高橋良輔 通称「カメ高」。1960年、愛知県出身。広告写真スタジオ、出版社勤務などを経てフリーランスフォトグラファーとなる。また経済誌記者の経歴もあり、その独自の観点からカメラ専門誌などに寄稿、著書も多数ある。広告からエディトリアルと活動のフィールドは広く、撮影では中米から地中海までラテン諸国を数多く歩く。また各媒体で精力的に作品を発表するとともに、個展・グループ展も数多く開催している。
AT-X M35 PRO DX
AT-X M35 PRO DXはAPS-Cデジタル一眼レフ専用として生まれた新時代のショートマクロレンズだ。これまでマクロレンズは35mmフィル
ム時代の名残を残し100mmクラスが主流だったが、撮像素子の大きさから焦点距離が加算されてしまうAPS-Cフォーマットのデジタル一眼
レフでは、望遠化することにより使いにくい場面もあった。しかしこのAT-X M35 PRO DXは35mm判換算で約52.5mm(1.5倍加算時)となり
撮影距離が正常化。被写体と程よい距離感を保てるようになったことは歓迎すべて点だ。マクロレンズとはその定義上、最大撮影倍率
はどのレンズでもほぼ一律であり変わりはない。しかし焦点距離による撮影距離(ワーキングディスタンス)は大きく異なり、焦点距離が
長くなれば撮影距離も伸びていく。APS-Cフォーマットではさらに望遠化が進む性質から、このようなショートタイプのマクロレンズの
存在意義は大きなものがある。テーブルの上の小物や花などを撮る場合でも、イスに腰掛けたままでも撮れるのがこのレンズの特徴であり、
なにげない日常のシーンをクローズアップするのに最適な1本だ。
キヤノンEOS 40D 絞り優先AE(F4、1/800秒)/WB:オート/ISO 200
このレンズは背景を大きくぼかすというより、作例のように状況をある程度説明しながらクローズアップできる点が特徴だ。この描写特性は焦点距離に起因しており、100mmクラスより画角が広いことで周囲をより広く取り込めているわけだ。画質面ではAT-X M100 PRO Dと同様に、シャープさのなかに柔らかさが同居する理想的なもの。解像力がありながらギスギスとしないのは、ぼけの柔らかさによるところが大きい。それゆえに何を撮っても実に絵にしやすい。
キヤノンEOS 40D 絞り優先AE(F4、1/250秒)/WB:オート/ISO 200
被写体までの距離は約30センチほどで、すぐ手が届く範囲にある。この写真もファインダー上で被写体を見ながら、片手で器を回転させながらベストな角度を決めながら撮ったものだ。こういった距離感で撮影できるのがAT-X M35 PRO DXの良さであり、日常的なマクロ撮影に向く最大の理由である。日当たりのいいテーブルの上にいろいろなものを置いてみて、ゆったりとイスに腰掛けながらマクロ撮影するととても楽しい。またコンパクトであるため、外出先でも気軽に使えて便利だ。
キヤノンEOS 40D 絞り優先AE(F13、1/60秒)/WB:オート/ISO 400
金属質の被写体の表現でも、シャープさと柔らかさが同居して雰囲気を盛り上げてくれる。しっかりと絞りライター部分の被写界深度を確保して撮影したが、その後ろのチェーンやメダルのぼけはごく自然で、ニ線ぼけにならずにそのまま背景に溶け込んでいる。撮影はマニュアルフォーカスを用いているが、独自のワンタッチフォーカスクラッチの操作感は良く、ピントリングのタッチも秀逸。マクロレンズに必要なしっとりとした感触があり、微細な指の動きにも的確に反応してくれた。
キヤノンEOS 40D 絞り優先AE(F2.8、1/800秒)/WB:オート/ISO 400
35mmという比較的短い焦点距離ながら、F2.8の明るさとバランスのいいレンズ設計により、ぼけの質・量ともに満足できるものがある。とくにぼけの中に硬さがないため、写真のようにごく自然に背景とぼけがなじんでいる。絞り込むと被写界深度の法則によって背景にピントは合ってくるが、その過程でも描写のテイストは保たれるので、絞り値の選択は自由自在だ。ぼけを写真のアクセントとして使うならば、ぼけの量だけではなく“質”にもとことんこだわってみたい。
キヤノンEOS 40D 絞り優先AE(F5.6、1/2500秒)/WB:オート/ISO 200
マンションのベランダの手すりにガラスのコップを固定。そこに花を生けて空を仰いで撮影したひとコマ。狭いベランダでこういった撮影ができるのも、撮影距離の短さによるところがなにより大きい。また解像力の高さにも特筆すべき点があり、とくに茎や額の部分のケバ立ちが数えられるほど克明に描写されているのには驚いた。とくに高画素タイプのデジタル一眼レフではレンズ側にもさらに高い解像力が求められるが、約1,000万画素のこのカメラでは、まだレンズ側に余裕があると感じた。
キヤノンEOS 40D 絞り優先AE(F3.2、1/60秒)/WB:オート/ISO 400
ステンドグラスからの光が差し込む教会のなかで撮影したもの。色ノリの良さはトキナーレンズ全般にいえることだが、このレンズも忠実なカラーバランスをもちながら色ノリは良好だ。こういったシーンでは写真にしてしまうと、現物よりトーンダウンしてしまうことが多いものだが、今回の撮影はレンズの性能が決め手となった。しっかりとした色ノリに加えぼけの美しさも絶品! 撮影者の期待に合格点以上の成果を出してくれる。数値では測りきれないなにかをこのレンズは確実に持っているようだ。
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