超広角ならではの絵作りを気軽に楽しめるレンズ by 関一也

初めて手にした超広角レンズは、Tokina AT-X 116 PRO DXでした。
当時、APS-Cユーザーにとって楽しめる超広角レンズは決して多くはなく、その画角を初めて体験したときの感動は、今でも忘れられません。
それほど特別な視界を提供してくれるレンズでした。
特に、星景写真にとって超広角レンズは標準レンズと同じくらい重要な存在です。
私が写真を始めたきっかけも星空でしたから、Tokinaにはたくさんの思い出があります。
それから約14年----
新たにTokina atx-m 11-18mm F2.8Xを手にしました。
最初の印象は、「とても軽く、コンパクトでボディに馴染むレンズだな」ということ。
35mm換算で16.5〜27mmの画角は、風景からスナップ撮影まで幅広く活躍してくれそうです。
さらに、フィルター径は67mmあり、フィルターが取り付けられるのもメリットの一つ。
最短撮影距離は0.3m(11mm側では0.19m)と、かなり被写体に寄ることができます。
かつては星景写真がメインでしたが、今では風景やポートレートを撮る機会も増えました。
超広角レンズならではのダイナミックな描写は、標準レンズでは表現できない領域です。
このレンズの魅力が、作例を通して少しでも伝われば嬉しく思います。
作例1

樹木の枝や葉が、隣の木と重ならないように成長する現象"クラウンシャイネス"。超広角レンズの表現力によって全体像を鮮明に記録できます。
作例2

迫るユリカモメ、カメラの性能にAFは左右される部分もありますがX-T5との相性は良く、AF-Cの被写体認識AFで捉えることができました。
ズームレンズなのでトリミングなしでの撮影できるので画素数も最大限に活かすことができました。鳥だけに...笑
作例3

最短撮影距離19cm(11mm時)で撮影。超広角マクロ撮影することで背景の大きな情報量にプラスして被写体の存在感を出すことができます。
作例4

フレアとゴーストを活かした撮影。ふんわりとした雰囲気を作るのに効果的で、ポートレート写真において魅力的な表現手法の一つです。
作例5

Tokina atx-m 11-18mm F2.8 Xのフレアは独特で綺麗なにじみが特徴。18mmにして反逆光の太陽光を取り込むことで画面全体に印象的な表現をすることもできました。
作例6

超広角レンズでポートレート?って思う人が多いと思いますが、やってみると「お!いいね!」と言葉がつい飛び出しちゃう絵が出てきます。左手にLEDライトを持って腕を伸ばしてライティングして撮影しました。超広角なので腕を伸ばす範囲でオフストロボのような光を作れちゃうのも魅力のひとつ。
作例7

人間の全視野(周辺市やを含む)はレンズ換算(35mm)10〜14mmと言われており、意識して見える範囲(有効視野)は24〜35mm。つまり意識して見える範囲より少し広く切り取れる11mm(35mm換算16.5mm)なので見たままの景色を切り取りたい時に便利です。
作例8

超広角レンズを縦にした場合、横よりも広過ぎると上下が広くなり、無駄な空間が多いと感じることがあります。ズームを活用して画角を整えられるのは非常に嬉しいです。
作例9

夜の街は光源が多いですが、このような状況だとマルチコーテイングにより無駄なフレアやゴーストは感じられなかったのが良かったです。(強すぎる光源には注意が必要です。)
作例10

星空が美しい時間帯、輝度差の激しい街灯とのコラボレーションです。レンズには「KenkoのPRO1D プロソフトン クリア(W)」を取り付けて星を強調しています。静寂な美しい夜でした。

関 一也(せきかずや)
長野県出身。日本写真家協会会員。
ポートレートや風景、スポーツ写真など幅広いジャンルで活動。撮影技術セミナー講師も務める。
著書に『フォトグラファーのためのポートレートポージング入門』など。