朝日・夕日の撮影方法

朝日・夕日の撮影方法

撮影場所について

撮影に行くための準備編では「行きたいところへ行く!」といいましたが、僕はライター業もしていますので、「使用用途」言い換えれば「~~に使う写真」ということが、ロケ地を決定する時の上位条件になります。残念ながらただただ「行きたいから行く!」ということは、なかなか許されません。今回の執筆テーマは、朝陽もしくは夕陽の撮影テクニック、滝の撮影テクニック、海もしくは湖撮影のテクニックの解説がテーマでした。ここではその中の「夕陽撮影のテクニックを解説」するため撮影地選びについてお話していきます。

まずは、解説するにあたってどんな画が必要になるのか?という事を考えました。夕陽の撮影・・・となれば山か海か、それとも街中か・・・山なら美しい山並みや姿の良い印象的な山が見えるところか・・・あとは、それ+何かが欲しいところ。そうなると・・・と考え群馬県と長野県の県境にある「渋峠」というところに決めました。この場所は、過去何度か訪れたことがあるため、条件の中にある「夕陽と美しい山並み」や「驚くような雲の姿」が撮影できる場所、言い換えれば「何が撮れるか?」があらかじめ分かっていたため経験則を踏まえてこの場所にしました。また、時期によって条件が揃えば谷間に雲だまりが発生し、かなり印象的な写真が撮影できます。さらに、撮影時期を変えれば朝陽の撮影、星空、そして雲海のポイントでもあるため一年を通して様々な撮影が楽しめる場所でもあります。そして撮影当日に、この場所の天候が思わしくなく、急遽場所を変えるとなったときでも、クルマで少し走れば浅間山があったり嬬恋があったりしますので保険をかける意味でも「渋峠」が良いと判断しました。

お次は、肝心な夕陽の落ちる角度や場所もあらかじめ探っておきます。何度か訪れているとはいえ再確認のため日の出と日の入りの時間なども先に確認しておきます。インターネットで検索をかければすぐわかりますので予め調べて現場に挑みましょう。ご存じの方も多いと思いますが、日の落ちる時間としてネットで出てくる時間は「水平線」が基準になっています。ですので、山など標高の高い場所で撮影をする場合、示された時間より早く太陽が隠れてしまうので、当然調べた時間よりかなり早めに現地に行くことをお勧めします。撮影は7月の中旬でしたが、夏至を超えてもなお夕陽は西寄りに落ちていきます(夏至は最も西寄りになり冬至は最も南寄りに太陽が落ちていきます。朝陽も同様で夏至は最も東寄りから陽が昇り、冬至は最も南寄りから朝陽が昇ってきます。当然夏と冬では太陽が最も高くなる角度も変わってきます)のでどの場所でどの向きで撮れば良いかを経験だけに頼らず再確認しておきます。今回は、事前のリサーチで車の置ける場所近くで撮影するポイントを発見できていたため、現場でも慌てずに撮影することが出来ました。

その他にも事前に夕陽の落ちる場所が分かっていれば

こうした狭い街の中を落ちていく夕陽を撮影することが出来たり、ビルとビルの間に落ちていく夕陽を撮影したりすることが出来ます。

ロケ地を決めた後は、是非事前の調査をしっかりとされてから現場に挑まれることをお勧めします。とはいえロケや旅には、ふいに「あ、いいな!」という瞬間が訪れます。プランにこだわりすぎてしまうとそうした「直観的なシーン」を見逃してしまう恐れもあるので、あまりガチガチに考えず自由な発想を大事にしてほしいと思います。また、もっと軽く「旅先で何かいい夕陽が照れたらいいな」とお考えの方もいらっしゃると思います。その場合、旅先の夕陽の時間と方向だけでも調べてみるといいでしょう。今いるところから見てどこに夕陽が落ちるのか?現代はスマートフォンのアプリですぐに知ることが出来ます。いい景色や良い街並みに陽が落ちてオレンジ色に変わっていくところを狙ってみる。それも旅の楽しみの一つと言えます。また、日常の中で夕陽をみて撮影される方、スマートフォンで撮影される方も多いと思います。スマートフォンのカメラに付いているレンズは、思いの外広角側のレンズが付いていることがあります。ですので、画角内では夕日が小さくなってしまいますが、その分「夕陽+何か」という構図の構成を行い印象的な夕陽のシーンにしていくことをお勧めします。そのとき少しカメラを傾けて(ピッチアングルやヨーを付けて)撮影すると遠近感が強調されますのでいろいろスマフォを動かして撮影するといいでしょう。また、スマフォ用の広角レンズや望遠レンズなどを装着すると一味違った写真が撮影できます。

夕陽(朝陽)の撮影時気を付けておきたいこと

朝陽や夕陽の時間帯、この時間帯は「劇的な空」になることがあり、非日常的なシーンが撮影できる時間帯です。

焼ける空や変わりゆく色に心惹かれそれだけを撮影しても画になってしまう時もありますし、朝陽や夕陽は太陽が姿を見せてくれなくてもフォトジェニックな空の表情を見せてくれます。

例えば日の沈んだ後に訪れるブルータイム。

この時間に撮影すると雲はこうして深い青色に変わっていきます。
また、空も・・・

このように美しい青色に変わっていきます。
さて、そんな素敵な時間帯での撮影である、朝陽夕陽の撮影で僕が気を付けている事ですが・・・

結論から言ってしまうと3つあります

  • カラーグラデーションの出方
  • 構図の構成
  • 印象的な何かをワンポイントでも入れる

これは朝陽夕陽の撮影に限らず、全ての写真に当てはまるのですが朝陽夕陽の撮影時は特に気にかけています。

入門者の方の場合、ホワイトバランスをオートのままで撮られていらっしゃる方もいると思いますが、夕暮れのオレンジを強調したい場合、曇天や晴天日陰へ変更するとオレンジ色の画に変わっていきます。しかし、それでも自分のイメージと合わない場合色彩強調フィルターを装着してみましょう。光学的に一気に色をかけることによってイメージが変わってきます。

使用前 使用後
フィルターなしMCトワイライトブルー使用

陽が落ちた後に訪れる「ブルータイム」の画も同様ホワイトバランスを変えてみたり色彩強調フィルターを装着してみたりして「自分のイメージ」を大事に撮影してみてください。僕はこうしたブルータイムの時にトワイライトフィルターを使って撮影します。 マゼンタがかった幻想的な色合いに空が変わっていきより印象的な一枚に変わっていきます。朝陽夕陽の撮影時は是非持っていたいフィルターです。

さて、具体的には何をどうやって撮影しているのか?をお話させていただきます。 まず、最初はグラデーションの出方というところです。

太陽の光はとても強く白飛びしがちです。これを防ぐにあたり、HDRで撮影したりカメラ内の設定を変えたりと様々な方法がありますが、僕の場合手っ取り早くハーフNDを使って撮影する事が多いです。

使用前 使用後
フィルターなし
F8 1/1250秒 ISO100
リバースGND ND8
F8 1/400秒 ISO100

朝陽夕陽の主役として、僕はカラーグラデーションにこだわって撮影します。撮影時、自分が思い浮かべたイメージがフィルターを必要とする画であるなら躊躇なくフィルターを使います。この画も自分のイメージではフィルターありの画が浮かんできたのでリバースハーフNDを使って撮影しました。このフィルターの特徴はフィルターの掛かりが自然で且つ濃淡が逆(通常のハーフNDは、中央部から端にかけ徐々に濃く暗くなりますが、リバースハーフNDは中央部が濃く暗くなり端にかけ徐々に淡くなる)になっているため朝陽夕陽の撮影時、強く掛かって欲しいところにしっかり掛かってくれます。

撮影設定としては、ホワイトバランスを晴天日陰へ変更、カラーモードはヴィヴィッド、リバースNDを少しづつずらしながら調整を行いシャッターを切りました。

  • PLフィルターなし
    F5.6 1/2秒 ISO100
  • MCトワイライトブルー
    F5.6 0.8秒 ISO100
  • MCトワイライトレッド
    F5.6 0.8秒 ISO100

続いてはトワイライトフィルターです。ホワイトバランスを5200Kに固定。あとはカメラ任せで撮影しています。比較のため、「なし」、「ブルー」、「レッド」と3枚撮影しましたが、撮影前にトワイライトフィルター・レッドの画が頭に浮かんできました。朝陽夕陽の撮影時は、是非カラーグラデーションの出し方に気を付けて撮影してみてください。

もう少し込み入った使い方もしてみました。

まずは何の設定の変更もしておらず、またフィルターも使っていない状態の写真です。言ってみれば「ただ撮影しただけ」の非常にプレーンな状態です。

リバースハーフND8+リバースハーフND16の2枚掛け+C-PLフィルター
WB曇天 カラーモードヴィヴィッド F11 20秒 ISO100

次に、カメラの設定を変え、フィルターで調節した写真です。これは、僕の頭の中に浮かんだイメージをカメラ内の設定変更や各種フィルターを駆使し具現化した感じです。明暗差の大きい空と印象的な岩場、この明暗差をリバースハーフND×2枚で整え、且つ海の反射をC-PLで抑え透き通った美しい緑の色を出し、20秒のスローシャッターにすることで白波をさらさらな状態にしました。日常から非日常的な画を撮影する、こうしたことも朝陽夕陽の撮影時にできることの一つです。皆様もぜひ様々なアイディア、頭に浮かんだイメージを具現化してみてください。

次に、構図構成です。
空の撮影をする場合、良く用いられる構図は3分割構図です。しかし、広い空を撮影する場合、何をメインに持っていくかを明確にする必要があります。例えば空のグラデーション、例えば印象的な雲など、何をその写真の主役にするのかによって画面3分割の配分が換わります。

作例1としてトワイライトフィルターを使った写真で見ていきましょう。
この写真の主役は「空のグラデーション」です。

カメラα7RⅢ レンズZEISS Batis 2.8/18 絞りF6.3 SS1/13秒

まず、グラデーションの始まりは右中央から少し下辺りに持っていきました。「空2/3山並みと雲1/3」で撮影したほうが空のグラデーションをより強調できると判断し「基本に忠実」に3分割で構成し、さらに薄く見えるアーチ状の雲を入れ込み遠近感を出し、月をワンポイントに置いて撮影しました。この時使ったレンズは18㎜と超広角の焦点距離でしたので広角の特性パースを使うことを念頭に置き構図構成しました。使っているレンズの特性によって構図構成は変わっていきますが、まずはスタート地点として「基本に忠実」に構図構成を始めます。その後、微調整を行い主役を際立たせるよう構図を変えていきます。

最後は何かワンポイントとして構図に入れておくものとして、この時僕は空に浮かんでいる「良い三日月」に眼を奪われました。また波打つ雲との距離を詰めるため、最初にいた位置よりも左に移動し三日月を雲の近くに配置しました。サイズ感(撮った写真をどの大きさで見るか?)を考えれば、もう少し月を大きくするため望遠側のレンズで撮影するべきだったかな・・・とは思うものの、美しいグラデーションを出すには18㎜が良いと判断して撮影しました。

別の視点で

カメラα7RⅢ レンズZEISS Batis 2.8/18 絞りF11 SS20秒

もう一枚、お次は「様々なフィルターを使った画」で構図の解説をしていきましょう。 まずスタートは基本に忠実に3分割構図にしましたが、ほんの少し地面の部分を削って空の分量を多くしました。理由は「印象的な雲」の分量を多くしたかったからです。次に水色で囲った部分ですが、こうした画の場合、水色で囲った部分が水平線を超えるかどうかで印象が変わってきます。今回はリバースハーフNDを使うため切りの良い水平線に揃えましたが、地面の延長線上にあるものが水平線を超えるかどうか?で画の印象が変わることを覚えておいてください。次に黄色の線ですが、選んだレンズは作例1同様18㎜ですので遠近感を強調することに長けたレンズですので、このラウンドした黄色の線を引くことでパースを使い遠近感を強調しました。最後に赤の部分は敢えて地面を残して撮影しています。理由は高低感を出すためです。この地面の部分、言い換えれば「足元」があるだけでずいぶん高低感が出てきますし安定感もあります。僕は高低差があるところで、特に広角レンズで撮影する場合こうして地面を入れて撮影します。

さて、いかがだったでしょうか?朝陽夕陽の撮影時、「グラデーションの出方」「構図の構成」「印象的な何かをワンポイントでも入れる」という点を特に気を付けて撮影してみて下さい。

 

朝日・夕日の撮影に便利なアイテム

この記事の作者

小河 俊哉

小河 俊哉(おがわ としや)

東京都出身。
自動車整備士、カースタントマンなどを経てフリーフォトグラファーとなる。
自然、風景、クルマ写真などを専門とし雑誌、クラッシックカーイベントなどで活躍。 現在、作品集作成のため精力的に国内外で撮影中。