Tokina Ambassadors

Tokinaアンバサダーによる写真の世界

トキナーレンズの高画質をより引き出す技術

AT-X 16-28 F2.8 PRO

AT-X 16-28 F2.8 PRO FX

Tokina AT-X 16-28 F2.8 PRO FX(以降AT-X16-28とする)は、広角のトキナーが満を持して2010年に発売したフルサイズ広角ズームレンズで、発売から3年経つ現在でも安定した人気を誇るモデルだ。

高級感のある外見、静かなで素早い動きのAF駆動システム、高級硝材料をふんだんに使って作られたAT-X16-28は、手触りも良く違和感のない操作が可能で、その描写は中心、周辺ともに秀逸な解像力を持ちズーム全域で安定した描写を見せる。また、条件の悪い光の中でもしっかりと情報を撮像素子に送ってくれるため、後処理やレタッチも非常に楽なレンズだ。AT-X16-28の性格を一言で言い表すなら「懐の深いレンズ」で、こんなところまでキチンと情報が入っているのかと再現する画に驚くことが何度もあった。

筆者はロングラン使用を前提としてレンズを預かり、-30℃の極寒冷地からヨーロッパ各地、そして日本国内と様々な場所でAT-X16-28使い込んでみた。
発売から月日も経ち昨今のカメラ事情も変わり、組み合わされるカメラも多画素化が進んでいる。その事から今回、機能的側面については高橋良輔先生の秀逸な解説を合わせて読んでいただくとして、筆者は多画素化されたカメラとの相性やロングランで使用したからこそ分かる日常の使い勝手などの実践的な側面を中心に述べ、以下作例とともに本稿を展開したい。 (使用カメラは、2013年9月1日現在35mmデジタル一眼レフ中最も多い画素数であるNikon D800&D800Eを使用。)

また、いつも通りレンズの実力を引出すための補正、レタッチを加えたものは解説を加えていくこととする。


 

目次 [開く]

 

作例01 解像力試験01

17mm、ISO-1600、1/15秒、f/11


About

スペイン・トレドの大聖堂での一枚だ。
まるでチャート表のような非常にレンズに厳しい被写体だ。隅から隅まで彫刻が施され、ともすれば解像度の低いレンズでは解像しきれないほど厳しい祭壇である。しかも条件は光の回らない室内、さらにヨーロッパの大きな教会は三脚の使用は不可であることから当然ノイズリダクションのかかる高感度での手持ち撮影となる。

作例写真とするにはあまり条件が良くないな、と思いつつもシャッターを切って見るとその実力に驚いた。
お世辞抜きでこれは驚異の解像力であると筆者は思う。是非ともオリジナルデータを拡大して見ていただきたい1枚だ。
中心に置いた祭壇の彫刻、その質感、彫られている人々の表情はもとより、さらに細かい細工までしっかり解像している。
周辺部分でも秀逸な解像を見せている。画面下部の柱の彫刻画面上部左右の天井アーチ部分の解像ともに秀逸だ。また、画面最上部の天井部分は光が回らない条件ながらしっかりと情報を撮像素子に送っており「懐が深い」ことが分かる。

昨今のカメラは高感度ノイズリダクションを含め、各種ノイズリダクションの性能が上がったとはいえISO1600ともなればノイズリダクションが掛かり、カメラと組み合わせるレンズによっては画が眠くなることもある。しかし、AT-X16-28は解像が高くまたエッジの立ちが良いためノイズリダクションによる眠さが目立たないレンズでもあるのだ。

Retouch

特に必要を感じることが無かったが、より解説を分かりやすくするために明るさ(シャドウ部分)を若干明るくしている。

 

作例02 解像力試験02

16mm、ISO-100、1/160秒、f/11


About

先ほどの作例では平面に近い構図での解像であったが、2枚目は距離のある画の解像である。
イタリア・ドロミテ地方で撮影した一枚だ。御覧の通り、広い草原の奥に象徴的な岩山と空という実践的かつオーソドックスな構図で、国内では北海道美瑛町や熊本阿蘇など、また各地の牧場や棚田などの撮影で筆者が良く使う構図構成だ。
「緑」という色は色反射が低く明度が下がれば下がるほど解像が難しくなる色で、また、空の「青」と組み合わせるとそのレンズのカラーポイントがどの色に転んでいるかが良く分かる色でもある。

さて肝心の解像であるが、手前の草原から奥の岩山まで秀逸に解像していることが見て取れる。手前に配置した草の細かい質感や奥の岩山の質感もしっかりと解像ができている。こうした構図は奥にある岩山の再現が重要で、奥の岩山がキチンと解像されていると画全体がシャッキリとした印象の画になる。
前述のカラーポイントもトキナー伝統のカラーポイントで、一連のTokinaレンズらしくニュートラルである。色乗りも良く空の青さや草原の小さな花々の色再現もとても自然に再現されている。また、高コントラスト、いわゆる「ヌケ」の良さもしっかりこの1枚に反映されており清々しい印象を与えてくれている。

Retouch

特に補正の必要を感じなかったのでそのままでOKとした。

 

作例03 ディストーション試験01

16mm、ISO-100、1/320秒、f/5.6


About

イタリア・ベネチアで撮影した一枚である。ベネチアの路地裏とでも言おうか、観光都市の裏側とでも言おうか、何とも生活感のある場所でつい撮影したくなった。
広角レンズらしく遠近感を出し手前からまで一気に入れ込んでシャッターを切った。
広角レンズは、特性上歪曲収差が発生しやすくその補正のさじ加減がレンズの性格を表すものの一つにもなる。AT-X16-28の歪曲収差は非常に良好に補正されており、建物のまっすぐな線がキチンと出るレンズである。

Retouch

明暗が激しい被写体であることから、撮影時はもっとも輝度の高い画面中央に配置したボートに白飛びするかしないかギリギリに露出を合わせ撮影し、後にPCでニコン純正ソフトを使いシャドー部分のみを見た目に合わせ完成とした。

 

作例04 ディストーション試験02

16mm、ISO-100、1/500秒、f/8


About

この一枚もベネチアで撮影した作例だが、良好な歪曲収差の補正を施されながらも広角レンズらしい味わいはキチンと保たれていることも証明してくれた。
大きく入れ込んだ橋の伸び具合、中央のボート、対岸のホテルの大きさ、この配置は広角レンズだからこそ成せる構図構成で広角レンズらしい味わいは良いさじ加減で保たれている。

Retouch

特に補正の必要を感じなかったのでそのままでOKとした。

 

作例05 ディストーション試験03

16mm、ISO-100、1/160秒、f/11


About

スペイン・メリダで撮影した一枚だ。あおり構図でのダイナミックな画作りも真っすぐな線が描けるからこそ積極的に取りたくなる構図だ。
AT-X16-28は縦横ともに素直な線が描けるためファインダーを覗いての構図も取りやすくまた仕上がった写真も伸びやかな視覚効果が得られやすい。これが波打つような線になってしまうレンズの場合視覚効果も得にくくまたファインダーの覗いてもなかなか構図が決まらなかったりする。ちなみにこの一枚は違和感なくスっと撮った一枚である。

Retouch

特に補正の必要を感じなかったのでそのままでOKとした。

 

作例06 ディストーション試験04

16mm、ISO-100、1/250秒、f/14


About

作例05と同じくスペイン・メリダで撮影した古代遺跡の円形舞台である。引いた画では円形舞台の半円が綺麗に半円となって再現されており、また建物も真っすぐに再現されていることが分かる。

Retouch

特に補正の必要を感じなかったのでそのままでOKとした。

 

作例07 ボケ味試験01

28mm、ISO-200、1/1000秒、f/2.8


About

ドイツ・ローテンブグルでの一枚である。AT-X16-28は広角レンズでありながらも美しいボケ味が楽しめるレンズである。望遠端28mmを使い車体をナメで撮影すると手前も奥もふわりとした繊細な一枚を撮影することができる。

Retouch

特に補正の必要を感じなかったのでそのままでOKとした。

 

作例08 ボケ味試験02

28mm、ISO-200、1/2500秒、f/3.5


About

ドイツ・ネルトリンゲンにあるダニエル塔での一枚である。ネルトリンゲンの街を一望できるダニエル塔に登り撮影をしているときにひょっこり現れたを撮影した。
人懐こいでレンズにすり寄ってきてしまう猫であったが最短撮影距離28cmの強みを活かし接近戦で撮影した一枚だ。この一枚もふんわり感を出したいと思い望遠端28mmで撮影し絞りもF2.8 2/3でシャッターを切った。広角レンズらしからぬふんわりとした一枚である。 ちなみにこの後このはレンズの前玉にすり寄って鼻油をぬって去って行ったのである。

Retouch

特に補正の必要を感じなかったのでそのままでOKとした。

 

作例09 コントラスト試験

16mm、ISO-100、1/320秒、f/13


About

スペイン・アンダルシア地方を走っているときに見かけた農地での一枚だ。何とも立体感のある空をそのまま再現してくれている。高コントラストのレンズだからこそ出来ることであり、また一連のトキナーレンズらしいトキナーブルーの青空である。

作例02の所でも述べているがカラーバランスも非常にニュートラルで青の対色黄色をアクセントにし撮影したが画に破綻が無くまた色飽和も起きていない。こうした画で重要なのは土のしずる感じである。畑の写真などを撮る場合コントラストの低いレンズで撮影すると土が乾いて見えてしまう時がある。実際は元気な土であるにも係わらず、レンズの低コントラストが招く土の乾いた感じは、畑のそのものの印象が悪く見え、ひいてはそこから取れる作物の印象まで悪くなってしまう時がある。

ゆえに我々プロフォトグラファーにとって畑の写真の撮影や農作物の撮影を依頼された場合など土の色の再現なども非常に重要になってくるのである。AT-X16-28は土のしずる感もきちんと再現している。

Retouch

特に補正の必要を感じなかったのでそのままでOKとした。

 

作例10 グラデーション再現試験01

21mm、ISO-400、1/250秒、f/8


About

イタリア・ベネチアの夕暮れを撮影した一枚だ。夕暮れの弱い光の空はグラデーション再現の作例にはうってつけである。しかも作例のように雲が出ていると、よりレンズの実力が試されることになる。コントラストの高さと高解像度がもろに反映されるのが、カラーグラデーションの再現でもある。派手に焼ける小焼けよりもこうした曇りに近い状態の再現は非常に難しく空に張り出した雲の微妙な起伏や明暗をキチンと再現することが出来るのは、このレンズが高解像、高コントラストであり基本に忠実なレンズである証拠だ。

Retouch

特に補正の必要を感じなかったのでそのままでOKとした。

 

作例11 グラデーション再現試験02


About

東京の街並みを撮影した一枚でマジックアワーの色再現も見てみよう。 日没から夜までの短い時間の中で急激に空が変化していく時間帯「マジックアワー」。この時間はシャッター一枚ごとに空の色が変わると言っても過言ではない時間帯だ。そのマジックアワーの終焉近くに青が際立つブルーアワーがやってくる。空の色に夕の赤が消えて行くころ街は青味掛かっていく。トキナーブルーの深みのある青を見せてくれるAT-X16-28は一味違った青い街の一枚を提供してくれる。

Retouch

特に補正の必要を感じなかったのでそのままでOKとした。

 

作例12 ナイト撮影試験01

16mm、ISO-3200、1.6秒、f/3.5


About

カナダ・イエローナイフでオーロラ(ノーザンライツ)撮影を行った時の一枚だ。
-30℃と痛いほどの寒さの中撮影を行った。カメラやレンズももちろん-30℃の中で動かさなくてはならずどうなる事かと思いきや、筆者の心配をよそに何事もなかったように平然と動いていた。ピントリング、フォーカスリングもいつも通り可動し、またAFもきちんと駆動していた。

撮影ポイントに到着するとすぐにオーロラが現れあわてて三脚を据え撮影に入った。美しく淡い緑のオーロラは非常に繊細でレンズの実力通りの描写になる。F2.8の明るさと高解像度の実力はここでも遺憾なく発揮された。また深みのあるトキナーブルーの夜空も非常に印象的な一枚にしてくれている。

Retouch

特に補正の必要を感じなかったのでそのままでOKとした。

 

作例13 ナイト撮影試験02

16mm、ISO-6400、15秒、f/2.8


About

日本の大分県で撮影した天の川である。
この日は条件が良く満点の星と綺麗な天の川が夜空にかかっていた。街明かりも低い雲が遮ってくれて空には光害の影響があまり見られなかった。ISO6400まで感度を上げ空いっぱいに広がる星空を撮影することにした。
エッジの立ちが良いAT-X16-28ならば高感度ノイズが掛かっても画に破綻が無く美しい星空の撮影が可能である。

Retouch

撮影時ピクチャースタイルはスタンダードであったが、天の川の銀河感を再現するためビビットへ変更、その後隠し味程度コントラストを若干上げ完成とした。

 
まとめ
昨今デジタル一眼レフの性能は飛躍的に上がり画素数も驚くほど多画素化された。今後もデジタルテクノロジーの進化は変わることなく続いてゆくだろう。
今回作例撮影のために使用したカメラD800、D800Eが持つ3600万画素は黎明期では考えられなかった画素数である。400万画素時代を知る筆者は驚くばかりだ。

現在のそしてこの先のデジタルテクノロジー、特に撮像素子の多画素化を活かすためにはレンズの基本中の基本「高解像力」、「高コントラスト」を備え持ったレンズでなければそのアドバンテージを活かしきることができない。
AT-X16-28は進化するデジタルテクノロジーのアドバンテージを活かす実力を持っている。
 

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