アイルランド紀行Firin20mmのルーツを巡る - 第5章
小河俊哉(おがわとしや)
東京都出身。
自動車整備士、カースタントマンなどを経てフリーフォトグラファーとなる。自然、風景、クルマ写真などを専門とし雑誌、クラッシックカーイベントなどで活躍。 現在、作品集作成のため精力的に国内外で撮影中。
第5章 アイルランドの自然とストリートスナップを満喫
さぁ!今回はここまで回った写真を一気に出していきます。アイルランドは郊外へ向かっていくとこうした抜けの良い場所があちこちに広がっています。抜けの良い風景に青い空と白い雲。なんだか撮らずにはいられないシーンです。
海側ではこうした切り立った断崖があちこちで見受けられロケハンしていてどこで撮るか迷ってしまうほどでした。今回じっくり撮影することができなかったのですが、この写真のモハーの断崖はもう一度チャレンジしたい場所でした。
ここで少し実践撮影テクニックのお話しです。
断崖で撮影するときに「高さ」を強調するためのテクニックです。こうした断崖で撮影する場合、少し足元を入れた方が視覚的に「高さ」を強調することが出来ます。また、海岸線のU字も最後まで画角に収め少しだけ水平線を入れることで、視覚的により遠近感をだすことが出来ます。足もとを入れない切った画は、見ていてハラハラするので面白いことは面白いのですが、風景写真としては、きちんと「線」を描き遠近感と高さを出している足元を入れている画の方が良いと僕は思っています。
広角らしい画
さぁ、お次は北アイルランドにあるジャイアンツ・コーズウェイで広角らしい画を撮影してみましょう。広角レンズはこうして広くたくさんのものを入れて撮るということも使い方の一つですが。
こうしてパースを効かせて撮るというのも広角の使い方の一つです。手前の柱状節理の六角形の岩ですが、かなり巨大に見えます。しかも奥の人と比べてしまうと、より巨石に感じます。これがパースの効果で広角はこのパースを巧く使って遠近感をより強調して画を作っていくことが広角レンズを使うコツになります。また、20mmという画角の特徴として「パースは付くがデフォルメされない」いわば広角側の標準という特性があるためこうした画を撮るとき過度に強調されず自然に見えます。では実際はどうかというと・・・
実際はそんなに巨石ではありません。十分徒歩で昇れます。この写真では、わざと水平線を極端に上部に置きました。ここまで極端に水平線を上部に置いても水平線が歪まず真っすぐなのはお見事と言えるでしょう。
続いてはゴールウェイというアイルランド第2の都市でストリートスナップをしたショットです。
ここではFíRIN 20mm F2 FE MF(以下FíRIN 20mm MFと呼称)を使い、さらにカメラ側で行っているレンズの補正全てを外します。フルフロンタル(丸裸)な状態になるのですが、僕はこの状態の味わいが好きでFíRIN 20mm MFを購入しました。マットありながらもコントラストは高く、絞りを開ければやさしい描写、絞ればしっかりとシャープさが際立つ。補正を外すことで少し周りがおちるのですが、ストリートスナップをしていく上で被写体が際立つため僕的には大歓迎だったりします。むしろもう少し落ちても良いかな・・・と思うのでレタッチで周辺をわざと落とすこともあります。
通りを歩いていくとストリートミュージシャンが演奏していました。撮影させてもらうため演奏の合間に許可をもらい、チップ入れのギターケースにはちゃんと「お札」を入れます。20mmという画角で撮影する場合、誰をメインにするのかをしっかり決めて撮影していきます。構図も寄って引いてとバリエーションを増やします。もちろんメインに決めた演奏者にはアイコンタクトで「撮影するよ!」と確認を取ってから間合いを詰めていきます。3曲分撮影させていただき、最後は彼らの方から握手を求められました。今振り返っても良いセッションだったなぁ・・・と思います。
今回のアイルランドロケのテーマカラーになっている琥珀色の美しい夕陽を撮影したところで#5は終了です。
さて、次回はいよいよ最終回。5000年前の謎の遺跡、そしてアイルランド人の心のふるさと「ルーツ」と言われているタラの丘、そしてダブリンのスナップなどをお届します。