天体望遠鏡の基礎知識
天体望遠鏡の種類
屈折式
対物レンズを使って光を集め、像を作る望遠鏡。観測対象の方向に向かってのぞくため、目標を見つけやすいのが特長です。 鏡筒内の空気の動きが少ないため視界の像が安定し、コントラストの良い視野が得られます。 レンズを数枚使用するため、他形式の同口径の鏡筒と比べ、重くなります。
反射式
ガラス表面をメッキした反射鏡(凹面鏡)を利用し光を集め、斜鏡で反射させ、接眼レンズで拡大させる望遠鏡。 鏡を使用しているので、屈折式に比べて天体の周りの色のにじみが無いことが特長です。 特に星雲・星団など暗い星の観測に威力を発揮します。 また大口径なものでも、比較的手ころな価格で手に入れることができます。 しかし鏡筒の先端が開いているため、室内と室外の温度差のある場合、筒内気流が発生するため、安定して観測するまでに少し時間がかかる場合があります。
架台の種類
鏡筒を支える台を「架台」といいます。架台には、経緯台と赤道儀の2種類があります。観測目的に応じて選びましょう。
経緯台
鏡筒を水平と垂直の2方向に動かして天体を捉える架台です。構造がシンプルで、組み立てや取り扱いも簡単。また軽量なので持ち運びも便利です。地上観測用の架台としても使用できます。
赤道儀
日周運動(地球の自転)に合わせて天体を追うことのできる架台です。一度とらえた天体を、一方向の回転だけ追尾することができます。長時間の観測、写真撮影に適していますが、使用前に極軸の設定が必要です。
天体望遠鏡の性能
倍率
天体望遠鏡の倍率は、接眼レンズによって変えることができます。
対物レンズ/主鏡有効径(口径)
対物レンズや主鏡の実際に使われている部分の大きさを直径で表したものです。 有効径が大きいほど光をたくさん集めることができ、明るい視野を得ることが可能です。 星雲や星団などの暗い天体を観測する際はなるべく有効径の大きい望遠鏡をおすすめします。
焦点距離
対物レンズの中心または主鏡の中心から像を結ぶ焦点までの長さを焦点距離と言います。同じ接眼レンズを使用しても、焦点距離により倍率が変わります。
口径比
焦点距離を対物レンズ(主鏡)有効径で割った数値で、1:15のように表されます。 数値が小さくなるほどの明るいレンズであることを表します。
極限等級
何等星まで見えるかを表したものを極限等級と言います。肉眼での極限等級は6等星ぐらいです。望遠鏡では、対物レンズ(主鏡)有効径が大きくなるほど明るい視野を得ることができますので、暗い星まで見ることができるようになります。
集光力
肉眼に比べて何倍の光を集めることができるかを示したものです。 対物レンズ(主鏡)有効径が大きくなるほど集光力も大きくなり、同じ倍率の場合、暗い星まで見えるようになります。
分解能
同じ明るさの2つの星が、2つに見分けられる距離を角度(秒)で表したものです。分解能は次の式で求めることが出来ます。
適正倍率
望遠鏡は倍率が高いほど良く見えると思われがちですが、そうではありません。口径が同じであれば、ある程度以上に倍率を高くしても像は暗くなり、ボケて見えにくくなるだけで、細かいところまで良く見えるようになりません。この限度を最高倍率といい、口径をmmで表した数の2倍くらいが目安となっております。例えば、口径60mmなら120倍、口径100mなら200倍が最高倍率となります。一般の観測では口径をmmで表した数からその半分くらいの倍率が最も観測に適した倍率(適正倍率)になります
例)口径60mmの場合
口径60mmから100mmまでの望遠鏡でどの程度見えるか
天体 | 倍率 | 見える程度 |
---|---|---|
月 | 40×~150× | 50倍で月全体が視野全体に、 70倍以上で無数のクレータや海の凹凸が見える |
水星 | 60×~100× | 三日月形がわかる |
金星 | 60×~100× | 満ち欠けや大きさの変化がわかる |
火星 | 90×~150× | 大接近の時、うすい模様が見える |
木星 | 70×~150× | ガリレオ衛星、しま模様が見える |
土星 | 70×~150× | 環や衛星タイタンが見える。 150倍以上でしま模様が見える |
二重星 | 40×~150× | 100個以上見える |
変光星 | 30×~50× | 10等級以上のもの約500個 |
星雲・星団 | 20×~100× | 200個以上見える |
天体望遠鏡の使い方
各部の名称
ファインダーの調整
ファインダーは観測の対象物を視野に素早く導入するために使用します。使用前に調整を行なうことが必要です。
- 調整は日中に行ないます。まず、一番倍率の低いアイピースをセットします。
- 1km以上離れた対象物(建物や鉄塔、煙突など)を選ぴ、望遠鏡の視野の中心にその対象物を捉えます。
- つぎにファインダーを覗いて、対象物が十字線の真ん中にて来いるかどうか確認します。
- ほとんどの場合は視野のどちらかにズレた状態ですので、ファインダーの光軸調整ネジを回して対象物が視野の中心くにるように調整しくてださい。
(光軸調整ネジの調整方法については、取扱説明書をこ覧ください)
観測
星座早見盤やガイドブックなどを参考に、見たい天体が夜空のどこにあるのか見つけます。望遠鏡に見たい天体を導入しやすくするために、まずは最も低倍率のアイピースをセットします。望遠鏡を見たい天体がファインダーの視野の中心に来るようにゆっくり動かします。
(架台の角度調整操作は取扱説明書を御覧ください)
上記の操作で望遠鏡の視界中心付近に見たい天体が導入できているはずです。望遠鏡をのぞきながら、視界の中央に来るようにゆっくりと動かしてください。このときピントがあっていませんので、望遠鏡のピントを調整してください。
(ピントの調整方法は取扱説明書をご覧ください)
さらに高倍率で観測したい場合は、高倍率のアイピースに交換してください。
※望遠鏡で観測をする場合には望遠鏡に手を添えないようにしてください。手の振動が望遠鏡に伝わり、ブレにより視野が安定しません。
※長時間観測には天体の日周運動にあわせて、追尾が便利な赤道儀式架台の望遠鏡がおすすめです。
※望遠鏡内部と外気の温度差がある場合、筒内気流が発生して望遠鏡の性能を最大限にいかすことができません。観測の前に十分に外気に慣らしてからお使いください。
使用後のお手入れ
望遠鏡は精密機械です。ほこり、湿気、塩分、熱、衝撃などは大敵です。保管にあたっては以下の事項に気を付けて大切に扱ってください 。
- 使用後は必ず鏡筒にキャッブをしてください。
- 望還鏡は寒暖の差が小さく、風通しの良い場所に保管しくてださい。湿気がありますとカビが発生する原因となります。
- レンズにほこりが付いたら拭き取らずに、エアダスターで吹き飛ばしてください。
- レンズに指紋や汚れが付いたときには、市販のクリーニング液とクリーニングペーパーで軽く丁寧に拭き取っくてださい。
- レンズは特に精密に調整されていますので、決してこ自身で分解をして清掃を行なうことはしないでください。