【実写レビュー】風景だけでなく、室内撮影やスナップ撮影でも面白い「SAMYANG XP 10mm F3.5」
萩原 和幸 (はぎわらかずゆき)
1969年静岡生まれ。
静岡大学人文学部法学科及び東京工芸大学写真技術科卒業。 写真家・故今井友一氏に師事。主に広告を中心にファッション撮影を学ぶ。独立後は広告・雑誌にて人物撮影で活動。カメラ専門誌にも寄稿多数。近著に写真集『記憶(モデル:藤江れいな)』(玄光社)、『プロが撮影で疎かにしない・ポートレート撮影の三原則』(秀和システム)、『ポートレート撮影レフ板ライティング完全マスター』(玄光社)など。(公社)日本写真家協会会員、静岡デザイン専門学校講師。
高コストパフォーマンスレンズを多くラインナップするSAMYANG。私が実際に毎月1本ずつ撮影に持ち出し、萩原独自の評価と作例をお伝えしようというもの。
第5弾は、『XP 10mm F3.5』。
サムヤンが40年間かけて積み重ねてきた光学設計と製造技術力を凝縮し、最新のDSLRカメラの5000万画素以上の写真と、8K映像の撮影に十分対応するために生み出されたXPシリーズ。このプレミアムレンズシリーズのXP 50mm F1.2、XP 85mm F1.2、XP 14mm F2.4、XP 35mm F1.2に続く5本目のレンズとしてラインナップされたのが、今回のレンズ『XP 10mm F3.5』だ。
『WORLD'S WIDEST PRIME LENS』と謳うように、魚眼レンズを除いては現存する世界最大の広角レンズだ。キヤノンEFマウント対応で、フルサイズで130°の広角をカバーする。
当初は星景写真向けかなと考えていたが、『DISTORTION-FREE』も掲げており、これだけ広角でありながらも圧倒的な歪曲抑制がなされていることなどからも、視覚をはるかに超えたワイド感による空間の演出や、遠近感の大いなる誇張など、室内撮影やスナップ撮影でも面白い。
レンズ構成は11群18枚。高屈折レンズ(HR)1枚と低分散(ASP)レンズを3枚、非球面レンズ3枚を採用し、非常にクオリティの高い画質を提供してくれる。
サムヤンの最高級シリーズであるXPシリーズらしく、非常に高級感が漂う外観。実際に持ってみると、ずしりと重みがある。
10mmという超広角レンズとなると前玉もとても大きい。
横から見ると、このようにレンズが出ているのがわかる。取り扱いには注意が必要。フードは固定式で、かぶせ式のキャップが同梱されている。
今回撮影で使用したCanon EOS 5D Mark Ⅳに装着。レンズ自体が均整のとれたウェイトなので、カメラに装着してもフロントヘビーにはならず、心地よいバランスでカメラを握ることができる。
では早速撮影に。
今回はスナップ撮影、カメラは全編Canon EOS 5D Mark Ⅳで行なった。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f8.0 1/320秒) -0.7EV補正 ISO100 WB:太陽光
奥行きを追いかけながら撮影をスタートさせた。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f6.3 1/400秒) -1.0EV補正 ISO100 WB:太陽光
広く写る分、ハイライトとシャドーをできるだけ取り込むことで、メリハリを効かせた画に仕上げてゆく。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f3.5 1/160秒) -1.0EV 補正 ISO1600 AWB
最短撮影距離にて撮影。最短撮影距離は0.26m。10mmという超広角、欲を言えばもう少し寄りたいなあという気持ちにもなったが、必要十分。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f11 1/400秒) -1.0EV補正 ISO100 AWB
まっすぐと聳え立つ感じが美しい。2階建ての古い洋館だが、威風堂々とした佇まいを10mmという画角が強く引き出す。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f11 1/400秒) -1.0EV補正 ISO100 AWB
青空に浮かぶ雲が気持ち良く、多く取り込んでみる。
深呼吸したくなるほどの澄んだ空の感じが出せた。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f3.5 1/125秒) -0.7EV補正 ISO1000 AWB
古い紡績工場にて。整然と並ぶ糸まきを収めてみる。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f8.0 1/160秒) ISO125 WB:太陽光
画面いっぱいに入れ込むことで、構成の面白さを味わう。10mmの超広角だからできるゆとりを目一杯使ってみた。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f7.1 1/100秒)-1.7EV補正 ISO12600 AWB RAW
広い教会を隅々まで贅沢に。シンメトリーのこの画そのものが、まるでデザインのようで美しい。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f3.5 1/160秒) -1.7EV 補正 ISO2500 AWB RAW
主たる被写体も背景を広く大胆に取り込めるので、気を引いたどちらもズバッと写しこめる。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f3.5 1.6秒) -1.3EV 補正 ISO800 AWB RAW
暮れゆく空と、見え始めた星たちを一緒に。雲が大きく出始めてしまったことが残念だが、気になる空にレンズを向けるのが本当に楽しくなる。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f7,1 1/160秒) +1.3EV補正 ISO800 AWB RAW
まだ色づき始めたばかりだが、紅葉を求めて歩いてみる。
赤と黄色、緑のコントラストの美しさをそのままに。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f3.5 1/125秒) +1.0EV補正 ISO250 AWB RAW
最短撮影距離にて撮影。ここまで寄ればさすがに背景は大きなボケ。落ち葉を浮かび上がらせながら、その落ち葉がグッと飛び出す感覚が面白い。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f16 1/125秒) -1.3EV補正 ISO2000 AWB RAW
紅葉にギリギリまで寄って、できるだけ画面に取り込みながら、奥の塔とともに。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f5.6 1/125秒) +2.0EV補正 ISO800 AWB RAW
東屋からの光景だが、このような切り取り方で、広いスクリーンか、パノラマっぽく。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f3.5 1/160秒) -2.0EV補正 ISO125 AWB RAW
石材の切り出し場の跡。今もここの石材で支えられている寺院への信仰か。その静寂さをそのまま。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f3.5 1/500秒) -0.7EV補正 ISO100 AWB RAW
影に映える紅葉の美しさに惹かれ、レンズを向ける。とてもクリアな写りのレンズなので、見たままの鮮やかさを濁りなく撮影できた。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f11.0 1/160秒) +0.3E 補正 ISO160 AWB RAW
大きく取り込むことができるので、全体の調和の面白さを求めながらのスナップが楽しい。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f5.6 1/320秒) -2.0EV補正 ISO100 AWB RAW
石垣の力強さと歴史を感じて撮影。透明感ある繊細な写りをもつこのレンズ、被写体に感じた気持ちをストレートに表現できる。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f16 1/125秒) -2.0EV補正 ISO100 AWB RAW
虫に食われながらも支える、この時間の流れを、ハイライトとシャドーのコントラストをつけて。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f8.0 1/200秒) -1.0EV補正 ISO100 AWB RAW
神殿の赤と澄んだ空の青。獅子が佇む国宝の、神々しさを感じてレンズを向ける。コントラストの中に重みを表現する。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f8.0 1/160秒) -1.0EV補正 ISO640 AWB RAW
興味本位で井戸の中を、ノーファインダーで。放射を感じるデザインのようで美しかった。このレンズでしか見せてもらえないデザインだったかもしれない。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f7.1 1/160秒) -1.0E 補正 ISO1000 AWB RAW
手水鉢に浮かべている色とりどりの花々が美しく、粋だ。瑞瑞しさとともに切り取る。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f5.0 1/125秒) -0.7EV補正 ISO400 AWB RAW
ご神木の力強さをストレートに。
キレの良さと相まって、表面の質感がダイレクトに表現できた。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f8.0 1/160秒)ISO125 AWB RAW
クスッと微笑んでしまう看板に惹かれて。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f4.5 1/20秒) -2.0E 補正 ISO12800 AWB RAW
大修復中の清水の舞台だけど、ライトアップされた紅葉とは合っていた。手持ち撮影。
Canon EOS 5D Mark Ⅳ 絞り優先AE(f7.1 1/50秒) ISO3200 AWB RAW
提灯がずらっと並ぶ光景も、このレンズを通すと新たなデザインの素材として創る楽しさを見せてくれる。
総評
10mmという超広角は、強烈な遠近感にまるで被写体が逃げてしまうような感覚を覚えてしまうし、慣れも必要なレンズではあるが、使っていくうちに面白さを飲み込みながら、被写体に対してのスタンスが変化していく自分に気づく。
被写体に接近しての猛烈な迫力と、XPレンズがもたらす、帆手もクリアでキレのある清々しい写りにうっとりしてしまうことも。
フルサイズかつ高画質ということもあり、手持ち撮影ではシャッタースピードをかなり高めに設定して撮影を行ったが、これだけの画質での撮影では注意が必要となる。しかし取り込まれた画像は細部まできちんと解像され、立体的で瑞々しさを感じられた。
キヤノンEFマウント対応だけなのが残念だが、このクオリティにハマる人は多いと思う。新しい感覚に気づかせてくれるレンズだ。
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