Kenkoナイトフォーカスの使い方 by 茂手木秀行
動画でみるKenko ナイトフォーカスの使い方
Kenko ナイトフォーカスとは?
Kenko ナイトフォーカスは"星にピントを合わせるためのフィルター型フォーカシングツール"です。星景写真を撮る際に、正確に星にピントを合わせることは難しく手間のかかるものです。ナイトフォーカスはそれを簡単に、そしてよりシャープなピントを確実にしたいとの思いから開発されました。通常のねじ込み式フィルターのようにレンズの前面に固定して使用します。(ピント合わせのみに使用。)
被写界深度の中に入れるという考え方ではなく、客観的に星の像が最小、つまり最もシャープになるピント位置を探し出すことができるため、コツさえつかめば誰でも確実に星にピントを合わせることが可能です。
アイデアの元となった"バーティノフマスク"
ナイトフォーカスのアイデアは、ロシアの天文家ポール・バーティノフ氏により発明されたバーティノフマスクが元になっています。500ミリや1000ミリ以上の焦点距離を持つ天体望遠鏡で、星雲や星団を撮影する際に確実なピントを得るためのものです。20年ほど前から天体望遠鏡向けに販売されています。もともとバーティノフマスクは天体望遠鏡のためのものであるため、星景撮影で使う短い焦点距離のレンズには光学的特性が合致せず、十分なピント合わせの効果を得られないものでした。
ナイトフォーカスでは、現代多くの方が使う24-70mmズームレンズを主なターゲットとして光学特性を吟味しました。また、バーティノフマスクと異なり光の透過性が高いので、視野が暗くなることを防いでいます。
ナイトフォーカスが使えるレンズ・カメラ
下記のカメラおよびレンズでご使用いただけます。
対象カメラ- ライブビュー機能があるカメラ
- 24-70mm、F2.8~4のズームレンズ
- 20mm~50mm程度、F2~2.8の単焦点レンズ
焦点距離とF値が近しいものであれば使用することができます。
レンズによっては、18mm~75mm程度までは使えるものがあります。
当社で検証済みのレンズについては、製品ページをご覧ください。
※レンズの設計によってピントの合わせやすさに差異が生じます。
※ピントリングの動きを電子的に伝えるAFレンズではピッチが細やかでないものもありジャストの位置に調整できない場合があります。
※高層の大気が乱れている時などはピントが合わせづらくなることがあります。
ナイトフォーカスの使い方 - 目次
1. ナイトフォーカスをレンズに取り付ける
ナイトフォーカスをレンズに取り付けます。一般的なフィルターと同様のねじ込み式となっており、レンズに直接取り付けることができます。ナイトフォーカスは82mmワンサイズですので、手持ちのレンズに合わせてステップアップリングを用意しておきましょう。
また「Kenko スクエアコンバージョンフレーム」を使えば、ナイトフォーカスを100mm幅の角型フィルターホルダーと組み合わせて使う事もできます。スクエアコンバージョンフレームは、円形のフィルターを角形フィルターホルダーに取り付けられるようになるアイテムです。
Kenko スクエアコンバージョンフレームCokin 角型フィルター
2. 明るい星を視野中心に入れる
できるだけ明るい星を探し、視野の中心に入れます。できれば一等星以上が好ましいです。惑星(金星・木星・土星・火星)は位置と明るさが変化しますが、一等星よりも明るいのでピント合わせがしやすいものです。残念ながら月はピント合わせには不向きです。 一等星は全天に21個あります。そのうち日本で見え、ピント合わせに使いやすいのは15個です。以下に一等星の表を掲示します。1年を通じてどの季節でも、いずれかの一等星が見えていますので視野の広い場所で探しましょう。
3. ライブビューで最大に拡大する
ライブビューで中央の星を最大まで拡大してください。
4. ピントを合わせる
ナイトフォーカスを取り付けた状態で一等星を見ると星を中心に光条が発生していることがわかります。3本の光条の交点が重なり星の中心と合致するように見えるときが星にピントがあった状態です。小さくピントリングを動かして調整しましょう。
実際の映像でみるとこのように見えます。光条の位置がピントの参考になるので、ナイトフォーカスを回転させて画面に対して少し傾いた位置に調整してください。カメラ・レンズの組み合わせや、ナイトフォーカスの回転角によって3本の光条がよく見える位置とそうでない位置があるので、光条が3本ともよく見え、なおかつ水平から少し傾いた位置を探します。
ピントリングを少し動かし、近距離方向つまり前ピンになった時に真ん中の線が画面下の方に動いてゆくように回転角を調整しなおします。
以上がナイトフォーカスでの基本的な見え方、ピントの合わせ方ですが、レンズとカメラの組み合わせによってこれとは違うタイプに見えることがあります。この基本タイプの他に大まかに3つのタイプがあります。
見え方のタイプについては、製品ページをご覧ください。
明るい星が見えない時は街灯を使う
視界が開けていない場所や雲の隙間を狙うような時には一等星が見えないことがあるでしょう。そのような場合は地上の街灯を使ってピントを合わせます。100m以上離れた街灯が理想です。手順を追ってみましょう。
街灯を使ってピント調節をする手順
- 地上の街灯を視野中心に入れて拡大する
- 3本の線が見えるようにナイトフォーカスを回転させる
- ナイトフォーカスを使ってピントを合わせる
- カメラを星に向けて試写をする
地上の街灯ではすぐに3本の光条が見えないことがありますので、ナイトフォーカスを回転させて真ん中の線が見えるように調整してください。また、忘れずにマニュアルフォーカスにしておきましょう。最後に必ず試写をしますが、一等星が見えていない場合はナイトフォーカスを外して試写をしても良いでしょう。2等星、3等星などの暗い星がシャープに写っていればOKです。手順を動画にまとめましたので参考にしてください。
5. ナイトフォーカスをつけたまま、試写をする
6. 画像を再生して拡大し、ピントを確認する
試写画像を拡大してピントがずれているようであれば合焦パターンを思い出してください。
画面下側に真ん中の線があれば前ピンなので、ピントリングを無限遠方向に回します。逆に上側にあれば後ピンなので、ピントリングを近距離方向に回します。レンズによって回す量に違いはありますが、いずれにせよ少しリングを触るような小さな修正です。これを繰り返してピントを追い込みます。慣れると1回か2回の修正でできるようになります。
7. ナイトフォーカスを取り外し、構図を決めて本番撮影する
ナイトフォーカス使用前・使用後作例
ナイトフォーカスでピントを合わせて撮影した写真ギャラリー
まとめ
今回はKenko ナイトフォーカスの基本的な使い方を解説しました。最初は難しいと感じるかも知れませんが、何度か使って馴れてくると星のピント合わせが楽に早く終わることを実感できるでしょう。星景写真は星がシャープな点像に写っていてこそ力のある写真になります。ナイトフォーカスを使って、シャープなピントを手に入れましょう。
写真家 / Kenko ナイトフォーカス発案者
茂手木秀行(もてぎ ひでゆき)
1962 年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。2010年フリーランスとなる。1990年頃よりデジタル作品制作と商用利用を始める。中学生の時に天文部に所属して以来、天体、星景の撮影はライフワークであり、多くの個展やセミナーを行ってきた。JPS 正会員、APA 正会員、写真学会会員