特別な雰囲気を纏わせるソフトフィルター
ソフトフィルターはレンズの前に付けるだけで、光を拡散し描写を柔らかくして独特の雰囲気を創り出します。デジタルカメラは撮影後のレタッチが可能ですが、レンズフィルターの魅力はシャッターを切った瞬間に欲しい効果が得られる手軽さと楽しさです。ソフトフィルターには様々な種類があるので、その効果・使い方を知ることで表現の幅が広がります。
ポートレート
最近のカメラやレンズは高解像で毛穴までくっきりと写ってしまうこともあります。ソフトフィルターはコントラストを弱め、肌の質感をキレイに見せてくれます。またレタッチと違い、撮影時に効果が得られるため、完成イメージを共有しながらポートレート撮影できる良さがあります。
ブラックミスト
非常に微細な黒い拡散材を光学ガラスで挟み込んだフィルターで、光の回折によりハイライトとシャドウ部のコントラストを抑え、柔らかな描写にします。他のソフトフィルターに比べ白っぽくなりにくい特長があり、映画のような質感が得られます。ソフト効果はブラックミストプロテクター < ブラックミストNo.05 < No.1の順で効果が強くなります。
ホワイトミスト
ハイライトとシャドウのコントラストを抑え、全体を淡い色調にしつつ、ほんのりと柔らかな描写にします。逆光時にはオールドレンズのフレアのように、光に包まれるような拡散効果が得られます。お持ちのレンズでオールドレンズテイストな描写を楽しむことができます。
プロソフトン
フィルター表面に施した特殊コーティングと、非常に微細なエッチング技術のダブル効果により、光のにじみが美しい滑らかなソフト効果が得られる最もポピュラーなソフトフィルターです。ソフト効果は3種類あり、クリア < A < B の順で効果が強くなります。
フォギー
フィルターガラスの微細な表面加工により、霧の中で撮影したような幻想的な雰囲気にするソフトフィルターです。画面全体を白っぽくするソフト効果で、ハイライトからシャドウ部にかけてのにじみ込みが特徴的です。効果弱の(A)と効果強の(B)があります。
プロソフトンとフォギーの違い
プロソフトンはハイライトの光をにじませて肌を滑らかに見せます。
フォギーは画面全体に白いヴェールをかけたような質感です。プロソフトンは効果が強いと輪郭がにじみますが、フォギーはプロソフトンより輪郭のシャープさを保ちます。
肌の質感の滑らかさで選ぶならプロソフトンがおすすめです。
花・風景
花をふんわりと描写したい時はソフトフィルターが便利です。描写を柔らかくしつつ、光や霧に包まれたような幻想的な雰囲気を創り出します。木漏れ日や水面の反射などの光を取り入れると効果が高まります。紅葉や新緑などの風景や郷愁を感じさせる景色にもおすすめです。
プロソフトン
光のにじみが美しい滑らかなソフト効果が得られる定番のソフトフィルター。背景のボケも柔らかい印象になります。レンズは望遠側にして、主役の花が浮き立つような背景を探すとよりふんわりとした雰囲気になります。逆光ぎみで撮ればさらに幻想的になります。
フォギー
霧の中で撮影したような幻想的な雰囲気にします。くもりの日のようなフラットな光ではメリハリがな い感じになるため、コントラストのある被写体でハイライトの光のにじみ込みを生かすのがコツです。露出補正をプラス側にするとより効果的です。
ブラックミスト
ハイライトとシャドウ部のコントラストを抑え、柔らかな描写にします。ポートレートだけでなく、風景撮影での雰囲気作りにも活躍します。木漏れ日や窓辺から差す光を取り入れるのが雰囲気良く撮るコツです。
ホワイトミスト
ハイライトとシャドウのコントラストを抑え、全体を淡い色調にしつつ、ほんのりと柔らかな描写にします。逆光時にはオールドレンズのフレアのように、光に包まれるような拡散効果が得られます。
ノスタルトーン・オレンジ
ノスタルトーン・オレンジは日中に撮影しても夕暮れの暖かい光を感じさせるフィルターです。かすかに描写を柔らかくする効果もあります。朝夕の太陽の光や、建物に反射する光、夜景の光を取り入れると、ほんのりと光を拡散して印象的に表現します。逆光時にドラマティックな光のリングやゴーストが現れることもあります。
ノスタルトーン・ブルー
ノスタルトーン・ブルーは、シャドウを明るくすると同時にハイライトを抑える効果があり、柔らかな階調でノスタルジックに描写します。また隠し味的にブルーを利かせ、やさしい光に包まれるような拡散効果が得られます。
夜景・イルミネーション
ソフトフィルターは夜景やイルミネーションの点光源をにじませて輝きを強調し、幻想的な雰囲気にします。点光源のにじませ方はソフトフィルターの種類によって大きく異なります。同じ撮影条件での比較はこちらをご覧ください。
ブラックミスト
夜景撮影では光源をふんわりとにじませ、シネマティックな雰囲気を創り出します。ブラックミストの湿度を感じるようなしっとりとした質感は、雨のシーンとも相性抜群です。街灯などの大きな光源が画面に入る場合はブラックミスト プロテクターかNo.05がほどよい拡散効果になります。
ホワイトミスト
ホワイトミストを夜景に使用すると、街灯などの光源の周辺に柔らかな光の拡散効果が得られます。他のソフトフィルターに比べて、光源のにじみが少ないのが特長です。
ブラックミストとホワイトミストの違い
ブラックミストとホワイトミストの違いが大きく出るのは、逆光や点光源が入るシーンです。ブラックミストは光源を包み込むような、かすかにアンバー系の光の拡散があるのに対し、ホワイトミストは光源からなだらかに溶け込むような光の拡散効果があります。また点光源を撮った時に、ブラックミストは光がにじんで大きく写りますが、ホワイトミストはほとんど光がにじまず、光源の周辺に柔らかな光の拡散が生じます。
- フィルター未使用
- ホワイトミストNo.1
- ブラックミスト No.05
プロソフトン
イルミネーションの光は見た目の印象より小さく暗い感じに写ってしまうことがあります。プロソフトンを使うと、小さな点光源をにじませて大きく写し、光を印象的に表現します。
フォギー
フォギーは霧の中で撮影したように幻想的な雰囲気にします。強い光源があると、独特のにじみ効果が得られます。夜景やイルミネーションを最も幻想的にするソフトフィルターです。
星空
肉眼でハッキリ識別できる星座も、デジタルカメラではシャープに写り過ぎ、星の明るさや色の違いが分かりにくくなってしまいます。「プロソフトン」は明るい星をキレイににじませ、星座を浮かび上がらせます。星の色の違いも明確にすることができます。
プロソフトンの種類
プロソフトンのソフト効果は3種類あり、クリア < (A) < (B) の順で効果が強くなります。初めてお使いになるなら、プロソフトン(A)がおすすめです。星景写真でできるだけ風景をにじませたくないという場合にはプロソフトンクリアがおすすめです。
【オリオン座へのソフト効果を比較】
クリア < A < Bの順でオリオン座の星々が大きく写っています。
- フィルター未使用
- プロソフトンクリア
- プロソフトン(A)
- プロソフトン(B)
【風景へのソフト効果を比較】
クリア < A < Bの順でソフト効果が強くなり風景がぼんやりしてきます。
- フィルター未使用
- プロソフトンクリア
- プロソフトン(A)
- プロソフトン(B)
星景写真用ハーフソフトフィルター
ハーフプロソフトン (A)
角型のフィルターで、フィルターの半分にソフト効果があります。丸型のプロソフトンは写真全体にソフト効果がかかりますが、ハーフプロソフトンなら風景はシャープなまま星空だけにソフト効果をかけることができます。
100×125mm ¥28,400
130×170mm ¥42,800
ソフト効果の比較
ソフト効果は使用するレンズの焦点距離や被写体などの条件によって変わります。ここでは「描写の柔らかさ」と「点光源の拡散効果」に焦点を当て、各ソフトフィルターの効果を比較しました。
描写の柔らかさ
■プロソフトン(A)(B)は美肌効果を生み出す滑らかなソフト効果が特長ですが、焦点距離が長くなると輪郭もぼんやりします。
■フォギー(A)(B)やノスタルトーン・ブルーは霧がかかったように画面全体が白っぽくなりますが、プロソフトン(A)(B)に比べると、輪郭はシャープです。
■プロソフトンクリア、ブラックミスト、ホワイトミスト、ノスタルトーン・オレンジは輪郭が比較的シャープなまま、ほんのりと柔らかな描写にします。
- フィルター未使用
- プロソフトン クリア
- プロソフトン (A)
- プロソフトン (B)
- フォギー (A)
- フォギー (B)
- ブラックミスト No.05
- ブラックミスト No.1
- ホワイトミスト No.1
- ノスタルトーン・ブルー
- ノスタルトーン・オレンジ
※効果の出方は光源の大きさや距離などによっても異なります。
点光源の拡散効果
■プロソフトンは小さな点光源の発光部を大きくみせたい場合に最も効果的です。
■フォギーは発光部の周囲に広がる光のにじみが特徴的です。
■ブラックミストはフォギーのにじみ方に近い印象ですが、よく見るとフォギーとも異なる特有のにじみ方をします。また光のにじみにオレンジ系の色味がほのかに感じられます。
■ホワイトミストは小さな点光源を大きく写す効果はほとんどありません。光源が強い場合には オールドレンズのようなフレア効果が得られます。
- フィルター未使用
- プロソフトン クリア
- プロソフトン (A)
- プロソフトン (B)
- フォギー (A)
- フォギー (B)
- ブラックミスト No.05
- ブラックミスト No.1
- ホワイトミスト No.1
- ノスタルトーン・ブルー
- ノスタルトーン・オレンジ
※効果の出方は光源の大きさや距離などによっても異なります。また周囲が暗いほど光の拡散効果が強く写ります。
ソフトフィルターの使い方
ソフトフィルターはレンズの前に取り付けるだけで描写を変えることができますが、撮影時の設定や光の取り込み方を意識することで、よりイメージ通りの雰囲気を創り出すことができます。
光の方向
ソフトフィルターは被写体と光線の位置関係でソフト効果が大きく変わり、順光やサイド光よりも逆光の方が効果が強くなります。逆光時に太陽そのものを入れると激しく白飛びを起こしてしまうため、太陽は画角に入れないようにしたり、人物や木などの 被写体で太陽が隠れるような構図を探すとよいでしょう。被写体の周辺からもれる光をソフトフィルターで拡散することで光を発するような、光に包まれたような効果が得られます。光の方向を意識してレンズに入る光の量を調節することで、コントラストの低下をコントロールすることができます。
焦点距離
使用するレンズの焦点距離が長いほどソフト効果が強く出ます。(A)(B)と種類があるフィルターは、効果をほんのり出したい場合は(A)、効果を強く出したい場合は(B)をお選びください。※写真の鑑賞時のサイズによってもソフト効果の見え方は変わります。
焦点距離 35mmブラックミスト No.1使用
焦点距離 100mm
背景の明るさ
コントラストが高い被写体ほどソフト効果は有効で、背景が暗い方がソフトフィルターによるハイライトのにじみが印象的に写ります。背景が被写体より明るいと効果を感じにくくなります。
背景が暗くコントラストが高い被写体フォギー (B)N使用
背景が明るくコントラストが低い被写体
絞り
絞り値を変えてもソフト効果の強弱は変わりませんが、開放あるいは開放に近い方がソフト効果の雰囲気が増します。絞りの調節以外で背景のボケを大きくするには、望遠レンズを使用したり、できるだけ被写体に寄ったり、被写体と背景の間に距離をとるようにします。
絞り:F8ブラックミスト No.1使用
絞り:F2.8
露出補正
露出補正でソフト効果の印象が変わるため、意識的に露出補正をしましょう。ふんわり感を強めるにはプラス補正します。夜景やイルミネーションの撮影等で白飛びが気になる時はマイナス補正をします。
露出補正前フォギー (B)N 使用
露出補正+1
ホワイトバランス
ホワイトバランスを変更すると、ソフト効果による幻想的でノスタルジックな雰囲気がより強まります。ホワイトバランスを「電球」にしたり、カメラのケルビン値を下げてブルー系の色味にすると、夢やおとぎばなしのような世界観を創り出せます。ホワイトバランスを「日陰」にしたり、ケルビン値を上げてアンバー系の色味にすると、ノスタルジックな雰囲気になります。
ホワイトバランス [ オート ]フォギー (B)N 使用
ホワイトバランス [3500K]
効果フィルターの併用
ソフトフィルターを他の効果フィルターと併用すれば、表現の幅がさらに広がります。
(例)
星空 | スターリーナイト | 光害による色カブリを抑えて星空をクリアに撮れます。 |
---|---|---|
花の接写 | クローズアップレンズ | お持ちのレンズの最短撮影距離より近づいてアップで撮れます。 |
イルミネーション | クロスフィルター | クロス状のキラキラ効果でさらに幻想的に演出します。 |
動画 | NDフィルター | 減光効果で露出を整え、滑らかな動画にします。 |
ソフトフィルターラインナップ
ソフトフィルターには個性があるため、タイプの違うものを複数用意してシーンに応じて使い分けるのがおすすめです。
ブラックミスト
トレンドのシネマティックな質感に
■絶妙なふんわり感で映画のような質感が得られます。
■夜景撮影では光源をふんわりとにじませます。
■No.05はNo.1の1/2のソフト効果。
■ブラックミストプロテクターはNo.1の1/4のソフト効果。
プロソフトン
ポートレートから星空まで多用途に使えるソフトフィルター
■滑らかで光のにじみが美しい定番のソフトフィルター。
■ポートレートはもちろん、花から星景まで幅広く活躍。
■ソフト効果はクリア < A < Bの順で効果が強くなります。
■星景写真には風景へのにじみが少ないプロソフトンクリアがおすすめ。
ホワイトミスト
オールドレンズの描写のように
■コントラストを抑え、淡い色調に
■ピントの芯は残しつつ、ほのかに柔らかな描写に
■逆光時にオールドレンズのようなフレア効果
ノスタルトーン Akine Coco 監修
アニメのワンシーンのように、ノスタルジックに