#05 レタッチを前提にした撮影

トキナーレンズで撮影旅行記 #02でお話ししましたが、僕は浮かんできたイメージがカメラの限界を超えた場合、躊躇無くレタッチします。その最たる画がシリーズで撮影している「ちょいCOLORE」シリーズ。これは一部色を残すことによって、より印象的な一枚にするという目的でやっています。「ちょいCOLORE」ではなくても、作品として色の出方を変えたり、見せたい部分を強調するためにわざと周辺を暗くしたりすることもあります。とにかく、撮影時浮かんできたイメージを具現化するため使えるものは全て使います。逆に、イメージ通りだった場合、全く触らず撮って出しの状態で公開するものもあります。僕は撮影したもの全てレタッチするわけではありません、比率としてはレタッチ3:撮って出し7くらいの比率だと思います。今回のドイツロケに関して言えば、ここまで撮影した中ではレタッチ2:撮って出し8くらいの比率になっています。レンズが良いとイメージに近いもの、もしくはイメージ通りのショットが撮れますので極端にレタッチせずともそのままでOKというものが多くなります。ただ、やはり自分のイメージを忠実に再現したい画が出てきた場合、躊躇無くレタッチ前提で撮影します。

では、レタッチ前提の写真はどのように撮影するのか?

一言で言ってしまえば「レタッチしやすいデータで保存する(撮影する)」ということになります。具体的には白飛びは少なく、黒つぶれも少なく、キチンと合焦していることが最低限の項目となります。また、撮影時はレタッチでどうしたかったか?を記録しておくため必ずイメージに近い形で残すようカメラのセッティング変更を行い、さらにRAW+JPEGで撮影しておきます。ニコンの場合、まずWBをイメージに近い発色に変更、その後ピクチャーコントロールでイメージに近いピクチャーモードを選び、シャープネスやコントラスト等の項目を変更、その後Dライティングやビネッティングを調節し撮影します。

この一枚は、路地裏に入ったとき一条の光の筋が印象的に思え、そこを人が通り過ぎたとき撮影し、光のあたっている部分だけ色を残し一枚として仕上げようと思い撮った一枚です。このとき選んだWBは晴天日陰、ピクチャーコントロールはスタンダードでコントラスト+方向、Dライティングはやや強めで、ビネッティングはoff。後にPCへ取りこみRAW現像でこのように仕上げました。

さて、ここで重要なのは「データの質」です。レタッチを前提にしている場合、撮影したデータの質が悪いと、後にレタッチで苦しむことになります。例えば黒つぶれしているところをもう少し明るくしたいと思い、その部分の明るさを上げると・・・ちゃんと描写されておらず、様々なノイズも現れ調節が出来ないということがあります。これは、デジタル技術の進歩が著しい現代であっても起こることで、特に多画素機をお使いの方だと身に沁みて感じられるのではないでしょうか?

そこで必要なのは「質の良い情報を送り込んでくれるレンズ」になります。僕はレンズ解説でしばしば「透かしの良いレンズ」という言葉を使います。これは「質の良い情報を撮像素子へ送り込んでくれるレンズ」という意味で使っていますが、質の良い情報が撮像素子へ入っていかなければ、後のレタッチで非常に苦しむことになるので僕はこの「透かしの良いレンズ」にこだわります。その観点でopera50mmを見てみると「非常に透かしの良いレンズ」と言えると思っています。先ほどの黒つぶれの話では、情報が入っていないと調節ができないというお話をしました。opera50mmを使ってみたところ、限度はありますがちゃんと情報が入っていたので各部の調節が可能でした。

僕の撮り続けている「ちょいCOLORE」シリーズに関して言えば、色のしきいがハッキリすることが重要になるためレンズの解像が重要になります。なぜなら「どこからモノクロにするか?」がシリーズの肝になるからです。それも解像が良ければ「色の区切り」が良くなるためレタッチが楽になります。もちろんカメラの画素数も重要な要素になりますが(僕の使用機材はNikonD850で2019年現在Nikonでは最多画素機)、そもそものレンズ自体が良い情報を撮像素子に送っていなければなりません。例えて言えば、写真のような枝に絡まったバールーンの中に青があることが分かります。右はレタッチ前のオリジナル画です。画の背景は青空ですが、これだけ「青の明度」に違いがあれば色の区切りも良いと思われるかも知れません。しかし、色範囲指定を行う際レタッチソフトによっては迷う場合もあります。今回opera50mmで撮影したデータは色の区切りが良いので一発で範囲を指定してくれます。

とにかく、「透かしの良いレンズ」はレタッチを前提とした場合の撮影でも後処理が非常に楽に済むということです。もちろん後処理を考えず撮って出しで勝負!という時も「透かしの良いレンズ」は、撮影者の期待に応えてくれます。先ほどもお話ししましたが、これまでの経験を踏まえるとopera50mmは「非常に透かしの良いレンズ」だと言えます。一見潰れているか?と思えるシャドー部にも(限度はありますが)情報がしっかり入っていたり、色範囲の指定が楽だったりと後処理が非常に楽だったことは間違いありませんでした。(ちなみに、Nikonユーザーの皆様は白飛びにお気をつけあれ、あくまで筆者の経験上ですがNikonは黒つぶれに強いが白飛びに弱いという印象があります)

というわけで、今回は撮影旅行記とはちょっと外れましたが、レタッチ前提での撮影のお話を実践の立場からお話ししました。

次回は、トキナーレンズで撮影旅行記 #06 最終目的地ヴェルニゲローデへをお送りします。