トキナーReflex 300mm F6.3 MF MACROは、小さく軽く手のひらサイズでカメラバッグの中の納まりの良いレンズだ。
Reflex 300mm F6.3 MF MACROは、レンズ奥に見える鏡面部分に光を集め、レンズ前面中央部分にある反射鏡に反射させ撮像素子へと光を導くいわゆるミラーレンズである。
ミラーレンズは、通常の光学系レンズに比べ、構造上解像度は一歩譲ると言われているが、ミラーの面精度、ガラス配置の工夫などトキナーが持つ現代テクノロジーを惜しみなく注ぎ込まれて作られており、十分な解像を引き出している。また、各種収差は非常に少なくミラーレンズのアドバンテージが活かされている。
マイクロフォーサーズ機との組み合わせでは35mm換算600mmとなるこのレンズは、遠くにあるものはもちろん、最短撮影距離が80cmとテレマクロとしても楽しめるレンズでボケ味もやわらかいボケ味だ。
アルミ削りだしのボディは手触りが良く、ピントリングのトルクも適切なトルク感である。撮影はマニュアルフォーカスでの撮影となるがピントの山も掴みやすい。
上述のように小さく軽い35mm換算600mmの望遠が売りだが、独特のリングボケを楽しむことがでるレンズで隣のフォトグラファーとは違ったテイストの一枚を撮ることが出来る。たとえば、色とりどりの花畑、反射する水面などの撮影では独特のリングボケを使い一味違った一枚を楽しむことが出来る。
以下、実写してゆく中で感じた事を踏まえたレンズ解説をしていきたい。
4000m級のスイスアルプスの山頂付近を撮った一枚だ。撮影時は初夏であったが、万年雪をかぶる山頂付近は厳しい自然の姿を見せていた。ファインダーを覗いて気がついたのだが、下山途中の登山者の姿を確認できた。肉眼では気がつくことが出来なかったが35mm換算600mmという超望遠の世界ではキチンと確認することが出来る。また、斜面に積もった雪の再現、「白の中の白」の再現も秀逸だ。滑らかな雪の斜面の中にも陰影があり様々な「白」がある。その様々な「白」がしっかりと再現されることにより立体的感が生まれている。
Reflex 300mm F6.3 MF MACROはミラーレンズの良さが存分に活かされたレンズである。ミラーレンズのアドバンテージのひとつとして、各種収差の少なさが挙げられる。1では近代的なガラスのビルを撮影したが、歪曲収差は非常に少なく抑えられていることが分かる。また2では、メッキに強い太陽光が当たるというレンズにとってはかなり意地の悪い条件で撮影したのだが、太陽光が集まるメッキ部分には目立った色のはみ出しもない。35mm換算600mmの超望遠ともなれば色の縁取りが見られるレンズもままあるが、そういった縁取りは見られず、また歪曲収差も非常に少ない。現代テクノロジーの粋を用いて作られたこのレンズは、これまでのミラーレンズよりも一段上の画を提供してくれる。
水辺で佇むかもめを撮る。 かもめなどの水鳥を撮る場合、不用意に近づくとあっというまに逃げられてしまうが、600mmという焦点距離は、野生動物が逃げてゆかない「野生の距離」を保ちながらもここまで大きく撮影することが出来る。解像も羽毛の生え方が良く分かるもので手触りまで伝わってくるようだ。この作例を撮影した後、撮影画像を確認するため背面モニターを確認していた筆者は「野性の距離」を保ちながらもグッと大きく寄れたことに喜びを覚え、ついつい「おぉ近いなぁ!」と結構な音量で声に出してしまったため、かもめは驚いて飛んでいってしまった。
圧縮効果を用いた撮影。 1枚目、レンズの圧縮効果を使い断崖に立つ樹と空を撮影した。レンズの圧縮効果で空がグッと近寄り、まるで空の雲が樹に触れるかのように近くにある印象を与えている。実際は非常に離れているがレンズの圧縮効果を使うことにより一味違った一枚となる。 2枚目、山間に低い雲が下りて雲海を作り上げていた。奥の山肌から中間にある断崖、手前の崖までそれぞれ距離はあるが、圧縮効果で一気に引き寄せられ、まるで峡谷のような一枚となった。実践の中ではこうした望遠レンズならではの効果を積極的に使い、画作りを楽しみたいレンズである。
35mm換算600mmという画角の面白さ。 朝モヤと、けあらしが発生する川面に朝日が射し込むほんの短い瞬間を撮影した。 浅いコントラストの中にあってもしっかりと再現をしてくれるレンズである。 ネイチャー写真を撮る中で「一枚の写真」にするまでに、フォトグラファーは眼を惹く様々な要素を見つける。その要素を「どうフレーミングし、それをどう切るか?」がフレーミングの妙となる。この35mm換算600mmという凝縮された画角を実践の中に用いてシャッターを切っていくと「どう切るか?」、即ち「写真は引き算」というフレーミングの基本をフォトグラファーに問いかけてくるのである。Reflex 300mm F6.3 MF MACROは「どう切るか?」という画作りをうんと楽しめるレンズである。
スナップレンズとして使う ミラーレンズは小さく軽く作ることが出来る。そのメリットは大きく600mmの超望遠レンズを振り回しながら街をスナップして歩くことが可能となる。標準域のレンズでは撮れない距離感の中で「あ、いいな」と思う瞬間を捉えることが出来る。この面白さはReflex 300mm F6.3 MF MACROならではのものだ。 小さな女の子と父親が目線での会話をしている。はにかむような少女の笑顔が目を引いた。そんな瞬間をさりげなく撮ることが出来るレンズだ。
広場で演奏をする街の音楽家をみかけた。 Reflex 300mm F6.3 MF MACRO での撮影ならば演奏の邪魔にならない距離を保ちながらしっかりと表情を撮影することが出来る。また、 35mm 換算 600mm と超望遠でありながら最短撮影距離が 80cm と短いため、さらに近寄り演奏者とアイコンタクトの取れる位置からの撮影も可能だ。
飼い主を見つめるワンちゃん(バーニーズマウンテン)の表情がとてもにこやかな表情をしておりついシャッターを切った一枚だ。 実は、この一枚を撮影する前にも飼い主さんとこのワンちゃんを撮影しているのだが、大きなカメラで撮影をしたためどうしても撮られることを意識している写真となった。その後、ボディを変更し、レンズも小さなReflex 300mm F6.3 MF MACROへと変更。撮られることを意識しない一定の距離を取り撮影する中でワンちゃんが見せてくれたにこやかな表情がそこにあった。撮影しているとき、この一瞬はこのレンズでなければ撮れなかった一瞬だと思った。
35mm換算600mmだからこそ取れるアングルがある。 陽炎ゆれる向こうから現れる登山列車。こうした画は望遠ならではの一枚だ。季節を感じさせるものの中のひとつに陽炎がある。陽炎を感じる画を撮るにはどうしても長い焦点距離が必要になるが35mm換算600mmであれば陽炎を感じる画を撮ることができる。また、撮影したホームは非常に狭いホームであったが35mm換算600mmであれば少し離れた安全なポジションで撮影することができる。
ベネチア名物ゴンドラの行き交う水路を撮影した。 実践の中で標準域ではどうしても撮れないアングルが出てくる。たとえば、こうした被写体とレンズの間に水が阻んでいるような場合である。近寄りたいがどうしても近寄れない。近寄るとなると水路近くの水辺からとなるが、その位置からだとどうしても横からのアングルとなり、作例のようなほぼ正面受けのアングルにはならなくなる。ゴンドラに乗るという手もあるがゴンドラは常に進んでいくので、撮影のために長い時間留まってはくれない。同じ場所でじっくり狙うとなると長玉の出番となる。35mm換算600mmという焦点距離は、阻むものを乗り越えまるで水の上から撮影したように見えるアングルからの撮影を可能としてくれる。これも超望遠だからこそ出来ることである。
リングボケの面白さ
このレンズの特徴のひとつリングボケは、リングの大きさを変えて楽しむことが出来る。
たとえば、1のように汗をかいた清涼飲料水のしずくを小さなリングボケにしたり、2のようにメインの被写体との間に小さく距離を空けてボケのリングをもう少し大きくしたりも出来る。3,4のように、メインの被写体との距離をさらに空けることによってリングボケの大きさはもう少し大きくなり、リングボケがさらに強調される仕上がりとなる。
マクロの性能
テレマクロとしても十分面白い画を提供してくれる。
作例1は、葉を食むバッタを撮影した。ワーキングディスタンスが取れるため、バッタに逃げられることなくゆっくりと撮影することが可能であった。ボケ味もとてもふんわりとやわらかいボケ味だ。また、作例2のようにマクロ領域での撮影でリングボケが目立たないよう撮影することも可能だ。メインの被写体と背景の距離の取り方であえてリングボケを出さずに撮影することも出来る。
[著作権および画像利用についてのご注意]
本スペシャルページで提供している「実写生データ」の著作権は、撮影者である 小河俊哉氏に、使用権は 株式会社ケンコー・トキナー に帰属しています。著作権所有者および 株式会社ケンコー・トキナー への事前の承諾を得ること無しに、その全てまたは一部を、いかな る形式、いかなる手段によっても、複製・改変・再配布・再出版・表示・掲示または転送することは禁じられています。
本スペシャルページの「実写生データ」は、お客様のコンピュータースクリーン、もしくはお客様ご自身のプリンターまたは プリント手段等による、私的な画像確認での利用に限ってのみ、ご利用いただけます。