アイルランド紀行Firin20mmのルーツを巡る

アイルランド紀行Firin20mmのルーツを巡る
小河俊哉

小河俊哉(おがわとしや)

東京都出身。
自動車整備士、カースタントマンなどを経てフリーフォトグラファーとなる。自然、風景、クルマ写真などを専門とし雑誌、クラッシックカーイベントなどで活躍。 現在、作品集作成のため精力的に国内外で撮影中。

第1章 旅立ち

年末年始、その後カメラショーなどの仕事も一段落した5月、自らの作品撮影を行うため旅に出ることにしました。

今回の旅先は「アイルランド」。何故アイルランドなのか?

以前僕は、このFíRIN 20mm F2 FE の解説記事を担当したことがあります。記事を書くため担当者の方にお話しを伺ったときにこんなお話しを聞きました。「FíRINという名前なのですが、アイルランド語で「真理」とか「真実」を意味するFirinneという言葉に因んでいます。フォトグラファーの皆様に、このレンズで真理を写し撮っていただきたいと思いこの名をつけました」とのこと。

その時は、「記事を書くための耳」になっていて、「なるほどこれは記事の導入部に使えるな」とだけ思いメモを取りました。その後、解説記事も無事書き終え納品し終わったのですが、作例撮影のときに味わったFíRIN 20mmの画が気に入ってしまい、僕はFíRIN 20mmのレンズを購入しました。

それ以来、機会があれば、あれこれと使っていましたが、使うにつれフト思うことが・・・担当者の方が仰っていた写真にとっての「真理」ってなんだろう・・・しかも、アイルランド語で名付けた理由とは?そんな疑問や、以前から自分の作品をFíRIN 20mmの持つ独特な味わいでじっくりと撮影してみたいと思っていたこと、さらにFíRINという名のふるさとであるアイルランドを巡ることしてみよう。そんな思いが重なり今回の旅先をアイルランドにしました。

さて、ここでアイルランドについて簡単に説明しておきます。

アイルランドは、イギリスの西にある北大西洋のアイルランド島の大部分を領土とする立憲共和制国家。日本からの直行便はなく、どこかでトランジットをしていくことになります。今回僕は、アブダビでトランジットしてダブリン国際空港へと向かいました。国土は7万300平方キロメートルと日本の北海道より一回り小さいサイズ。首都は島の東側にある「ダブリン」という街に置かれておりダブリンには人口約134万人の人が暮らしています。国全体では約476万人が暮らす国で壮大な自然と人懐こい国民性、コーヒー、ウィスキー、そしてそこかしこに中世の遺跡が点在しています。また、遺跡といえばアイルランドには、約5000年前の謎の遺跡があることでも有名です。天候は一日の中に雨、曇り、晴れがあり、頭の上は晴れているのに遠くの雲は雨を降らせているという目まぐるしい天気が続きます。もちろん一日中雨や一日すっきり晴れるという日もありますが、滞在期間中は目まぐるしく天気が変わる日が多くありました。

公用語は英語・・・ん?英語?そうなんです、アイルランドでは、英語が使われています。じゃあ、アイルランド語って?はい、アイルランド語とは、ゲール語のことで、「FíRIN」はこのゲール語から名前が付けられました。もちろん今でもゲール語は使われており、道路標識や名所に行った時の解説などでも見かけますが、日常の会話は英語を使うようです。

さぁ、そんな話をしているうちにダブリン国際空港へ到着。いきなり2階建てバスが眼の前を通り過ぎていきます。このバスは観光用ではなく日常で使われているバスです。こうした日本の日常に無いものを見ると「外国だなぁ・・・」と実感します。

さぁ、お次はレンタカーです。

毎度おなじみ今回もヨーロッパカー(ユーロップカー)さんで車をレンタルしました。予約は既に日本で行っているので予約票と国際免許証、日本の免許証、予約時に使ったクレジットカードがあれば受け渡しは簡単に終わります。

今回は何の車が来るのかなぁ・・・(ヨーロッパのレンタカーはクラスだけを指定してあとは何の車が来るかは現地の空き次第)と、楽しみにしていたところ受付の方が、これまたお馴染の「NISSAN」の文字が見えるキーを持っていらっしゃいます。せっかくヨーロッパに来ているので日本では乗れない車か、ヨーロッパの車が良いな・・・しかも、このとき左ひざを負傷していたので、追加でATに変更してもらえないかと思い、「ヨーロピアンカーでATに変えてくれませんか?」とリクエストしてみましたが、「スティックシフトではなくATでヨーロピアンカーとなると・・・ジャガーのデッカイセダンかボルボV60になります、料金は+○○ユーロですがよいですか?」とのこと。

予算を少々上回ってしまいます・・・ひざが痛いのを我慢しクラッチ操作をすればいいかと諦め、「NISSAN」のキーを受け取ることにしました。車が置いてある場所に向かっている最中、肝心の車種を聞き忘れていたとこに気が付きます。まぁいいかと思い車が置いてある場所に到着し、キーのドアオープンボタンを押すと「ピ」という音とともにここだよ!と車がハザードで挨拶してくれました。

今回の相棒は「NISSAN QASHQAI(クヮシュカイ)」

日本では「X-TRAIL(エクルトレイル)」になるのでしょうか、なかなか精悍な顔立ちのイケメンSUVが今回の相棒、グルッと一回りして大きな傷が無いか確認し、さっそく旅の準備にかかります。

先ずはGPS。レンタカー受付でGPSは必要か?と聞かれましたが僕は日本から持ってきてますので必要ありませんと応えました。海外のレンタカーは、日本のレンタカーと違い、GPSいわゆるカーナビは別料金というところが多く今回も別料金でした。ですので、僕はいつも自分が使っているポータブルナビゲーションを持っていきます。

それがこのナビです。

実はこのナビ、通常僕が日本で使っているナビです。このナビは、地図ソースを購入すれば海外でも使える優れモノで音声ナビゲーションは日本語でナビゲートしてくれます。なぜわざわざ日本から持っていくのか?予算の節約もありますが、海外ロケは「いつも通り」ということが大事です。見慣れた画面、使いなれた操作、使いなれないナビしかも言語は現地語では目的地をセットするのに右往左往なんてことになりかねません。ここは「いつも通り」ということが大事です。

さて、移動の準備も終わり荷物を載せて移動開始!

先ずは西海岸へ向けて移動します。空港近辺から離れ郊外へ走り、しばらく経つと観光名所のマークを発見。行ってみるとそれが「クロンマクノイズ」という初期キリスト教修道院跡でした。早速FíRIN 20mm F2 FE AFをカメラにセットし撮影に行きます。

焦点距離:20mm F値:4.5 シャッタースピード:1/4000 ISO:200
焦点距離:20mm F値:5.6 シャッタースピード:1/1600 ISO:200
焦点距離:20mm F値:5.6 シャッタースピード:1/320 ISO:200

西暦545年に建てられ7世紀~12世紀に全盛期を迎えたと言われるこの修道院跡。建物は崩れてしまっているものの「場の空気」が重く厳粛さを感じる場所です。先ずは肩慣らし、FíRIN 20mmが持つ独特の味わいはアイルランドでどんな画をみせるのか?それを見るためシャッターを切っていきます。リアモニターに浮かんできた画は「いつも通り」FíRIN 20mmらしい味わいを見せます。少しマットな印象がありながらもコントラストは高くアンダーのしまりが良い、色乗りはしっとり系の色乗りでアイルランドらしい曇り空も良く再現している。僕はこのFíRIN 20mmが持つ独特な味わいが好きになりこのレンズを購入しました。アイルランドでも良い味わいを見せてくれています。FíRIN 20mmとアイルランドの相性が良いことがわかりクロンマクノイズを後に。

この後・・・

焦点距離:20mm F値:9.0 シャッタースピード:1/250 ISO:200

旅の相棒を撮影してコントラストを再確認したり、

焦点距離:20mm F値:9.0 シャッタースピード:1/400 ISO:200

西海岸の名所「モハーの断崖」までの道のりで良い場所は無いかとロケハンをしたり、

焦点距離:20mm F値:2.8 シャッタースピード:1/50 ISO:3200

トキナーレンズらしい深く青い空を撮影したところで初日を終了。

さすがに、東京から飛行機に揺られ、到着してすぐ移動→ロケハンは体に堪えました。しかし、明日から本格的に撮影が始まります。しっかりと体を休めて明日に挑みます。