色々なシーンを思いがけない表現に!!「レンズベビーSWEET22」 by 川合麻紀
2024年春に発売となった「Sweet22」。ミラーレス専用とすることで、超広角レンズを実現しつつ、レンズベビーらしい周辺の流れを作り出すレンズが登場しました。この記事では、今までのレンズベビーコンポーザープロII Sweet50やSweet35との違いや、どのような被写体に向くかをお話しします。
レンズベビーは2004年に掃除機のホースに虫眼鏡を取り付けた試作品からスタートした、ユニークなレンズで、レンズベビー社はアメリカの会社です。当初は50mmの焦点距離の製品を作っていました。初期の頃の製品の蛇腹はピント合わせが難しいことから、ボールを利用した形に進化し、最新モデルでは「コンポーザープロII」という鏡筒の形式を販売しています。
鏡筒はボールの仕様のため、傾けることができますが、まっすぐにして使用すると、画面の周囲がぼけて、中心部分だけにピントが合った写真を撮ることができます。鏡筒を傾けると、ピントが合って見える部分(スウィートスポット)の位置を中心からずらすことができます。
Sweet35は、当初APS-Cフォーマットに合わせて作られたものですが、フルサイズでも広角のレンズベビーとして使用できます。ただ、フルサイズで使うと、50mmよりも流れの部分が大きく、レンズベビーらしさが強く出るため、構図決定に工夫が必要です。
Sweet50、Sweet35と広角側に進化したレンズベビーですが、今回のSweet22は、今までのシステムと異なり、コンポーザープロIIの鏡筒を使わずに、直接カメラに取り付ける形式です。そのため、画面の中でピントが合って見える部分(スウィートスポット)の位置を調整できず、必ず画面の中央にピントが合う写真となります。写真の中の、見せたい場所を真ん中にしたくない場合は、撮影後、必要に応じてトリミングをすると良いでしょう。
それでは、レンズベビーSweet22を使って撮影した写真を紹介するとともに、このレンズに向く被写体について解説していきましょう。
作例1
足元に植えられたカラーリーフを撮影しています。カメラから比較的同距離にある被写体です。普通のレンズなら、同距離にあるものはすべてピントが合うので、構図全体がシャープに見える状況ですが、レンズベビーの場合には、同距離にあったとしても、中心部は合いますが、周囲は流れるようにボケます。
作例2
こちらも俯瞰気味で見下ろすように撮影しています。フルサイズで使った場合に、画面中央のスイートスポットの範囲がどれくらいかがわかりやすいと思います。周囲の流れるボケで、視線が中心に誘導されます。Sweet22はポートレートレンズとしてもおすすめです。
主被写体を画面中心に置き、ピントをMFで合わせます。コンポーザー系のレンズベビーとは違い、鏡筒は固定で、傾かないので、直感的に撮影できると思います。
作例3
主役と背景の距離を離して撮影すれば、背景はボケやすくなりますが、その条件ならレンズベビーの場合、周囲の流れるボケと相まって、普通のレンズのボケとは一味違う感じになります。玉ボケは画面周辺になるほど大きくゆがみます。この写真はクレマチスのしべにピントを合わせました。背景はバラなどの葉です。
焦点距離22mmというと、かなり広角なので、小さい被写体をアップで撮影しようとすると、かなり寄って撮ることになります。最短撮影距離はレンズ先端より12.7cmです(最大撮影倍率は0.2倍)。 もし、寄り足りないと感じるなら、フルサイズのセンサーのカメラならクロップしたり、あるいはAPSCセンサーのカメラで使用すると、焦点距離は35.2mm相当になります。
作例4
桜の通路を狙ってみました。このように少し距離がある被写体だと、ピントの合って見える部分の狭さが気になりました。絞りはF3.5固定なので、シャープな範囲を絞りで広げることができません。 この絵柄ならフルサイズをクロップするか、APS-Cの方がいいかもと思いました。ピントを合わせる被写体までの距離や、画面周辺の状態によっては、スイート22より、絞りを変化させられるSweet35の方が使いやすいこともありそうです。
作例5
距離があると言っても、夕方のスナップの絵柄は、中心にわかりやすい看板があるせいか、画面右半分がすっきりとした景色だからなのか、シャープな範囲の狭さは気になりませんでした。あるいは、APSCでの撮影なので、流れる周囲部分が少なくなった分、気にならなかったのかもしれません。
作例6
縦位置のチューリップの写真も、APSCでの撮影です。
作例7
Lensbaby Sweet 22は、金属製の固定鏡筒で、本体の厚さは38mmとコンパクトで、重さもわずか110g(Eマウントの場合)です。気軽に持ち歩けます。何気なく撮影しても、中心以外は大きくボケて情報が整理されるので、出来上がった写真をみる人は、自然と中心に目が行くことになります。この写真も、横顔のシルエットの美しさはシャープに、それ以外はボンヤリと、夢の中のような、過去の記憶のような印象が出たかなと思います。
作例8
建物の形を撮ろうとしていた時に、構図に入ってきた素敵な方のシルエットです。
作例9
中心の狭い範囲のみがシャープなので、メインの被写体を画面中心に構図を作る必要があります。 この写真のように、そうすると構図的に困ることもあります。その場合には、撮影後にトリミングすればいいと思います。この写真だと、構図の下部1/4〜1/3程度はカットしたいですね。 天井についたイルミネーションは実際は点状の電球ですが、大きくボケて華やかです。
作例10
床に描かれた小さなタワーも、Lensbaby Sweet 22で撮るだけで星々に囲まれているようになりました。
作例11,12
Lensbaby Sweet 22の特徴を出したいなら、照明がたくさんあるような場所もおすすめです。 水族館の中は、照明がたくさんあり、水槽のアクリルの反射なども相まって、ドラマチックになります。
作例13,14
ランタンのトンネルも華やかに。冬はイルミネーション撮影もおすすめです。
作例15,16(直近で撮影したもの)
フルサイズでコスモスを撮影しました。コスモス以外はカラフルな流れで表現できます。
イルミネーションを華やかに演出できます。
川合 麻紀(かわいまき)
彩り写真家。色彩や配色にこだわった花写真やキラキラなイルミネーションをメインに作品作りをしている。多重、ブレやぼけなどを生かした表現なども得意。
作品作りに並行して、企業や行政機関などの広報用撮影なども行なっている。
写真展多数
キヤノンマーケティングジャパン株式会社EOS学園講師、その他撮影会指導。
フォトコンテスト審査(国際文化カレッジ総合写真展、カメラのキタムラフォトコンテスト)、企業会報誌、カメラ雑誌、WEBへの原稿執筆
ガーデンネックレス横浜 里山ガーデンオフィシャルフォトグラファー
テレビ出演(NHK教育、NHK BS、TBS)
公益社団法人 日本写真協会、公益社団法人 日本写真家協会会員