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トキナーレンズの高画質をより引き出す技術

AT-X 14-20 F2 PRO DX

AT-X 14-20 F2 PRO DX

Tokina AT-X 14-20mm F2 PRO DX(以下 AT-X14-20mmとする)はトキナーが提案する新しい概念のレンズだ。
数字だけをみれば、焦点域14mmから20mm(35mm換算21mm~30mm)をカバーするショートレンジのズームレンズだが、このレンズはそう捉えてはならない。AT-X14-20mmは、17mm~18mm付近(35mm換算24.5mm~27mm)を中心とした、「あとちょっと寄ったり」、「あとちょっと引いたり」できる単焦点レンズと捉えた方がしっくりくるレンズだ。
言うなれば「ちょい足しできる単焦点レンズ」と例えることができる。

風景写真を撮っていく中で、単焦点レンズはここ一番の時に登場するレンズだ。単焦点レンズの描写はズームレンズと比べ、薄皮を剥いだようにクリアで抜けの良い描写を見せる。
しかし、「ほんのちょっとだけズームしてくれたら良いのに・・・」と思うことは撮影の現場ではしばしば起こる。単焦点ゆえ自分が動くことになるのだが、もうこれ以上引けない、これ以上寄ると危険ということもある。
そんな現場での歯がゆさを、AT-X14-20mmは単焦点レンズのクリアで抜けの良い描写を犠牲にすることなく解消してくれる。

撮影していく中で気づいたことは、F2という明るさが様々な面で影響を及ぼしているということだ。
描写の良さはもちろんだが、明るいレンズはシャッタースピードの設定や感度設定の自由度が増す。特にナイトスナップや、僕が多く撮影している夜の雲海撮影などで威力を発揮する。ISO感度を落として撮影することができるためベタっとした画にならずに済むし、シャッタースピードをもう一段早くすることができるため、流れていく夜の雲を止めて撮影することができるのである。

そのほかAT-X14-20mmを使っていく中で気づいた点は、上述のようにまるで単焦点レンズを使っているような気持ちになったということだ。撮影後、リアモニターで確認する撮影画像は、単焦点レンズのようなヌケの良さとクリアな描写でズームレンズとは思えないものであった。

作例撮影は季節も良く紅葉美しい晩秋の頃。紅葉の赤のグラデーション、天高いブルーのグラデーションなど撮影するのに良いシーズンであった。また、撮影の際全面的に協力してくださった箱根ガラスの森美術館様に深く感謝したい。

以下、作例と共に解説していこう。


 

目次 [開く]

 

ナイト撮影①

使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:8秒, ISO感度:ISO-800, 使用カメラ:Nikon D7200


僕は夜の雲海を撮ることが好きで様々なレンズでその姿を撮ってきた。
今回AT-X14-20mmでの撮影ではF2という明るさに期待をしてシャッターを切った。上述のように単焦点レンズのようなクリアな描写を見せてくれた。
開放F2、シャッタースピード8秒で撮影したこの作例であるがISO800で撮影したものだ。ISO800、8秒でしっかりと星が色までついて再現されている。同じ被写体を撮られている方ならばお分かりであろう。ISO800で8秒しか開けてないのだ。
これがISO1600であれば4秒、ISO3200であれば2秒・・・驚きである。いつか機会を見てこのレンズでオーロラを撮影してみたいものだ。

Exif上では使用焦点距離14mmだが、撮影時、どうしても左隅に木が入ってしまうためズームして構図を直した。これもAT-X14-20mmの便利なところだ。

 

ナイト撮影②

使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:4秒, ISO感度:ISO-6400, 使用カメラ:Nikon D7200


AT-X14-20mmが星空の撮影でどう働いてくれるか見てみよう。
撮影時は残念ながら薄雲が張り出してしまった。
しかし、作例をご覧いただきたい。レンズが、その薄雲の後ろに隠れてしまった星の情報をしっかりと撮像素子まで送っていることがお分かりいただけるだろう。

 

ナイト撮影③

使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:3秒, ISO感度:ISO-3200, 使用カメラ:Nikon D7200


この作例は月の出を撮影したものだ。月が昇り夜空が徐々に明るくなり始める姿を破綻なく再現している。

 

解像①

使用焦点距離:18mm(35mm判換算焦点距離:27mm), 絞り値:f/5.6, シャッタースピード:1/500秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D7200


次に解像を見てみよう。
解像のピークはF5.6辺りからF8の間であろうか。なんとも早い立ち上がりだ。
今回の作例撮影は、箱根ガラスの森美術館様にご協力をいただき館内の様々な場所を撮影させてもらった。美しい庭園の箱根ガラスの森美術館の中庭を撮影した一枚だ。
絞りはF5.6ピントを合わせた中心部のオブジェや周辺部の建物の壁や屋根も良く解像されている。また最周辺部の解像を確認するためほんの少しだけ画角に入れた池の縁もキチンと解像されている。

撮影協力:箱根ガラスの森美術館

 

解像②

使用焦点距離:17mm(35mm判換算焦点距離:25.5mm), 絞り値:f/5.6, シャッタースピード:1/640秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D7200


 

解像③

使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/5.6, シャッタースピード:1/640秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D7200


次に空間の広がりを捉えた2枚の作例をみてみよう。
解像②、解像③ともに嫌がらせのように細かいものを配置し撮影を行った。
解像②では細かな熊笹も画面上部の岩肌も質感までしっかりと再現し解像している。
解像③では中心部においた小型の馬のたてがみや尾をしっかりと解像し、また周辺部の枯れ木の細かな線も解像している。

 

カラーグラデーション再現 - レッド①

使用焦点距離:16mm(35mm判換算焦点距離:24mm), 絞り値:f/8, シャッタースピード:1/200秒, ISO感度:ISO-200, 使用カメラ:Nikon D7200


暖色系のカラー再現を見てみよう。
紅葉の赤、黄色、バックには反対色の青空の青が見えている。発色は自然な発色傾向で赤の飽和は見られない。透過光で濃淡をつけて撮影をおこないグラデーションも見てみたが破綻なく非常に自然な再現だ。

 

カラーグラデーション再現 - レッド②

使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/5.6, シャッタースピード:1/640秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D7200


 

カラーグラデーション再現 - レッド③

本作例では紅葉越しに陽の光を透かしてみた。こうした透過光で紅葉の撮影をおこなうと枝や葉に色の縁どりが出てくることが多い。ましてやF2という明るいレンズになれば余計にそうした傾向にあるが、AT-X14-20mmはそれを上手に抑えている。


使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/8, シャッタースピード:1/200秒, ISO感度:ISO-200, 使用カメラ:Nikon D7200


 

カラーグラデーション再現 - グリーン①

使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/8, シャッタースピード:1/200秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D7200


次にグリーンの再現を見てみよう。
グリーンはデジタルにとって再現の難しい色の一つだ。レンズ自身が持つカラーバランスが少しシアンに転がるだけでプラスチッキーな色合いになってしまう。
だがAT-X 14-20は、しっとりとした自然なグリーンを再現する。

 

カラーグラデーション再現 - グリーン②

使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/2000秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D7200


 

カラーグラデーション再現 - ブルー①

日が落ちた後に訪れる青き時間がブルータイムだ。この時間帯に撮影すると、その機材が仄かな明かりでどの程度グラデーションを再現してくれるかがわかる。
本作例をご覧いただくと、AT-X14-20mmは非常にクリアで、微妙な空のグラデーションを良く再現している。また、トキナーらしい深い青も出ている。

今回AT-X14-20mmの作例集を作るにあたり、実はこの作例を最初に撮影した。
レンズの作例集を作る時、僕は先入観を持たないでレンズを“試したい”と考えているため、レンズの技術的説明の一切を聞かず撮影に出ることが多い。今回も、敢えて何も聞かずにレンズをカメラにセットしロケに出た。
向かった先は、湾岸地区。目的の被写体は夕暮れの海と橋(東京ゲートブリッジ)。これは主に夕暮れの発色やブルータイムのグラデーションなどの発色を確認するためだった。
このファーストセッションを撮影した時に、その描写の良さにぼくは驚いた。


使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/4, シャッタースピード:1/40秒, ISO感度:ISO-640, 使用カメラ:Nikon D7200


 

カラーグラデーション再現 - ブルー②

使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/4, シャッタースピード:0.62秒, ISO感度:ISO-200, 使用カメラ:Nikon D7200


本作例では日の出前の空を撮影した。強い朝日が訪れる前の夜と朝の狭間。変化に富んだ空の色味を良く再現している。

 

カラーグラデーション再現 - ブルー③

使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/4, シャッタースピード:1/80秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D7200


本作例では、ブルーの色味とともに、ダークトーンの再現も見てみよう。
晩秋とは言え、山の朝は冷え込む。気温は-6度での撮影となった。朝日が出て露出が難しくなる時間帯だ。
空を白飛びさせないためには手前の凍る熊笹の露出を落とす必要が出てくる。実践の撮影でもそうして撮影を行い後にRAW現像でダークトーンを調整したのだが、調整を行った手前の熊笹の部分にはしっかりと情報が入っていた。
凍る熊笹の質感や朝の青みがかった色、また拡大してみると葉の筋などを再現していた。

 

ボケ味①

使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/5000秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D7200


ガラスのオーナメントの背景に、盛大に丸ボケが出るように撮影した。口径食もなく綺麗な丸ボケだ。

撮影協力:箱根ガラスの森美術館

 

ボケ味②

使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/400秒, ISO感度:ISO-800, 使用カメラ:Nikon D7200


ボケ味はしっとりとした味わいを見せる。

撮影協力:箱根ガラスの森美術館

 

ボケ味③

使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/8000秒, ISO感度:ISO-200, 使用カメラ:Nikon D7200


榛名湖でお話させていただいた方がワンちゃんを撮影していたのでお願いして僕も撮影させていただいた。聞けばこのワンちゃんはモデル犬だとか。通りで凛々しい姿である。
さて、作例を見てみよう。ピントを合わせた目の部分は瞳の黒い部分までをしっかりと再現し解像し、そこから一気にボケていく。単焦点レンズに迫る美しさである。

 

フレア・ゴースト

使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/7.1, シャッタースピード:1/1000秒, ISO感度:ISO-200, 使用カメラ:Nikon D7200


日の出と雲海を撮影した。フレア、ゴーストもよく抑えられているようだ。

 

ディストーション

箱根ガラスの森美術館の、庭園からヴェネチアン・グラス美術館エントランスへ続く橋にかけられたクリスタル・ガラスのアーチ「光の回廊」。
垂直に伸びるアーチの柱がまっすぐに写っており、画面下から伸びる欄干の線も画面中心に向けてまっすぐ伸びている。ディストーションは綺麗に収まっている。

撮影協力:箱根ガラスの森美術館


使用焦点距離:19mm(35mm判換算焦点距離:28.5mm), 絞り値:f/5.6, シャッタースピード:1/640秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D7200


 

ナイトスナップ①

使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/30秒, ISO感度:ISO-640, 使用カメラ:Nikon D7200


F2という明るさは速いシャッタースピードが稼げるため、こうした夜の街並みを撮影することにも向いており、手持ちで軽快に動き回り撮影することができる。また、ノイズリダクションが気になるレベルまでISOを高くせずに撮影することができるため、起伏感が失われた画にならない。

 

ナイトスナップ②

使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/2, シャッタースピード:1/20秒, ISO感度:ISO-640, 使用カメラ:Nikon D7200


 

「あとちょっと」ができる


使用焦点距離:15mm(35mm判換算焦点距離:22.5mm), 絞り値:f/4, シャッタースピード:1/320秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D7200

使用焦点距離:20mm(35mm判換算焦点距離:30mm), 絞り値:f/4, シャッタースピード:1/320秒, ISO感度:ISO-100, 使用カメラ:Nikon D7200


撮影の現場ではしばしば見られることだが、上述のように単焦点レンズでは「あとちょっと」寄ったり引いたりができないことがある。
この作例は橋の上から撮影したものだが、右下部分の橋を照らす街灯の土台が邪魔なため左に動きたいのだが、どうにも左にはスペースがなく残った手段は前に出る他ないのだが、前に出てしまっては自分が落下してしまう。
そんなときこそ「ちょい足し」の出番である。ズームリングを動かし街灯の土台を画角から消しシャッターを切った。AT-X14-20mmは単焦点レンズの味わいをそのままに「ちょい足し」ができる便利なレンズである。


 

明るいレンズだからできること

使用焦点距離:14mm(35mm判換算焦点距離:21mm), 絞り値:f/5.6, シャッタースピード:1/8000秒, ISO感度:ISO-800, 使用カメラ:Nikon D7200


1/8000秒というシャッタースピードにこだわってみた。荒々しい流れ、飛沫、速いシャッタースピードだからこそ撮れる水の姿だ。
条件にもよるが、1/8000秒で撮影するためにはある程度感度を上げて撮る必要が出てくる。メジャーで訪れやすい滝は別だが、僕が撮影に訪れる滝のある場所は、岩肌の影になっていたり、奥まった場所にあったりで暗めの場所にある場合が多い。
今回はISO800で撮影を行ったが、もう一段二段暗いレンズであればさらに上の感度での撮影となる。そうなれば、昨今綺麗になったとは言え高感度撮影ゆえのベタっとした画になってしまう。
こうすることで、立体感のある荒々しい水の姿を捉えることができる。

 
まとめ
美味しい部分だけを切り取った単焦点レンズのようなショートレンジズーム。一言で表すなら「単ズームレンズ」と表現することができる。
 
 

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