冬の星空撮影ガイド 星景写真をワンランクアップ by 北山輝泰

冬の星空撮影ガイド 星景写真をワンランクアップ by 北山輝泰

はじめに

みなさん、こんにちは。星景写真家の北山輝泰です。今回はKenkoより発売されておりますソフトフィルターを使って星景写真を撮影する際のポイントと、これからの冬の撮影で魅力的な星景写真を撮影するコツをご紹介いたします。

富士山に沈む冬のダイヤモンド

冬の星空を撮影しよう

冬の夜空には、自然と視線が上を向くような格別の美しさがあります。空気が澄み、星の輪郭がはっきりと感じられるため、月明かりのない夜に暗い空の下で星を見上げると、あたかも星空に吸い込まれるような不思議な感覚を味わうことができます。また、夏に比べて夜が長く、日没後の早い時間帯から星座が見え始めるため、余裕をもって撮影に臨める点も大きな魅力でしょう。

ソフトフィルターの役割

ソフトフィルターの本来の使用目的は、明るい光源や写真のハイライト領域を滲ませて、写真全体にやわらかさやふんわりとした雰囲気を与えるために使います。

近年のカメラは高画素機が主流になり、いかにして細部までシャープに解像させるかが一つの売りになっていますが、ソフトフィルターを使用すると、被写体と撮影者との間にまるで一つの空気の層が出来たかのように優しい雰囲気の作品を作り出すことができます。言い換えるならば、それはまるで夢の中で見た世界のようで、解像感一辺倒ではない別の作品表現へアプローチできるのがソフトフィルターの役割と言えるでしょう。

さて、そのソフトフィルターですが、星景写真撮影で使用するとまた別の効果を付与することができます。
それは「明るい点光源を滲ませて、星座を目立たせること」です。

比較画像:フィルター未使用
フィルター未使用 プロソフトン[A]使用

フィルターを使わずに撮影した写真を見ていただくと分かりますが、雲一つないクリアな空を撮影すると、まるで無数の針で刺したかのように夜空に沢山の星が写ります。これでも綺麗な写真と言えますが、肝心の星に立体感がなく、目で見た時のような星の明るさの違いや色の違いなどを感じることはできません。これは、カメラが星をすべて同じ大きさの点光源として記録してしまい、星本来の明るさの違いが像の大きさとして反映されにくいことに加え、明るい星ほど露光中の早い段階で白く飽和してしまうためです。

人の目が感じている「明るい星ほど大きく輝いて見える」「星ごとに色味が違って見える」といった印象は、目の中で起きている自然なにじみや光の広がりによるものですが、カメラはそれを自動的に補ってくれないため、どうしても立体感を感じにくい写りになってしまうのです。

その問題を解決することができるのが今回ご紹介するソフトフィルターです。Kenkoからは様々な用途や狙いに合わせて使い分けられるよう効果の異なるフィルターが発売されておりますので、星景写真向けのものをいくつかご紹介していきたいと思います。

プロソフトン、スターリーナイトシリーズ

星景写真用として最もバランスが取れたフィルターが「プロソフトンクリア」です。2020年に発売されたこの商品ですが、従来の「プロソフトンA」が少し滲みが強かったのに対し、滲み効果が抑えられより風景のディテールを損なわずに撮影できるようになりました。

使い分けとしては、惑星同士の接近や、特定の恒星の並びや星座をクローズアップして撮影する時など、風景よりも星に重きを置いた作品の時にはプロソフトンAを使い、特徴的な地上風景が写っていたり、夜景が眩しい展望台から星空を撮影する時など星よりも地上景色が目立つようなシチュエーションではプロソフトンクリアを使うといった使い分けが良いでしょう。

フィルター未使用
プロソフトン クリア使用
プロソフトン[A]使用
プロソフトン[A]使用
プロソフトン[A]使用
プロソフトン[A]使用
プロソフトン クリア使用
プロソフトン クリア使用

また、星景写真撮影で気になるのが光害(ひかりがい)です。光害とは、街灯や建物の照明などの人工光が大気中で拡散し、夜空全体を明るくしてしまうことを言いますが、日本は島国で明るい都市が点在していることもあり、光害の影響を受けずに撮影することの方が難しいのが現状です。光害が写真に表れると空がオレンジ被りしたように写ってしまい、コントラストも低下するため、霞みがったような写りになってしまいます。RAWデータで撮影していれば、レタッチである程度光害を目立たなくさせることはできますが、光害の出方は構図によってバラバラで、都度レタッチをする手間はかなりのものです。

そのような時におすすめのフィルターが「スターリーナイトプロソフトン」です。これは、プロソフトンクリアの滲み効果に、光害を抑止する効果も加わったフィルターです。光害とは主にナトリウム灯や水銀灯が原因となっていますが、これらの波長の部分のみカットするように作れていますので、不自然に減光したりなどはありません。撮影後の写真は青みが強い写真になりますが、気になる方はRAW現像で好みの色合いに調整してください。

フィルター未使用 スターリーナイト プロソフトン使用
フィルター未使用 スターリーナイト プロソフトン使用

なお、スターリーナイトプロソフトンを使用した時は、フィルターなしの適正露出の設定を基準とし、そこから1/3段程度明るくなるような設定で撮影するとフィルターなしの時とほぼ同じ明るさで撮影することができます。もし、ソフト効果はいらず光害だけ抑止して撮影したい場合は「スターリーナイト」を使うのが良いでしょう。

ソフトフィルターを使った撮影時の全体的な注意点ですが、フィルターを使わないで撮影する時と比べると無限遠の位置が変わりますので、フィルターを取り付けたら再度星でピント合わせをし直すようにしましょう。

PRO1D プロソフトン[A](W) N
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PRO1D プロソフトン クリア(W)
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スターリーナイト プロソフトン
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スターリーナイト N
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リアプロソフトンシリーズ

一部の超広角または魚眼レンズなどは前玉が繰り出していて、ねじ込み式のフィルターを取り付けることができません。そのような出目金レンズでソフトフィルターを使った撮影を行いたい場合におすすめなのがシート型のソフトフィルター「リアプロソフトン」です。リアプロソフトンは薄いポリエステルシートのフィルターで、自分で任意の大きさと形状にカットし、レンズの後玉に取り付けて使用します。

近年発売されている超広角レンズの一部には、このようなシートフィルターを取り付けるためのホルダーが予め備わっているものもありますが、ない場合は電子接点に干渉しないよう注意しながら両面テープなどで固定することになります。

リア プロソフトン
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リアフィルターホルダーに装着した例 リアフィルターホルダーに装着した例
両面テープで貼り付けた例 両面テープで貼り付けた例

リアプロソフトンには、表現、意図に合わせて選べる3種類のフィルターがあります。にじみ効果が穏やかなNo.050、星の輝きを強調するNo.100、そして最も強いにじみを持つNo.150の3タイプです。ちなみに、No.050はプロソフトンクリア相当のにじみで、No.100はプロソフトンA相当のにじみとなっています。私は星景写真でも景色の描写を重要視していますので、No.050を使用することが多いです。

フィルター未使用
No.050使用
No.100使用
No.150使用
フィルター未使用
No.050使用
No.100使用
No.150使用

このようなリアフィルターは、出目金レンズに使用できるだけでなく、レンズ前面にフィルターネジを備えたレンズにおいても有効です。それは、レンズ前面にフィルターを装着した場合に比べ、後玉付近にフィルターを配置することで、画面周辺部まで均一で安定した描写が得られるためです。

前面フィルターでは、画面周辺に向かうほど光が斜めに入射するため、ソフト効果が偏りやすく、星像が放射状に流れたり、楕円形に崩れるなどの影響が稀に生じます。

一方、リアフィルターは、レンズ内部で像が形成された後の光を拡散させるため、周辺部まで自然で均一なソフト効果を与えることができ、像の歪みや不安定さを抑えることができます。もちろん、つけ外しの利便性を考えるとレンズ前面に取り付けるフィルターの方が使い勝手が良いため、ご自身の撮影スタイルに合わせて選ぶのが良いでしょう。

リア プロソフトンNo.050使用
リア プロソフトンNo.050使用
リア プロソフトンNo.050使用

冬の星空撮影のコツ

リア プロソフトンNo.050使用

冬は星空撮影に最適な季節と言われますが、その大きな理由の一つが「一等星の多さ」です。一等星とは、夜空でも特に明るく輝く星のことで、肉眼でもはっきりと認識できます。

冬の星空には、オリオン座のベテルギウスとリゲル、おうし座のアルデバラン、ぎょしゃ座のカペラ、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンなど、主役級の一等星が集中しています。これらは「冬のダイヤモンド」を形づくり、星座同士をつなぐ道しるべにもなります。

これらの星が集まるのは12月下旬ごろで20時00分ごろ、1月中旬ごろで19時00分ごろと、季節が後ろにズレるごとに少しずつ早まっていきます。一等星が多いということは、星座の形が分かりやすく、構図を組み立てやすいということでもありますので、星景写真初心者の方でも撮影しやすいと感じるでしょう。

比較画像:フィルター未使用スターリーナイト プロソフトン使用
フィルター未使用 スターリーナイト プロソフトン使用

冬は空気が乾燥し透明度が高いため綺麗な星を撮影しやすい一方、星の光があまり拡散せず写りに物足りなさを感じるかもしれません。そんな時は、ぜひ今回ご紹介したソフトフィルターを使って撮影してみましょう。明るい星が強調され、冬の星座の美しさをより際立たせることができます。冬のダイヤモンドのような広範囲の星を同じ画角に収めるためには超広角レンズが必要になり、リアプロソフトンが必要になるシーンが多いですが、冬の寒い屋外でシートフィルターを装着するのはかなり難しいため、撮影に出かける前に室内で予め装着しておくのが良いでしょう。他にはレンズを結露から守るレンズヒーター※などあると安心して撮影を行えるでしょう。

※市販のレンズに巻きつけるレンズヒーターの他、Kenkoではフィルター自体が発熱する「Anti-Fog」シリーズ(角型フィルター)もご用意しています。

まとめ

星景写真撮影においてソフトフィルターを使った撮影は作品表現の幅を広げるとても重要なテクニックです。試してから購入というのが難しいため迷っている方も多いかもしれませんが、今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。また、冬の撮影は美しい星を撮影できる一方、寒さに耐えながらの厳しい撮影になります。防寒して臨むことはもちろんですが、底冷えして風邪を引いてしまわぬよう、無理のない範囲で楽しんでくださいね。最後までお読みいただきありがとうございました。

北山 輝泰

星景写真家兼ビデオグラファー

北山 輝泰

日本大学芸術学部写真学科卒業後、福島県に移住し天文インストラクターとなる。その後、天体望遠鏡メーカーに転職し、営業マンとして7年勤務した後、星景写真家として独立。現在は天文雑誌「星ナビ」のライターをしながら、全国で写真講師の仕事を行う。OM SYSTEM ゼミの講師や、ソニーαアカデミー銀座校、大阪校、オンライン校にて定期的に授業を行う。