ケンコーフィルター作例|ワンランク上の写真を撮るフィルターの使い方 -金子 美智子
金子美智子(かねこみちこ)
宮城県仙台市生まれ
(社)日本写真家協会(JPS)会員 / 日本写真芸術学会(JSAHP) 会員
1987年奥日光で 1枚の写真に出会い、故 秋山庄太郎氏に師事。その後 写真事務所設立 フリーのカメラマンとなる。
現在、全国各地を車中泊しながら 自然の色彩の美しさに魅せられ、独自の世界を伝え 心を癒す四季折々の風景写真を撮り続けている。自然風景を中心に カレンダー・書籍・雑誌などで掲載。
古来、日本は「日出づる国」と呼ばれていました。
日の出に対する日本人の思いは古来より変わらなく、日の出は日本人の心の原点のように思います。 何も宗教を持たない者でも朝日に向かって祈るように手を合わせます。
日本列島は南北に、そして東西に弓なりになった日本は、多数の風景写真の撮影ポイントに恵まれています。その中で、とりわけ日の出に対する思いはひとしおです。
日の出は、一日の自然の営みの始まりです。 日の出と共に地上のすべての営みが始まり、日の出と自然とが織り成す美は人の心をつかんで離しません。 夜明け前、朝焼けの赤・紫・オレンジ・濃紺と微妙なグラデーションの濃淡の色はとても美しく心惹かれます。日の出は勢いがあって未来を感じさせ、夕日に無い美しさが朝日にはあります。
日の出は、わざわざ遠くに行かなくても撮ることができます。都内からですと、九十九里浜まで行けば、水平線から昇る日の出を見ることが出来ますし、伊豆の石廊崎に行けば、日の出も日の入りも撮影することができます。 そして、茨城県大洗海岸、磯前神社の岩の上の鳥居の中の空間は、お正月に初日の出が昇り始める方向に向いています。
そのようなこともあって、私は、お正月には茨城県の大洗海岸に初日の出を撮影に行きます。大洗海岸の海の中に立つ大磯神社の鳥居の前に夜明け前からスタンバイし、夜明け前に海上を行き来する漁船の軌跡を入れた朝焼けのグラデーション。水平線から上がる、日の出の瞬間。 自然と心の中で合掌をし、祈りの気持ちで一杯になるこの時間は、心は無の世界に入り心安らぎ至福の風景に出会います。 日の出は同じ場所でも二度と同じ太陽は出ません。毎回見ることに感動の心を震わせます。
感動的な日の出を撮るため 日の出撮影の基本&テクニック
Ⅰ. 日の出撮影の基本
1. 日の出撮影を成功するポイントは事前の準備
日の出の撮影をするには、まず撮影したい場所を決めます。撮影に出発する前に撮影地などの情報を入手します。インターネットやガイド本、撮影先の観光協会にて情報を入手したほうがよいでしょう。
2. 初めての撮影場所の場合
初めての場所で行き当たりばったりで日の出を撮影しようとしても、太陽の昇る位置を把握していないと失敗する可能性が高くなってしまいます。事前にGoogleマップなどを使って太陽の昇る方角や位置を把握してあらかじめ構図を決めておくことが重要です。できれば事前に撮影現場のロケハン(下見)をしておくことがベストです。ロケハンをすることにより、当日慌てることなくスムーズに撮影ができます。
3. 日の出の撮影地が海の場合
日の出の撮影地が水平線から上がる海の場合は、事前に潮の満ち干を調べておくことが必須です。 潮の満ち干の関係で、思いがけなく岩場などが水面から出ていたり、波しぶきを期待して行っても引き潮で波がないといった状況だったりと、潮の満ち干で撮影現場は変わってしまいます。
4. 撮影地には何時に着くことがベスト?
出来れば撮影地には、日の出時刻の1時間前には現地にはついていたほうがよいです。 日の出の1時間前位から空が徐々に明るくなりはじめるので、最低でも1時間前には現地に到着し時間に余裕を持つことが重要です。朝焼けの美しいシーンを逃がさないためには、現地についてすぐカメラをセットしましょう。
朝焼けは、まだ少し暗いと感じていても、肉眼で見ている以上に写真上でハッキリと朝焼けのグラデーションが写しだされます 。
また、少し早めに到着すれば、日の出だけでなく、太陽が昇り始める前の幻想的なマジックアワーを撮影することもできます。
5. 日の出撮影に必要なカメラ機材
日の出撮影には基本的なカメラ機材があれば大丈夫です。
- カメラ
- カメラ、一眼レフでもミラーレスカメラでもOKです。
カメラの種類には、コンパクトデジタルカメラ、一眼レフデジタルカメラ、フイルムの35ミリ一眼レフカメラ、中判カメラ、大判カメラとさまざまなものがあり、「このカメラじゃないと絶対撮れない」ということはありません。 それぞれ、どんな写真を撮りたいのかによって、使用するカメラは変わりますが、まずは持っているカメラで撮影にチャレンジしてみましょう。 - レンズ
- 今お使いのレンズで、ズームレンズでも単焦点レンズでもOKです。
どのような構図で日の出を撮影するかにもよりますが、広角から望遠まで撮れるズームレンズが便利です。 広く撮りたいなら広角から標準、アップに撮りたいなら望遠ですが、カメラ初心者なら標準レンズで良いです シャッタースピードはカメラが決めてくれるので、あとはピントを合わせたい場所に合わせましょう。 - レリーズ
- 三脚を使う場合はレリーズやワイヤレスリモコンがあると便利です。
- 三脚
- 日の出前に構図を決めセッティングすることが出来ます。三脚にカメラをセットして完璧な構図を決めておきあとはシャッターを切るだけでOKです。構図がズレることもありません。
6. 日の出の時刻と日の出の方位・そして撮影地の天候の情報入手
日の出撮影には基本となる、最も大切な情報は、日の出の時刻と日が昇る方向、そして撮影地の天候です。これらをあらかじめ出発する前に情報を入手しておき、知っておくことが必須です。 初めに、日の出の撮影は撮影地の天候を調べ、太陽が何時にどの方向から昇ってくるかを調べることが重要です。 事前に撮影する場所の日の出の時刻と方位を知っておくことは 撮影地で慌てずスムーズに日の出の撮影をするキーポイントとなります 日の出の方位を知るには、天文ガイドやインターネットや新聞などで調べると良いでしょう。
このホームページ(全国初日の出スポット)にて初日の出の時刻と方角を確認してください。 日本全国の各地の日の出の時間には差があります。北海道と九州では、日の出の時間には大きく差がありますが、方角については、日本各地ほぼ同じ方位になります(誤差は1~2度程度) 今までは、日の出撮影する現場に行って『どこから太陽が出るかわからない』『とりあえずこの辺かな~』という感じで、不安になりながらもカメラをセットしていました。 そして事前に現地に行き、どのあたりから太陽が昇るか、太陽の出る方角を事前調査の下見が大切でした。 しかし、ここで紹介する『Do・Nature オイル式コンパス KC-04(方位磁石)』は下見が出来ない場合や初めての場所でも、どの方角から太陽が出るか、事前に日の出の時間と角度さえ情報を入手していれば、初めてのところでも、日の出の位置を確認することができる優れものです。 他に、「サンガイドRV」は簡単な日の出・日の入りがスケールに表示されているもので、地図上にて事前に日の出の方向が確認できます。
日の出の方位は、日々変わっています。日の出の位置は、12月から6月の半年間で60度近く日の出の位置が変わり、1年間で1往復することになります。 日の出の方角は、昼と夜の長さが同じの春分の日(3月21日)が真東。その後徐々に北側へ移動し夏至(6月21日)でもっとも北に行き、それから徐々に東に戻って秋分の日(9月23日)でまた昼と夜の長さが同じになり、今度は南側に移動して冬至(12月22日)でもっとも南にいき、再び東へと戻っていきます。
太陽の昇る位置は毎日少しずつ変化しますので、同じ撮影地に立っても季節が違えば日の出の位置も違ってきます。
7. 日の出を撮るときのカメラ設定は?
日の出は逆光になり明暗差が激しいので白飛びや黒潰れしやすくなります。事前に構図や設定を決めておくといいでしょう。太陽が昇るスピードは思った以上に速いのでシャッターチャンスを逃さないようにしましょう。
- 撮影モード:絞り優先
- 日の出が近づき太陽が昇り始めると、明るさもどんどん変化してくるので、撮影モードは絞り優先モードにしておくのが簡単でお勧めです。
- 絞り:f8 〜 f16
- 風景写真でパンフォーカスで日の出を撮影する時は、太陽の光が強いので絞りの設定はf14前後のやや絞り気味にするといいです。光芒を出したい場合は、f16位まで絞って太陽の光芒を出すようにすると良いでしょう。
メインとなる被写体に合わせて絞りをコントロールしてください。 - ISO感度 : 100
- 日の出の頃になると十分な明るさがあるのでISO感度は出来るだけ低く設定しておくといいでしょう。
もし、三脚を使わずに手持ちで撮影する場合は、手ブレしないシャッタースピードになるまで少し感度を上げて撮影してください。 - ホワイトバランス
- ホワイトバランスの設定は、晴天又は雲天などの暖色系にしておくと、朝日のオレンジがより強調されドラマチックな雰囲気になります。RAWで撮影している場合は、撮影後でも自由に変更できるので、ホワイトバランスはオートでもオーケーです。
- 太陽と風景と露出差の調整
- 日の出や朝日の撮影で良くある失敗は白飛びだと思います。日の出を撮影する際、風景部分の明るさに露出を合わせると太陽の部分が白飛びしてしまいます。そのような時に上下の露出を調整して綺麗な日の出をとるためレンズの前にハーフNDフィルターを付けるとドラマチックな日の出を撮ることができます。