レンズベビー「ベルベット」入門 by 川合麻紀

レンズベビー「ベルベット」入門 by 川合麻紀

皆さん、レンズベビーってご存知ですか?
おおもとは20年位前に売られていました「掃除機のホースの先端に虫眼鏡のレンズ」を付けて作ったプロトタイプからスタートした、ユニークなレンズです。(今でもSpark2.0という製品は、当時の雰囲気を残しています)
私は、ごく初期のレンズベビーから、その楽しい描写のとりこになって、アメリカ・レンズベビー社の作る製品を愛用しています。

今回は、レンズベビー社のラインナップのうち「ソフトフォーカス」が魅力のベルベットシリーズの「描写の変化」について、紹介していきましょう。

ソフトフォーカスレンズは、レンズの前に取り付けてソフトの効果を出す「ソフトフィルター」と違い、F値(絞り)の設定でソフト描写が大きく変わります。現代のカメラでは、カメラ側の操作でF値を設定するものがほとんどですが、レンズベビーのレンズは、カメラと通信する機能がないということで「オールドレンズ」と同じ操作をします。

そのため、レンズベビーベルベットシリーズの場合、F値の設定はレンズ基部の「絞りリング」で行います。カメラ側のF値設定は「--」と表示されますが、驚かないでください。また、カメラによっては「レンズなしレリーズの許可」をしないとシャッターが切れなくってビックリすることがありますから、あらかじめチェックしておきましょう。

レンズベビーのベルベットシリーズには、焦点距離違いの3本がラインナップされています。28mm、56mm、85mmです。どの焦点距離を選ぶかは、普段自分が一番よく使う焦点距離に近いものを選ぶと、使いやすいと思います。私が一番使うのは56mmです。

どのレンズも、F値を開放にすると、ソフト感が強い描写で、F値の数字を大きくしていくと普通のレンズのようにシャープな描写になっていきます。その中間のところの変化で、好みのところを探って使っていくといいでしょう。

それぞれのレンズのF値の数字を変えて撮った写真を載せてみました。

ベルベット56

まずは、私が一番使うベルベット56での変化を紹介しましょう。
ベルベット56の絞りリングには、F1.6、F2、F2.8、F4、F5.6、F8、F11、F16の数字が書かれています。数字のところ以外でも、途中の絞り効果で使うことができます。
最短撮影距離(レンズ先端からの距離)は13cm、最大撮影倍率は0.5倍です。

以下画像クリックで拡大します。

F1.6
F2
F2.8
F4

この4枚の写真なら、選ぶなら、私の好みはF1.6かF2です。F2.8から急にソフト感が薄れて普通のレンズのようになります。

F1.6
F2
F2.8
F4
F5.6

この写真は画面下部の赤いチューリップにピントを合わせています。F5.6でも周囲はかなりまだソフト感が残っています。背景はグルグルと回るような描写です。どの絞りがいいか、かなり好みが分かれる被写体、距離感だと思います。ソフトが強い方がいいならF2あたり、普通のレンズっぽいけれども何となく周囲のボケ感や描写が違う方がいいならF4あたりがいい感じだと思います。

ベルベット85

次に、中望遠でベルベット56よりもクセがなくて使いやすい、ベルベット85での撮影例を紹介しましょう。
ベルベット85の絞りリングには、F1.8、F2、F2.8、F4、F5.6、F8、F11、F16の数字が書かれています。途中の位置で使うこともできますから、好きなボケ量を確認しながら操作すると良いでしょう。
最短撮影距離23cm(レンズ先端からの距離)、最大撮影倍率0.5です。

F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6

遠景を中望遠85mmにて。この絵柄の雰囲気だと、好きなのはF1.8です。F5.6でも中心はシャープですが、周囲は不思議なボケ感が出ています。ピント部分がシャープな方が好きならF5.6というのもありだと思います。

F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6

孔雀の置物が、ソフトが強いと輪郭がわかりにくいので、私ならF2を選びます。F2.8でもいいのですが、F2とF2.8のソフト感の差がかなりありますね。

ベルベット28

ベルベット56よりもさらにクセが強くて、使いこなしの難易度が高いといいますか、クセにチャレンジしたい方にオススメのレンズが、ベルベット28です。
ベルベット28の絞りリングには、F2.5、F2.8、F4、5.6、8、11、16、22の数字がありますが、F2.5よりも先に「+」(F2.2相当で常用範囲でない)があります。 最短撮影距離がレンズ先端から58mm、最大撮影倍率は0.5倍です。

+
F2.5
F2.8
F4

+はかなり滲みが強い印象で、F2.8まではかなりソフト感がある仕上がりになります。F4までくると、急に普通のレンズっぽい雰囲気ですが、周辺は流れるようなボケ感がまだ残っています。どのソフト感が好きかは好みです。見せる時のサイズでもどれを選ぶかは変わってきますが、私としてはこの絵柄ですとF2.5あたりが好みです。

河津さくらをアップ目で狙いました。この写真の場合には、F2.8くらいをセレクトすると思います。ベルベットシリーズは、どのレンズも1/2倍のマクロレンズとしても使えます。

+
F2.5
F2.8
F4
F5.6

どのレンズも、撮影距離によってかなりソフト感が異なって見えるので、慣れるまでは絞りを全部試してみるといいと思います。その中で自分の好みを見つけていただいて、あとは好きな絞りだけで撮るといいでしょう。 開放に近い絞りを使う場合、ピントがかなり難しいので、私の場合は、ミラーレス機を使い、ピント位置を拡大してからピント合わせをしています。

ベルベットシリーズは、独特で絵画的なソフト感が魅力です。色々な被写体で活用してください。