海の撮影方法

海の撮影方法

ロケを行ったのは7月中旬。海の撮影に良い季節で、高い空と美しい海撮影できる季節でした。僕がこうした海の撮影や水辺の撮影を行う際、気を付けていることをいつも通り3つに絞ってお話していきたいと思います。

海撮影3つのポイント

  • 反射のコントロール
  • 主題をはっきりさせる
  • 時間帯

まずは、反射のコントロールです。ここでは僕の常備定番フィルター「PLフィルター」を使って撮影するとどうなるのか?をお話ししていきたいと思います。 夏に限らず風景撮影の定番フィルターといえば「PLフィルター」です。このフィルターを使うとどのくらい海の反射が消えていくのか、そしてどう発色が変わっていくのか比較していきましょう。 海を撮影する時、PLフィルターをお使いになったことが無い方に使っていただくと、「こんなに違うの?!」と驚かれることがあります。そうなんです、劇的に変わるんです。PLフィルターをつかう目的としては、「透き通った美しい海」を撮影する時に使います。今回も「透き通った美しい海」の撮影に使いましたが、あるとないでは大違いです。

さっそく比較してみましょう。

反射のコントロール

  • PLフィルターなし
  • PLフィルターあり最小
  • PLフィルターあり最大

海辺の撮影では反射をどう使うか?がポイントになってきます。反射をコントロールすると言えばPLフィルターです。ここではPLフィルターのお話をしていきたいと思います。美しい海でSUPを楽しんでいるお嬢様がいましたのでお二人に声をかけて撮影させていただきました。違いは一目瞭然ですね。なしとありではこんなに違います。美しい海本来の色がしっかり出ています。ちなみに、PLフィルターを最小で撮影すると反射が増えていきます。「増やしてどうするの?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんので、こちらもお話しておきます。反射を増やす場合、もちろんこうした海の美しさを出すのには使いません。ではどういったときに使うのか?
こんな時です

  • PLフィルターなし
  • PLフィルターあり最小
  • PLフィルターあり最大

プリズム現象である虹の撮影などを行う際はPLフィルターの効力を最小にすると虹がハッキリ見えてきます。PLフィルターなしの画と比べてみると・・・ご覧の通りより虹がハッキリ見えます。ちなみにPLフィルターを最大に効かせると虹は消えてしまいます。こうした滝に現れる虹や夕立の後に現れた虹の撮影などにも有効です。僕は、PLフィルターを必要な時に必要なだけ効力を変えながら使っています。
ちなみに、PLフィルターを上手に活用するには太陽の向きが重要になります。詳しくはこちらを読んでみて下さい。

さて、話を元に戻しましょう。先ほど「透き通った美しい海」と謳いました。

PLフィルターなし
PLフィルターあり

上がPLフィルターなし、下がPLフィルターありです。パノラマで撮影してみましたがこれも一目瞭然で海がすっきり透き通っています。太陽の位置がトップライトになっていて海に光が入るため、そもそも透き通っているのでPLフィルターを使わなくても・・・と、思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この薄皮一枚の反射が大きく印象を変えますし、海全体の色出し、さらにコントラストもグッと上がってきますので画のメリハリが違います。

レタッチでも同じになるのでは?とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。では、レタッチでも同じ画になるのか?見てみましょう。

レタッチでも同じになるのか?

PLフィルターなし
PLフィルターあり
PLフィルターなしをレタッチ

僕は仕事上レタッチを行いますし、自分の作品も必要であればためらうことなくレタッチしますので作業自体は割と慣れている方だと思います。下段のPLなしをなるべくPLフィルターありに近づけてレタッチしてみましたが僕の技術ではこれが限界です。レタッチ内容ですが、コントラスト+57、シャドー部+10、コントラストを上げたため彩度が上がってしまったので彩度-20、さらにグラデーション範囲指定ツールで岩場の見える手前の海の部分を指定し明るさ+25コントラスト+38と手を入れましたが・・・やはり反射の薄皮一枚が取り切れませんでした。特に奥の海の色は反射がきつくPLフィルターありと同じにはできませんでした。僕よりもレタッチがもっとお上手な方もたくさんいらっしゃると思いますので、その方が作業を行えばPLフィルターありにより近づけられるかもしれませんが、そこまで行くにはセンスや訓練が必要ですし、同じ画にするまで様々なレタッチ工程を行わなければなりません。しかし、そうまでしなくてもPLフィルターが一枚あればそれらすべてをカバーしてくれます。海の撮影ではPLフィルターは必需品です。

主題をはっきりさせる

ここでは構図のお話です。
海の撮影に限らず、構図を構成していくうえで大切なことは何を主題にするのか?ということですが、海辺の撮影では一枚にたくさんの要素を入れたくなるので特に気を付けて撮影したいところです。たくさんの要素に眼を奪われてしまった場合どうすればいいのか?そんな時はその風景の何に「わぁ!(Wow!)」と思ったのか?を大事にしてみて下さい。そして、それをどう構図構成すれば「わぁ!(Wow!)」という感動を写真に刻み込めるのか?それを考えてみて下さい。

夏空と海の素敵な風景です。まずは基本に忠実に3分割構図にして海と空を分けます。もちろんPLフィルターを使い海の反射を抑え、空のコントラストも上げ夏らしい海辺の風景にして撮影しました。これはこれで、夏らしさを感じる海辺でいいのですが・・・この時、僕はこの一枚を撮影する前から「良い夏空だなぁ・・・」と思っていました。そんな時は、気持ちに素直になり海をメインに考えず、夏の海辺で見た夏の「空」を主題にして撮影します。

選んだレンズは超広角18㎜。超広角を使い撮影する事で、パースの効果により雲が放射線状に伸びていき空の大きさを演出してくれます。海の部分は美しさを感じられるくらい入れておけばOK!それよりも思い切って空を大きく入れて構図構成します。何を主題にするのか?それは、その時の自分が何に対して「わぁ!(Wow!)」と思ったのかが決めてくれます。当然、海辺にいれば「今、海にいるんだから海の画を撮らなきゃ!」という気持ちになりますが、それだけに捕らわれずときには素直に「わぁ!(Wow!)」と思ったものにカメラを向けてみて下さい。

もちろん海にいるので「海が綺麗だ!」と思えば、思い切って海を大きく入れた画にします。感動して撮影した写真は、見る人にもその感動が伝わっていきます。その時には、あれもこれもとたくさん詰め込まず、シンプルかつ思い切った構図を構成してみて下さい。

時間帯

海辺や水辺の写真は時間帯を変えることで、昼間のキラキラした写真と違いエモーショナル(ロマンチック)な写真が撮れます。例えば夕方の海辺、僕はこの時間帯が好きであちこち回りながら撮影していきます。


使用前 使用後
フィルターなしトワイライトフィルター・レッド使用

映画のワンシーンのような一枚を撮影する事ができますし、

陽が沈んだ後に訪れるブルータイムの写真も撮影する事が出来ます。


使用前使用後
フィルターなしリバースハーフND8使用

昼間の海辺や水辺もたくさんの被写体がありますが、陽が沈んだ後も海辺や水辺は非常にフォトジェニックな撮影場所でもあります。
例えば、満月が昇る海を「青い時間帯」として撮影するもよし、リバースハーフNDフィルターを使い月を白飛びさせずに撮影するもよしです。

また、僕は長く「夜風景(よふけ)の写真」というシリーズを撮影していて月光を活用した写真を撮影することも多くあります。撮影場所も水辺で撮影する事が多いです。こうした水面を入れたシンメトリー構図で撮影する場合、どうしても反射する水面の方が暗くなってしまいます。なので僕は、この写真のようにリバースハーフNDを使い上下の明暗差を整えて撮影しています。

まとめ

さて、いかがだったでしょうか?最後まで読んでいただきましてありがとうございます。撮影シーンごとにテクニックやコツがあるものの、基本は「どう撮りたいか?」という「イメージ」が根源になります。そのイメージに合わせて設定やフィルターを変えて撮影してみて下さい。そして「わぁ!(WOW!)」という感動に素直になり、そして楽しく撮影する事が大事です。このコラムが皆様のなにかしらの参考になれば幸いです。またお会いしましょう!

 

海の撮影に便利なアイテム

この記事の作者

小河 俊哉

小河 俊哉(おがわ としや)

東京都出身。
自動車整備士、カースタントマンなどを経てフリーフォトグラファーとなる。
自然、風景、クルマ写真などを専門とし雑誌、クラッシックカーイベントなどで活躍。 現在、作品集作成のため精力的に国内外で撮影中。