【比較作例】Kenkoブラックミストシリーズ3種どう使い分ける? シチュエーション別の使い方を解説

【比較作例】Kenkoブラックミストシリーズ3種どう使い分ける? シチュエーション別の使い方を解説
萩原 和幸

萩原 和幸(はぎわらかずゆき)

1969年静岡生まれ。
静岡大学人文学部法学科及び東京工芸大学写真技術科卒業。 写真家・故今井友一氏に師事。主に広告を中心にファッション撮影を学ぶ。独立後は広告・雑誌にて人物撮影で活動。カメラ専門誌にも寄稿多数。近著に写真集『記憶(モデル:藤江れいな)』(玄光社)、『プロが撮影で疎かにしない・ポートレート撮影の三原則』(秀和システム)、『ポートレート撮影レフ板ライティング完全マスター』(玄光社)など。(公社)日本写真家協会会員、静岡デザイン専門学校講師。

今回は、発売前から話題沸騰!ソフト系フィルター『ブラックミストプロテクター』を中心に、ポートレート撮影で同じくブラックミストNo.1とNo.05を比較しながら、萩原的視点で使い分けを考えてみたい。

ブラックミストはソフト効果の強弱によって『No.1』と『No.05』が用意され、好みや用途によって使い分けできるようになっている。動画も撮影する私にとって、シネマチックな質感が得られるブラックミスト系のフィルターは必需品。それだけに出番も多く、選択肢が増えることはいいことだが、使い分ける場面を考える必要もありそうだ。それはそれで嬉しい悩みでもあるが、前回ご紹介した通り、『ブラックミストプロテクター』の"ソフト感"の効き具合が面白いので、私なりにうまい"落としどころ"を探ってみた。

ちなみにブラックミストは、ソフト効果の強弱に伴い『No.1』と『No.05』が用意されている。『No.1』に対し、『No.05』は半分のソフト効果になっている。『ブラックミストプロテクター』は、さらにソフト効果が半分、つまり『No.1』に対し1/4のソフト効果となっている。

注)すべてのカットを手持ち撮影でおこなっているため、画に若干の違いがありますことをご了承くださいますよう、お願い申し上げます。

比較1

ブラックミストプロテクター
ブラックミストNo.05
ブラックミストNo.1
フィルターなし

屋外、建物のエントランス部で撮影。天気は薄曇り。この条件では、ブラックミストフィルター全体的に効果は大きい。ブラックミストプロテクター(以下BMP)からミスト効果がきちんとみられる。BMPでもミスト感があるので、強弱の好みで選択することになろう。

共通データ SONYα1 FE50mmGMⅡ | 絞り:F1.4 1/640秒 WB:5000K ISO100 クリエイティブルック:スタンダード

ブラックミストNo.1

フィルターなし

効果がしっかりとみられる場所だったので、No1で思い切った幻想感を。フィルターなしのカットに比べ、柔らかな印象を与えてくれる。


比較2

家屋玄関にて。モデルは曇りガラス張りの玄関から柔らかな光を順光で受けている状態。

ブラックミストプロテクター
ブラックミストNo.05
ブラックミストNo.1
フィルターなし
共通データ SONYα1 FE50mmGMⅡ | 絞り:F1.4 1/250秒 WB:5000K ISO200 クリエイティブルック:スタンダード

全体的な印象としては、ミスト効果はほんのりといった感じ。背景の電灯の滲み具合の変化と、彼女の衣装が白なので、その滲み具合に注目。 モデルへのフラットな光、背景に比較的光が届いていることなどの条件から、BMPとNo.05との差は電灯の滲み具合ぐらいで、ミスト感をしっかり取り込みたいのならNo.1を選択したいところだ。

ブラックミストNo.1

SONYα1 FE50mmGMⅡ 絞りF1.2 1/250秒 WB:4600K ISO200 クリエイティブルック:スタンダード

No.1で作り込む。涼しさを感じさせる色温度に調整し、和と調和した静けさをミスト感とともに表現してみた。

モデルの位置を変えて、サイドから光が当たる状態で。

先のフラット光ではNo.1が効果的だったので、まずはNo.1で撮影。
モデルのフワッとしたミスト感はいい感じだが、背景の電灯のボケの滲みが意外と大きく感じられたので、BMPでも撮影してみる。

ブラックミストプロテクター

シャドウ部では鳴りを潜めるBMPのミスト感だが、モデルのハイライトとなる頬の柔らかい質感と電灯の滲みのさりげなさが良い。

フィルターなし(比較として)

共通データ SONYα1 FE50mmGMⅡ | 絞り:F1.4 1/250秒 WB:5000K ISO320 クリエイティブルック:スタンダード

ガラス戸一面の廊下で。
同じ場所で、各フィルターによる作例をとってみた。

ブラックミストプロテクター

SONYα1 FE50mmGMⅡ 絞りF1.4 1/400秒 WB:5000K ISO100 クリエイティブルック:スタンダード

ガラスの透明感と相まって、キリッとクリアな雰囲気が彼女に伝わるシーンなので、この点でBMPのシャドウ部のおとなしさはありがたい。一方で窓の外の光の眩しさを感じられるミスト感が出ていて、この場の空気にとてもフィットした。BMPの性格の二面性がとても嬉しい。

ブラックミストNo.05

SONYα1 FE50mmGMⅡ 絞りF1.4 1/400秒 WB:5000K ISO125 クリエイティブルック:スタンダード

廊下でこちらを見つめる彼女。歴史を感じる場所で静かな佇まい。ハイライトのミストによる広がりが優しい眩しさを作っている。コントラストがつきそうな場所なので、No.05によるコントラスト軽減も効果的だ。

ブラックミストNo.1

SONYα1 FE50mmGMⅡ 絞りF1.4 1/250秒 WB:5000K ISO100 クリエイティブルック:スタンダード

幻想的なシーンを作り出すのが得意なNo.1。襖の合間から見ていた彼女と目が合った...そんなイメージで。現実っぽさよりも作り話というか夢の中というか。ソフト感の強さがそう思わせてくれる。創造的な世界観に一気に引き込むにはNo.1が向いている。

渡り廊下に出てみる。

ブラックミストNo.1

SONYα1 FE50mmGMⅡ 絞りF1.4 1/250秒 WB:5000K ISO160 クリエイティブルック:スタンダード

日差しのある場所の光の広がりは流石に大きい。先のカットでも述べたが、No.1は非現実感っぽさを作り出すので、それを意図して使いたい。ここでは"夢の続き"をイメージしている。

ブラックミストNo.05

SONYα1 FE50mmGMⅡ 絞りF1.4 1/250秒 WB:5000K ISO200 クリエイティブルック:スタンダード

No.1ほどの大きなミスト感を抑え、夢からやや現実っぽさが見えてくる。
甘い言葉を言えば、『好きな女の子がキラキラ見えるような心持ち』を表現するのにはピッタリだと思う。映画で使われることが多いのも頷ける。 特にシャドーに寄せることで、全体にうっすらとソフト感を残しつつもメリハリを作ることができるので、使い勝手は良い。

ブラックミストプロテクター

SONYα1 FE50mmGMⅡ 絞りF1.4 1/250秒 WB:5000K ISO200 クリエイティブルック:スタンダード

こういう状況では、ハイライト部をややほんわりとさせる効果にとどまるBMPだが、さりげないミスト感は感じるので、効果は十分に見える。一方で、付けっぱなしを念頭にしているプロテクターの側面もあるので、これくらいのさりげなさが嬉しい場面も多々あるのは間違いない。

効果については、ソフト感が全体に纏うNo.1とNo.05に対し、ブラックミストプロテクターはハイライト部にほんわかといった印象。前回も述べたが、シャドウ部やアンダー目の露出の時は、ソフト効果がスッと影を潜めるのが『ブラックミストプロテクター』の大きな特徴。この点が使い分けの大きなポイントになる。この比較カットでも、効果がNo.05の半減というよりも、"ハイライト部にソフト感を添えた"という表現の方が近いと思う。


ブラックミストNo.1

SONYα7Ⅳ FE24-70mmF2.8GMⅡ 絞りF2.8 1/250秒 WB:6800K ISO160 クリエイティブルック:スタンダード

障子に囲まれ、漆喰の鶴が舞う広間。向かって左側の障子には優しい西日が当たっていたので、それを強調。色温度を低く(調整上の数値は高くなる)してアンバー系にすることで、黄昏感と艶がNo.1のミストと相まって幻想的に。

ブラックミストプロテクター(比較として)

SONYα7Ⅳ FE24-70mmF2.8GMⅡ 絞りF2.8 1/250秒 WB:6800K ISO160 クリエイティブルック:スタンダード

BMPでの光の拡散効果は緩やか。柔らかさは感じるが、もう少し強さが欲しいと感じたので、No.1を選択した。


比較3

夜のシーンを試してみる。
電灯による点光源の表現は、ミスト系フィルターとしてはやはり見ておきたい要素だろう。今回は街頭と竹の電飾のある場所で行ってみた。フラッシュは使わず、地明かりのみで撮影している。

ブラックミストプロテクター
ブラックミストNo.05
ブラックミストNo.1
フィルターなし
共通データ SONYα1 FE50mmGMⅡ | 絞り:F1.4 1/125秒 WB:5000K ISO5000 クリエイティブルック:スタンダード

点光源となる街灯の光の拡散具合が徐々に大きくなっていることがわかる。
やはりNo.1は幻想的なシーンへと昇華させるのが得意。柔らかみを加えるといった意味ではNo.05かBMPの選択となろうが、背景が暗くなる夜景での電灯等の写りは、BMPの光の拡散はとても大きく見える。雰囲気のスパイスとしてとても効果的だ。
ソフト感の付け方の意図でNo.05かBMPを選ぶといいだろう。


ブラックミストプロテクター

SONYα1 FE50mmGMⅡ 絞りF1.2 1/125秒 WB:5000K ISO3200 クリエイティブルック:スタンダード

ブラックミストプロテクターのミスト感が最も活きた、良いカットに仕上がった。 風情あふれる通りに灯る灯りがほのかに広がり、揺らいで見える。一方でキリッと浮かび上がる彼女、コントラストが十分に効くので、見せたい部分はしっかりと、でも盛り上げたいハイライトはふんわりと演出してくれる。この塩梅は絶妙だ。

ブラックミストNo.1(比較として)

SONYα1 FE50mmGMⅡ 絞りF1.2 1/125秒 WB:5000K ISO3200 クリエイティブルック:スタンダード

一方、No.1で撮影したカットは湿度高め。静かな風情に対しては点光源の光の拡散が大袈裟かな...という印象だ。


総評

今回はブラックミストシリーズ三種を、シーンごとにフィット感を探ってみた。
光の具合や明るさ事情など、効果にはどうしてもバラツキがあるものの、概して露出オーバー目で使うことが多いソフト系フィルターの中で、光の広がりや適度なソフト効果を得られるブラックミスト系は、とても使いやすいフィルターを再認識できた。

ことブラックミストプロテクターに関しては、シャドウ部を大いに活かした画作りが可能だ。ほんのちょっと添える程度のソフト感と、光の広がりを得るには抜群だ。

No.1は過度なソフト効果が出やすいので、基本的には意図するシチュエーションで、演出いっぱいに使い込むのがいいと思う。ただ、構図のどこかのポイントとして大きく光を滲ませたい時は使ってみたい。No.05はソフト効果をスパイス的に使える、使い勝手のいいソフト効果具合だ。ソフトは使っていることは分かるけど、輝きを延長・トキメキを演出...のような気持ちを込めるカットに良いだろう。 今回は私の中ではNo.1の出番が多く感じられた。シーンによってブラックミスト系の選択肢が増えたことは喜ばしいこと。今回のカットを撮影場面に当てはめて参考にしていただけたら嬉しい。

モデル:鈴木海那(シェリーズ・エンタテインメント)
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