アイルランド紀行Firin20mmのルーツを巡る - 第2章


小河俊哉(おがわとしや)
東京都出身。
自動車整備士、カースタントマンなどを経てフリーフォトグラファーとなる。自然、風景、クルマ写真などを専門とし雑誌、クラッシックカーイベントなどで活躍。 現在、作品集作成のため精力的に国内外で撮影中。
第2章 2つの個性があるFiRIN 20mm
FíRIN 20mmには2つのタイプが用意されています。それは、ピントをカメラに任せ、絞りもカメラのダイアルで調整するオートマチックタイプのFíRIN 20mm F2 FE AF(以下FíRIN 20mm AFと呼称)とピントも絞りも全てレンズにあるリングで調整して完結させるマニュアルタイプのFíRIN 20mm F2 FE MF(以下FíRIN 20mm MFと呼称)です。今回は贅沢にもこの2本を撮り比べてみました。
この日は先ずFíRIN 20mm AFを使っていきます。
まずは、コークという街にあるイングリッシュマーケットでスナップ。AFは「あ!おもしろいな!」と思った瞬間を大事に撮影していくレンズです。例えば、入口で思った「おぉ!こんな大きなところなのか!」という感動を広角20mmらしく広く切り取る、マーケットのざわめきを感じながら「いいなぁ」と思う瞬間を切り取る、「見たことがないトマト発見!」という驚きの瞬間をおもいきり寄って撮影する、というそうした感動が最も高まっている瞬間の「熱」をテンポ良くリズミカルに切り取っていくそんなレンズだと僕は思います。
続いてAFで自然風景の撮影もしていきましょう。
自然の中でも同じです。流れる大きな滝を目の当たりにしたときの「おぉ!凄い!」という感動をそのままに撮影していったり、空へと延びていく大木の姿に感動し撮影したり、一枚の葉に当たる「光り」に感動し撮影するなど「熱」の冷めないテンポでリズミカルにどんどん撮影してきます。FíRIN 20mmは、撮影そのものをオートマチック感覚で楽しむレンズだと思います。
対してFíRIN 20mm MFは
頭に浮かんだイメージを具現化するためのレンズという感じです。
例えばこの一枚ですが、良く見ると少し変な画であることが分かります。何がどう違うのでしょうか?
まず色合いです。今回のアイルランドロケのイメージとして、自分でも理由は分からないのですがなぜか僕の中に「琥珀色」というカラーが浮かんでいました。琥珀色がテーマカラーになっていたため、先ずWBを夕景へ変更、さらにカラーをシフトしてこの色を出しました、その後クリエイディブモードをいつも撮影するスタンダードからクリアへ変更、コントラストとシャープネスを+へ、ピントはど真ん中、絞りは「余り絞ると柔らかさが無くなる」と判断しF3.5に設定、そしてシャッターを切りました。
それでもこの画はまだちょっと変ですよね?そうなんです、実は上下逆さなんです。この画を撮る時、既に上下逆さに撮ることをイメージしていました。FíRIN 20mm MFは、撮影そのものも楽しむレンズでもあるのですが、FíRIN 20mm AFの持つテンポ良くリズミカルに撮影していくのとは違い、じっくりと自分の中に浮かんだイメージに向き合って撮影するそんなレンズだと言えます(ちなみに付け加えておきますが、AFもMFも浮かんだイメージがカメラの調整範囲を超えている場合は自分のイメージを具現化するため躊躇無くレタッチを行います)。
もう一枚見てみましょう
この画は上記の設定と同じなのですが、水面に写る部分をより不思議にするため水面が風で揺れるのを待ちました。こうした水面に写るものをしっかりと写し撮ることができるのは、そもそものコントラストの高さがあるからこそ。また、カメラからの調整変更もレンズから質の良い情報は入ってくるので変更した後の変化が大きく画に手ごたえがあります。そのため撮影後に大幅なレタッチもしなくて済みます。光学設計はAFもMFも同じですからこれはレンズそのものの基礎体力の高さを示しているとも言えますね。
言ってみれば、FíRIN 20mm AFはオートマチック感覚で「熱」の冷めないうちにテンポ良くリズミカルに感動をどんどん切り取っていくレンズ。対してFíRIN 20mm MFは、頭に浮かんだイメージとじっくり向きあい具現化するレンズ。同じことはFíRIN 20mm AFでももちろんできます。しかし、僕はFíRIN 20mm MFをカメラにセットして撮影を開始すると思考モードが切り替わり「このレンズはこういう味わいだからこんな画になるはず・・・それならば」と、イメージ先行の撮影モードに変わっていきます。ちなみにですが、僕はイメージ先行で撮影する方が自分の撮影スタイルに合っているので、FíRIN 20mm MFを購入しました。
さぁ、贅沢にも二つのFíRIN 20mmを使い分け撮影を続けましょう!
アイルランドに残る中世の遺跡を撮影して回ります。アイルランドの歴史は戦いの歴史といっても過言ではありません。ゲール人が先住民と、その後はヴァイキング、そしてイングランド後のイギリスと・・・こうした戦いの跡がそこかしこにあります。この写真の遺跡も観光資源の一つにしても良いくらい古い建造物の跡でどうやら見張り台だったようです。ただ・・・これ普通に個人の牧場の中にあったりします。
これはガララス礼拝堂といいまして、諸説あるのですがおそらく1300年前に作られたのではないかと予想されています。ちなみに、この石積みの礼拝堂はいまだに雨漏れはしないそうです。当時の人々の建造技術おそるべしです。
夕暮れ撮影では、この時期にしては珍しいサンピラーが撮影出来たところで撮影終了。
次回はちょっとコーヒーブレイク旅の小ネタをお話しします。