Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E レビュー by Harukaze Suzushi

初めて⼿にした時の感動が忘れられないレンズだ

報道写真家から映画制作者に転⾝して、これまでたくさんのスチルレンズ、シネマレンズを使ってきま したが、これほど気軽に常⽤できるズームレンズは久しぶり。しかも、F2.8通しの超広⾓レンズなの に、これだけ軽量コンパクト、それでいて開放からシャープでキリッとした画質なのです。
初めてこのレンズを⼿にした時の使いやすさと画質の良さがもたらすドキドキ感は、クリエイターの創 作意欲を掻き⽴てると、筆者は思いました。
そこで、動画制作者の⽬線で、このatx-m 11-18mm F2.8Eの特徴を解説します。

現代レンズらしい⾼い解像感を持ちつつ開放時の柔らかいボケ味が魅⼒だ。

スマホにもシネマルックが搭載されるようになった昨今、当然のことながらミラーレス⼀眼⽤レンズも 絞り開放から使うのが当たり前になっています。このatx-m 11-18mm F2.8Eは、もちろん開放F2.8か らピント⾯はシャープで⾼い解像感を持ちつつ、開放時の背景の⾃然で柔らかいボケが魅⼒です。
この絶妙な味付けのおかげで、広⾓端から美しい⽴体感のある写真や映像が味わえます。もちろんスチ ル写真でも美しい⽴体感は楽しめますが、このレンズが威⼒を発揮するのは動画でしょう。
作例の冒頭では、無数の紅葉の⾚い葉の中にレンズが進んでいきますが、豊かな⾊彩階調と程よいボケ によって、葉の⼀つ⼀つの⽴体的な位置がわかります。

動画からの切り出しなので、動きのある葉にブラー（ブレ）が⾒られますが、良好なコントラストと背 景ボケにより強い⽴体感があります（動画の作例でお確かめください）。

ハイライトからシャドーまで⾮常に美しい発⾊。逆光でもコントラストの低下がほとんどないので、⼤ 胆な逆光の構図も苦労することなく作品になるでしょう。

⾊のコントラストも⾼く、⾒栄えのする作品が作りやすいレンズです。太陽が映り込むような構図で も、⾊褪せません。

良好な歪曲補正が広⾓レンズであることを忘れさせてくれる

広⾓レンズには、どうしても歪みが⽣じますが、このレンズはワイド端から良好な歪曲収差の補正が施 されており、まるで標準レンズを使っているかと錯覚してしまいます。
作例では、⼥優さんの顔が歪むことなく、まるでポートレート⽤レンズを思わせる⾃然な形と距離感 を作り出してくれています。また、お抹茶と和菓⼦の作例では、まるでそれが⽬の前にあるかのような 錯覚に陥るほど、⾃然に描写されています。
それでいて、⼗分に広い画⾓はビルや⾼い⽊々を迫⼒ある画像にしてくれます。
作例の⾼い⽊々を⾒上げる構図では、⽊々が押し寄せてくるような迫⼒が感じられます。

18mmでの撮影では、まるで標準レンズのような歪みのない描写。APS-Cの広⾓レンズですが、F2.8で は適度に背景がボケてオシャレな雰囲気作りが可能です。

11mm側の最短撮影距離は19cm、18mm時は30cmと非常に扱いやすくなっています。⾷べ物の撮影は ご覧の通り。⾃然なパース感を豊かな発⾊はあなたの強い武器になるでしょう。

直線が直線として描画され、超広⾓ならではの迫ってくるようなパース感が両⽴したレンズです。建築 写真から⾵景写真まで幅広く使えるでしょう。

逆光でも失われない発⾊と⾃然な描写
程よいコントラストがRAW現像や動画グレーディングで使いやすい

逆⾏時にコントラスト低下がほとんどないのがこのレンズの強みです。そのため、RAW現像や動画グレ ーディングでも画質が破綻しずらく、素材が持つ美しさを苦労することなく引き出すことが可能です。
作例動画は、Davinci Resolveによるグレーディングが⾏われています。⾼いグレーディング耐性を持 つレンズだとわかります。紅葉の燃えるような⾚は、⾊相をずらしたのではなく、素材が持っている⾚ を印象深い彩度に調整しているだけです。
⾼性能なカメラの持つ10bit 4:2:2の豊富な⾊情報に⾒合うだけの豊かな発⾊性能を有したレンズだと⾔ えます。

グレーディングしやすい画質で⾼性能カメラの10bit 4:2:2の豊かな⾊調に応えられるレンズ性能だと⾔えます。

動画にも使えるズーム
⾼いAF性能と重⼼変動がほぼ無いが特⻑だ

実際に動画やスチルで使ってみると、レンズ⻑が短く、ズームによる重⼼の変動がほぼないので、⾮常 に取り回しが楽なレンズです。ジンバルに乗せた際も、ズーミングが可能でした。APS-Cレンズは、⼩ さく作れることがメリットの⼀つであり、このレンズは、そのメリットを最⼤限に活かした設計だと⾔ えます。
また、ズームリングの重さが⾮常に良い調⼦に仕上げられており、動画撮影時にズーミングすることが 可能です。
AFは無⾳で⾼速です。Vlogから映画撮影まで使うことが可能です。
また、多くのレンズが採⽤しているフィルター径67mmというのもポイントが⾼いです。絞り開放で撮 影するためには可変NDフィルターが必須なので、他のレンズと共⽤しやすいのが67mmなのです。

アマチュアからプロまで安⼼して使える
使っていて楽しいドキドキレンズだ

この⼀本で⾃撮りのVlogから旅写真、旅Vlog、⾷べ物Vlogはもちろんのこと、コンテスト狙いの⾵景写 真など、多彩に対応可能な性能を持った超広⾓ズームレンズです。APS-C故の軽さと⼩ささは、あなた の写真・動画ライフを豊かなものにしてくれるでしょう。