光学性能を優先させた本レンズならではの特性といえる。

 
 

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