PLフィルターでプロ並み写真が撮れる - 使いこなしガイド
風景を鮮やかに表現するPLフィルター
PLフィルターは反射光をコントロールすることで、鮮やかな発色やコントラストが得られるフィルターです。水面やガラス面、樹葉、建物などの表面反射を抑えたり、青空をより鮮やかにして被写体本来の色彩を引き出します。春夏秋冬、風景写真に欠かせないフィルターです。
「Happy Jump」Kyaw Kyaw Winn様 PLフィルター使用
美しい景色に感動して撮った写真が鮮やかでなくがっかりした経験はありませんか。風景を撮る時におすすめしたいのがPLフィルターです。PLフィルターは二重枠の前枠を回すことで反射光を調整し、色彩鮮やかにする効果のあるフィルターです。水面の反射を取り除いて海をクリアに写したり、青空を深みのある鮮やかな青色にしてコントラストを高めます。
PLフィルターの仕組み
PLフィルターは、2枚のガラスの間に「偏光膜」をはさんだ偏光フィルター(Polarizing filter)です。「偏光膜」は目に見えない細かなスリット状になっており、特定方向の光をカット(吸収)します。通常の光はあらゆる方向に振動していますが、「偏光膜」を通すと一方向に振動する光になります。この一方向に振動する光を「偏光」と言います(図1)。
水面やガラス面など、モノの表面で反射した光の ほとんども一方向に振動する光となります(図2 )。PLフィルターの前枠は回せる構造で、偏光膜の角度を変えることで反射光をカットできます(写真1)。
ほとんどのPLフィルターの枠には三角マーク▲がありますが、このマークを上にすると偏光膜のスリットの方向が水平になります。▲マークが上の時に反射除去効果が最大になることは多いですが、光が射す方向によって変わります。カメラのファインダーや液晶画面で効果を確認しながらフィルターの回転角度を決める必要があります。
円偏光とは?
現在市販されているPLフィルターのほとんどが「C-PL」 という円偏光タイプです。(Cは「円の」 という意味のcircularの略 )昔は円偏光ではない「PL」という直線偏光タイプでした。偏光膜と同じ性質をもつハーフミラーを使用したカメラが発売されるようになり、カメラのハーフミラーとPLフィルターの偏光膜が干渉して測光・測距に誤差が生じたため、改良版として「C-PL」が誕生しました。
「C-PL」には「位相差板」が追加されています(図3 )。位相差板を通過すると、円を描くように回転する光に変化し、あらゆる方向に振動する通常の光に近い状態になります(図4 )。それにより、カメラのハーフミラーとの干渉を避けることができます。ハーフミラーやローパスフィルターなどのカメラの機構との干渉を避けるため、現在市販されているPLフィルターのほどんどはC-PLです。
PLフィルターの効果
効果① 反射を調整する反射除去効果
PLフィルターの代表的な効果の1つとして「反射を調整する」効果があります。下の「水面の反射」の作例を見比べてみてください。フィルター未使用では、水面で反射が起きて白く光っています。PLフィルターを使用すると反射を除去し、海の色を鮮やかに写すことができます。水の反射だけでなく、ガラス、葉、岩、建物、地面など、あらゆる物体の表面で生じた反射を抑えることができます。ただし金属や鏡の反射には効果がありません。
水面の反射
PLフィルターは水面の反射を取り除く効果があります。透明度の高い海や清流では水中までくっきりと写し、透明感も表現できます。
ガラスの反射
PLフィルターはショーウィンドウなどのガラス面への映り込みを抑える効果があります。
※ガラス面や水面に対して真正面からの撮影では反射除去効果は得られません。効果的な使い方はこちらをご覧ください。
葉の表面の反射
葉の表面で生じるテカリを除去することで、紅葉や新緑の本来の鮮やかな色彩を引き出します。花の撮影では、不要な葉の反射を抑えることで主役の花を引き立たせる効果もあります。
物撮り
商品や小物、料理など室内の撮影でもPLフィルターは活躍します。PLフィルターで不要な反射を抑えることで色や質感をしっかり再現し、より魅力的に見せることができます。
効果② 青空をより鮮やかに色彩コントラスト効果
PLフィルターのもう一つの代表的な効果として、「青空をより濃く鮮やかにする」効果があります。太陽光が大気中の分子にあたると光の散乱が起きます。PLフィルターを使い散乱の影響を抑えることで、空をより濃い青にして、桜や新緑、紅葉、白い雲とのコントラストを高めることができます。
PLフィルターの使い方(基本編)
フィルターを取り付ける
PLフィルターの枠の商品名が書いてある部分が「前枠」、書いてない方が「後枠」です。取り付ける時は後枠をレンズにあてがい、時計方向に回します。
外す時は後枠をつかみ反時計方向に回します。
前枠を回してみよう
PLフィルターは前枠を回すことで効果を強めたり弱めたりできます。側面をガッチリつかむのではなく、先端部分に指を添える感じで回せば、誤ってフィルターを外してしまう心配がありません。 ※ステップアップリングなどのアダプターを併用する場合は、 時計まわりに回した方が外れる心配がありません。
PLフィルターの効果を発揮するために、次の「使い方」をしっかり覚えておきましょう。
使い方1 反射を除去する方法
使い方2 青空をより鮮やかに撮る方法
効果が出ているか分からない場合は?
撮影する前に、PLフィルターを目の前にかざして前枠を回すか、持ち手の角度を変えてみてださい。被写体の反射部分や空が暗くなったり明るくなれば効果が出ています。
「C-PL」には表裏がありますので、前枠が被写体側になるように持ってください。
PL効果を適度に効かそう
PLフィルターは常に効果最大で撮るのがベストというわけではありません。例えば滝や渓流など水辺の風景では、少し反射を残した方がみずみずしいこともあります。青空が濃すぎる場合は効果を抑えた方が良いこともあります。ご自身の感性で反射をコントロールして作品を仕上げましょう。
注意①超広角レンズで起きる偏光ムラ
超広角レンズにPLフィルターをつけて空を撮ると、「空が青くなる所」と「青くならない所」が画面に入り、空がムラになったように写ることがあります。これを偏光ムラと言います。偏光ムラを避けるには撮影位置を変えたり、PL効果を抑えめにして使います。またPLフィルターではなく角型フィルター(ハーフNDやハーフブルーフィルター)で空のトーンを落とす方法もあります。
注意②枠厚によるケラレ
フィルターには「薄枠」と記載のものがあります。フィルターの枠が厚いと、超広角レンズを使用した際に画像の四隅に暗い影が出てしまうことがあります。これを「ケラレ」と言います。ケラレを防ぐために枠厚を薄くしたものが薄枠タイプです。特にPLフィルターのような回転枠はもともと枠が厚いため、薄枠タイプをおすすめいたします。
PLフィルターの使い方(応用編)
反射を増やす
PLフィルターは反射を除去するだけでなく、
逆に見かけ上の反射を増やすこともできます。
「効果最大」の位置から前枠を90°回すと、フィルター未使用の時よりも反射が増えたように写ります。PLフィルターの効果の効かせ具合で表現のバリエーションが増えます。
PLフィルターで反射を抑えるか、逆に反射を増やすか。撮影現場でどの効果がベストか決めかねた時は、PL効果を最大・少し抑えめ・最小のように角度を変えて撮っておき、後でじっくりとベストな効果を選ぶのも1つの方法です。
「Rice field」Tang Pui Yee 様 PLフィルター使用
虹、彩雲、彩氷の虹色を引き出す
PLフィルターで反射を増やせば、虹をよりはっきりと写すこともできます。反射を除去すると虹は消えてしまうのでご注意ください。彩雲や彩氷などの虹色にも効果があります。
他のフィルターと組み合わせる
フィルターは複数組み合わせて使用することで、より印象的な作品に仕上げることができます。
例えば、滝や渓流のような水辺の景色を撮る時は、PLフィルターとND(減光)フィルターを組み合わせれば、鮮やかな色彩と動感を得ることができます。上級者向きですが、PLフィルターと角型フィルターを併用するとさらに自在に光をコントロールできるようになります。
「反射光をコントロールする」視点で多彩な表現を
PLフィルターは風景撮影において欠かせないフィルターですが、万能ではありません。時にはPLフィルターを付けて撮ってみた上で、このシーンではPLフィルターの効果が活きないという時は、あえて使わないという判断をすることも必要です。PLフィルターで反射光をコントロールするという視点を持つことで、多彩な表現方法を得ることができます。
PLフィルターの選び方
選び方のポイント
PLフィルターラインナップにあるPLフィルターは、どれも反射を調整する点では同様の効果が得られますが、撥水・撥油コートや反射防止コートなど、より快適にきれいに撮るための様々な付加価値があります。次にご紹介をする主なポイントを参考にPLフィルターをお選びください。
① 偏光膜高透過偏光膜採用モデル:ZX C-PL / Zéta Quint C-PL
PLフィルターの心臓部である「偏光膜」は大きく分けて2種類(高透過タイプと通常タイプ)あります。一般的な偏光膜はフィルターを付けた時にシャッタースピード約2段分暗くなります。それに対して、「高透過タイプ」の偏光膜は約1段分です。高透過タイプのメリットは、シャッタースピードへの影響が少ない点と、一眼レフでファインダーをのぞいた時にほとんど暗くならない点です。常に付けていても暗さが気にならないという点で高透過タイプがおすすめです。
色が最もキレイなのはZX [ゼクロス]
一般的な高透過タイプのPLフィルターはわずかに黄色みがかる傾向があります。しかしZX[ゼクロス]には新開発の偏光膜が採用されていて、明るいだけでなく最も忠実な色再現が可能です。さらにZX C-PLはガラスに負荷をかけない画期的な枠構造により解像力にも優れた究極のPLフィルターです。
② 撥水・撥油コート採用モデル:ZX C-PL / Zéta Quint C-PL / PRO1D Lotus C-PL
「撥水・撥油コート」は水や油を強力にはじくコーティングです。指紋などの汚れがガラスに付着しても簡単に拭き取ることができます。水辺や雨天時の撮影のストレスを軽減します。フィルターをレンズクロスで拭く時の拭きやすさが全く違うので、撥水・撥油コート付きがおすすめです。
③ 反射防止コート採用モデル:ZX C-PL / Zéta Quint C-PL / Zéta plus ワイドバンド C-PL / PRO1D Lotus C-PL/PRO1D WIDEBANDサーキュラ―PL(W)
光がフィルターガラス面で反射を起こすとフレアーやゴーストが発生します。反射防止コートをすることで、余計な反射を防ぎ、クリアな描写が得られます。面反射の%が0に近いほど優れたコーティングです。現在発売されているPLフィルターの中ではZX C-PLの面反射0.3%以下が最高クラスになります。
④ 墨塗り加工採用モデル:ZX C-PL / Zéta Quint C-PL / Zéta plus ワイドバンド C-PL / PRO1D Lotus C-PL/PRO1D WIDEBANDサーキュラ―PL(W)
フィルターガラスの外周に墨塗り加工を施すことで、内面反射を極限まで防止しています。逆光撮影時のフレアーやゴーストの発生を軽減します。
PLフィルターラインナップ
プレミアムグレード
ハイグレード
PRO1D plus WIDEBAND サーキュラーPL(W)
ロングセラーPLフィルター
- ●デジタルマルチコート仕様。
- ●内面反射を防止するガラス外周墨塗り加工。
- ●クリーニングクロス付き。
スタンダードグレード
PLフィルターQ&A
- Q1. フィルターのサイズはどうやって確認するの?
- カメラレンズ前面か側面、もしくはレンズキャップの裏側に◯◯mm、Φ◯◯mm、Φ◯◯と記載の数字をご確認下さい。この数字がお手持ちのレンズのフィルターサイズ(口径)となります。
例:58mm、Φ58mm、Φ58 - Q2. フィルター径の異なるレンズで使うには?
- 使用するレンズに合わせて何枚もPLフィルターを買えない場合は「ステップアップリング」を使いましょう。ステップアップリングがあれば、1枚のフィルターを様々なレンズに使えます。フィルターは1番大きいレンズの径に合わせてください。
- Q3. 保護フィルターはつけたままでいい?
レンズ保護用のフィルターは必ず外してからPLフィルターをつけてください。フィルターを重ね付けすると、枠が厚くなりケラレ(画面の四隅に暗い影が出てしまうこと)が発生することがあります。またガラス面が増えることでフレアーやゴーストが発生しやすくなります。
- Q4. PL効果が効いているか分からない場合は?
PLフィルターを目の前にかざして前枠を回してみてください。被写体の反射部分や空が暗くなったり明るくなれば効果が出ています。「C-PL」には表裏がありますので、前枠が被写体側になるように持ってください。またこちらの使い方1、2もご参照ください。
- Q5. 曇りや逆光では効果がないの?
曇りや逆光の空に対するPLフィルターの効果はほとんどありませんが、水面・葉・道路などの被写体の表面反射を調整する効果は得られます。
- Q6. PLフィルターで空を青くできない時は?
逆光時はPLフィルターで空を青くすることができません。そんな時は角型のハーフNDフィルターやハーフブルーフィルターがおすすめです。フィルターの下半分は透明なので、空の色だけ濃くできます。
- Q7. パソコンの後処理でPL効果は出せないの?
RAW現像ソフトがあれば、青空を青くするのはそんなに難しいことではありません。ただし後加工で反射除去をするのは極めて困難です。最終的にパソコンで作品を仕上げるとしても、撮影時にPLフィルターで反射をコントロールすることが大事です。
- Q8. PLフィルターには寿命があるの?
PLフィルターは一般的に7 ~8年※経過すると、黄色っぽく変色してきます。これはPLフィルターの心臓部である偏光膜が経年変化を起こす性質があるためです。変色したPLフィルターで撮影をすると色がにごってしまうため、劣化したら買い換えをおすすめいたします。
※劣化による寿命はあくまで目安です。使用頻度や収納保管状況で異なります。特に熱と紫外線に弱いため保管の際はご注意ください。