フランスのフィルターメーカーで、角型フィルターのラインナップに定評がある「コッキン」は長年、プラスチック製のハーフNDフィルター(グラデーションフィルター)を作り続けてきました。高精度な光学プラスチックを使い、染料による染色技術で様々な種類のフィルターをラインナップし、高い評価を得てきましたが、2016年秋に満を持してガラス製のフィルターシリーズ「NUANCES」の一つとして、ハーフNDフィルター(グラデーションフィルター)のシリーズを発売しました。NUANCES GNDシリーズです。そこで、コッキンフィルターの中でずっと定番である「121M」のうち、Lサイズ(100mm幅)の「Z121M」と、同等濃度の「NUANCES GND4S」を同じ場面で使って比較しました。
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コッキンZ121Mのサイズ違い「A121M」 | コッキンNUANCES GND4S |
まず使う前にプラスチック製とガラス製のメリット、デメリットを整理すると
プラスチック製(コッキンクリエイティブフィルター)
プラス面
・バリエーションが豊富
・軽量
・お手頃価格
マイナス面
・染料のロットによる色味の差がどうしても出る
・傷が付きやすい
・染料が褪色するため、PLフィルター同等の使用期限(約7年)がある
・ガラス製に比べるとフレアやゴーストが出やすい
ガラス製(コッキンNUANCES)
プラス面
・色の精度が高い
・コーティングによりフレアやゴーストが抑えられている
・傷が付きにくい
・褪色がなく長持ち
マイナス面
・バリエーションが少ない
・高価
・重い
といった点が挙げられます。コッキンNUANCESフィルターは、製品自体が高価なものの、製品自体が傷つきにくく長持ちするため、使用機会が多くて長く使えば、十分元が取れるのかも知れません。
それでは、早速使い比べた結果を見てみましょう。
日が昇った海の光景
・効果フィルター未使用
トキナーAT-X 17-35 F4 PRO FX 1/500秒 F4 20mm域 ISO100
日がだいぶ上がっている状況で空の明るさがかなり明るい状況です。
・Z121M使用
トキナーAT-X 17-35 F4 PRO FX 1/500秒 F4 20mm域 ISO100
露出値は効果フィルター未使用のものと同じですが、空の明るさが抑えられ、雲の様子なども見えるようになりました。広角レンズでの撮影ですが、ハーフNDの境目もグラデーションで自然にわからなくできています。
・NUANCES GND4S使用
トキナーAT-X 17-35 F4 PRO FX 1/800秒 F4 20mm域 ISO100
太陽が上がっている中なので、露出値が変化しています。NUANCESのほうが空の色味がニュートラルに、Z121Mの方が青く見えます。これは染料のロット差があるので、必ずしもブルーになる傾向というわけではありませんが、NUANCESのほうがニュートラルな色傾向です。広角レンズでの撮影ですが、ハーフNDの境目もグラデーションで自然にわからなくできています。
岩場の情景
・効果フィルター未使用
トキナーAT-X 17-35 F4 PRO FX 1/160秒 F11 22mm域 ISO100
見た目はもっと岩場に光が当たって輝いているように見えるのに対し、撮ってみると暗い、という印象。見た目の印象に合わせるため、ハーフNDで調整してみました。
・Z121M使用
トキナーAT-X 17-35 F4 PRO FX 1/40秒 F11 22mm域 ISO100
ハーフNDフィルターを縦に使い明暗差を調整、岩場を明るく「輝いた」ように調整しました。Z121MはソフトグラデーションのハーフNDとはいえ、砂浜部分で境目が見えます。また、中央やや右寄りにオレンジ色のゴーストが出ています。
コッキンNUANCES GND4S
トキナーAT-X 17-35 F4 PRO FX 1/50秒 F11 22mm域 ISO100
Z121M同様に縦方向に使った明暗差調整です。Z121Mで見られたゴーストはなく、コーティングの効果が出ています。境目もなだらかで自然。色味もZ121Mがこのカットと比べればやはり少し青いようです。
フィルター自体の価格差が3倍以上もありますが、色味のニュートラルさやゴーストへの対策など、やはり最新のガラス製フィルターとしてのNUANCESの良さが出ています。とはいえ、Z121Mのお手頃価格も魅力に感じる方もおられるでしょう。いずれのフィルターも写真表現を大きく拡げてくれます。ぜひ製品を店頭でご確認下さい。
2017年4月21日「角型フィルター活用術」セミナーの内容から抜粋。
(写真・文:広報・宣伝課 田原 栄一)