萩原和幸
AT-X 165 PRO DX は、35mm換算で約24-75mmの画角をカバーする、所謂標準ズームと呼ばれるレンズだ。標準ズームと呼ばれるレンズは各メーカーからも発売されているが、ワイド側のスタートは17mmのものが多い。しかしこのレンズは16mmスタートとなっている。この1mmは意外に大きく、撮影時の気持ちの余裕がまるで違ってくる。35mm換算にすると、24mmか28mmか、ということなのだが、ポートレートを撮影で背景を取り込みたい場面で、この1mmによって表現の制限が変わることを私自身も実感している。ワイド側の50mmは35mm換算で75mmとなり、日常では必要十分の画角。この1本でほとんどの被写体の撮影に臨めることになる。
開放値は大口径F2.8通しで、開放値からレベルの高い画像を提供してくれる。SDガラスやLDレンズなど、非常に高性能なレンズを採用しているからこその描写で、開放値付近のF値の頻度が高いポートレートにおいてはとても心強い。 少し柔らかさを残しつつ、芯がある描写は、女性の肌の描写にはとても向いている。
このレンズ1本をつけ、スナップポートレートなど面白いだろう。テレ側50mmはモデルとの距離を大きく離すことなく、ワイド側16mmで広く撮影現場の雰囲気を写し込める。接近戦にも強い最短撮影距離0.3m、モデルとの距離を縮めること可能だ。
贅沢な作りで、描写は文句なく良い。ある意味、言い訳の出来ないレンズと言っていいだろう。良いショットを捉えるレンズはここにあるのだから、あとは撮影者が、シャッターをタイミングを作り出すのみ。撮影者を本気にさせる1本だ。
白い肌がフワッと浮かび上がるさまが美しい。少し憂いのある表情にと口元が、何かを話したげに感じ、見るものを引きつける。ボケはなだらかで柔らかい。テレ側50mmは35mm換算で約75mmと、ポートレート向きの画角。お互いの距離を自然に保ちながらカメラを向けることができる。これからポートレートを始めたい人にはうってつけの、使いやすいレンズだ。
キヤノンEOS7D 絞りF4.5 1/160秒 ISO100 WB:オート RAW 45mm域
少々低いポジションから、彼女に見下ろしてもらうように撮影。若干ワイド寄りの画角で、対角線を使いながら広がりを持たせた構図を意識した。標準域のズームで無理なくフレーミングできる。動きながら・会話をしながらの撮影には丁度いい。このレンズの描写にはパキパキした、乾いた印象が全くない。これは女性の肌を撮影するにはとても重要なポイントになる。
キヤノンEOS7D 絞りF4.5 1/200秒 ISO100 WB:オート RAW 18mm域
まっすぐな視線を、私もストレートに表現。絞りは開放近くにして、彼女の瞳にマニュアルでフォーカシング。眼差しのみが浮かび上がり、見るものを刺激する。このレンズの最短撮影距離は0.3m。もう少し近づこうと思えば近づけられる。でも、フレームいっぱいの彼女、満たされたキモチになった。
キヤノンEOS7D 絞りF3.5 1/160秒 ISO100 WB:オート RAW 45mm域
2.8という開放値は、日中の屋外ではそれほど意識しない数値かもしれないが、屋内に入ると、途端にその明るさの恩恵を感じる。背景をボカすことができ、シャッタースピードも稼げるので、フリーなアングルから三脚無しで撮影できる。この自由度も大口径レンズだからこそ。またレンズボディのバランスがよく、手に収まるような感覚。その点も手持ち撮影を後押しする。
キヤノンEOS7D 絞りF3.5 1/30秒 ISO100 WB:オート RAW 50mm域
キヤノンEOS7D 絞りF3.2 1/200秒 ISO200 WB:オート RAW 35mm域
横になる彼女、切ない表情…このようなポーズで必要なものは艶。艶を出すにはカリカリした鋭さはいらない。どこかしっとりと、でもとても繊細で、立体的な描写が欲しい。このレンズはそれらの条件を満たしてくれる。あとは、モデルと撮影者の息を合わせるだけだ。
ワイド側で撮影。開放近くの絞りながら髪の1本1本までキチンと描写され、高いレベルのレンズ性能を見せつける。16mmという画角は、思い切った広がりを見せてくれる。F2.8による、広角でありながらボカすことができた背景と距離感、モデルがこちらに飛び出してきそうな錯覚…。17mmではない、16mmはポートレートの表現の幅を、確実に広げてくれる。
キヤノンEOS7D 絞りF3.2 1/200秒 ISO200 WB:オート RAW 16mm域
背景の色や肌の色など、淡い色を多く組み合わせてみたが、それぞれの色は派手になりすぎず、トーンが美しい。彼女の可憐さを垣間見えるようだ。このカットでは彼女の瞳に確実にピントが来るように、マニュアルフォーカスを選択。絶妙なトルク感があり、ピント合わせが楽しくなる。
キヤノンEOS7D 絞りF3.5 1/640秒 ISO200 WB:オート RAW 45mm域
ポーズを決めず、スナップ風に会話を楽しみながら。モデルとの距離感を楽しみながらの撮影も標準ズームの醍醐味の一つ。16mmはフレーミングに余裕を持たせ、撮影そのものにも余裕が出る。コミュニケーションを図りながらのポートレートにはうってつけレンズだ。
キヤノンEOS7D 絞りF2.8 1/1250秒 ISO200 WB:オート RAW 16mm域
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