桃井一至 - トキナーレンズで写す異国情緒


FiRIN 20mm F2 FE AF 新製品

FiRIN 20mm F2 FE AF ソニーのフルサイズミラーレスが人気だが、トキナーは2017年初頭に新ブランドFiRIN(フィリン)を掲げ、FiRIN 20mm F2 FE MFで、ソニーEマウントに参入。その第二弾として投入されたのが、本製品FiRIN 20mm F2 FE AFになる。

11群13枚の光学的な基本部分はAFモデル、MFモデル共通だが、MFモデルには動画撮影に向けて独立した絞りリングとフォーカス関連の指標類が採用されているのが外観上の大きな違いになる。AFモデルはマニュアルフォーカスリング以外の操作はボディ側に委ねられるためシンプルな外装だ。付属フードは、MFモデルは角型フード(BH-622)が付属。AFモデルは花型(BH-623)で、逆さ付け収納しやすいのがメリット。取付部は互換性があるので、お互い別途購入しての利用も可能だ。


私事ながらトキナーレンズとの付き合いは超広角単焦点レンズAT-X 17mm F3.5(1993年発売)から始まった。当時20ミリ以下は単焦点レンズが一般的。そのなか小型高性能で際立ち、気に入って使ったのを思い出す。
FiRIN 20mm F2 FE AFと焦点距離は違うが、単焦点のコンパクトな使い勝手の良さや優れた描写性能など、25年の時を経ても、血筋を受け継いだ同じ匂いを感じる。

20ミリは今でこそズームレンズに内包される焦点距離だが、それだけに単焦点レンズで登場するには意味がある。その筆頭が画質だが、写真を見てもらえばわかるように解像力は絞り開放より、かなり良好。もちろん、少し絞り込めばさらに向上して、拡大再生すればピリピリするほどシャープな写りが、目を楽しませてくれる。周辺部のボケがラグビーボール状に見える口径食も極めて少なく、ボケ形状に違和感ないのも特筆してもいいだろう。建築物など直線基調の被写体と向かい合えば、歪曲収差もわずかに見られるが、カメラ側のメニューでレンズ補正を「オート」に設定すれば、ボディ内の光学補正対応によってほぼ消える。

一般的にフルサイズ用超広角ズームの開放F値はF3.5近辺からの変動タイプか、F4固定。高級タイプでもF2.8止まり。単焦点の本レンズはF2で高級タイプと比較しても1段明るく、暗いシーンやボケ効果へ優位に働く。特にαの最新モデルに搭載される電子シャッター(サイレント)を使えば、高速側のシャッター速度が速められて、明るい日中でもレンズの明るさを駆使したボケ活用が可能になる。
広角レンズゆえにボケ量に過大な期待を寄せる製品でないが、それでも被写体に近づけば、ピントのきわ立つ大きなボケを見せてくれる。
企画担当者いわく、さらに明るい「F1.4」も検討したようだが、想定されるサイズから早い段階より見送ったとのこと。ファンとしてはF1.4モデル登場にも期待したいところだが、前玉がそれなりの曲率や口径サイズになるのは必死。光学フィルターの利用が容易でなくなる可能性も高い。ならば潔く「F2」に据え置き、日常的に持ち歩きやすい製品を目指した本製品も一利ある。

ミラーレス機の普及拡大により、交換レンズは大きな転換期に来ている。トキナーにとって、ミラーレス専用レンズは、Reflex300ミリに次ぐものだが、専用設計では、バックフォーカス(レンズ後端から、撮像素子までの距離)を短くコンパクトにできるほか、フランジバック(マウント面から、撮像素子までの距離)も短くなるため、設計の自由度が高く、ひいては高性能にも結びついている。 コンパクトな高性能をぜひ自分の目で確かめてほしい。

 

Index

 

作例01


About

広々した光景は、広角レンズの得意とするシーン。うねりのある小道を活かして、画面が単調にならないよう心がけた。空と緑の再現が心地よい。

 

作例02


About

庭作業のひとコマだが、水平を保ちつつカメラを下げて、遠近感の誇張を抑制。自然な広さを心がけた。明暗も幅広く、フルサイズらしい密な情報量を感じる。

 

作例03


About

空に伸びるラベンダー。近接撮影では、花と近くなりがちなため、太陽の方向を確認しつつ、自分の影が画面に影響しないよう注意したい。

 

作例04


About

群生するすずらんの葉の質感や立体感がリアルだ。高画質はカメラ性能に委ねるところもあるが、光の入口であるレンズが良くないことには始まらない。

 

作例05


About

被写界深度(ピントの合って見える範囲)の深さが、広角レンズの特長。
手前から遠くの山まで、しっかりピントが合ったように描写されている。

 

作例06


About

広角レンズ特有の遠近感で力強く見えるレンガ橋。積み方ひとつひとつまでも、精細にとらえられている。拡大再生すると惚れ惚れするほどだ。

 

作例07


About

手持ちで夜景撮影を楽しむ。明るいレンズではISO感度、シャッター速度共にゆとりができるため、結果として、高画質や失敗のない撮影に結びつく。

 

作例08


About

0.28mの最短撮影距離と開放絞りで撮影。周辺部まで形状変化が少ないボケであるのがよくわかる。この状況では広角レンズでも被写界深度は浅く、ピント合わせは慎重に行いたい。

 

作例09


About

広角レンズであっても、絞り設定のほかに近接や遠い背景を活かせば、ボケ活用は可能だ。トウキの群生する散策路だが、背景ボケがおもしろい。

 

作例10


About

おすすめできないが、画面に太陽を入れてテストを試みた。見ての通り強烈な光だが、フレアーなど見られず、拍子抜けするほど簡単にこなしてしまった。

 

作例11


About

踏切外より、伸びやかな線路を狙う。オレンジ色のユリが彩りを添えて、初夏の旅気分を盛り上げてくれる。

 

作例12


About

川の流れを表現するために、シャッター速度を1/10秒に設定。ボディ内手ぶれ補正搭載機種とコンビで使えば、手ブレの心配は無用だ。

 
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