彗星を観測しよう!

彗星を観測しよう!

2024年は、明るくなると予想されている彗星が2つもやってきます。
4月には約70年の周期で回っている「ポン-ブルックス彗星(P12)」、10月には2023年1月に発見された「紫金山-アトラス彗星」が観測できるでしょう。特に「紫金山-アトラス彗星」は、マイナス等級の明るさになるかもと予想されています。
2024年は期待の彗星が2つもやってきますので、是非準備して観測してみてください。

12P ポン-ブルックス彗星について

ポン-ブルックス彗星は、周期約70年の短周期彗星です。1812年7月21日にジャン-ルイ-ポンによって発見され、1883年にもウイリアム‐ロバート-ブルックスによって発見され、後に同一の天体であることが確認されました。発見の後、1884年、1954年にも回帰が確認されています。そして次の回帰が2024年4月21日となります。
ポン-ブルックス彗星は3月下旬になると光度も4等台となり、そろそろ夕方の西の空に見えるようになってきます。薄明後 双眼鏡等で探してみてください。うお座で東方最大離角になろうかとしている水星の右上あたりにあると思われます。

4月10日には、夕方の西の空で細い月のすぐ左上 木星との間あたりにあり探しやすいと思います。
4月21日の近日点近くでは4等級くらいの明るさになると思われ、暗いところであれば尾も見えていると思います。その後、彗星は南下をしますので、北半球では急速に見えなくなってしまいます。

12P ポン‐ブルックス彗星
スカイメモ使用 ISO1600 F4 SS25sec (2024年4月2日撮影)

紫金山(ツーシンシャン) -アトラス彗星について

2023年2月22日、南アフリカ共和国のATLAS(小惑星地球衝突最終警報システム)がかすかな光の新しい彗星を発見しました。その後この彗星が2023年1月9日に中国にある紫金山天文台でも独自に捕らえられていたことがわかり、発見者の順番で「紫金山-アトラス彗星(C/2023 A3)」と命名されました。(「C」は彗星を表し、「2023」は発見年、「A」は発見月、「3」は発見順を示します。なので、2023年1月上旬に3番目に発見された彗星という意味になります)

この「紫金山-アトラス彗星」は小惑星センターでの調べにより、大きな核を持つ非周期彗星であることがわかりました。大きな核を持つということは太陽の近くに来た時、より多くの物質を放出して明るく長い尾を見せてくれると期待できます。

「紫金山-アトラス彗星」は、これから太陽に少しずつ近づき、2024年1月頃には木星の軌道の内側に入り、7月頃には火星の軌道の内側、8月頃には地球の軌道の内側、9月頃には金星の軌道の内側に入ります。そして9月27日頃 近日点(太陽に一番近いところ)を通ります(距離0.39天文単位)。その後、10月13日(日本時間)には近地点(地球に一番近づくところ)を通り(距離0.48天文単位)、日に日にどんどん地球から離れていき暗くなっていきます。

※1天文単位は太陽と地球との平均距離で1.495978707x10の11乗m

いつ頃からどこに見えるの?

この「紫金山-アトラス彗星」はいつごろからどのあたりに見えるのでしょうか。

6月上旬
10等級 の明るさで夕方の空、おとめ座~しし座あたりにあります。
7月上旬
9~8等級の明るさで夕方の空、しし座あたりにあります。
8月上旬
夕方の空、ろくぶんぎ座あたりにあります。太陽に近づくにつれ8等級から4等級へと、どんどん明るくなっていきますが、急速に太陽に近づいていきますので見るのは難しくなります。
9月下旬
(観測チャンス)
2024年9月の中旬までは地球の南側にあって日本からの観測はできませんでしたが、9月中旬になって夜明け前の東の低い空でわずかな時間見えるかもしれません。太陽にもっとも近づく時期ですので彗星の尾が伸びているかもしれません。明るさは、1等から0等級くらいと予想されています。
9月27日
近日点通過
10月上旬
太陽と彗星の位置の関係で観測は困難です。
10月12日以降
(観測チャンス)
西の低空で観測可能になってきます。近地点は、13日なので地球に一番近い時期でもあります。太陽から遠ざかり始めていますが、高度が高くなり観測可能な時間が長くなっていきますので最も観測しやすい時期でしょう。日に日に明るさは暗くなっていきますが、雄大な尾を見せていてくれていることでしょう。彗星が明るいうちに観測しようとすると12日~14日頃がベストですが、西の低い位置にありますので西の空の視界が開けた場所でなければなりません。
10月中旬以降
(観測チャンス)
10月中旬は月があるため月明かりの中での観測となってしまいますが、10月21日頃からは月の出も遅くなり、夕方から月の出時刻まで暗い夜空での観測が可能となります。この頃は明るさも暗くなり、3等から4等級となっていることでしょう。また尾も短くなっていき、これ以降は肉眼で探すのは難しくなっていきます。

彗星はどうやって見るの?

彗星という天体は非常に淡い天体です。できるだけ街明かりや街頭のない、空の暗いところで見る]のがいいでしょう。明け方に見るのであれば東側の空が開けた場所、夕方に見るのであれば西側の空が開けた場所が良いでしょう。障害物がないかなども事前にリサーチしておいてください。 また暗闇に目を慣らすため、観測の前には明るいものを見ないようにしましょう。懐中電灯には赤いセロハンを巻いておくと良いでしょう。ただし、赤い光は目の疲労を助長しますので使用は必要最低限にするといいでしょう。

次に、だいたいどの方向のどのくらいの高さに見える予定かを目安に探します。近くに明るい星がある場合はそれも目安にしましょう。彗星が明るくなってくると色々なWEBサイトで場所がどのあたりにあるか情報が出ると思いますのでそれも参考にしましょう。

双眼鏡で見る!

肉眼彗星になると言っても、やはり双眼鏡があるといいでしょう。双眼鏡で観測すると、彗星の核やコマ、尾の状態まで見ることができます。また肉眼では見えにくい明るさの時期でも、双眼鏡があれば彗星観測が楽しめます。肉眼で見るのと双眼鏡で見るのとはまた違った見え方をしますので、双眼鏡での観測をお勧めします。
双眼鏡を選ぶときは、倍率は低めで口径の大きいものが適しています。例えば、8倍32㎜、8倍42㎜、7倍50㎜の双眼鏡で、レンズにマルチコートやフルマルチコートが施されているものが見やすいと思います。

天体望遠鏡で見る!

天体望遠鏡で観測する場合は、なるべく口径の大きなもので倍率を低くしてみることをお勧めします。
双眼鏡と違い天体望遠鏡は倍率が高くなるので、視野が狭くなってしまします。そのため低倍率にして、なるべく広い視野で見たほうが確認しやすくなります。彗星は淡い天体のため視野が狭くなると見つけるのが大変になります。

彗星の撮影方法

「彗星はどうやって見るの?」でも解説していますが、街明かりや街灯のない暗い場所がおすすめです。肉眼でも、うっすらと見えるようになっていれば比較的簡単に撮影することはできます。 最近のデジタル一眼レフやミラーレスカメラは、高感度性能が飛躍的に向上していますので、デジタル一眼レフやミラーレスカメラを準備して撮影してみましょう。
カメラの他必要なものは、F値の明るめのレンズ、シャッターブレを防ぐレリーズ、しっかりとした三脚を用意してください。

もちろん、コンパクトデジタルカメラやスマートフォンでも撮影することは可能です。操作の方法については、それぞれのコンパクトデジタルカメラやスマートフォンの取扱説明書を参照してください。

固定撮影

簡単な彗星の撮影方法は、広角レンズを用いてカメラを三脚に固定し、風景と一緒に撮影する「固定撮影」です。
彗星は暗くオートフォーカスでピントを合わせることができませんので、マニュアルフォーカスに設定してください。ピントは無限に合わせてから、明るい星や1km以上離れた目標物を使ってピントの調整をします。
ISO感度は、高いほうが良いですがカメラの機種により高感度性能が異なりますのでお使いのカメラに適した設定にしてください。目安としましては、ISO400~ISO3200くらいです。
露出時間(シャッタースピード)も、カメラの自動露出機能に頼ると背景が明るくなりすぎますのでマニュアル露出で撮影してください。できれば何枚か段階露出して、最適な露出時間を割り出しましょう。またレンズの絞りは、開放か開放から1段絞るくらいが良いでしょう。
固定撮影では、長時間露出をすると星が弧を描き、線上に写るのでレンズの焦点距離と相談しながら写すといいです。広角レンズだと10秒くらいでも星の動きは気にならないと思います。もう少し良く撮りたいのであれば、スカイメモ等の赤道儀に乗せて撮影すると良いでしょう。

追尾撮影

恒星の日周運動の動きを追尾する赤道儀を使った「追尾撮影」もあります。固定撮影して長時間露出すると星が流れて線のように写ってしまいますが、赤道儀を使用すると星を点で撮影することができます。彗星の動きは、ほぼ日周運動に等しいため固定撮影よりも良く写ります。 また望遠レンズで彗星を大きく写したいときは、赤道儀のご使用をおすすめします。 ケンコー・トキナーでは、撮影用に「スカイメモS」や「スカイメモSW」などのポータブル赤道儀を用意しておりますので、本格的に撮影したい人におすすめです。事前に赤道儀の使い方をしっかり練習してから撮影に臨みましょう。

スマートフォンで撮影するには

スマートフォンで撮影するには、まずスマートフォンにナイトモードや星空撮影モードまたはマニュアルモードがついているか確認しましょう。 これらのモードでは長時間の露出が可能になりますので、星空の撮影に適しています。
※スマートフォンの説明書に使い方が書いてありますので、そちらを参照ください。

1
スマートフォンを三脚に取付けられるホルダーに取付け、三脚に取付け固定します。
2
スマートフォンをナイトモード等に設定します。
マニュアルモードの時は、ISOやシャッター速度等を設定してください。
3
彗星の見える方角に向けて、シャッターを押します。
シャッターを押すときには手ブレを防ぐため、必ずセルフタイマーを使用しましょう。

【注意】
スマートフォンをホルダーに取り付けたり取り外したりするときにネジの締め具合によっては落とすことが考えられますので十分ご注意ください。
三脚の下にウレタンや発泡スチロールのボード等を敷いておくこともお勧めします。