都会の夜景を撮影する場合、標準ズームの次に使用頻度が高いレンズは?
そう訊かれたら、望遠ズームかなと思うかもしれないが、意外と重宝するのが広角ズーム。とくにビル群の全容やジャンクションなど、大きな被写体が多い夜景では、その使用頻度は高い。
今回使う機会を得たこのトキナーAT-X16-28 F2.8 PRO FXもその一本。標準ズームでは収まらない被写体に出会うたびに、その16mmから28mmまでの画角の真価が発揮される。
ズシリと重いその感触は、最近の小さくて軽いレンズに慣れた人は驚くだろう。
だが使っていくうちに、それが触る喜びや撮影中の安心感に代わっていくから不思議だ。
重量バランス的に考えても、小さなカメラに付けるよりは、やはりフルサイズのカメラに付けて、その画質も合わせて楽しんでいただきたい。けっして持ち運びやすいとか、軽快に撮れるタイプのレンズではないが、手にするたびに、いま自分は作品を撮っているのだと再認識させられ、こだわりを持って撮影に挑んでいる人向けの一本だ。
夜景的には、9枚羽根の絞りから得られる18本の光芒が、街灯などから柔らかく伸びている。周辺部の色収差も少なく、まさに夜景撮影好きにはお勧めのレンズ。またF2.8の明るい開放値を駆使すれば、高感度ISOで手持ちの夜景撮影も可能で、夜のスナップ撮影も楽しめる。フォーカスリングを手前に引くだけで、簡単にMFに切り替わるので、MFを多用する人にも便利だろう。
では夜景写真家がこのレンズで切り取った夜の世界を、みなさんとともに見て行くとしよう。
トワイライトの汐留の高層ビル群を、下から見上げる。
肉眼ではもっと暗いが、空と街の明るさが揃うこれぐらいの頃が、都会の夜景写真の絶好の時間帯。旧汐留貨物駅の跡地を再開発したこの一帯は、ビルの密度が高い地区。広く写したいので最広角の16mmで街を切り取るが、周辺部分の色収差も少なく好印象。三脚を使って絞りをF11まで絞り込んで、8秒の露光時間という正統派の撮影手法を用いたが、夜景写真家の期待に十分応えてくれた。
カメラ機種名 | Canon EOS 5D Mark III | 撮影モード | 絞り優先AE |
---|---|---|---|
Tv(シャッター速度) | 8秒 | Av(絞り数値) | F11 |
ISO感度 | 160 | 焦点距離 | 16.0mm |
ホワイトバランス | 白色蛍光灯 |
歳末で賑わう17時ちょうどの銀座の交差点を狙う。
夜景写真の醍醐味である光跡は、三脚を使って長時間露光を行えば、実は簡単に撮れる。シャッターが開いている間に移動した光が、光跡となって描写されるからだ。また明るい繁華街では、車体に反射した光が思いもしない模様を描いてくれるので、予想外の楽しみもある。
光跡は肉眼では見られない、夜景写真ならではの醍醐味なのだ。ここでは正面の銀座和光の外壁の色を暖色で表現するために、ホワイトバランスは「くもり」を選択してみた。
カメラ機種名 | Canon EOS 5D Mark III | 撮影モード | 絞り優先AE |
---|---|---|---|
Tv(シャッター速度) | 2秒 | Av(絞り数値) | F11 |
ISO感度 | 100 | 焦点距離 | 18.0mm |
ホワイトバランス | くもり |
同じく銀座の交差点を、今度は手持ちで夜景撮影。
実はいつも気になっている、この交差点の交通標識を裏からパシャリ。標識の間から時計台を覗かせているのが、自分のちょっとしたコダワリ。
別にこの標識を入れなくても十分に撮れるのだが、軽い気分で夜景スナップを楽しめるのも、明るい開放値のこのレンズならでは。ピントはAFで、後ろの銀座和光に合わせてみた。夜でも昼間と同様のスナップが楽しめる、新しい時代の夜景撮影のスタイルなのだ。
カメラ機種名 | Canon EOS 5D Mark III |
---|---|
撮影モード | 絞り優先AE |
Tv(シャッター速度) | 1/50秒 |
Av(絞り数値) | F2.8 |
ISO感度 | 640 |
焦点距離 | 21.0mm |
ホワイトバランス | くもり |
スカイツリーの撮影スポットは数多くあるが、この十間橋もその一つ。風がなければ、鏡のような北十間川の水面にスカイツリーの全体が映り込むのだが、これを全部写すのは、普通のレンズでは入りきらなくて大変。標準ズームやコンデジ、それにスマホで撮ろうとして、入りきらないと嘆いている人を何人も見かけたが、このような場合に威力を発揮するのが、このレンズの超広角域。
これなら先端から水面の先端までバッチリ入るのだ。
カメラ機種名 | Canon EOS 5D Mark III |
---|---|
撮影モード | 絞り優先AE |
Tv(シャッター速度) | 30秒 |
Av(絞り数値) | F11 |
ISO感度 | 200 |
焦点距離 | 16.0mm |
ホワイトバランス | 太陽光 |
東京駅と言えば開業当時の姿が復元された丸の内側が有名だが、大丸百貨店があった八重洲側も、未来的な様子に改築されて要注目。
グランルーフと呼ばれるこの一帯は、白い大きな幕が天井を覆い、写真的にはかなり魅力のある被写体。またしても大きな構造物なので、標準ズームで全景を入れるには難しいが、ここでもこの広角ズームが大活躍。
これまで収まりきれなくてあきらめていた構図が、この一本で撮れてしまうのだ。
カメラ機種名 | Canon EOS 5D Mark III | 撮影モード | 絞り優先AE |
---|---|---|---|
Tv(シャッター速度) | 2.5秒 | Av(絞り数値) | F8.0 |
ISO感度 | 100 | 焦点距離 | 16.0mm |
ホワイトバランス | 太陽光 |
全館点灯のイベントで、全ての窓に明かりが灯った横浜みなとみらい地区。
都会のビル群の撮影は、窓の明かりが多い平日に行うのが基本。休日だと明かりが少なく、どうしても寂しい見栄えになってしまうが、このようなイベントがあると曜日に関係なく華やかできれいだ。
でも建物だけを撮っても味気ないので、手前に回転する遊園地の遊具を入れてみた。三脚を使ってシャッターを開けているだけで簡単にきれいな光跡が撮れるので、ぜひ試して欲しい。
カメラ機種名 | Canon EOS 5D Mark III | 撮影モード | 絞り優先AE |
---|---|---|---|
Tv(シャッター速度) | 1.6秒 | Av(絞り数値) | F8.0 |
ISO感度 | 100 | 焦点距離 | 20.0mm |
ホワイトバランス | 白色蛍光灯 |
先ほどの場所から少し前に移動して、別の遊具を構図に大きく入れて撮ってみる。
光跡は肉眼で見えないのだが、デジタルカメラでは撮ったその場で確認が出来るので、光跡の具合を見て何度も撮り直しができるのも嬉しい。光跡は長時間露光で手軽に撮れる、構図にちょっとした味を加える調味料のようなもの。
ビルの窓の明かりは、夜景写真ではレンズの性能が如実に表れるテストチャートのようなものだが、隅々まで良好なのには目を見張る。
カメラ機種名 | Canon EOS 5D Mark III | 撮影モード | 絞り優先AE |
---|---|---|---|
Tv(シャッター速度) | 2秒 | Av(絞り数値) | F8.0 |
ISO感度 | 100 | 焦点距離 | 20.0mm |
ホワイトバランス | 白色蛍光灯 |
夜景の被写体はビルやイルミネーションだけではない。私はこのような一見絵にならなさそうな場所も好きで、よくカメラに収める。
ここでは最初に壁の矢印の模様が気になって三脚を立てた。だれか通れば面白いのになと待つこと十数分。ちょうどやって来た二人組の女の子は、おそろいのサンタクロース風なスカート。
昨今は個人情報等の観点から、人物が写る写真はなるべく遅いシャッター速度でブラしているのだが、これはちょっとブレすぎたかな・・・(笑)
カメラ機種名 | Canon EOS 5D Mark III | 撮影モード | 絞り優先AE |
---|---|---|---|
Tv(シャッター速度) | 1/4秒 | Av(絞り数値) | F5.0 |
ISO感度 | 1600 | 焦点距離 | 18.0mm |
ホワイトバランス | オート |
少し離れて、全館点灯のビル群を見渡せる場所にやって来た。
正面にはかつて中古車展示場があったのだが、いまは結婚式場が建っていて、その教会風の建物がひときわ目を惹く。都会の景色は数年で変化するが、私は寂しいと思うより、移り替わるさまを前向きに楽しむようにしている。
ここでは建物だけを撮るよりも、脇役としてやって来た遊覧船を、光跡として入れてみた。水面が風でざわついていたのがちょっと残念。
カメラ機種名 | Canon EOS 5D Mark III | 撮影モード | 絞り優先AE |
---|---|---|---|
Tv(シャッター速度) | 6秒 | Av(絞り数値) | F11 |
ISO感度 | 100 | 焦点距離 | 20.0mm |
ホワイトバランス | 白色蛍光灯 |
[著作権および画像利用についてのご注意]
本スペシャルページで提供している「実写生データ」の著作権は、撮影者である 川北茂貴氏に、使用権は 株式会社ケンコー・トキナー に帰属しています。著作権所有者および 株式会社ケンコー・トキナー への事前の承諾を得ること無しに、その全てまたは一部を、いかな る形式、いかなる手段によっても、複製・改変・再配布・再出版・表示・掲示または転送することは禁じられています。
本スペシャルページの「実写生データ」は、お客様のコンピュータースクリーン、もしくはお客様ご自身のプリンターまたは プリント手段等による、私的な画像確認での利用に限ってのみ、ご利用いただけます。