【実写レビュー】美しいボケ味を魅せる SAMYANG AF 85mm F1.4 FE
萩原 和幸 (はぎわらかずゆき)
1969年静岡生まれ。
静岡大学人文学部法学科及び東京工芸大学写真技術科卒業。 写真家・故今井友一氏に師事。主に広告を中心にファッション撮影を学ぶ。独立後は広告・雑誌にて人物撮影で活動。カメラ専門誌にも寄稿多数。近著に写真集『記憶(モデル:藤江れいな)』(玄光社)、『プロが撮影で疎かにしない・ポートレート撮影の三原則』(秀和システム)、『ポートレート撮影レフ板ライティング完全マスター』(玄光社)など。(公社)日本写真家協会会員、静岡デザイン専門学校講師。
ソニーαシリーズ専用のフルサイズ対応EマウントAFレンズで、『AF 35mm F2.8 FE』、『AF 24mm F2.8 FE』など、小型・軽量ながらも圧倒的な描写性能で人気を博すレンズを世に送り出しているサムヤンから、85mm F1.4というスペックとしては、またまた小型・軽量なレンズが登場した。それが『AF 85mm F1.4 FE』だ。
85mmも開放値F1.4ともなれば、昨今のレンズの相場といえば大きくて重い。それはそれで高画質を補完するためには仕方のないことなのだが、ソニーα9/7シリーズはそもそもコンパクトであることもウリの一つ。だが、レンズが大きくなってしまっては本末転倒だし、バランスは悪くなり、取り回しもイマイチに。しかしながら、この『AF 85mm F1.4 FE』はわずか568gと、まさにF1.8並みの重量。取り回しがとっても楽なのだ。
非常にコンパクトなアルミボディでシンプルなデザイン。お約束とも言えるスタイリッシュな朱のラインが映える。
ソニーα7RⅢに装着すると、とってもいいバランスだ。実際に持ってみるとレンズが軽いので、前のめりすることなく構えることができる。
深く実用的なフードが同梱。それでも十分コンパクトだ。返して逆にはめることで収納時のレンズ保護ができる。
では早速撮影に出掛ける。
今回はポートレートとスナップ撮影で本レンズを試してみた。
SONYα7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/2000秒)+1.0補正 ISO100 WB:オート
引きの大きな全身カットからスタート。
F1.4開放のボケは大きく、気持ちよく彼女を浮かび上がらせてくれる。
一休みしながら、テーブルを挟んでのカット。
表情を大きく狙うには、とてもいい画角で、その点はやはりポートレートレンズたる画角だなあと思う。
SONYα7RⅢ 絞り優先AE(f8.0 1/640秒)-2.3補正 ISO100 WB:オート
中望遠の圧縮感を味わう。 ボカすばかりが使い方ではない。
ポケットパークにあった遊具で遊んでいたところを、こちらはベンチから。さりげないシーンを、端的に気持ちよく切りとるのも中望遠の面白さ。
背景のボケを確認しながら。全体的のまろやかなボケが好印象。
SONYα7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/500秒)+1.0補正 ISO100 WB:オート
絞り開放からすっきりとした描写。シャープさは昨今のレンズに比べて抑えめな印象だが、繊細。ポートレートにはその方が合うと思う。
ちょっとしたところを素早く切り取る。気がついたところをスパッと。 夏らしい影で、好み。
SONYα7RⅢ 絞り優先AE(f5.0 1/1000秒)-1.3補正 ISO100 WB:オート
景色の一部をどう切り取っていくかを考えるところに、85mmを使っての引きの画の構成の楽しみがある。
SONYα7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/1000秒)+1.3補正 ISO100 WB:オート
前ボケと後ボケをチェックする。 奥行きが付くに連れてのボケの変化は滑らかで、前ボケはクセがない。
最短撮影距離で撮影。 最短撮影距離は0.9mと標準的。
SONYα7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/6400秒)-0.7補正 ISO100 WB:オート
街をぶらぶらしながら。 最短撮影距離での撮影。背景の丸ボケはさすがの大きさ。
すっきりと清々しい青空。映えるバラの赤。シャッターを切っていて気持ちがいい。
額紫陽花。梅雨時に似合うひっそりさが好き。カリカリしない描写なので、こうした儚い雰囲気に適している。
SONYα7RⅢ 絞り優先AE(f2.5 1/500秒)-2.3補正 ISO100 WB:オート
F1.4は室内でも背景を大きくぼかせるし、光が乏しいところでも撮影意図を駆り立ててくれる。
SONYα7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/1000秒)-2.7補正 ISO100 WB:オート
SONYα7RⅢ 絞り優先AE(f4.5 1/640秒)-0.7補正 ISO800 WB:オート
少し絞るとキリッとした描写になる。開放では柔らかな描写、でもこのような画はキリッとさが欲しいので、F4.5に絞って撮影。
総評
85mmで、しかも開放値F1.4のスペックながら小型・軽量で、ポートレート撮影で1日中歩いて撮影しても、スナップ撮影で歩き回っても、とても軽快に撮影ができた。85mmはポートレートレンズとして周知されているが、お互いの距離が取りやすいバストアップのカットはもちろん、引いても大きくボカして人物を浮かび上がらせるのが得意。
F1.4開放でのボケはさすがに大きく、ボケをコントロールしながらの撮影は面白味の一つで、そのコントロールできる幅が広いということは、表現の幅が広がるということにも直結する。その点でも本レンズのF1.4のアドバンテージは大きく、開放値が明るいレンズを選択したくなるが、一方で重たくなるし大きいし...というジレンマを、一気に解決してくれる(ついでに申せば懐の痛みという意味でも)。
ソニーαユーザーで、F1.4の重要感に躊躇していた方は、本レンズを手に取ってみてはどうか。「こーんなにも楽チンなF1.4があったのか!」と感じていただけること、間違いなしだ。
モデル:鈴木海那(シェリーズ・エンターテインメント)
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