多くのシチュエーションで出番が期待できる超広角ズームレンズ Tokina atx-m 11-18mm F2.8 X

多くのシチュエーションで出番が期待できる超広角ズームレンズ Tokina atx-m 11-18mm F2.8 X

富士フイルムXシリーズ用の超広角ズームレンズ、Tokina atx-m 11-18mm F2.8 Xが発売されるということで、さっそく使わせていただきました。

私は、旅先での体験や見た景色を撮影する仕事を多くしています。そのなかで個人的に好きなのは、カフェやレストランなどでのフード撮影と、建築物の撮影をすること。レンズは超広角から中望遠を中心に、10本くらいをシーンによって使い分けていますが、広角寄りのレンズの使用頻度は非常に高いです。大好きな建築物を撮影する場面や風景撮影では必ずと言って良いほど広角レンズの出番となりますし、喫茶店など狭い空間でも広角レンズが活躍します。標準や中望遠では寄り過ぎてしまいテーブルの様子が収まりきらないことがありますが、広角なら席の近くからでもテーブル全体の様子を一枚に収めることができるからです。

Tokina atx-m 11-18mm F2.8 Xはまず、超広角でありながらF2.8という明るさが魅力。そして実際に手にした時、軽くてコンパクトなところにもまた、出番が増えそうなレンズだと期待が膨らみました。わくわくした気持ちを胸に、今回は東京の夜景をバシッと広く撮影してみよう!と、早速街に繰り出しました。

超広角レンズというと、ボケない、シャープで硬い仕上がりというイメージですが、実際に撮影してみると、Tokina atx-m 11-18mm F2.8 Xは表現が柔らかいと感じました。特にF値開放での逆光時や、光源のある場面で撮影した時、ふわりとした空気感が広がって、かなり好みの雰囲気でした。ピントが甘くなる時もありましたが、それがまた良くて、まるでオールドレンズの良いところを追加したような写真に仕上げてくれるのです。自然光だけでなく、街灯などを撮影した際にもふわっと光が広がって優しげに写ります。それが本当に私好みで、撮影が楽しかったです。もちろん、絞れば超広角らしいバキバキのシャープな仕上がりにすることもできます。

作例1

FUJIFILM X-T5, f22, 480, ISO125, 11mm

11mmで、目に映る景色の全体像をしっかり写せました。また、11mmなら十分引いた画で撮れるので、SNS用に縦にトリミングできる画角も想定してシャッターを切っています。長時間露光など撮り直しが難しい場面でも、超広角で撮っておけば、あとから出力媒体に合わせたトリミングができます。その対応ができる点も、超広角レンズを使用する大きなメリットだと個人的に思っています。

作例2

FUJIFILM X-T5, f22, 26, ISO125, 11mm

入り組んだ立体道路がゲームの中のような世界観をかもし出す箱崎ジャンクションにて、三脚を立ててカメラを固定し、スマートフォンからリモート撮影しました。Tokina atx-m 11-18mm F2.8 Xの広角端なら目で見た景色よりも広く撮影できるので、大きな被写体も一枚の写真に収めることが容易です。

作例3

FUJIFILM X-T5, f5.6, 15, ISO125, 18mm

橋の上から、先に見える橋を撮っています。ある程度距離はあるものの、広角だからこそ撮れる画になったと感じる一枚。この写真は三脚を使用していますが、Tokina atx-m 11-18mm F2.8 Xは明るいレンズなので、手持ちでもシャッタースピードをあまり気にせず撮影できます。身軽でいたい写真家たちの強い味方になってくれそうです。

作例4

FUJIFILM X-T5, f7.1, 1/100, ISO1600, 18mm

たくさん歩き回ったあとで、くたくたになりながらそろそろ家路につこうと思っていました。それでも少しだけ遠回りをしてみたことで見つけた、空色の橋です。その瞬間目の前にある橋をそのまま撮ったのですが、全体がしっかりと一枚に収まりました。標準レンズではこうはならないので、体験をそのまま撮影できる点でも超広角レンズは優秀だと実感しました。

作例5

FUJIFILM X-T5, f2.8, 1/100, ISO1600, 18mm

ひとつ前と同じ橋で、ふと横を向いたら可愛い景色が広がっていて、つい足を止めて撮影した写真です。橋の鉄筋をフレームに見立て、その先の景色にフォーカスしてみました。開放で撮影しているのですが、街灯がふわりと拡散して柔らかい光となっています。

作例6

FUJIFILM X-T5, f2.8, 1/125, ISO125, 18mm

トンネルの外と中の、光と影のコントラストに美しさを感じ撮影しました。狭く短いトンネルでしたが、出口付近にいても、画角の広さによって奥行きや陰影の全体まで表現することができました。逆にもっと手前から撮ると、出口が遠くに描写され、まるで長いトンネルのように違った雰囲気に仕上げることもできます。

作例7

FUJIFILM X-T5, f2.8, 1/1000, ISO125, 11.3mm

乗り換えを誤ってしまい、せっかくなのでお茶の水の聖橋で赤い電車待ちをしてみました。すぐにやってきた電車は、青空に車両の赤が映えていました。空とビル、川と電車、など目に映る景色がしっかりと一枚に収まっているので、あちこちムダ撃ちせずにすっと撮影は完了。道路も写っており、画角の広さをしっかりと感じました。

作例8

FUJIFILM X-T5, f2.8, 1/30, ISO500, 18mm

車窓から見た荒川の夕景は、空のグラデーションが川に反射していてとても幻想的でした。夕焼けなどの広い範囲に色がある風景を表現したいとき、超広角の画角の広さがとても活かされると思っています。

作例9

FUJIFILM X-T5, f7.2, 1/125, ISO125, 11mm

水元公園にて、対岸にある森が島のように浮かんで見えたのを、リフレクション撮影した一枚です。超広角レンズだと、実際に目で眺めているよりも池の対岸にある森が遠くに感じられます。そのおかげか、より浮島のように見せることができました。

作例10

FUJIFILM X-T5, f2.8, 1/200, ISO125, 11mm

紅葉したメタセコイアが、より紅く輝く時間帯。西陽に当たるメタセコイアにより、世界が紅に包まれたかのようになり、そのシーンに見惚れました。メタセコイアは葉と枝が高い位置についていて地面付近はスカスカしているのですが、超広角で撮影すると写し込む木の本数を多くすることができるため、豊かな森を表現できます。

今回Tokina atx-m 11-18mm F2.8 Xを使ってみて、色も歪みも目で見た表情に近く、素直な表現ができるレンズだと思いました。逆光などの光源のある環境で撮影してもフレアが抑えられていて、撮り直しの必要を感じることもありませんでした。明るいレンズで小さく軽いところも魅力。そして、ソフトフィルターを使っているような柔らかい描写からバキッと絞った描写まで、さまざまに楽しむことができるレンズです。

この記事で使われたレンズ

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フォトグラファー 東京都出身。インスタグラムをきっかけにフリーランスに転身。国内外で風景からブツ撮りまで幅広く撮影。雑誌やウェブで旅にまつわる執筆をする傍ら、全国でフォトワークショップを開催するなど「写真の楽しさ」を伝える活動にも取り組む。著書に『日々を美しく記録するフォトレッスン』がある。