コスパが高い超広角ズームレンズ誕生!atx-m 11-18mm F2.8 X レビュー

軽い!小さい!
11-18mm (一眼レフ16.5-27mm相当)F2.8のこのレンズを手にしたとき、私はその軽さと小さなサイズに驚いた。重さはわずか320gで、全長はわずか74.4mmというのは、本当に手のひらサイズといえる。現在、風景写真愛好家は高齢化し、その多くがカメラ機材の軽量化を求めている。カメラ本体も一眼レフからミラーレスが主流になってきたのもその証だ。
ただ、レンズ全体のコンパクト化は今一つ後れを取ってきた。そのため、広角~望遠系までのレンズを二~三本を用意しただけで十分な重さになったり、ザックが一杯になってしまう人が多いようである。それゆえに、超広角ズームレンズそれもF2.8のレンズを用意することは難しかったと言えよう。今回のコンパクトなこのレンズは、これまでの機材に追加してもほとんど苦にならないものではなかろうか。
超広角で傑作狙い!
今回の超広角ズームレンズを手にすることで、今までは撮ることができなかった超広角の世界、ダイナミックでスケール感のある世界を描くことが可能となる。この感動と喜びを味わうことで、これからの風景写真の捉え方や自分自身の作品群の内容がステップアップし、充実したものになっていくことは間違いないだろう。
写真愛好家の多くの方は、超広角系の作品作りが少なかったように思われる。そのことは、いろいろなフォトコンテストの審査をしていても感じられることだった。望遠系のレンズで美しい部分を切り取るという傾向が多いのである。その理由は、広角レンズを使うと邪魔なものが入ってしまうという経験や先入観が強かったのではなかろうか。しかし超広角の世界は遠近感がかなり強調されるスケール感のある作画であり、肉眼では邪魔なものと思っていても、実際に作品にするとほとんど目立たないものとなってしまうことが多い。逆に、圧倒的なスケール感のある力強い作品にすることができる。今回の私の作品をご覧いただければ、ご理解いただけるだろう。ぜひ、未知なる超広角の世界に挑戦し、楽しんでいただきたい。
作品1
横に広がる広い二見ケ滝をスケール感と迫力を引き出して描く。手前に苔むした岩などを程よく配置しながら、そして滝の両側と奥行きのバランスをとると、ちょうど18mmとなった。1/4秒で、滝の表情をやわらかで美しい表情に描いた。
作品2
二見ケ滝と渓流を縦構図で奥行き感を強調して描く。ここでは、渓流の臨場感を引き出すために、1/30秒のシャッター速度で描いている。
作品3
城跡の石垣を真下から仰ぎ見ながら、モミジと四季桜を情感のある風景として描く。11mmの超広角ならではの画角だからこそとらえることができた作品だ。
作品4
美しいなまこ壁に映ったモミジの影とモミジを印象的に描く。手前のなまこ壁の質感もしっかりとらえられており、奥のモミジまでシャープなのが気持ちよい。
力強い描写力!
この11-18mmF2.8レンズは、F2.8でありながらフィルターサイズは67mmという他のレンズとの互換性が強いコンパクトなものになっている。各種フイルターの互換性が高いのは喜ばしいことだ。
また、レンズの描写力も評価したい。【作品5-1】をご覧いただきたい。焦点距離13.6mm、絞りF11で手持ち撮影(シャッター速度1/160秒)で撮影しているが、青空に映えたモミジが美しくシャープにとらえられている。ちなみに、左のモミジ部分を拡大【作品5-2部分拡大】しても、しっかりした解像力が確認できる。色収差などもほとんどなく、写真展などでの大伸ばしにも期待に応えてくれよう。
作品5-1
紅葉真っ盛りのモミジを発見、ローアングルから青空を背景にして豪華絢爛な姿を狙う。11mmの超広角の画角があってこそ描くことができた。
作品5-2 部分拡大

作品7
背景のモミジの並木を配置しながら、手前のモミジの枝と葉を画面いっぱいにとらえる。まるで巨木の枝葉のように見えるのも超広角の遠近感強調の効果だ。
作品8
手前のモミジの一枝を、まるで空中に浮遊するかのように接近しながら作画した。背景に広がる黄葉の林と青い湖面までもが印象的にとらえることができた。
美しい星空作品作り!
11mmから18mmにわたっての全領域がF2.8という明るさは、星空撮影でも活躍できる。これまでF3.5やF4などの暗いレンズで撮影をしてきた人は、なかなか満足できなかったと思われる。なぜならば、ISO感度をかなり高く設定しなければならず、結果的に高感度ノイズが多くなってしまうからだ。また、感度を抑えて露出時間を長くすると、星が流れてしまう。一方、手持ちの広角系レンズがF2.8だったとしても、画角が狭くて星空を広く描くことができなかったという経験者も多いことだろう。
このレンズは、満天の星空を広くとらえることができるだけでなく、ISO2500~ISO3200ほどで25秒以内の露光時間で撮ることができる。そうすることで、星が流れることなく点としてとらえることができる。
高いコストパフォーマンス!
最後に、このレンズの定価は10万4千円(税別)であり、超広角ズームレンズF2.8クラスの中では、かなり頑張って価格を抑えたものになっている。その実売価格を考えると、たいへんにコストパフォーマンスが高いものといえよう。軽く小さいながら、これまでにない力作を生み出すチカラを秘めたこのレンズを、ぜひ一本追加されることをお勧めしたい。

鈴木 一雄(すずき かずお)
自然写真家
自然界が発しているさまざまな聲(こえ)を五感で受け止め、その物語を描くことに精力を傾ける。今年の夏から秋にかけて、生き物をテーマとした『いのちの聲(仮題)』を東京・大阪・名古屋・札幌で発表する予定。写真集に「聲をきく」「サクラニイキル」「花乃聲」「季乃聲」「櫻乃聲」「おぐにの聲」「裏磐梯の聲」「尾瀬の聲」「尾瀬しじまの旋律」他、著書に「日本の桜200選」「デジタル露出の極意」「風景写真の極意」など多数。しあわせな写真人生を送るための「自慢史つづりと自分史つづり」を提唱。
(公社)日本写真家協会会員・(公社)日本写真協会会員、日本自然科学写真協会監事、フォト寺子屋「一の会」主宰、全日本写真連盟関東本部委員。
http://kazuo-suzuki.com