レフレックスレンズで動体撮影

レフレックスレンズで動体撮影
大浦タケシ

大浦 タケシ Takeshi Oura

写真家
宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマン、デザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌をはじめとする紙媒体やWeb媒体、商業印刷物、セミナーなど多方面で活動を行う。
公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。 一般社団法人日本自然科学写真協会(SSP)会員。

ミラーレンズあるいは反射望遠レンズとも言われるレフレックスレンズ。その構造から望遠、超望遠と言われる焦点距離を持つレンズです。部品点数が少なく比較的安価に製造できることもあり、1970年代から1980年代にかけての長いMFフィルム一眼レフ全盛時代には多くのカメラメーカー、レンズメーカーから発売されていました。なかでも焦点距離500mm、開放絞りF8とするレフレックスレンズは、リリースしてないメーカーはなかったほどです。ただし、被写界深度の浅さや暗い開放絞り、あるいは構造的なものからくる光学的な特性などから当時はピント合わせに苦労することが多く、デジタル一眼レフ時代までちょっと扱いの難しいレンズと言われることも少なくありませんでした。

しかし、ミラーレスの登場によって、そのようなウィークポイントも飛躍的に改善されました。ファインダーにディスプレイを使用するため開放絞りに関わらず像が常に明るく表示されること、同じくファインダー像の拡大表示ができるようになったこと、さらにセンサーシフト方式の手ブレ補正機構を内蔵するミラーレスならブレを抑えた撮影が可能になったこと、ISO感度が自在に調整でき、しかもフィルム時代とは比較にならない高感度での撮影が可能になったことなどがその理由です。さらにこれらのメリットを活かせば、レフレックスレンズがこれまで苦手としていた動体撮影も気軽に挑戦できるようになりましたここでは、レフレックスレンズを使った動体撮影の方法を紹介していきたいと思います。

マニュアルフォーカスレンズを使用した場合の動体撮影の方法は2つ。「置きピン」と「追いピン」となります。これはレフレックスレンズでも同様です。

「置きピン」はあらかじめ被写体がくると予測するところにピントを合わせておき、その位置に動いている被写体が来たらシャッターを切るテクニック。鉄道やクルマのレースなどある程度動くコースが定まっている場合に有効です。写真を確実にものにするには、被写体がその位置に差し掛かったと思えた瞬間に素速くシャッターを切ること、そして高速連続撮影でシャッターを切るようにします。さらにより確実なのが三脚を使いアングルを固定しての撮影。ファインダーの画像を拡大表示させれば、よりピント精度の高い写真を撮ることができます。なお、被写体の位置などアングル的にバランスが悪くなった時は、トリミングして調整するとよいでしょう。

もうひとつの「追いピン」は、動く被写体に対し、フォーカスリングをその動きに応じて動かし、ピントを合わせ続けるテクニック。難易度の高い撮影方法ですが、AFが登場する以前はスポーツカメラマンなどこの方法で決定的チャンスをものしていました。しっかりとファインダーで被写体にピントが合っているか否かを確認、合焦しているとみたら間髪おかずシャッターを切ります。こちらも最初のうちは、拡大機能を使うとピントの状態が把握しやすいので、活用してみるとよいと思います。ちなみにファインダーは、よりリアルタイムに表示を行うフレームレート優先に設定することをオススメします。

いずれも最初は船舶など比較的ゆっくりと動く被写体からはじめてみるといいでしょう。また、操作に慣れるためにもたくさんシャッターを切ることをオススメします。画像保存用のハードディスクがいっぱいになると思われるかもしれませんが、ピントの甘い写真は潔く捨ててしまうのがよいでしょう。今回紹介した撮影テクニックはちょっとハードルが高く、失敗することも少なくないかと思います。しかし、ピントがしっかり合った写真が得られたときの達成感は得も言われぬものがありますし、それまで小さく見えていた動く被写体を大きく引き寄せた写真は、迫力があり超望遠撮影の醍醐味と述べてよいものです。レフレックスレンズを購入されましたら、ぜひ積極的にトライアルしてみてください。

トキナーのレフレックスレンズSZ PROシリーズは、写真左の「SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF」、写真右の「SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」のほか、「SZ 600mm PRO Reflex F8 MF CF」の3本をラインナップ。いずれもAPS-C専用となります。最新の光学系により、レフレックスレンズ最高の写りが得られます。

感度が自由に設定できるのもデジタルカメラのメリット。手ブレや三脚ブレ、被写体ブレを抑えるためにも高感度での撮影がオススメです。

歩留まりをよくするために、高速連続撮影モードでの撮影が動体撮影では適しているように思えます。ピントの甘い写真は躊躇わず捨てると、ハードディスクがすぐにいっぱいになってしまうことが避けられます。

ピントの状態を正確に把握するため、また三脚を使用していてもブレを確実に抑えたいためにも、ファインダーを覗いてしっかりカメラを構えるようにしたいところです。

ボディ内手ブレ補正機構を備えるカメラの場合、焦点距離情報を入力するなど手ブレ補正機構を有効に活用しましょう。写真は富士フイルムX-T5のものです。

<通常のファインダー像>
<ファインダー像を拡大した状態>

動いていない被写体のとき同様、動いている被写体でも拡大機能は活用したいところ。特に置きピンで三脚を使用してカメラを構えるときは、便利な機能です。

置きピンをした状態。置きピンはあらかじめ被写体が通る位置にピントを合わせておき、被写体がその地点に差し掛かった瞬間シャッターを切るようにします。鉄道写真などでは比較的出番の多い撮影方法です。

三脚を使用すると置きピンのときなどアングルをしっかり決めることができるうえに、手ブレも抑えることができます。

追いピンの時は、写真のように常にフォーカスリングが動かせるようにカメラを構えます。ミラーレンズでなくても難しい撮影テクニックですが、トライアルしてみてほしいと思います。

※以下画像クリックで拡大します。

作例1

SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF・X-T5・絞り優先AE(絞りF7.1・1/5000秒)・ISO1600・WBオート・RAW(Adobe Photoshopにて編集)

タキシングする航空機を置きピンで撮影しました。ゆっくり走行するので、あらかじめセットしたピントの位置に航空機が来るのも把握しやすいかと思います。なお、画面の右側が若干暗くなってしまったのは、レンズの前にあった金網のケラれによるものです。

作例2

SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF・X-T5・絞り優先AE(絞りF11・1/4400秒)・ISO1600・WBオート・RAW(Adobe Photoshopにて編集)

追いピンで撮影。カメラを三脚に固定し、EVFの拡大機能を使いピントを合わせ続けました。慌てずじっくりと被写体を追っています。遥か遠くの小さな被写体もフルサイズ判換算で1350mm相当の画角により画面に引き寄せることができました。

作例3

SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF・X-T5・絞り優先AE(絞りF11・1/5000秒)・ISO1600・WBオート・RAW(Adobe Photoshopにて編集)

ゆっくりとクルージングする船舶を追いピンで撮っています。この距離と船舶のスピードであれば、追いピンでもピントが合わせやすく、練習にもなります。じっくりと、そして確実にピントを合わせるようにしましょう。

作例4

SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF・X-T5・絞り優先AE(絞りF11・1/4700秒)・ISO1600・WBオート・RAW(Adobe Photoshopにて編集)

艇走状態から翼走に入ろうとするジェットフォイルを置きピンで狙いました。排気による熱風で背景が揺らいでいます。順光の撮影では、ピントの状態の把握もしやすく、また結果も鮮明なので、撮りやすい環境と言えます。

作例5

SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF・X-T5・絞り優先AE(絞りF7.1・1/2900秒)・ISO800・WBオート・RAW(Adobe Photoshopにて編集)

羽田空港A滑走路に着陸のため進入する航空機を追いピンで捉えました。航空機のスピードはそれなりにありますが、この距離であれば比較的ピントが合わせやすいかと思います。

作例6

SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF・X-T5・絞り優先AE(絞りF7.1・1/2200秒)・ISO800・WBオート・RAW(Adobe Photoshopにて編集)

こちらはA滑走路に着陸した航空機を置きピンで撮影しました。ただし、ピント位置は固定していますが、カメラは航空機の動きに合わせて流しています。ちょうどタイミング良くタイヤが接地した瞬間を捉えることができました。

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