超コンパクト望遠MFレンズ「Tokina SZ PRO シリーズ」使い方マニュアル vol.2 ~動物園で撮ってみた!撮影応用編~

超コンパクト望遠MFレンズ「Tokina SZ PRO シリーズ」使い方マニュアル vol.2  ~動物園で撮ってみた!撮影応用編~

Tokina SZ PROシリーズレンズの使い方マニュアル第2弾。今回は、基本編に続き「動物園での撮影編」です!
本レンズの特徴、向いている被写体や、動物撮影の際に気を付けたいポイント、おすすめの機能などを写真家 宇佐見健氏に解説いただきました。

 

行動展示や生態的展示には超望遠レンズが最強

Tokina SZ 300mmPRO Reflex F7.1 MF CF で撮影

動物園に行くと、一日で世界中の様々な動物達を撮影できます。動物園にしばらく行ってないという人には、柵に囲まれた狭い場所にじっとしている動物達の印象が強いかもしれません。
現代の動物園は、飼育動物たちの健康に配慮し、展示エリアを本来生息している自然の環境に少しでも近づくよう工夫して、より活き活きとした動物本来の姿に近づけた行動展示や生態的展示と呼ばれる見せ方が主流になってきています。

Tokina SZ 300mmPRO Reflex F7.1 MF CF で撮影

もちろん従来通り強固なフェンスで覆わざるを得ない動物もいます。しかし、中には展示エリアが広くなったことでいろんな角度から観察できたり、柵ごしではなく動物の目線の高さに近いポジションで観察したり撮影できるような展示も増えていて、一見動物園での撮影とは思えないような写真を撮ることもできるのです。

このような展示方式は、人間と一定距離を保つことで動物たちのストレスを軽減する意味合いもあります。動物によっては従来の展示方式よりも距離が離れて、「遠い存在」になってしまった動物がいるのも事実です。
撮影することを考えると不利に思われがちですが、このような時こそTokina SZ PROシリーズの超望遠レンズが威力を発揮します。

動物園でSZ PROシリーズを使う

1. 動物園でSZ PROシリーズのミラーレンズで撮影するメリットとデメリット

Tokina SZ 300mmPRO Reflex F7.1 MF CF
○メリット
  • 広い展示エリアの遠い場所にいる動物をぐっと引き寄せて大きく写せる超望遠レンズ。
  • 超望遠レンズでありながら圧倒的に軽量コンパクトで、徒歩移動が基本の動物園内の高低差などでも苦にならない機動力の高さ。コンパクトなため、大きなレンズに比べて人通りの多い場所でも目立たず、スマートに撮影できる。
  • 超望遠の画角と被写界深度が浅い特性を活かし構図の整理がしやすい。
  • ミラーレンズ特有のリングボケを活かした画作りができる。
△デメリット
  • けっして明るいとは言えないF値固定による露出決定の難しさ。
  • 超望遠ゆえのカメラブレのリスク。
  • マニュアルフォーカスのため動体撮影は苦手。

マニュアルフォーカスは確かに弱点かもしれませんが、あらかじめピントを合わせておく置きピン撮影に慣れればアクティブなシーンにもある程度対応は出来るようになります。またF値の暗さやカメラブレのリスクはISO感度の高感度設定と三脚の使用でリカバリーが可能です。SZ PROシリーズのミラーレンズだからこその超望遠の焦点距離を活かし、動物達をより大きく捉えてみましょう。ほんの一瞬のしぐさや表情を意識してシャッターチャンスを狙えば、従来の望遠レンズでは捉え切れなかった動物達の魅力を引き出す写真になるはずです。

2. 通いやすい動物園をホームグラウンドに

同じ動物園に通い撮影を重ねることで動物達の習性や行動パターンも徐々に理解できるようになり、最初は満足がいかなかった撮影シーンでも攻略できるようになるものです。また一年を通して通えば、季節感を取り入れた撮影もできるでしょう。

3. 動物の動きをじっくり観察する

動物園をくまなく周るより、撮影対象の動物をいくつかに絞り、一種類の撮影にかける時間を多めに取るのが上達の近道です。
飼育下の動物達は規則正しい生活をしています。給餌の時間や回数、その方法などは動物の種類によって異なりますが、基本的に毎日同じスケジュールで飼育スタッフが世話をしているので、アクティブに運動する時間や逆に昼寝などで静かにしている時間などにパターンがあります。だいたいの行動パターンがわかると、写真が撮りやすいシーンや狙いどころも見えてきます。

たとえば、撮影していて動きの展開が無くなれば、他の動物の撮影に切り替え、時間が経ってから再度撮影に戻るというのも良いでしょう。動物の行動だけでなく、時間が経過したことによる太陽の位置の違いで、被写体や展示エリアを照らす光線にも変化が期待できるからです。

Tokina SZ 600mmPRO Reflex F8 MF CF(35mm判換算900mm) 絞り優先AE(絞りF8・1/1250秒)・ISO800・WBオート
Tokina SZ 600mmPRO Reflex F8 MF CF(35mm判換算900mm) 絞り優先AE(絞りF8・1/550秒)・ISO800・WBオート

キリンとの距離が遠かったので、顔のアップを数枚だけ撮影して移動し、時間をあけてから再び訪れてみました。キリンとの撮影距離はほとんど変わりませんが、背景が日陰になる時間帯だったため暗く落ちた背景に主役の横顔が浮かび上がる印象的な写真が撮れました。

動物たちには、お気に入りの場所があります。一度お気に入りの場所を離れても、しばらく時間が経つと同じ場所にまた戻ってきます。そうした行動パターンを読めれば、あらかじめ構図やピントを合わせて(置きピン)待ち伏せ撮影することで、動いているような瞬間を捉えることができます。

Tokina SZ 600mmPRO Reflex F8 MF CF(35mm判換算900mm) 絞り優先AE(絞りF8・1/240秒)・ISO800・WBオート

ミーアキャットが巣穴への出入りを繰り返す動作の中で、周囲を警戒して一瞬だけ動きを止める瞬間を置きピンで待ち伏せ撮影。右後ろ足が浮いた瞬間で少しだけ画に動きがでました。舌出しはたまたまのラッキーショットです。

4. 動物の顔や体のパーツをアップで狙う

せっかくの超望遠レンズですから、動物たちの顔をアップで狙ってみましょう。動物達がどこにいるかによって、撮影距離はまちまち。場合によっては近すぎて画面に収め切れないこともあるはずです。そのような時は大胆に体や顔のパーツを切りとってみましょう。

Tokina SZ 600mmPRO Reflex F8 MF CF(35mm判換算900mm) 絞り優先AE(絞りF8・1/1700秒)・ISO800・WBオート
Tokina SZ 300mmPRO Reflex F7.1 MF CF(35mm判換算450mm) 絞り優先AE(絞りF7.1・1/180秒)・ISO800・WBオート

動物との間に檻やフェンスなどがある場合は、なるべく近づくことでそれらの要素をぼかして目立たなくするようにしましょう。もし、オープンな展示エリアで障害物が無い場合は、様々な位置からの撮影を試してみましょう。少し離れていても見通しが良い場所を見つけられれば、超望遠レンズの引き寄せ効果で十分アップの写真が狙えることもあります。ぐるっと周囲を見渡すと、超望遠SZ PROシリーズレンズだからこそ狙える特等席のような撮影場所を見つけられるかもしれません。
動物の表情を狙う時は、瞳にピントを合わせることでイキイキとした表情を写せます。その際、カメラを見ているかのような視線を感じさせる正面顔も最大のシャッターチャンスです。

Tokina SZ 300mmPRO Reflex F7.1 MF CF(35mm判換算450mm) 絞り優先AE(絞りF7.1・1/750秒)・ISO800・WBオート

マニュアルフォーカスのアシスト機能をフル活用

ピント合わせの際は、カメラのピーキング機能やピント拡大表示を活用すると良いでしょう。

1. ピーキング表示

ピーキングメニュー画面(FUJIFILM X-T4)
ピントが合っている状態
ピントが合っていない状態

フォーカスリングの操作により、ピントが合いコントラストが高くなった箇所をカラー表示するピーキング機能。画像を拡大しなくてもピントの山をつかみやすく、慣れるとマニュアルフォーカスでもピント合わせが素早く行えるようになります。

2. ピントの拡大表示

ピント拡大画面
通常画面

画面の中でピントを合わせたい部位を拡大表示しながら、ピントを合わせることができる機能です。任意のファンクションボタンに拡大をオンにする機能を割り当てておくことで、素早くピント調整ができます。

Tokina SZ 600mmPRO Reflex F8 MF CF(35mm判換算900mm) 絞り優先AE(絞りF8・1/240秒)・ISO800・WBオート
Tokina SZ 300mmPRO Reflex F7.1 MF CF(35mm判換算450mm) 絞り優先AE(絞りF7.1・1/550秒)・ISO800・WBオート

手ブレ(カメラブレ)や被写体ブレを防ぐ方法

手ブレは、シャッターを切る瞬間にカメラを動かしてしまうことで、画面全体が流れたように不鮮明に写ること。一方の被写体ブレは、シャッターを切る瞬間に被写体が動いてしまいブレて写ること。

1. 三脚を使用する

三脚を使用することで、カメラブレを防ぐことができます。動物があくびをするタイミングや正面を向いた瞬間など、構図を決めて、いつ訪れるかわからないシャッターチャンスを待つ場合には欠かせないアイテムです。
※三脚使用時は他の客の迷惑にならないようにしましょう(同じ場所にずっと居座るのはマナーとしてNGです)

構図を決めてシャッターチャンスを待つ

三脚はブレを防ぐだけでなく、「決めた構図を維持してシャッターチャンスを待つ」撮影にも便利です。

ローアングルで使用

小動物の展示エリアでは動物の目線の高さに三脚をセットするとより自然な写真に写せます。

2. 手すりや壁などを利用する

三脚を使用できない場面では、手すりや壁などで身体を一時的に安定させて撮影しましょう。

三脚や、カメラに搭載されている手ブレ補正はある程度有効ですが、被写体ブレ防止には一切効果がありません。そして被写体ブレはシャッター速度を速く設定する以外に防ぐ手立てはありません。
必要に応じて、ISO感度オートの設定でシャッター速度の低速側のシャッター速度をより速い速度に変更する、ISO感度ダイヤルをA位置から外すなどして、より速いシャッター速度が切れるISO感度に設定します。

3. 連写機能を利用する

シャッターを切る際に、シャッターボタンを押し込む動作でわずかにブレてしまうことがあります。連続撮影(連写)機能は、シャッターボタンを押し続けている間連続でシャッターが切れる機能です。最初の1コマ目でブレてしまっても、2コマ目以降カメラを静かに保持していればカメラブレのリスクを少し軽減できます。撮影した画像を確認してブレの少ない画像をOKカットとして選びます。また、連写をすることで動物の一瞬の仕草や表情の変化を写しとれるかもしれません。

美しいリングボケを作る方法

1. 良いボケが得られる条件

リングボケを得る撮影は背景との距離を意識しましょう。 SZ PROシリーズレンズは、被写界深度(ピントの合う範囲)が浅い超望遠レンズのため、背景を大きくぼかしたり、ミラーレンズ特有のリング状のボケ味を得ることができます。しかし、これらを得るには撮影時にいくつかの条件が整う必要があります。

1. 被写体と背景の距離

被写体のすぐ後ろに樹や塀があるなど、被写体と背景との距離が近い場合は両方にピントがあってしまうため、背景に大きなボケを得ることはできません。被写体が背景から離れた位置に移動するのを待つか、雑多な要素が背景に入り込まないアングルを探しましょう。

Tokina SZ 300mmPRO Reflex F7.1 MF CF(35mm判換算450mm) 絞り優先AE(絞りF7.1・1/1000秒)・ISO800・WBオート

カピバラが塀に寄りそっているため被写体と背景の両方にピントが合っている例。

2. 被写体と撮影者との距離

被写体との撮影距離が近い場合は背景が大きくボケますが、大きくボケ過ぎるとリング状のボケ味にはなりません。また、逆に被写体との撮影距離が極端に離れている場合は、①同様に被写体と背景両方にピントが合いやすく、大きなボケ味やリングボケは得られません。

Tokina SZ 300mmPRO Reflex F7.1 MF CF(35mm判換算450mm) 絞り優先AE(絞りF7.1・1/350秒)・ISO800・WBオート

撮影距離が遠くチータと背景の両方が遠景になり大きなボケ味が得られていない例。

3. 形のあるものが独特のボケ味になる

背景として写り込む物の形状や光を受けた輝度差などで、ボケ味は異なります。例えば、被写体と背景の距離が適度に離れていても、壁面のようなフラット背景はボケてもリングボケにはなりません。リングボケはある程度の大きさで形がハッキリしている物体で、一部分が光を反射しているなどの輝度差が生み出す独特のボケ味なのです。

Tokina SZ 900mmPRO Reflex F11 MF CF(35mm判換算1350mm) 絞り優先AE(絞りF11・1/350秒)・ISO800・WBオート

チータの横顔を900mmで撮影。背景は大きくボケていますが、枯れた芝で形状が細かく、輝度差もないためリング状のボケは生まれません。

Tokina SZ 600mmPRO Reflex F8 MF CF(35mm判換算900mm) 絞り優先AE(絞りF8・1/680秒)・ISO800・WBオート

ミーアキャットの背景が壁面で距離も近いため、わずかにボケてはいてもリングボケにはなりません。

これらの例のように、ミラーレンズだからと言っても必ずリングボケが得られるとは限らないのです。

2. リングボケが出やすい環境を見つける

しかし、実は動物園ではリングボケを得やすい環境も多いのです。 樹木の葉や枝などが光を反射している部分を見つけて背景として絡めることができれば、簡単に印象的なリングボケを得られるのです。

Tokina SZ 300mmPRO Reflex F7.1 MF CF(35mm判換算450mm) 絞り優先AE(絞りF7.1・1/125秒)・ISO800・WBオート

止まり木にとまったベニコンゴウインコを間近に撮れる展示エリアでの撮影。フェンスや網もなく、360度どこからでも撮影可能な場所だったので、ぐるりと観察しながらリングボケを得られるアングルを見つけて撮影しました。

Tokina SZ 300mmPRO Reflex F7.1 MF CF(35mm判換算450mm) 絞り優先AE(絞りF7.1・1/210秒)・ISO800・WBオート

同じ撮影位置から背景にピントを合わせた写真です。一部の葉が太陽光を強く反射しているのがわかります。このハイライト部分がリング状のボケ味になっているのです。

Tokina SZ 300mmPRO Reflex F7.1 MF CF(35mm判換算450mm) 絞り優先AE(絞りF7.1・1/1100秒)・ISO800・WBオート

同じエリアにいた別のインコですが、背景に樹を入れ込むことができない位置で、陽も当たらず輝度差の少ない背景のためリングボケは得られません。

動物園の撮影では、撮影者が移動することで被写体との距離を変えたり、背景の入り方を変えたりすることが多少できますが、大きく変えることは困難です。また、当然ですが動物を撮影に都合の良い場所へ移動させることもできません。自分の思うような撮影ができないことが、動物園写真の難しいところです。

それでも何度も通いレンズを向けることで、どのような距離感や位置に動物がいるのがベストなポジションかの見極めができるようになってきます。これは、狙う動物の大きさや撮影距離、展示スペースの広さ、光線状態、使用するレンズの焦点距離など、複数の要素が関係するため一概に言えず、正解は場数を踏んで自分で探し出すしかありません。だからこそ狙いを定めて粘り、ベストなポジションで撮影できれば高い満足感を得られるのです。

まずはSZ PROシリーズのミラーレンズを装着したカメラを持って動物園に行ってみましょう。被写体を定めたらレンズを向けてみて、一般的な超望遠レンズとは異なる超望遠ミラーレンズの醍醐味と迫力を満喫してください。

作例

撮影のヒントになりそうな作例をご紹介します。 この動物園編で紹介する作例写真は、トリミングを一切していないSZ PROシリーズレンズ3本による超望遠の世界です。

※クリックで拡大します

 

「SZ PRO」で超望遠撮影を楽しみましょう!!

次回、SZ PROシリーズ使い方マニュアル撮影応用編「超望遠で街スナップ(仮)」 が近日公開予定!ケンコー・トキナー公式Twitter・Instagramにてお知らせいたします。

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Photo & Text by 宇佐見 健