【実写レビュー】旅や散歩でのスナップ撮影にぴったりなSAMYANG AF 18mm F2.8 FE

萩原 和幸

萩原 和幸 (はぎわらかずゆき)

1969年静岡生まれ。
静岡大学人文学部法学科及び東京工芸大学写真技術科卒業。 写真家・故今井友一氏に師事。主に広告を中心にファッション撮影を学ぶ。独立後は広告・雑誌にて人物撮影で活動。カメラ専門誌にも寄稿多数。近著に写真集『記憶(モデル:藤江れいな)』(玄光社)、『プロが撮影で疎かにしない・ポートレート撮影の三原則』(秀和システム)、『ポートレート撮影レフ板ライティング完全マスター』(玄光社)など。(公社)日本写真家協会会員、静岡デザイン専門学校講師。

高コストパフォーマンスレンズを多くラインナップするSAMYANG。私が実際に毎月1本ずつ撮影に持ち出し、萩原独自の評価と作例をお伝えしようというもの。

第4弾は、『AF 18mm F2.8 FE』。

このレンズは、ソニーEマウント・フルサイズ対応のAF 18mmレンズ。前回のAF 35mm F1.4 FEでも述べたが、現在SAMYANGではソニーEマウントのフルサイズ対応AFレンズを大幅に拡張中。広角側14mm F2.8から今回取り上げた最新の18mm F2.8に大人気の24mm F2.8・35mm F2.8、それに45mm F1.8・50mm F1.4・85mm F1.4と細かくラインナップされている。

昨今、16mmスタートの超広角ズームが人気で、16mmという超広角な画角には慣れている方も多いことだろう。だが、ズームの特性(宿命?)というが、ワイド端とテレ端の頻度が非常に高いユーザーも多い。超広角ズームユーザーでも、意外にも18mmという画角には慣れていないのではないだろうか。事実、18mmは私でも新鮮に感じられたし、広さに余裕がありながらもどこかしっくりとくるという矛盾に面白みを感じた。パースのついた画に、奥行きと広がりを映し出すことができる18mmは、思った以上に広角ファンを懐深く迎え入れてくれる。

レンズ構成は8群9枚。高屈折レンズ(HR)2枚と低分散(ASP)レンズを3枚、非球面レンズ3枚を採用。

ソニーαシリーズにマッチしたシンプルなデザイン。アクセントとなるオレンジのラインがαとフィットする。

フードを装着時でもコンパクトさは変わらない。

ソニーα7RⅣとのマッチングはとても良い。手のひらに収まる感じは、スナップショットを狙うのにぴったりのサイズ感だ。

18mmという画角を考えれば、このフードはどこまで役立つかは疑問だが、前玉保護にもなるし、何よりコンパクトさを損なうことがないので装着すべき。返せばレンズの先に装着できる。

とにかく小さくて軽い。重量はわずか145g。コンパクトなα7系と相まって、機動性は抜群だ。

では早速撮影に。
今回はスナップ撮影、カメラは全編ソニーα7R Ⅳで行なった。

 

Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f2.8 1/200秒) -0.3EV補正 ISO100 WB:太陽光  RAW

この時期にあじさい満開!?という驚きから撮影スタート(2019年11月撮影)。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f5.0 1/640秒) -0.3EV補正 ISO100 WB:太陽光 RAW

紅葉し始めの森。隙間から見える空とともに広がりを持って切り取ってみる。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f3.2 1/200秒) -0.7EV補正 ISO100 AWB RAW

最短撮影距離は0.25m。18mmという広がりのある画角を考えると、もう少し寄りたいなあという気持ちにもなったが、必要十分。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f5.6 1/125秒) -0.7EV補正 ISO500 AWB RAW

赤く色づく葉とそれを取り巻く状況を、奥行き豊かに表現していく面白さがある。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f5.6 1/1600秒) -0.7EV補正 ISO100 AWB RAW

空の広がりを気持ちよく切り取る。自分がそこで感じた広さを、そのまま表現してくれた画角に感謝。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f7.1 1/500秒) -1.0EV補正 ISO100 WB:太陽光  RAW


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f7.1 1/400秒) -2.3EV補正 ISO100 WB:太陽光  RAW

教室の窓から見える校庭の景色と陽のあたる机のコントラストが美しい。 現在は廃校のこの小学校。児童たちはこうした美しい光景を見ながら授業をしていたのかなあと、思いを馳せながらシャッターを切る。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f3.5 1/125秒) -0.3EV補正 ISO320 AWB RAW

教室に置かれた年代物のミシン。教室の雰囲気はボケの中に、ミシンの装飾を際立たせてみる。足踏みミシン、小学生の時に授業で使ったなあ。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f6.3 1/160秒) -3.0EV補正 ISO100 AWB RAW/span>

窓の曇り、入り込む日差し、全てを丸々写しこみたい。そんな欲求に18mmは素直に応えてくれる。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f10 1/125秒) -3.0EV補正 ISO125 AWB RAW

手前の窓から廊下の反射、さらに窓の奥までピシッとピントを合わせてみる。隅まできちんと解像し、秋のやや冷たさこもる廊下の空気と外の日差しの温もりの、どちらも写し込めた。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f3.2 1/125秒) -0.3EV補正 ISO320 AWB RAW

授業の開始に鳴らしたのだろうか。教室内も一緒に。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f2.8 1/400秒) +1.0EV補正 ISO100 AWB RAW

ボケ味は暴れる様子もなくとても素直なのがわかる。開放値はF2.8だが、寄れば大きくボケるし、そのボケが綺麗だとピント面はスッキリと浮き上がってくる。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f6.3 1/125秒) -0.7EV補正 ISO125 AWB RAW

この集落の鎮社だろう、大切にされている様子を丸々収める。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f4.0 1/160秒) +0.3EV補正 ISO100 AWB RAW

鳥居を見守る大木を見上げてみる。聳え立つ感じが18mmで表現できた。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f8.0 1/1250秒) -1.7EV補正 ISO100 AWB RAW

永遠の美貌と若さを願い湖神となったという伝説のたつこ姫。そのたつこ姫のブロンズ像が青空に映えてとても清楚に輝いていた。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f4.0 1/125秒) -2.0EV補正 ISO125 AWB RAW

描写にカリカリした感じがないので、このようなしっとり雰囲気のカットにとてもマッチする。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f3.5 1/125秒) -1.3EV補正 ISO160 AWB RAW

楓の繊細な緑や赤、それを演出する障子の窓。18mmの広がりと上品な写りがこの画を創り出している。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f7.1 1/200秒) -2.7EV補正 ISO100 AWB RAW

まだ紅葉には少し早かったが、この1本だけが真っ赤に染まっていた。 1本だけを際立たせるように、周りをそのまま切り取る。自然な広がりがこのレンズで伝えられる。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f2.8 1/100秒) -0.7EV補正 ISO100 AWB RAW

どうしても寄って近くなるので脅かしちゃったかも?


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f9.0 1/25秒) -1.3EV補正 ISO100 AWB RAW

長靴とブルー背景のアート。 18mmの、広がりがありながらもどこか自然な切り取りは、感じたままのシャッターを楽しくさせてくれる。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f11.0 1/60秒) -1.0EV補正 ISO640 AWB RAW

鋭いシャープさはなく、ごくごく自然で馴染みやすい描写。 立体感も出て扱いやすい。僕はとても好み。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f4.0 1/400秒) -2.0EV補正 ISO100 AWB RAW

朽ちて倒れたのか、鳥居の礎石には鳥居の根本が長い年月とともに自然に戻ろうとしていた。浮き上がるような立体感、雰囲気伝わる背景の入り方、18mmはとても扱いやすく、情報を伝えやすい。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f5.6 1/60秒) -2.7EV補正 ISO320 AWB RAW

雨に濡れた質感、緑色の深さと落ち葉の色とのコントラストが美しい。


Sony α7R Ⅳ 絞り優先AE(f2.8 1/40秒) -3.0EV補正 ISO100 AWB RAW

低照度時でもF2.8の開放値には余裕を感じる。絞り開けの方向に選択肢があることは、とても助けとなる。大きな蓮の葉にたまる雨の雫。水の玉が輝くようにローキーで。背景の街明かりとリンクするように。


総評

145gというコンパクトな設計なので、旅や散歩でのスナップにぴったりな一本だ。重いということが行動の負担になってはならないと考えているユーザーは多いはずだ。しかしこの重量なら躊躇なく持ち出せるだろう。

18mmは超広角ながらとても扱いやすく感じる。広大なシーンを余すところなく撮影できる魅力がある。旅先で出会った光景はもちろん、強い遠近感を使い、見慣れた風景に奥行きをつけて撮影してみるのも面白い。

このレンズ一本で旅行に出かけるのも潔くていいが、もう一本加えてみるのも良いだろう。50mmクラスの標準系レンズや中望遠系マクロレンズと組み合わせてみても表現が広がりそうだ。AF 18mm F2.8 FEがあるおかげで、画角の異なる明るい単焦点レンズをセットにできるのは、僕の経験からしてもとても嬉しい。

ソニーα7/9ユーザーで、旅に出かけることが多い方には、絶対にオススメしたいレンズだ。