ケンコー・トキナーギャラリー

建築写真撮影を生業として早４０年、商い的には約１０年ごとに良い時期や悪い時期、変革の年が訪れているように思う。

悪い時期には自分の作家的欲求には蓋をして、ただひたすら耐えてきたのだが、ある時写真家の友人から言われた言葉がある。

それはデジカメ黎明期の５００万画素そこらで頑張っていた時代、友人が個展を開いていた。フォトショップもまた黎明期であるが、画像処理を駆使して風景を作画していた。

バブルも崩壊して耐えてた時期「これで写真を撮らなきゃ単なる失業者だよ」とこともなげに言う。刺さる言葉だった。

蓋をしていた創作に向かうには十分な時間だけがあった。

この時の写真は「山肌の記憶」という個展を開いて一つの区切りをつけた。

個展を開くことでそれにまつわる方々と交流も生まれ、導かれるように次のテーマが浮かんできた。

自分だけでは見えない世界、行けない世界に連れていってもらうのだ。

これらの人々とのご縁があって撮影できたのが今回の作品なのだが、ご縁には別れもある。縁をつないでくれたお礼とレクイエムとして発表できることに感謝いたします。