風景写真家齋藤朱門氏が語る「風景写真で工夫していること」

風景写真家の齋藤朱門です。

風景写真と一言で言っても、海や山、滝・渓流、森など、実に様々な場所・シーンがあると思います。

これらの様々なシーンの中、朝や夕暮れ時にダイナミックに刻一刻と変わっていく光とそこにある自然風景の変化や表情を捉えるのがまさに風景写真の醍醐味の一つではないでしょうか。

そんな多種多様なシーンでの撮影に対応するために、工夫していることの一つがレンズフィルターの活用です。

レンズフィルターを使う

風景写真を撮り始めた初心者の頃、カメラ・レンズ・三脚に加えてハーフNDフィルターを購入したのを鮮明に覚えています。

というのも写真を始めた頃、独学で風景写真を学ぼうと読んでいたWeb記事や雑誌記事等では必ずと言っていいほど、ハーフNDフィルターの使用を薦めていたためでした。

しかし、初心者の頃はどちらかというと、レンズフィルターの効果の理解が浅かったこともあり、撮影シーンにかかわらずやみくもに常に同じレンズフィルターを使用していたように思います。

今から考えると、なぜその時にそのフィルターを使っていたのかと恥ずかしくなるようなことをしていたと思います。

今ではレンズフィルターの理解も深まったこともあり、自分が表現したい作品に近づけるための効果的で最適なレンズフィルターの使い方を重視するようになっています。

風景撮影で使用するレンズフィルターにはC-PLフィルター、NDフィルター、ハーフGNDフィルターやリバースGNDフィルター等のように様々な効果や特性のものがあるのと同時に、大きさや形状、材質、厚み等も多種多様にありますので、レンズフィルターはやみくもに使うのではなく、自分の表現したいものに合わせて使いこなすことがとても重要だと思っています。

反射をコントロールする

水面のように反射があるシーンや、森の中の撮影で多用しているのが、C-PLフィルターです。C-PLフィルターを使うことで反射の度合いを変えることができるので、自分の表現したいものに合わせて使用することができます。

例えば水面を鏡面のようにしたり、逆に水中を見せるように調整して使っています。

森の中では、木々の葉の反射を抑えるのに使うことが多いです。
不要な葉の反射をCPLフィルターを使って抑えることで、全体的にカラーコントラストも高めることができ、色鮮やかなシーンとして撮影することが出来ます。

シャッタースピードをコントロールする

特に水流や雲のように、動きのある被写体を撮影する時にはそれぞれに適したシャッタースピードに調整する必要があります。滝や渓流の場合は水流の速さにもよりますが、個人的には0.5秒〜1秒前後のシャッタースピードが理想的です。

しかし、クオリティを重視しISO感度を固定する場合も多いので、あとは絞りとシャッタースピードのバランスになりますが、特に明るい日中は絞っても最適なシャッタースピードにすることが難しいことがあります。

そういう場合に使うのがNDフィルターです。NDフィルターもND2~ND1024のように減光の度合いによって使い分けが必要です。通常はND2〜ND64くらいで2~3枚持っていると、あとはこれらの組み合わせで対応できることが多いと思います。

輝度差をコントロールする

風景写真で最も多いシーンの一つが、朝日や夕日のあるシーンだと思いますが、明るい空や太陽があるような場面では、輝度の変化が大き過ぎるため、通常は1枚撮りで撮るのが困難な場合が多いと思います。

このような場合、露出ブラケット撮影も解決策の一つなのですが、複数枚の撮影データが必要になってしまうのと、後処理の工程の面倒さもあります。
撮影するシーンにもよりますが、ハーフNDフィルターを活用することで輝度差を抑えながら撮影することができると思います。

フィルターを組み合わせる

実際の撮影ではここで挙げたCPLフィルター、NDフィルター、ハーフNDフィルター等を複数枚、組み合わせて使用する必要があります。

CPLフィルターの中にはNDフィルター機能も備えたものありますが、個人的にはそれぞれ独立しているタイプの方が、さまざまな撮影シーンに対応しやすい利点があると思っています。

また、丸形フィルターは手軽ですが、特に広角レンズを使用している場合に重ねてつけるのが難しいので、利用可能なシーンが限定されるデメリットがあります。


そうすると必然的に、広角レンズとCPLフィルターに対応した角型フィルターホルダーシステムを使って撮影シーンに合わせたフィルターを組み合せながら撮影するというのが、最適解となってきます。

Cokin NX フィルターシステム

今回、「Cokin NX フィルターシステム」という新しく発売する100mmフィルターホルダーシステムを一足先に試用させていただきましたので、使ってみた感想を紹介したいと思います。

フィルターホルダー

まず、個人的には最も使用頻度が高いCPLフィルターがフィルターホルダー内に装着出来るというのが嬉しいポイントでした。
最近はCPLが内蔵できる角型のフィルターホルダーも増えていますが、このNXフィルターシステムもしっかり基本を抑えてるなといった感じですね。

CPLフィルターの脱着自体も簡単なので、CPLを使いたくない時は簡単に取り外すことができるのも良いです。

フィルターフレーム

このNXフィルターシステムの一番の特徴だと思いますが、各フィルターは専用のアルミ製フィルターフレームに装着して使用する仕組みになっています。

フィルターホルダー側にはスプリングロードボール方式がついているので、スムーズにフィルターフレームを動かすことができるが良いです。
また、フィルターのガラスを直接触ることなく、フィルターの位置調整ができるのも良いですね。

一般的にはフィルターはフィルターホルダーに上から差し込む形式の場合が多いですが、NXフィルターシステムの場合は前面からフィルターフレームをパチっとはめる感じで装着できるのが便利ですし、うっかり落下してしまう心配も無いと感じました。

このフィルターフレームですが、フィルター自体は2mm厚のガラスフィルターであれば、メーカー問わず使用できるようになっているので、すでに持っている別のメーカーのフィルターを使うことが出来るので、このフィルターホルダーに移行しても無駄がないのが良いですね。

NXウォレット

フィルターホルダー、CPLフィルター、6枚のフィルターフレーム、アダプターリングを収納できるバッグ(ウォレット)なんですが、コンパクトな割に収納力があって持ち運びが便利です。また肩掛けできるベルトがついてるので、撮影中は方からかけて使うことでフィルター一式へのアクセスが楽で便利でした。

さいごに

普段、風景撮影で工夫していることとして、レンズフィルターの活用ポイントを紹介しました。それぞれのレンズフィルターの特徴を理解し、うまく組み合わせることで、様々な撮影シーンに柔軟に対応することができると思いますので、是非試してみてください。

この記事の作者

齋藤 朱門(さいとう しゅもん)

宮城県出身。都内在住。
2013年カリフォルニアにて、あるランドスケープフォトグラファーとの出会いをきっかけにカメラを手に取り活動を始める。海外での活動中に目にした作品の臨場感の素晴らしさに刺激を受け、自らがその場にいるかのような臨場感を出す撮影手法や現像技術の重要性を感じ、独学で風景写真を学ぶ。カメラ誌や書籍での執筆、Web等を通じて自身で学んだ撮影方法やRAW現像テクニックを公開中。

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